【シチュエーション】良い恋愛の条件
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや易
成功報酬:1 G 92 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月22日〜02月27日
リプレイ公開日:2008年02月29日
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●オープニング
──事件の冒頭
とある日の冒険者ギルド。
いつものように忙しい受付嬢のエムイ・ウィンズ。
いつものようにとんでもない依頼を受け付け、それを依頼書として作成師、掲示板に張付ける。
それを見た冒険者の受け付け、そして事務処理、依頼人への報告をシフール便で送る等など、受付嬢としての実務はそこそこにこなしていた。
そんなある日のこと。
一人の冒険者風の青年が、エムイの前にやってきた。
「ええっと、こんにちは、依頼のご相談ですか? どんな依頼でしょうか?」
そう話し掛けるが、男はじっとエムイの方を見て、何かを告げたがっていた。
「ああ、失礼しました。シフールの通訳さんをお呼びしますので、少々お待ちください!!」
と呟いたその時。
──ガシッ!!
青年はエムイの手を握り締める。
そして一言『以前から、ずっと貴方のことを見ていました。お付き合いしてください‥‥』
と告げて、そのまま一通の手紙を残して立ち去ってしまった。
「ええーーーーっと。依頼ですね。これがこの手紙が依頼の内容で‥‥それは私が好きで‥‥お付き合いしてクダサイという事で‥‥必要な冒険者は‥‥ええっと‥‥」
ああ、エムイが壊れている。
──スパァァァァァァァァァァァァァァァン
と、エムイの背後から、突っ込みハリセンを手に思いっきり後頭部を殴りつけたギルドマスターのフロランス。
「まあ、今までの数々のドジは大目に見ましょう。それよりも今は、現実を直視して‥‥って、貴方、今、何を書いているのですか?」
と告げるフロランスの視界では、エムイが冒険者宛の依頼書を作成していた。
──────────────────────
依頼人 :エムイ・ウィンズ
依頼内容:何方か、うまく恋愛できるコツを伝授して下さい‥‥
──────────────────────
それを見て、フロランスは一言。
「貴方、まさか告白されたの初めて?」
「そーーーなんですよーー。もうどうしていいか解らなくて、恋愛? これって恋愛ですよね? 殿方とお付き合い? ども冒険者は生活が安定していないし‥‥やっぱり結婚となると‥‥」
ああ、またしても壊れているエムイ・ウィンズ。
ということで、史上初の、恋愛指南依頼が始まるのであった‥‥。
●リプレイ本文
●愛あるかぎり戦いましょう
──パリ・冒険者酒場マスカレード
そこはいつものような見慣れた光景。
ただ酒煽ってくだまいている酔っぱらいと、写本をじっと眺めているクロムウェル、カウンターでのんびりと古いワインを飲んでいる常連などなど、様々な人物が集っている。
そんな酒場の2階席では、なにやらのんびりとした空気が流れているようで‥‥。
「まあまあ、まずはエムイさん、ゆっくりと深呼吸して‥‥」
と告げているのは、アフィマ・クレス(ea5242)。
そのアフィマの言葉で、エムイは静かにうなずく。
「吸って〜」
「はぁぁぁぁぁぁ」
「吐いてぇ〜」
「ふぅぅぅぅぅぅぅ」
「また吸ってぇぇ」
「はぁぁぁぁぁぁ」
「まだ吸うんやで」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
と、いつのまにか途中からチャチャを入れているのはジュエル・ランド(ec2472)。
「吸ってえ」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「まだまだ吸ってぇぇぇ」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‥‥」
──バタッ
と、突然卒倒するエムイ。
「アホやなぁ。途中で突っ込みいれんと」
「ちょ、ジュエルさん、そんな『貴女基準』のボケ突っ込みを要求しないでください。エムイさーーーん」
ユリア・サフィーナ(ec0298)がそう告げつつ、倒れているエムイに水を飲ませる。
──ゴクッゴクッゴクッ
「ぷはーーーーー。よし復活」
「ホッ。では、話を続けましょう」
とアフィマが仕切りなおし。
「まず、エムイさん。貴方に告白した方ですが、いきなり結婚まで話を進めるのはいかがかと思いますわ。それに、エムイさん自身のお気持はどうなのですか?」
と問い掛けるユリアに、エムイは腕を組んで考える。
「恋とか愛って、よく解らないんですよねー。でも、告白されたことは嬉しかったのですよ。でも、あたしは相手の事をよく知らないのです!!」
と告げるエムイ。
「ま、相手がどんな人か判らんとな。お互いを知る事が大事。まずは友達から始めたらどうや? その結果、色々としる事もあるやろ? 華国の書物で『相手を知り、自分を知れば失敗の可能性は減る』とあるで」
と告げるジュエル。
「相手の事を知る。うーん。あの方のお名前は‥‥」
「名前は『トーマス・クルーズ』。年はまだ21歳の駆け出し冒険者。で、今までの経験は『ゴブリン退治』などの簡単な仕事、ちなみに職業は『自由騎士』やな」
と、羊皮紙を広げて告げるジュエル。
あんた、いつのまに?
「随分と情報がお速いのですね」
とアフィマに問われると、ジュエルは一言。
「下の情報屋さんから聞いてきただけや」
ま、そんな所でしょう。
「でも、そこまで判って居るのなら、あとはエムイさん次第ですよ」
とアフィマが告げる。
「そ、そうですね‥‥では、お友達から‥‥」
と決断するエムイ。
「では、ここからは私の出番ですね。ジプシーという立場上、色恋ものの話は多く知っています。それらの中から、イロイロと‥‥」
と助言を開始するアフィマ。
「まず、恋愛成就10ヶ条のひとーーーつ。『無理して自分を作らない』。いつも素の自分でいることです」
「素の自分‥‥うーーーーん」
頭を押さえて悩むエムイ。
「まあ、確かに普段のエムイさんは‥‥私は遠くのカウンターからしか見た事はありませんけれど、色々と一生懸命でがんばっていると思いますよ」
ユリアの助け船に、少し気を持ち直すエムイ。
「でも、少しは飾っておいてな。素でありながらも、ちょっとだけおしゃれ。恋する少女というのも演出の一つや」
と、ジュエルも助言。
「う、うん‥‥エムイがんばる‥‥」
「では、恋愛成就10ヶ条のふたーーーつ。『相手のことをよく知る』です。これはジュエルさんの情報を参考にね」
アフィマの言葉に、ジュエルが羊皮紙を差し出す。
「ま、この経歴を見て判るとおりや。どうみても『へたれ冒険者』やな。実力は中の下、人付き合いが苦手で、いつも誰かと一緒に旅をしているタイプやな。騎士やけどフリーに生きているというのは、ま、そんな所なんやろ?」
とジュエルが補則を咥えると、エムイがズーーーンと落ち込む。
「ま、まあ、ジュエルさん、そこまで説明しなくても‥‥」
とユリアが宥める。
「でも、駆け出し冒険者ということでしたら、まだ未来はありますよ」
「そ、そうですよね‥‥」
ユリアの言葉に少し元気を取りもどすエムイ。
「まあ、それはお付き合いしてから色々とね。続いて、恋愛成就10ヶ条のみーーーっつ。『相手をその気にさせ続ける』。これはちょっと難しいかも知れませんけれど、男って単純ですから、多少イメージと違ってもイメージ通りに育成してあげればいいのですよ」
と告げられると、エムイが3人をじっと見渡す。
「そ、そうですよね。相手をその気に。これって『大人の魅力』とかですか?」
と皆に問い掛けるエムイ。
──肩ポム
「ま、まだ未来はあるで、エムイさんがツルーンペターンでも、それはやがて大きくなるで。うちの知っている物語でも、ツルーンペーターンの少女は、それを意中の殿方に揉‥‥モゴモゴモゴモゴ」
ジュエルの言葉を両手で止めるアフィマ。
「ま、まあ、エムイさんなりの魅力で充分とおもいますよ」
とむ、ユリアが話を流す方向で説明。
「あたしなりの魅力かぁ♪〜」
お、それとなく元気を取り戻してきたエムイ。
「では、恋愛成就10ヶ条のよーーっつ。『できるだけ話す機会をたくさん持つ』これはですね、会う機会が減って、気持ちが離れるなんてことよくあるケースなのです。そんなことにならないように‥‥」
と告げるアフィマだが。
「相手は冒険者、貴方はギルドの受付嬢。出会う機会はそこそこにありますね」
とニッコリ告げるユリア。
「そうですよねー。そこは強みですねー」
と、かなり気をよくするエムイ。
「では引き続き。恋愛成就10ヶ条のごーっ『別れる時はびしっと』。相手がエムイさんの好みで無かった場合は、速やかに『相手の為にきっぱりと』別れを告げてくださいね。それがエムイさんのステップアップの為でもありますから」
その言葉には、ユリアとジュエルの二人も腕を組んで肯く。
「まあいろいろとありますが残りはすっぱりと飛ばして恋愛成就10ヶ条の10。『恋は探せばいくつでも転がってる。常に自分の恋を探してね』。これで私からのアドバイスはおしまい」
と告げるアフィマ。
「まあ、うちからもなしやな。これであとは、エムイさんが動くだけや‥‥」
「まずはエムイさんが一歩踏み出すこと。おちついて、勇気を振り絞って‥‥」
とジュエルとユリアも告げる。
「そ、そうですね。色々とありがとうございました!!」
と、勢いよく挨拶をすると、エムイはそのまま飛び出していった。
●そして後日談
──パリ冒険者ギルド
その日は暇だったようで。
ボケーーーーッとカウンターで受け付け業務をしているエムイ。
「あ、こんにちはー。その後どうですか?」
「例の彼との話は進展しましたか?」
「相談なら、うちらがいつでものってあげるで」
とヤってきたアフィマ、ユリア、ジュエルに、エムイが一言。
「えーーっと。お友達のままですね。今日も私にプレゼントを持ってきて、またプレゼントをとりにアビスに向かいましたけれど‥‥」
と、大量のプレゼントを見せるエムイ。
フレグランス、ブレスレット、刺繍入りのハンカチーフなどなど、様々なものを見せる。
「す、凄いじゃないですか?」
「ええ。大量のプレゼントなんて、愛されている証拠ですよね?」
「でも、悪趣味やなー」
と、止めのジュエルの一言。
その通り、アフィマとユリアは言えなかったのだが、それらのプレゼントの全てがどう見ても『悪趣味』なのである。
「え、えへ‥‥エヘヘ、コレゼンブ、カレノテヅクリナンデスヨ‥‥」
あ、エムイの魂が抜けはじめたような‥‥。
「えーっと、つまり彼は冒険者の才能を駆使して、様々なものをあつめ、それらを元に自分でプレゼントを作ってくるというまめな青年だったんやな‥‥」
──コクリ
「それでも、きっとお似合いのカップルになれますよ‥‥」
「では、私達はこれで‥‥」
と告げて、一行はその場をあとにする。
なにはともあれ、困った彼かもしれないが、エムイが彼をふっていないということは、どうやらそのようで‥‥。
──Fin