愉しい小島のゴブリン退治
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月14日〜06月21日
リプレイ公開日:2004年06月22日
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●オープニング
●漁村危機一髪
そこはノルマン南東付近に位置する小島。
すぐ近くには豊富な漁場が点在し、この島の住人たちは島の山頂部で取れる豊富な果実と、海より与えられる豊富な海洋資源で生活を行なっていた。
この小さな島も、その日までは平穏な日々を送っていた。
──その日までは
「村長〜、またやられたーーーーっ」
海岸から大勢の人の叫び声がこだまする。
いつものように漁に出ていた男たちが、丸木を削って作った小型カヌーを丘にあげると、そのまま村に向かって叫びながら走り出した。
「なんじゃ、まさかまた出たのか?」
村の奥にある茅葺きの小屋から、一人の初老の男性が姿を表わす。
彫りの深い精悍な顔つきと、褐色に焼けた筋肉質の肉体。齢にして50程であろうその村長は、漁を取り仕切る漁長の声に、やれやれといった表情を見せた。
「いつもの網に掛かっている魚達だけじゃねえ。定置してあった網まで破られちまっているんだ、このままじゃ、今年の漁にも影響がでてきちまう。次の貿易船がやってくるまでに塩漬けの魚を準備出来ねえ」
ここの島のような小さな島々は、ノルマン本島から定期的にやってくる貿易船との行商によって、島では得られないものを手に入れている。島民たちは、この島で取れる豊富な果実や魚の塩漬け等を提供し、そして交易商人たちはその代価として織物やわずかの貨幣を与えていた。そして島民達はまた、他の貿易船との交易を行なっているようである。
だが、ここ数日のうちに、引潮時期になると陸続きとなる沖合いの小さな島に、流れのゴブリン達が住み着いてしまったようである。
奴等は、いつしか集落を作り、浅瀬を通ってこの小島にまでやってきては、果実などを奪って行っていた。
村の若者たちは賢明に罠などを作り追い払っていたが、今度はゴブリン達は海の資源、すなわち網に掛かった魚たちに目をつけてしまったらしい。
その日、網にかかっていた魚は全て根こそぎ奪い取られ、あまつさえ網はズタズタに切り裂かれてしまっている。
「あの島のゴブリンたちをどうにかしねえと、このままじゃ俺達は生きて行けなくなっちまう」
そんな漁長の言葉を聞いたのか、一人の女性が村長の元に歩み寄って行く。
年にして30前後といったところであろう。恰幅の良い体格、よくいえばグラマラスな体を揺さぶりながら、その女性は静かに口を開いた。
「ちょうど、ノルマン本土に帰るっていう冒険者たちが便乗しているから、そいつらに頼み込んだらどうだい? 報酬さえ払えば、手伝ってくれれると思うけれど?」
この女性、名前を『グレイス・ガリィ』と言う一部地域では名うての交易商人である。
そんなグレイスも、最近は海産物に目をつけたらしく、この諸島をゆっくりと回っては様々な交易品を買い漁っているようである。
「グレイス殿、御願い出来ますか? この島は夜になると潮が引き、ゴブリンたちの住まう島と陸続きになります。島の何処にいるのかは判りませんが、ちいさな島ゆえ、すぐに痕跡は発見出来るかと」
村長がゆっくりとした口調で静かにそう頼み込む。
「任せときな。このガリィ一家に敵は無いってね」
ガリィ一家の交易帆船『グレタ・ガリィー号』に便乗していた冒険者達。
すなわち諸君は、突然、ゴブリン退治という仕事を引き受けることとなってしまった。
さて、一体どうなることやら。
●リプレイ本文
●戦慄のゴブリン
──交易船『グレイス・ガリィ』号内
そこは大きな一室。
本土に戻るために便乗していた冒険者たちがまとめて詰め込まれた部屋であり、壁際には交易用の樽なども一緒に積み込まれていた。
その中の一つの樽を起こしてテーブル代わりにすると、4人の冒険者たちはその回りに椅子を置き、ゆったりと腰掛けながら話を始めた。
「私は多少ですが魔法を使えます。パーティーの後方支援という形でしたら、御同行できますが」
ノルマンのジプシー、ハルヒ・トコシエ(ea1803)がそう告げる。
法衣(ローブ)姿にナイフを装備。ジプシーという魔法職である以上、かなりの軽装なのは仕方のないことである。
「出発が明日の朝なら、一足先に奴等の痕跡でも調べてくることにしよう。幸い、俺はそっちに関しては多少ながら経験があるからな」
それはフランク出身のギィ・タイラー(ea2185)。マントとショートボウ、ダガーといったいでたちと、先程の会話から察するに、彼はレンジャーなのであろう。
「とりあえずは、自分の出来ることを考えてみましょう。私はウィザードですので、後方支援という形になりますけれど、いないよりはマシでしょう」
フランクのウィザード、ユリウス・クラウディス(ea2999)が物静かにそう呟く。
ローブのみを羽織り、腰には護身用のダガーを携えているユリウスは、ギィにそう告げると、ふたたび口を開いた。
「島の人たちの事情も聞きました。困っている人たちを見捨てることはできませんからね」
と呟いた。
「では、自分は後方支援の方たちの援護に回らせていただきます。迂闊にもゴブリンごときに挟撃などされてしまったら、後方の魔法使いさんたちは全滅必至でしょうから」
レザー系の鎧を身に纏ったフランクのナイト、ヴァーニィ・ハザード(ea3248)が静かにそう告げた。
「‥‥この4名で、ゴブリンの集落を襲撃し、この島から撤退させられるのですか?」
そのハルヒの問いに、皆は頭を捻った。
本来ならば、この船にはもっと冒険者らしき人が乗っていた筈。
だが、今回のグレイス船長の話に乗ってきたのはこの4名だけ。
前衛として戦えるナイトが一人、斥候兼後方支援のレンジャーが一人、バックアップのジプシーが一人、そして後方火力のウィザードが一人。まともに戦っても、勝てる見こみなど殆ど存在しない。
その後、ある程度の方向性を話し合うと、斥候として偵察に向かうギィの報告を待つこととなった。
●斥候より‥‥敵はまだ手薄ですけれど‥‥
──深夜
浅瀬を足尾と立てずに駆け寄って行くのはギィ。
予め、村長からゴブリンたちの通ってきそうな道を聞き出した後、ギィは単身で斥候を開始していた。
浅瀬を駆け抜け小さい島にたどり着くと、ギィは早速ゴブリン達の痕跡を調べ始める。
ちょうどギィの上陸したポイントから前方に小さな森があり、そこから篝火らしきものがちチラチラと見えているのに、ギィは気が付いた。
(‥‥ゴブリンの数は全部で20ちょいか‥‥奇襲作戦も無理、かといって後方の魔法に頼るのも‥‥魔力が持つわけはないし‥‥)
1度其の場から離れ、集落の周囲をぐるりと散策する。
(奴等も馬鹿ではないか。定期的に見回りもいる、統率のある程度取れているゴブリンの小さな集落といったところか‥‥)
そのままギィは一旦船に引き上げることにした。
●早朝〜作戦は実行出来なかったが〜
──作戦当日の朝。
「そんなに大量のゴブリンがいたのですか?」
ギィの報告を聞き、ヴァーニィがそう呟く。
「統率はそれなりにとれていると思う。奇襲作戦も考えてみたのだが、ヴァーニィ一人で後方に向かうであろうゴブリンを押さえきれるかどうか‥‥」
ギィがそう返答する。
「あの‥‥」
そっと手を上げるのはハルヒ。
「私のサンレーザーは早朝ですと効果を発揮出来ないのですが‥‥」
「それに、私のライトニングサンダーボルトも、そうそう連射の聞く魔法ではありません。もうすこし前衛の方がいらっしゃるのでしたら、なんとか対処できたのですけれど‥‥」
ギィはそこまでの皆の意見をまとめた結果、今回の作戦には無理があると判断した。
「このメンバーでのゴブリン討伐は不可能と判断。グレイス船長にそう告げてきましょう」
そして今回の作戦の開始不可能を説明し、一同はこの件を本国の冒険者ギルドに委ねることにしたのであった。
●翌日昼〜襲撃は唐突に〜
無事に交易を終えたグレイス・ガリィ号は一路本国に向かうための準備を行っていた。
交易品の積卸しなどは、乗船していた冒険者たちも手伝っていた。
そしてそれら一連の作業が終った直後、またしても海の方から悲鳴が上がった。
「なんだ?」
ヴァーニィとギィ、ユリウス、ハルヒの4名はその悲鳴の方角に向かって走り出した。
浅瀬を通ってゴブリンが3匹、この島に向かってやってくるのが見えた。
「こんな昼間にまで‥‥とうとう奴等、この村にまで目をつけたのか!」
素早く剣を抜くと、ヴァーニィが浅瀬の村側に先回りする。
すると、今まで見たことのない鎧を身に包んだヴァーニィの姿を見て、ゴブリン達も手にした棍棒を構え走り出す。
──ビュウン!
ギィが背中から弓を取り出すと素早く構え、ゴブリンの一匹に向かって打ち込んだ。
「雑魚が! 好きなように動けると思うな」
素早く次の矢を番えるギィ。
──キィィィィン
「光あれ! ですぅ〜」
ヴァーニィが走り出したのとほぼ同時に、ハルヒとユリウスは詠唱を開始。
そしてハルヒのサンレーザが発動した。
ハルヒの全身が金色に輝く。
と、彼女の眼の前から一直線に光線が発射、ゴブリンに直撃した。
『グガガカガガガガカァァァ』
魔法を初めて受けたゴブリンにとっては、それは驚異的であったのだろう。
サンレーザーの直撃を受けたゴブリンは慌てて自分たちの島に走り出した。
そしてユリウスの全身もまた緑色の輝きに包まれる。
──バジッ‥‥バリバリバリバリッ!!
「唸れ! 裁きの雷光よ!」
ユリウスの右手より、一直線に雷光が伸びる。
それはゴブリンの頭部に直撃し、ゴブリンは顔を押さえて島へと走り出した。
慌てて自分たちの島に駆け戻っていく2匹のゴブリン。
そして残った一匹のゴブリンも、目の前で剣を構えているヴァーニィの迫力に圧倒され、島へと走り出した。
「ふう‥‥なんとか追い払えましたわね」
ハルヒが静かに呟く。
「でも、一時しのぎが出来ただけだろう。早く本国に連絡を取って、冒険者ギルドから正式にゴブリン討伐の為のメンバーを募った方がいい」
ギィのその言葉に、ヴァーニィに静かに肯いた。
「彼等は、魔法というものを始めて体感したでしょう。しばらくは魔法による反撃を恐れてこの島にはやってこないと思われますけれどね」
ユリウスも冷静に情況を判断し、周囲の安全が確認出来ると港共に船に戻って行った。
そして船は静かに走り出し、一路本国へと戻って行った。
〜FIN〜