【ウィザード・李】リベンジ

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月09日〜03月19日

リプレイ公開日:2008年03月16日

●オープニング

──事件の冒頭
 とある日の冒険者ギルド。
 ベテラン受付嬢のペリエ・ウィンズはのんびりとした時間を過ごしている。
 一通りの雑務を午前中に終えて、午後最初にカウンターを訪れたのは、シャルトル地方のエルハンスト・ヨハネス卿であった。
「依頼を御願いしたい。先日盗まれた家宝の『聖なる護符』を、アビスに立てこもっている李興隆からとりかえして欲しい‥‥」
 そう告げると、金貨の詰まった袋を一つ、カウンターに置く。
「依頼内容は先日に続き。今回も目的地は『真アビス』でよろしいですね?」
「ああ。では早急に頼む」
 と告げると、ヨハネス卿はそのまま立ちさって行った。

‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥

「李興隆ねぇ‥‥」
 ギルドの依頼掲示板を見つめつつ、フードを深々と被った人物が静かに呟く。
「華国の賢者か。そんな奴があいつの配下というのも、信用できないが‥‥動く必要があるな‥‥」
 と、横に立っていた長身の女性が呟くと、二人は静かにギルドを立ちさって行った。


●賑やかな情報屋
──シャルトル・アビス外『限界バトル亭』
 ザワザワとざわめく酒場内。
 そこにはアビスに挑んだ大勢の冒険者や賞金稼ぎなどが集っている。
 新しくなったアビス。
 その攻略の為の情報を交換しているらしいが、その交換自体も一筋縄ではなく、かなり難しいものもあるらしい。

「第8回廊最初の『突破の扉』の鍵売るよー。一本1500G」
「第21回廊の鍵穴の指輪の情報売るよー。1200Gでどうだ?」
「回復魔法いりませんかー。一人一回1Gでいかがですかー」
「第4回廊の奥に在った死体についての情報あるよー。800Gでどうだー?」
「第2回廊最後の扉の攻略ありますよー。2500Gで突破可能!!」
 
 などなど、様々な話が盛り上がっている。
 さて、そこの酒場ではアビスにやってきた冒険者にたいして宿を提供している。
 食事2食込みで一晩1G。
 これを高いと取るかどうかは、貴方たちの懐次第。

●今回の参加者

 ea2454 御堂 鼎(38歳・♀・武道家・人間・ジャパン)
 ea3026 サラサ・フローライト(27歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea3693 カイザード・フォーリア(37歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea4004 薊 鬼十郎(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ec0569 ガルシア・マグナス(59歳・♂・テンプルナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ec1942 ミケヌ(31歳・♂・カムイラメトク・パラ・蝦夷)

●リプレイ本文

●ダンジョン生き字引
──パリ・冒険者酒場マスカレード
「‥‥」
 静かに写本を見つめるクロムウェル。
 いつものようにいつもの席で、写本の解読を行なっていたクロムウェルの元を訪れたのはガルシア・マグナス(ec0569)。
 彼女の持つ『写本』に、アビスについて新しい地図か何かが浮かび上がっていないかを確認しにやってきていた。
「どうだ? 何か判ったか?」
 ガルシアがそう問い掛けたとき、クロムウェルは静かに呟く。
「幾つかだけ‥‥例えばここの部分ですけれど‥‥」
 と告げて写本の一部をなぞりつつ説明する。
 以下に、それらの記述を説明しよう。

・回廊No1〜12には、それぞれ鍵となる指輪が存在する。
 順に『白羊宮の鍵』『金牛宮の鍵』『双児宮の鍵』『巨蟹宮の鍵』『獅子宮の鍵』『処女宮の鍵』『天秤宮の鍵』『天蝎宮の鍵』『人馬宮の鍵』『磨羯宮の鍵』『宝瓶宮の鍵』『双魚宮の鍵』以上である。

・回廊No13〜16には、それぞれ鍵となる『精霊の彫像』が存在する。
 順に『炎の彫像』『水の彫像』『風の彫像』『大地の彫像』である。

・回廊No17〜19には、それぞれ鍵となる武具が存在する。
 順に『命の剣』『心の楯』『魂の兜』である。

・回廊No20〜24には、それぞれ指輪をあてはめる扉が存在する。
 それらは全て、第一回廊最下層に記されている4枚の『黒曜石の石碑』に記されている謎を解くことで、正しい扉が開かれる。

・全ての回廊は、4つの『試しの扉』が存在する。それらの『試し』をクリアしなければ、扉は開かない。

・いずれの回廊でも、最初の『試しの扉』を通り抜けるためには『レンジャー』が必要である。

「‥‥というところですけれど‥‥」
 そう告げるクロムウェルに、ガルシアは頭を抱えてしまう。
「参った‥‥そのレンジャーが、今回は一人もいない‥‥」
 しばし考えた後、ガルシアはミストルディンにフィームの家を訪ね、クロムウェルの護衛を頼もうとしたのだが。
「フィームさん、今、パリにいないわよ?」
「何処に向かったか判るか?」
「さぁ‥‥そこまでは。ノルマンにはいる筈なんですけれど‥‥」
 ということでフィームは消息不明というか、旅の最中の模様。
「次は私の番だな‥‥」
 と告げるのはサラサ・フローライト(ea3026)。
「あらあら、随分とご無沙汰で。サラサさんはどのような?」
 と懐かしそうに告げるミストルディンに、サラサは静かに話し掛ける。
「過去に、アビスがこのように変貌したという前例は?」
「ないわね。以前は入り口が『生者の扉』『死者の扉』の二つだったのが、『死者の扉』は消滅し解放されたまま。あとは様々な冒険者が回廊の謎を解析していた所ですから。もうね。解析専門の冒険者さんたち涙目ね」
 と笑いつつ告げるミストルディン。
「頼みがある」
 と告げるのはカイザード・フォーリア(ea3693)。
「微力だが紋章剣を競り落とす事があれば、一助にでも」
 と告げて、ミストルディンに150Gの入った袋を手渡す。
 だが、きょとんとした表情でミストルディンはしばし考え、またその袋をカイザードに戻す。
「偽物に150Gは高いでしょう?」
「偽物? どうして確信できる?」
 と告げるカイザードに、ミストルディンは説明を開始。
「この資料では、紋章剣の種別は『闇』。過去に作り出された紋章剣の中には、『闇』の属性剣は存在しないのよねぇ‥‥つまり、まったくの偽物か、だれかが作った廉価版。そんなものにお金出すのかしら?」
 と告げる。
 紋章剣訓練生でもあるカイザードは、その言葉に安堵。
「そうか。ならいい‥‥」
「大体、現存する紋章剣はマスター・オズの元に、新しく作り出された紋章剣はマイスター・クリエムの元に、当然作り出された紋章剣には『属性なし』。ということよ」
 その言葉で、カイザードもようやく落ち着けた。
 と言うことで、一行はアビスに向かい、仲間と合流することにしたらしい‥‥。



●アビスよいとこ1度はフベシッ!!
──アビス外・酒場『限界バトル亭』
「乾杯!!」
 大勢の酔っぱらいが一つのテーブルを囲み、杯を手にいっきに酒を飲み干す。
「グビグビグビグビッ‥‥プハーー。旨しだねぇ」
 愉しそうにそう告げると、手酌で酒を杯に注ぐのは御堂鼎(ea2454)。
 飲んで飲んで飲ませて飲んで、そうして冒険者の舌を滑らかにし、情報を色々と得ようという魂胆であろう。
「で、そろそろ吐いちまいなよっ。アビスのそれぞれの回廊に、古代魔法語や精霊碑文学に関わる謎かけやトラップ、仕掛けはあるのかい?」
 そう問い掛ける御堂に、酔っぱらい冒険者は順にこう告げる。
「どの回廊にも必ず存在し、半端な知識や経験では、『試しの扉』を越えられないぜっ」
「そうそう。まずトラップ解除は必須。扉に刻まれた『古代魔法語』や『精霊碑』の解読、さらには『回廊内を充満する、長さ400mの水路』とか、『果てしなく滑らかな壁を昇る』とか‥‥」
「俺の仲間たちは、『物音を立てずに先に進め』で失敗して、第六階層に強制転移されちまったからなぁ‥‥何人かは『石の中』に飛ばされちまって‥‥」
 などなど、とんでもない情報が盛り沢山。
「ヒック‥‥あんがとねー」
 と酔い鳥千鳥でふらふらと、御堂は仲間たちの元に向かっていった。

──その頃の鬼十郎・馬小屋
 『限界バトル亭』は宿屋兼業。
 アビスを行き来している冒険者達が寝泊まりしているのであるが、ここがまた値段が高い!!
 最高級な部屋の代金は一拍なんと1G。
 どこのブルジョワ冒険者が止まっているのか知らないが、そこに止まれない冒険者はエコノミー室や大部屋など、安い所に寝とまりしている。
 で、お金が無い奴は『馬小屋』に寝泊まりしているらしい。
「おお、これは気が利くねー、お嬢さん」
「いえいえ、どうぞどうぞー」
 と手料理&安く買い叩いたお酒を差し入れする薊鬼十郎(ea4004)。
 うまく仲良くなって、情報ゲットというところである。
 そして色々と話を聞いていると、以前鬼十郎が得た情報は殆どみなが知っているものばかり。
「第8回廊はアンデットの巣窟だったかな」
「一桁台はかなり危険らしい。ナンバーが多くなるほど安全らしいけれど、これも噂という事で」 
 などなど、有益な情報をゲットしてきた鬼十郎であったとさ。

──その頃のカイザード・周辺宿屋
 限界バトル亭以外にも宿は存在する。
 それらに寝泊まりしている冒険者にコンタクトを取り、色々と情報を得ているカイザード。
 まあどれも他愛のない情報ばかりだが、問題となる情報が一つ。

『アビス内を、アサシンガールが徘徊している』

 という噂である。
「具体的には? なにか些細な事でも構わない‥‥」
 と問い掛けるカイザードに、その冒険者は一言。
「これも又聞きだけど。そのアサシンガールが現われる頃には、どこからともなく『鈴の音』が聞こえてくるんだ‥‥」
 というものであった。
 


●アビス突入
──第六回廊
 さらに一行は情報を得る為に走る。
 以前噂にあった鍵などの情報も、皆の持っている情報との交換で、ここまで揃った。

・第8回廊最初の『突破の扉』の鍵売るよー
→突破の鍵はすなわち『レンジャーの掌』。それを扉にかざすべし

・「第21回廊の鍵穴の指輪の情報売るよー
→12宮の指輪と精霊の指輪が必要。何がどれだけかは不明

・第4回廊の奥に在った死体についての情報あるよー
→額に符が張付けられている事からキョンシーと判明。かなりのベテラン冒険者らしく、コナンの使い手。一定の距離に近寄ると自動攻撃。

・第2回廊最後の扉の攻略ありますよー
→この情報屋は、先日宿屋で暗殺された

 ということで。
 これに咥えて、各自で得た情報がこちら。

*御堂
・流派としては華仙教大国系の技を使うキョンシーが多い
・少女の姿の暗殺者が多数存在

*サラサ
・李氏の目撃情報はない。

*カイザード
・ヨハネス卿が『李興隆』の所持品を持っていない為、犬での追跡は不可能。
 加えて、回廊にペットを連れていった場合、それらのペットは悲運な最後を遂げるらしい。
(もっとも、小型のペットで無ければ、アビス入り口を通ることは出来ない)

*鬼十郎
・ここに来る前にヨハネス卿から得た話では、護符の今までに判っている使いみちは以前説明しただけである。
・アビス内各地にて、『エムロード』『双子のアルジャーン』の目撃情報あり。

*ミケヌ(ec1942)
・第六階層で待機している数名の『フリーのレンジャー』確認。
 彼等はトラップ解除などを『売り』として生計を建てているらしい。
・過去のアビスについての情報を持っているレンジャーとの接触は成功。かれらの話では『今までの常識では計り知れないトラップばかり』との事。
・第4回廊のマッピングの写しは一枚500Gで販売していた。当然買えない。

「‥‥随分だぁね‥‥」
 そう告げつつ、御堂が酒を飲む。
「いずれにしても、今説明したとおり、今回はここにレンジャーはいない。行ける所まで進むしかないというところであろう‥‥」
 と告げるガルシアに、一同は肯く。
「で、問題は、どこの回廊に進むかだな」
「今の所、ナンバーが高くて普通に入れる場所が、もっとも安全という事で‥‥19番ですか?」
 そう問い掛ける鬼十郎。
「それが一番安全そうだな‥‥」
 そのサラサの言葉に、一同は納得。
 そしていよいよ、新しいアビスに突入することとなった。



●トラップというよりは敵が強杉大杉
──19番回廊
 まずは一通りの準備。
 松明やランタン、ポーション等の本数チェック。
 先に潜入して帰ってきたらしいパーティーが回廊入り口そばで一休みしていたので、そこから情報をゲット。
 内部はアンデッドの巣窟で、それも数で攻めてくるという始末に負えない場所らしい。
 ということで、一行は準備を整えると、早速突入することにした。

〜〜〜図解〜〜〜
・上が先頭になります
・アビス内部での灯は御堂とカイザードが担当
・マッパーは鬼十郎が担当
 トラップ関係はミケヌが担当
・戦闘時はサラサを中心に戦闘形態を展開
・また、必要に応じて各員が松明の準備


     ミケヌ カイザード
     鬼十郎 サラサ
       鼎 ガルシア

〜ここまで

 ということで、早速出発した一行ではあるが‥‥

──第25階層
「はあはあはあはあ‥‥」
 全身が汗まみれ。
 ただひたすら武器を振るい続け、前に進みつづけてすでに4時間。
 この間、休息なし。
 ただひたすら、奥から湧き出るアンデット達を駆逐し、前に進んでいくだけ。
 前列のミケヌは後方に下がり、鬼十郎とカイザードがひたすら戦いつづけている。
「も、もう限界‥‥御願いします!!」
 と叫ぶ鬼十郎。
「こっちもだ‥‥ガルシア、前後入れ代わる!!」
 カイザードも叫ぶと、パーティーの前衛と後衛が入れ代わった。
「少し休んでくれ。あとは引き受けた!!」
 と叫ぶと、ガルシアがオーラパワーを付与したヘラクレスの剣を振り回す!!
──ズバズバズババババッ
 次々とアンデッドの体が千切れ、道が開ける。
「ふぅぅ。いい感じだねぇ☆」
──スパパパパーーーン
 ふらふらとした酔拳特有の千鳥足で、目の前のアンデッドに連脚を叩き込む御堂。
「‥‥どうみても、ただの酔っぱらいのようだが‥‥」
 と呟くサラサに、御堂は振り向きつつ呟く。
「ヒック‥‥それが酔拳だよっ‥‥と」
──ドゴッ
 振り返り様に、襲い来るアンデットに肘を叩き込む。
 そのままショートの肘連打。
 さらに勢いの付いたガルシアも、どんどん敵を薙ぎ払いつつ前に進む‥‥。

 そして、第32回廊の『試しの扉』に到着すると、そこに刻まれている手形に、ミケヌが手を振れる。

『汝、ここを通る資格なし‥‥悔い改めて、再び参れ‥‥』

 と全員の脳裏に言葉が響く。
 そして気がつくと、一行は第六回廊中央にポツーンと立っていた。


 そのまま何度かのチャレンジののち、やはり『レンジャー』は必須ということまで確認できた一行は、そのまま今回も奪回失敗の報告を行なってから、パリへと帰っていった。


──Fin