【ふらり怪盗】濡れ衣を晴らしてみよう
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:7 G 77 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:02月27日〜03月07日
リプレイ公開日:2008年03月06日
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●オープニング
──事件の冒頭
それはある日のこと。
ノルマン南方・シャルトル地方では、ここ最近『怪盗』が出没、多くの貴族が狙われ、家宝など、大切なものが奪われていってしまっていた。
・被害者A・アイリーン卿
「ええ。その怪盗は予告状を送り付けていきまして。確かに、傭兵などで屋敷の守りを堅牢なまでにしていたのですが、まんまと奪われてしまいまして」
被害:家宝の錫杖×1
一人娘の女の操
・被害者B・カイゼル卿
「まったくこまったものです‥‥これからようやく競馬が始まろうというときに‥‥ええ。うちにも予告状がとどいていましたよ。領地の有志に頼んで守りを固めていたのですが‥‥」
被害:競走馬『沈黙のサンデー』
妻の貞操
・被害者C・ロマリア夫人
「うちは夫が南方に遠征しているときに‥‥。家宝の宝剣が一振りと、それと‥‥」
頬を染めているロマリア夫人。
被害:宝剣×1
ロマリア夫人の心
・被害者D・アトマイア卿
「うちはとんでもない状態ですよ。代々我が家に伝えられし魔崩剣『ディスインテグレート』が奪われたのです。ええ。予告状もしっかりと‥‥護りも自警団に大金を払って‥‥」
被害:魔崩剣『ディスインテグレート』
3人娘全ての心
とまあ、各種被害が及んでいる為、何か手を打たなくてはならないということになっているらしいです‥‥。
●という事で
──パリ・冒険者ギルド
「えーっと、ずばり貴方が犯人ですね?」
と、依頼人である『ファンタスティック・マスカレード』を指差しつつ、ビスタ・ウィンズがそう叫ぶ。
「違いますよ。これら一連の怪盗を捕まえて、これ以上私の名前を辱められないようにして欲しいのです‥‥」
と呟くと、ファンタスティック・マスカレードは一枚の手紙をビスタに見せる。
「これは、予告状ですね。ということは、やはり貴方が犯人っ!!」
「良く見てください。名前の綴りが違うでしょう・ 私は『ファンタスティック・マスカレード』、予告状にはほら」
『ファソタスティシク・マスカレード』
おいおい。
ちなみに呼び方は、『ファソタス ティシク マスカレード』と発音してください。
「むぅぅぅぅぅ。ニセモノですか。判りました。でも、とんでもない怪盗ですね。予告状を出した家の女性全てを手込めにする、とても敏捷で進出鬼没な盗賊‥‥」
と、そのビスタの一言で、冒険者ギルド全ての受け付けの手が一斉に止まり、また動き出す。
「ファンタマさん。もう大丈夫です。犯人の見当は付きました。黒クレリックの蛮・O・ストームさんの」
──スパァァァァァァァァァァァァァァン
激しく叫ぶビスタの後頭部に、つっこみハリセンを叩き込むギルドマスター。
「では、この一件、ギルド預かりという事で‥‥」
ということで、どうやら依頼は成立。
そしていよいよ、怪盗退治のエキスパートを召喚することとなったのだが。
●リプレイ本文
●まずは裏を取る
──パリ・冒険者酒場マスカレード
アンリ・フィルス(eb4667)は盗まれた物品などの調査を行う為、1度情報屋のミストルディンの元を訪ねていた。
「盗品ねぇ‥‥。あ、そうそう。このリストに載っているかしら?」
カウンターでミストルディンがそう呟きつつ、数枚の羊皮紙をアンリに見せる。
「ふむ。ではちょっと拝見‥‥」
◆第30回オークション出品(一部)
・魔法物品『オーグラパワーリング』
・魔法物品『大天使の翼』
・激レア『人語を解するオーガ・ギュンター君の彫像』
・刀匠マイセルン作『バトルソード』
・『ワルプルギスの紋章剣・黒曜』
・『竜騎士カリバーンの靴』
・『狂戦士ワイルズマンの大斬馬刀』
・出所不明『未解読の謎の写本』
etc
「‥‥ミストルディン殿。ここの『カリバーンの靴』というのは?」
「剣士カリバーンの7武具の一つですね‥‥こっちはプロスト辺境伯城から盗まれたらしいギュンター君そっくりの彫像。まあ、本物かどうかは解らないけれどね‥‥」
と告げるミストルディン。
「すまぬが、このオークションの参加はどうすればよいので?」
「裏会員の証が必要ですね。シーフギルド発行で、それも『裏の身分』がしっかりしている人、シーフギルドのパトロン、好事家な貴族などにのみ発行されているわよ。今はあたしも一枚持っているけれど」
と呟く。
「この会場につれていっては貰えぬか?」
「それはまあ、別に構わないけれど。開催が3月15日だからまだ先。その時期になったらここにきてくれればいいわ」
と呟く。
そして最後に一言。
「このオークション会場では揉め事は一切禁止。裏稼業が集っているんだから、命を取られても責任はもてないわよ」
その言葉に、アンリは静かに肯いた。
「では、今度は私から。今回のニセ仮面について、その手口とか仲間とかについて色々と教えて欲しいのだが」
そう告げるのはガルシア・マグナス(ec0569)。
「手口ねぇ。食事に何か薬を混ぜて眠らせたとか、他で大きな騒ぎを起こして陽動したとか、そういうかんじね。仲間については解らないわ。目撃者が女性達ばかりで、しかも『ファソタスティシク』本人しか見ていないらしいてから」
と告げるミストルディン。
「つまり、手口については様々で、仲間の存在については確認されていないということか?」
「そう。怪盗らしいでしょう?」
とにこやかに告げるミストルディン。
「不謹慎だな。まあ、それもミストルディンらしいということか‥‥」
と告げて、ガルシアは店を後にした。
──パリ・冒険種ギルド・受付カウンター
「あら? 随分とご無沙汰していましたねー」
と笑顔でサラサ・フローライト(ea3026)に話し掛けているのは受付嬢の『ニア・ウィンズ』。
「最近になって戻って来た。それよりも、この依頼に付いてだが‥‥」
そう告げると、サラサは今受ている依頼書をカウンターに提出した。
「この件だが。以前の被害は予告状通りの日程で行われたのか? 目撃しているだろう女性達から外見の証言は出ているのか?」
と質問する。
「あ、その件ですね。ちょっとお待ちくださいね‥‥」
と告げて、ニアは資料を奥から持って来る。
「これですね。依頼に関しての資料は、依頼書に書かれているものだけではありませんからね。まあ、全て書きたくても書けない場合や、細かい部分についてはギルドに詳細が届いている場合もありまして‥‥まあ、総ての依頼ではないですけれど‥‥」
と独り言を呟いて、ニアが詳細の記された羊皮紙を取り出す。
「ええ。過去のすべての被害は、予告した当日に実行されていますね‥‥目撃者である女性からの被害報告と、人相書きもこちらに‥‥」
と手渡された人相書き。
──ポッ
「あ、あら‥‥意外といい男だな‥‥」
ちょっとだけ頬を染めるサラサ。
「まあ、これは受け取っていっていいんだな?」
「大丈夫ですよ。保存用はちゃんととってありますから‥‥ではいってらっしゃいませ」
ということで、サラサは資料を受け取って皆の元に合流。
●ということで‥‥
──シャルトル・ソトース領
「‥‥では、よろしく御願いします‥‥」
ソトース領内のソトース家。
その今で、冒険者一行は今回狙われているヨグ・ソトース卿の元で挨拶をしていた。
簡単な話のあとで、狙われているらしい娘二人と夫人、そして本来の目的であろう『幸運剣』を見せてもらっている一行。
「失礼します。実は御願いが‥‥」
と話を持ち掛けたのはクァイ・エーフォメンス(eb7692)。
「ああ、なんだ?」
そう告げると、ソトース卿はクァイの言葉に耳を傾る。
「この『幸運剣』のレプリカを作りたいのだが、どうだろうか?」
そう告げるクァイに、ソトース卿は少し考えてから一言。
「夕方までに仕上がりますか?」
「ああ。街の工房に話を通してくれれば大丈夫だ」
「では御願いしましょう。『幸運剣』をこの屋敷から外には出したくないので、詳細を写し取っていってください」
その言葉に、クァイは羊皮紙に『幸運剣』を模写し、早速街の工房にむかっていった。
「なら俺からも。俺達が護衛をしている間、ここの食事は俺に作らせてくれないか?」
そう話し掛けたのはカンター・フスク(ea5283)。
「というと?」
「食事に何か薬を混ぜられる可能性があるだろう?」
「ああ、なるほど。では、そちらの手配も御願いします。執事長、彼を厨房に案内してください。それと今の話をコック長に通しておいてください」
と告げられて、カンターはそのまま厨房に移動。
「では、これより護衛を開始します。この幸運剣は普段はどちらに?」
と問い掛ける虚空牙(ec0261)に、ソトース卿は静かに一言。
「普段は私の寝室に飾ってあります」
「では、ソトース卿は、今晩はそちらで剣と一緒に。奥方と娘さんは夫婦の寝室で、そちらは女性達が護衛を務めます」
ガルシア・マグナス(ec0569)がそう告げる。
「わかりました。では、そのように御願いします」
ということで、いよいよ護衛が始まった。
●大捕り物
──ヨグ・ソトース宅
夜。
静かなディナーの時間。
「あー、今宵のメニューは鴨の香草包み蒸し焼きノルマン風味、季節の野菜のスープ、チーズをふんだんに使ったパン、温野菜のサラダ、ワインは去年収穫された上品を2種類、デザートに林檎のタルトってところだな‥‥」
丁寧に並べられた料理の解説をしているカンター。
そのどれもが、彼自慢の逸品ばかり。
料理中はフィーネ・オレアリス(eb3529)に同席してもらい、周囲を警戒。
どこで薬を盛られるか判らない為、徹底していたらしい。
「ふむ‥‥いい腕だ。この腕なら、冒険者を辞めても十分に生活していけるだろう」
その言葉に、カンターも静かに肯く。
「本当にいい腕だ。久しぶりに美味しいものを食べたような気がする」
サラサもそう告げて、スープのおかわりを所望。
「でも、女性としてはちょっと悔しいものもありますわ‥‥とくにこのサラダの彩り、そうそううまく火を通す事はできませんわ」
フィーネもそう告げる。
あ、ちなみに男性陣は黙々と食事を続けつつも、周囲に気を配っている為、会話の暇などない模様。
それもそれでよし。
──夜
月が昇り、夜の帳もすっかり降りている。
昼間のうちに襲撃対策は万全に行ない、女性用寝室にはサラサとフィーネ、クァイが詰めている。
ヨグ卿の寝室には、現在カンターとアンリ、ガルシアが警護に、屋敷内見回りに空牙とカイザード・フォーリア(ea3693)が付いている。
このまま何事もなければ予告は果たせず、ターゲットを護りきった事になるので依頼は遂行されるのだが‥‥。
──巡回班
怪盗の予告ということもあり、屋敷の中は彼方此方に御衛士の姿が見えている。
「今の所は無事のようだな‥‥」
そう呟きつつも、建物の外を警戒している空牙。
「さあな。そうとも言いがたいが?」
と呟くと、カイザードは素早くダガーを引抜き、身構える。
その動きに合わせて、空牙もまた構えを取る。
「そんな所に隠れていないで、出てきたら如何かな?」
そう呟くカイザード。
──スッ
と、二人の眼の前に、同じく二人の人物の姿が浮かび上がる。
どちらも皮鎧を身に纏い、ナイフを片手に身構えている。
「どうして判った?」
そう問い掛ける賊の一人に、カイザードは一言。
「隠していても、その殺気は明らかに我々に対してのもの。その程度のことに気付かないほど、鈍い冒険者ではない‥‥」
「ということで、久しぶりに『全力』で暴れさせて貰うぜ!!」
と告げて、二人は交戦状態に入った!!
──一方、ヨグの部屋
ドンドンドンドン
扉を叩く音。
「‥‥何かあったのか?」
と、扉越しに外に向かって問い掛けるアンリ。
「只今玄関で、盗賊の一味と思われる者二人と巡回中の冒険者が交戦中です!! こちらは大丈夫ですか?」
と叫ぶ声がする。
「‥‥」
「‥‥」
ふと、アンリが後ろを振り向く。
その動きに肯いて、ガルシアとカンターがヨグ卿の側に移動。
「ああ、こちらは大丈夫でござる。それよりも玄関の方はどのような情況か見てきてほしいでござる!!」
「了解しました!!」
と返事をしたのち、扉の外の人物の足音が遠くに消えていく‥‥。
(囮か? それとも本物か‥‥)
ふとカンターが冷静に考える。
アンリは扉に耳を当てて、外の様子をじつと聞いていた。
──そのころの隣の部屋
「何か、外の様子が騒がしいですね‥‥」
と夫人が呟いて、扉に向かって歩いていく。
「お待ちください。それは私達が‥‥」
と告げると、サラサが扉に向かう。
そのタイミングで、誰がか扉の外を走りぬけていく音を感じた。
(外で何かが始まっているのか‥‥)
扉を開ければ情況は確認できる。
だが、そうすると何者かが室内に侵入してしまう可能性もある。
そとを巡回している班がなにか吉報を持ってくるのを今はじっと耐えているしかない!!
──再び玄関付近
ガギィィィンガギィィィィン
激しく撃ち鳴る剣戟の響。
カイザードと賊の腕はほぼ互角、ともにナイフを使っての攻防が繰り広げられている。
一方の空牙はというと、相手の攻撃を素早く躱わしつつ、次々と賊の体内に『爆虎掌』の衝撃をたたきこんでいく!!
「貴様程度の賊に、朧拳は必要ない‥‥」
そう呟いて、止めの一撃を顔面に叩き込む空牙。
そのまま素早く賊を縛り上げると、カイザードの加勢に入った!!
──その頃のヨグの部屋
ドタタタタタタタタ
廊下を賭けてくる足音が聞こえる。
そしてそれは、ヨグの部屋の前で立ち止まると、ふたたび中に向かって叫ぶ。
「現在、巡回班の方と侵入した賊が交戦中。で、賊の一人は武道家に囚われ、もう一人は現在互角の戦いを繰り広げています‥‥」
と告げる御衛士の声。
「扉の外の御衛士、君から見て、援護は必要か?」
そうガルシアが問い掛けると、扉の外の御衛士は一言。
「それは必要ないでしょう。実力派均衡していたものの、今現在は二対一。冒険者優勢です‥‥」
という声を着き、カンターもひとまずホッとする。
「ということで、今回のこっちの作戦は失敗だぁぁぁね。悪いけれど、これで失礼するよん☆」
突然外の御衛士の声が変わる。
その刹那、アンリは扉を開けて飛び出そうとするが、扉がひらかない!!
それどころか、扉の隙間から煙が侵入してくる。
「貴様が変態仮面かっ!!」
扉に向かって体当たりをするアンリ。
「にょほほほほほほ。ご名答。この勝負、俺達の負けということだ。まあ、いつかリベンジするからたのしみに待っていろよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
と、声がフェードアウトしていく。
──ダン!!
やがて扉を破壊して外に出るが、すでになにも残っていない。
玄関で戦っていた二人も、突然の煙に視界を奪われ、気が付くと縛り上げていた賊の姿も消えていた。
さすがは怪盗というところであろう。
なにはともあれ、無事に奥方と娘、そして『幸運剣』は朝まで護りとおされた。
そしてそのまま別れを告げると、一行はそのままその場をあとにした。
●そして
──冒険者酒場マスカレード
今回の一件、無事に護りとおすことは出来たものの、敵の実力がある程度見えてきた。
「かなり手練れのナイフ使いだったな‥‥流派は解らないが、接近戦闘に熟練している」
「それは同感だった。体裁きなどから、我々のような武術ではない。もつと西洋剣術に熟達しているとおもう」
カイザードと空牙がそう告げる。
「逃走時に使っていたのはスモークフィールドか、それに近い魔法だと思う。影を見失ってしまったので、あれ以上の追跡は出来なかった‥‥」
サラサの言葉に、一行は静かに肯く。
「まあ、それでも剣は護りとおせたし、結果オーライということでいいんじゃないか?」
クァイがダミーの『幸運剣』を手にそう呟く。
「それにしてもいい出来だな‥‥ちょっと見せて欲しい」
と告げるカンターに、クァイが剣を手渡す。
──スルッ‥‥
柄から引き抜いた剣の刀身。その輝きまで本物そっくりである。
「寸分たがわず完成。でも、それは刃がついていないから切れないよ」
と告げるクァイの言うとおり、まったく切れない。
「それでも、またきっと仕掛けてきますよ‥‥その時は?」
そう告げるフィーネに、一同は一言。
『叩きのめす!!』
──おあとがよろしいようで。