ドーバー海峡で遠泳〜シャローンチーム〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜4lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月16日〜08月21日

リプレイ公開日:2004年08月19日

●オープニング

──事件の冒頭
 そこはいつもの冒険者酒場。
 依頼を受けて戻ってきた者たち、これから冒険にいくパーティーなど、そこは様々な冒険者で賑わっている。
 そんな賑やかな酒場で、さらにひときわ賑やかなテーブルがあった。
「だから、今回の交渉はそっちが後っていう話だったじゃない!! なんで突然割り込んできたんだ」
「だってねぇ‥‥いきなりキャンセル入って在庫が余ったからさぁ‥‥生鮮食糧なんで早めに処分しないと不味いでしょ!!」
「だからって‥‥あんた、商人としてのルールも守れないぐらい耄碌(もうろく)したのかい?」
「でもさぁ。飛込みの仕事で割り込んできたのは、そっちじゃない?」
 かたや交易商『グレイシー商会』のマダム・グレイス・カラス。
 あいもかわらず豊満な体を揺さぶりながら、目の前の女性に向かって叫んでいる。

 かたや最近になって売出しはじめた『ギャブレッド貿易』のマダム・シャローン・ギャブレッド。
 マダム・グレイスとは対照的な、のんびりとしたスレンター美女。
 どうやら仕事の件でもめているらしいが、だんだんとその揉め事が大きくなってきた。
「上等だ!! アンタとはいつか決着付けたかったんだ‥‥決闘だ」
「良いわよぉ。受けてたちましょう。勝負方法は? まさか切ったはったの力づくかしら?」
 そう告げられて、マダム・グレイスも引き下がれない。
「船乗りらしく、泳ぎで勝負だ。遠泳‥‥それもドーバー海峡で!!」
 流れが強く、ちょっと油断したらそのまま流されていってしまうほど危険な海域、ドーバー海峡。
 そこでの遠泳勝負となると、只では済まない。
「勝負方法は?」
「6人1チームの持久戦。どっちのチームがより長く泳いでいられるか‥‥助っ人ありでいいだろ?」

──そして後日
「で、助っ人を募集して欲しいと? マダム・シャローン」
 目の前のマダム・シャローンに向かって、 冒険者ギルドの受付けが静かに呟いた。
「ええ。とにかく泳ぎの強い人を御願いするわ。それとマダムじゃないわよ、ミス。ミス・シャローンね」
 そして詳細を書き記すと、ギルド員は掲示板に依頼を張付けた。
「ドーバー海峡での遠泳勝負助っ人募集‥‥こんな依頼、だれが飛び付くの?」

●今回の参加者

 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2928 ルナ・シーン(37歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea3484 ジィ・ジ(71歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3794 フェリクス・カルリスタ(35歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・イスパニア王国)
 ea5242 アフィマ・クレス(25歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 ea5488 シアルフィ・クレス(29歳・♀・神聖騎士・人間・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●まずは〜準備の前のさらに準備〜
──ドーバー海峡
 激しい高波が砂浜に打ち寄せられる。
 ここは、今回の依頼であるドーバー海峡遠泳勝負の会場。
 すでに依頼人であるマダム・シャローン・ギャブレッドとマダム・グレイス・カラスの両名は、折り返し地点に自分の商船を配置させていた。
 そして今回の為に作られた休憩室に向かい、最終打ち合わせを行なっている模様である。


──シャローン控え室
 静かな一室。
 そこにはドレスアップしたシャローンが、今回の依頼を受けたメンバーと詳細について打ち合わせていた。
「これは?」
 シャローンが持ってきた箱を指差しながら、風烈(ea1587)がそう問い掛ける。
「今回の遠泳、色々な意味で負ける訳にはいかないのよ。だからね‥‥」
 そう呟きながら、箱から大量の布を取り出すシャローン。
 それは、泳ぐためにデザインされた衣服。どちらかというとアンダーウェアに近い形をしている。
 男性はショートパンツ又はフンドシ。
 女性は胸の部分を覆い隠す布と、やはりショートパンツかフンドシ。
 しかも、シャローンが頼んだのであろう、全ての衣服は色とりどりの模様に染められている。
 女性用はさらにデザインも重視。
「俺は、このままでいい。特に鎧を脱ぐ必要もないからな」
 そう呟く烈に、ルナ・シーン(ea2928)が問いかける。
「鎧をつけたままですと溺れませんか? 私はこの模様のを使わせていただきますけれど」
 そう呟いてから、ルナは自分にあったサイズの胸布とショートパンツを手にする。
「大丈夫。俺には師匠から教わった『華国式古式泳法』がある。まあ、勝つために必要ならば、この鎧は外してもかまわないがな」
 その泳法がどのようなものなのか、ルナには今ひとつ想像が付かなかった。
「すいませんが、マダム・シャローン。体の表面に塗る油を用意して欲しいのですが」
 それはジィ・ジ(ea3484)。
「マダムじゃなくてよ。ミ・ス!! ミス・シャローンよ。コウ見えても独身ですからね」
 細かいところに突っ込みを入れるシャローン。
 ちなみに、シャローンはイギリス系移民。
 幼いときに、このノルマンに家族で渡ってきたらしい。
「で、油なんて体に塗ってどうするのかしら?」
「泳いでいる時に、体が不必要に冷えるのを防ぐためです。何とかなりそうですか?」
 シャローンの問いにジィが即答。
「獣脂でいいのでしたら、直ぐにでも用意させますわ。あとはなにか必要なものはないかしら?」
「私は特に。確か、今回の依頼は泳げばいいんですよね? 戦闘より楽ですね」
 それはフェリクス・カルリスタ(ea3794)。
 つい先程までは、ドーバー海峡を見て感激していたらしい。
「ええ。時間も何も気にする必要はないわ。とにかく泳ぐ。時間一杯泳ぎきったら、多分私達の勝利ね。グレイスのチームがどれだけのメンバーを揃えられたのか知らないけれど、所詮は付け焼き刃。冒険者ギルドなら、ちゃんと依頼にあった冒険者さんを派遣していただけるから、楽勝ね」
 口許に笑みを浮かべて、シャローンがそう呟く。
「あのー、私泳げません」
 そっと手を上げてそう呟くのはアフィマ・クレス(ea5242)。
「えーっと‥‥ちょっと良いかしら? どうしてこの依頼を受けたの?」
 シャローンが静かにアフィマに問いかける。
「応援‥‥駄目でしょうか? 見たら会場には見物客も多くいらっしゃるようですので、応援で盛り上げようかなと‥‥」
 その言葉に、シャローンはしばし思考。
「そうね。とりあえず、自分の順番以外でしたら、何をしてても構わないわね。でも、6人1チームで順番に泳ぐって決まっていますから。浮きを付けて、木の板を持って泳いでいただけないかしら?」
 ここで断わられたら、自動的にメンバー不足でシャローンの負け確定。
「それでしたら‥‥」
 アフィマ、なんとか納得した模様。
「あとで泳ぎ方教えてあげるわ」
 ルナがアフィマににっこりと微笑みながらそう告げる。
「御願いします。浅瀬は恐くないのですけれど、深いところは恐くて‥‥」
 根本的に、泳げない模様。
「必要なものなんですが、よろしいでしょうか?」
 それはシアルフィ・クレス(ea5488)。
「どうぞ。何が必要かしら?」
「体を温めるための焚火、それに使う燃料、毛布、飲み物食べ物とかは用意していただけますか?」
 そのシアルフィの言葉に、シャローンは静かに肯いた。
「既に手配済みよ。凄いものを用意してあるからまっていなさいね」
 そのシャローンの言葉の後、一同はアフィマの水泳講習を開始。それからスタート順やその他のことを打ち合わせはじめた。


●では、始めましょう〜過酷な耐久レース〜
──スタートライン
 まずは両チーム、全員がアンダーウェアに着替えて準備体操。
 色とりどりなアンダーウェア、中にはきわどいデザインまで揃っているシャローンチームに対して、全員が統一のデザイン、シンプルイズベストのグレイスチーム。
 既にギャラリーの視線はシャローンチームに釘付けの模様。

 芸術部門ではシャローンチームの勝利
 その光景に、シャローンは満足の模様。

「そーれい、いっちにーさんしっ、ごーろくしっちはっち」
 グレイスの掛け声で全員が綺麗に動く。
「‥‥妙に視線を感じるのは気のせいかしら?」
 ルナが、隣で体操をしているアフィマに問いかける。
「ん? ルナさんはスタイル良いから。見ている男性全員悩殺だね!!」
 小悪魔の様な笑みを浮かべて、アフィマがそう呟く。
 その横では、シアルフィが、顔を赤くしながら体操を続けている。
(私‥‥見られているのね‥‥)
 ああ、どうやら見られる快感を得たようで。
 そして一通りの体操を終えた後、各チームのオーダー発表となった。
 ちなみに、各チームの泳ぐ順番は以下の通り。

〜チーム・グレイスのオーダー
1番手:エリー・エル
2番手:ギアリュート・レーゲン
3番手:響清十郎
4番手:ジェイラン・マルフィー
5番手:李更紗
6番手:オレノウ・タオキケー

〜チーム・シャローンのオーダー
1番手:ルナ・シーン
2番手:フェリクス・カルリスタ
3番手:シアルフィ・クレス
4番手:風 烈 
5番手:ジィ・ジ
6番手:アフィマ・クレス


「さて、ルールはあらかじめ伝えたとおり。沖にある船にタッチ、ここまで戻ってくる。戻ってきたら次の選手と交替、時間までただひたすら泳ぎつづけること。どちらかのチームの選手が倒れた時点で勝負あり。妨害工作はなし、正々堂々と戦うこと!!」
 グレイスが全員に告げた後、第一選手がスタートラインについた。
「それでは‥‥よーーい、すたーーーーとっ!!」
 シャローンの掛け声で走り出す一番手であった。


──ルナvsエリー
 いきなりダイナマイトボディの激突。
 シャローンの用意したセクシーアンダーウェアを身につけているルナvsグレイスから貰ったものを自分なりにセクシーに改造、着こなしているエリーという『サービスショット』勝負であった。
 両者同時に海に飛込むと、素早く泳ぎはじめる。
(焦ったら駄目だ‥‥最後まで泳ぎきるのが目標だ‥‥)
 そう自分に言い聞かせながら、ルナがペースを崩さないように泳ぐ。
 その後方では、エリーがゆっくりと泳いでいる模様‥‥と、突然のアクシデント発生!!
「あ‥‥ちょっとまってまってぇぇぇぇ」
 エリーのアンダーウェアはグレイスから貰ったものを改造、自分なりにセクシーにしていたものである。
 ワンピースをビキニスタイルに改造しただけあって、耐久度は下がっていた。
 そう、下がったのである。
 下半身を覆っていた部分が。
 後方にプカーッと浮かび上がるパンツ部分を、エリーは必死に追いかける。
「あっちゃぁぁぁぁぁぁ」
 流石かのグレイスも、この光景に頭を抱えていた。
(アクシデント? まあ、私には関係ないわね‥‥)
 そう脳裏で呟くと、ルナはしっかりと折り返し。
 そしてかなりの差を付けてエリーも折り返すと、そのままスパート。
 その速度はすざましい。
 エリーは、一気にルナの横にたどり着くと、一進一退の攻防を繰り返す。


──ギアリュートvsフェリクス
 ルナとエリーは、ほぼ同時に浜に駆けあがると、次の選手にバトンタッチ!!
「いっちょ、やったるぜっ! おりゃぁ〜〜〜〜っっ!!」
 そう叫びながら、ギアリュートが海に飛込む。
 そしてその後方から、ただ黙々と走って海に飛込むフェリクスの姿があった。
 この戦い、気合いvs黙々という不思議な勝負。
 ちなみにギアリュート、気合いはあっても体力は温存モードとの事。
 そしてその戦いは、あっさりと勝負がついた。
 最初に折り返したのはフェリクス。
 ただ黙々と、そう、黙々となのである。
 黙々と泳ぎつづける。
 ただそれだけ。
 戦いではない為、じつに気が楽なのであろう。
 ギアリュートの気合い泳法が折り返しにたどり着いたとき、すでにフェリクスは浜を走っていた。
「まだまだ‥‥体力温存温存‥‥」
 そのままギアリュートもなんとか浜まで到達すると、急いで三番手にタッチ。


──響vsシアルフィ
 フェリクスから先にタッチしてシアルフィ。
 急いで海に駆け寄ると、そのまま体力温存モードで平泳ぎ。
(急ぐのではないのです。ペースをつねに維持するのです‥‥)
 そう自分に言い聞かせると、シアルフィはそのままマイペース泳法。
 その後方では、ようやく響が海に飛込んだ。
「差が開いちゃったか‥‥まあいいや」
 こっちもマイペース泳法。
 だが、男と女の体力差が少しずつあらわになる。
 シアルフィのマイペースと響のマイペース。折り返しまでは確かにシアルフィの方が先を泳いでいたが、いつのまにか響もたどり着いた。
 そして急いで浜に駆け上がると、二人同時に四番手にタッチ!!


──ジェイランvs烈
 さて、ここでとんでもない対戦が始まった。
 全力で海に飛込む烈と、海岸で魔法詠唱を始めるジェイラン。
 そして魔法が完成すると、そのまま海の中に駆け込んだ。
 本番の為、烈は鎧は外して古式泳法でゆっくりと泳ぐ。
(師匠‥‥見ていてください。貴方から受け継いだ、心と技で戦い抜いてみせます)
 心の中で師匠に誓い、烈は全力で泳ぐ。
 そしてその頃。
 ジェイランは海底をのんびりと歩いていた。
(うーん。快適快適。じつにいい調子じゃん)
 ちなみにジェイラン、実は泳げない。
 ウォーターダイブで海底に潜ると、そのまま海底をひた走る。
 時折海面に上がってきては、再び魔法詠唱を行い、また海底へと戻っていく。
 これを繰り返しつつ折り返し地点まで向かう。
 烈はその時点で折り返し、あとは5割を残すのみ。
 じつに異色な対決となっていた。


──更紗vsジィ
 烈は逸早くジィにタッチ。
「ここは任せてください」
 ザバザハと海に付かると、ゆっくりとマイペース泳法で平泳ぎ。
 スーイスーイとのんびりと泳ぐジィ。
 そしてようやく到着したジェイランは、そのまま更紗にタッチしたあとで浜にある焚火に向かう。
 そして手にした袋から、ドサドサと貝を取り出しはじめると、それを火にくべた。
「とれたてでおいしそうじゃん」
 海底散歩のついでに漁までしてきたらしい。
 まあ、急ぐレースでも無いので、楽しんだもの勝ちのようである。

「‥‥ずいぶんと差がついたみたいね」
 そのまま最初は体を慣らすように泳ぎはじめる更紗。そしてある程度体が馴染んできたら折り返し地点までペースアップ。
 そしてそこから怒涛の巻き上げに入る更紗。
「随分と早いペースですね。体力が持つのですか?」
 そう横に並んだ更紗に話し掛けるジィ。
「まだまだ序の口だね。ここからもっと凄いよ」
 更に更紗加速。
 今までの遅れを一気に取り戻した。
 いくら速度は関係無いとはいえ、相手より遅れているという時点で精神的には劣勢に陥ることもある。
 そういう点では、相手より早いに越したことはないというところか。


──オレノウvsアフィマ
 先に到着したのは更紗。
「あとは引き受けた」
 そのまま海に飛込むと『体力重視泳法』で泳ぎはじめるオレノウ。
 ペースは早すぎず遅すぎず。
 実にいい感じである。
 そして少し遅れたジィはアフィマと交替。
 体に付けた浮きと木の板を手に、波打ち際まで移動、そこから恐る恐る泳ぎはじめる。
 しばらくは泳いでいたが、途中からはクルクルと回りはじめるアフィマ。
「アフィマ、どうした!!」
 その光景を見て叫ぶ烈。
「こ、ここから脚が届かない。恐い‥‥」
 まあ、泳げない子にいきなり遠泳というのは無茶であろう。
「あらぁぁぁぁぁ‥‥」
 シャローンの危惧していたことが発生した模様。
 同じく泳げないジェイランとはタイプが違う。彼は水のウィザード、水に関してはエキスパートであり、ただ泳げないだけである。ウォーターダイブなどで海底を歩く程度は別に恐くもなんともない。
 が、アフィマは本当に泳げない。水煮対しての耐性も持ち合わせていないので、恐怖感が先にでたらアウトである。
「浮きがあるから絶対に溺れない、大丈夫だ!!」
 烈の叫び。
 だが、やはり『うーうー』と唸りつつ、その場をクルクルと回る。
「シャローンさん、メンバー交替は?」
 そう叫ぶルナ。
 だが、シャローンは諦め顔。
「最初にメンバー表を出しているから、途中交替は駄目。しかたないわ‥‥」
 そう告げると、シャローンはグレイスに手を上げた。
「グレイス。申し訳ないけどギブアップね。あの子に無茶させて溺れられても困るわ」
 勝負よりも人命優先。
 そう考えたシャローンの潔い敗北宣言である。
「んー。ん。なら、この勝負は私の勝ちだね」
 遠泳勝負初日にして勝負あり。
 かくしてこの勝負、グレイスチームが勝利を納めた。


●残った期間はというと〜バカンスバカンスー〜
 かくしてあっけない幕切れとなった遠泳勝負。
 その夜は、各チームで盛大に盛り上がっていたようである。

 焚火を囲んで、敗北パーティを始めるシャローンチーム。
 とりあえずシャローンが手配した大量の食材は、同じく雇った料理人の手によって目の前で次々と料理されていく。
 もっとも、新鮮な材料を網に乗せて焼くという豪快なものであるが、メインディッシュは『豚一頭』そのままの丸焼き。
 目の前で焼きあがったものを、その場で取り分けてくれるという実に豪快なものである。
 ワインも上質のものを準備。
 樽に入れてあったそれは、皮の袋で船から海にぶら下げてあったらしく、程よく冷えていた。
──パチパチパチパチ
 焚火からはパチパチと心地好い音が聞こえてくる。
「まあまあ、そんな落ち込まないで。昔からグレイスとは幼馴染ですし、こんな言い争いからの大勝負なんて良く有るのですから」
 そう言いながら、海岸の片隅で落ち込んでいるアフィマを元気づけるシャローン。
「貴方が原因で負けたと思わないでください。あらかじめこの状態は回避できたかもしれないのです。チーム全体の作戦負けなのですよ」
 そう話すジィに、アフィマはグッと涙を拭うと『エヘヘッ』と笑った。
「おーい、早く食べようぜ」
「こっちの方はそろそろ完成ですよーっ」
 烈とルナがそう告げる。
 そして華やかなパーティーは始まった。
 遠泳勝負を見物していたギャラリーもシャローンの好意により参加。
 パーティーはより一層華やかなものになっていた。

 そして数分後、グレイスがシャローンの元にやってくる。
 そして何やら交渉を始めると、グレイスは自分のチームのメンバーを呼び寄せた。
「こ、これは!!」 
 グレイスチームの料理は、豚肉と野菜をジャパンの調味料で煮込んだスープ。
 その中には白くてフワフワとした物体が紛れていた。
 それを素早く掬いとると、烈はそのまま口の中に放り込む。
──ジーーーーン
「まさか、このノルマンで豆腐を食べられるとは思ってもいなかった‥‥」
 華仙教大国の食材・豆腐。
 その味わいを噛み締めつつ、烈は仲間間たち
にもそれを薦めた。
 そしてパーティーは深夜まで続き、一行は愉しい一時を過ごしていた。
 そして最後に、シャローンが静かに口を開いた。
「まあ、勝負には負けましたけれど、皆さんガ頑張っていただけたので、それなりの報酬は支払いますわ」
 流石、新鋭の商人は太っ腹!!

 そして翌日から、冒険者一行は愉しいバカンスを体験した。
 勝負に勝ったため、グレイスチームは更に懸賞金をゲットした模様。
 だが、昨晩はパーティーの華やかさではシャローンチームの完全勝利である。
 そんなこんなで、一行は懐もお腹もホクホクしながら、束の間の休息を味わっていた。

・対戦結果
 芸術部門:シャローンチーム
 遠泳部門:グレイスチーム
 宴会部門:シャローンチーム

 まあ、依頼は遠泳なのでグレイスチームの勝利ということで、あしからず。

〜FIN〜

●ピンナップ

シアルフィ・クレス(ea5488


PCシングルピンナップ
Illusted by きささげ龍海

アフィマ・クレス(ea5242


PCシングルピンナップ
Illusted by 卍束