【ふらりトレハン】真アビスに潜ってみよう

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:5

参加人数:9人

サポート参加人数:1人

冒険期間:04月08日〜04月18日

リプレイ公開日:2008年04月15日

●オープニング

──事件の冒頭
 現在。
 大勢の冒険者が集って、幾度となく突撃を繰り返しているアビス。
 そこには、様々な思惑が集っていた。

 一攫千金を求めるもの
 名声を上げようとがんばっているもの
 集ってくる冒険者相手に商売をしているもの

 そして

 犯罪を犯し、ここに逃げてきたもの・・・・

 そんなものたちが集まり、ここに潜っている理由は様々です。
 さて、貴方はここに、どんな理由で潜るのですか?


●現在までの情報
注)ここに記されている情報は、冒険者ギルドの報告書および第六階層にて得られるものである。
 もし情報を使うのであれば、冒険者酒場にて『先人達』に告げてください。
 彼らの努力失くして、これらの情報は得られなかったのですから・・・・


・回廊No1〜12には、それぞれ鍵となる指輪が存在する。
 順に『白羊宮の鍵』『金牛宮の鍵』『双児宮の鍵』『巨蟹宮の鍵』『獅子宮の鍵』『処女宮の鍵』『天秤宮の鍵』『天蝎宮の鍵』『人馬宮の鍵』『磨羯宮の鍵』『宝瓶宮の鍵』『双魚宮の鍵』以上である。

・回廊No13〜16には、それぞれ鍵となる『精霊の彫像』が存在する。
 順に『炎の彫像』『水の彫像』『風の彫像』『大地の彫像』である。

・回廊No17〜19には、それぞれ鍵となる武具が存在する。
 順に『命の剣』『心の楯』『魂の兜』である。
・回廊No20〜24には、それぞれ指輪をあてはめる扉が存在する。
 それらは全て、第一回廊最下層に記されている4枚の『黒曜石の石碑』に記されている謎を解くことで、正しい扉が開かれる。

・全ての回廊は、4つの『試しの扉』が存在する。それらの『試し』をクリアしなければ、扉は開かない。

・いずれの回廊でも、最初の『試しの扉』を通り抜けためには『レンジャー』が必要である。

・第1回廊・『第二番の試しの扉』は、精霊力によって解放されるが、その先の空間は『精霊力遮断空間』になっているらしい。

・第2回廊・『第二の試しの扉』の先は、『完全武具無効化空間』というものが存在する。そこでは、全ての『物理的攻撃』が無効化されるるらしい

・第3回廊の二番目の『試しの扉』は、純粋にトラップと鍵によって閉ざされているが、これは敏腕レンジャーなら解除可能

・第4回廊・二番目の『試しの扉』は、神聖力によって解放されるが、その先の空間は『神聖力遮断空間』になっているらしい

・第5回廊の二番目の『試しの扉』に向かうには、『高さ、幅共に1mの回廊』を突破しなくてはならない。

・第6回廊・『第二の試しの扉』に向かう為には、長い階段を下り、そこから『回廊内を充満する、長さ400mの水路』を越えなくてはならない。その先の水中に、『第二の試しの扉』が存在する

・第7回廊・『第二の試しの扉』を突破する為には、その手前に在る、『果てしなく滑らかな壁を昇り、そこの天井にあるレバーを倒す』必要が有る。そこは精霊力が遮断されているので、自力で昇る必要がある。

・第8回廊第二の試しの扉には『全ての武器・防具を棄てよ』と記されている。ここでそれに従わなければ、そこから先に進んだとしても待っているものは破滅らしい

・第9回廊・『第一の試しの扉』を越えた先は『絶対無音空間』となっている。この空間で物音を立てた場合、何処かに強制転移させられる。

・第10回廊・『第二の試しの扉』は、バードとジプシー二人の歌と踊りが必要である。

・第11回廊は、最初の試しの扉を突破した先から『完全魔法無効化空間』によって形成されている。

・第13回廊・第3の『試しの扉』の正面には台座があり、『2400Gと等しい重さの物質』を載せる事で開くらしい。

・第14回廊・『第一の試しの扉』の手前には『レンジャー殺し』と呼ばれる石化トラップが仕組まれている。

・第16回廊は『第二の試しの扉』以後、3人で一つのパーティーでしか通れない

・第18回廊の奥の小部屋に、第一回廊第三の『試しの扉』の鍵が存在する

・第19回廊は、『第一の試しの扉』までは無限に出現するアンデッドとの戦いが続く。

・第20〜24回廊は、入り口が巨大な石壁によって閉ざされている。その壁には『24の指輪』を填める穴が存在している。

・第一の黒曜石の碑文
 第21回廊最初の扉の解除方法
『対となるものが指輪を填めよ、そして扉に順に手をかざせ・・・・』

●今回の参加者

 ea1628 三笠 明信(28歳・♂・パラディン・ジャイアント・ジャパン)
 ea2454 御堂 鼎(38歳・♀・武道家・人間・ジャパン)
 ea5298 ルミリア・ザナックス(27歳・♀・パラディン・ジャイアント・フランク王国)
 eb5757 エセ・アンリィ(39歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ec0261 虚 空牙(30歳・♂・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ec0501 フォルテュネ・オレアリス(30歳・♀・僧侶・エルフ・イスパニア王国)
 ec0569 ガルシア・マグナス(59歳・♂・テンプルナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ec1942 ミケヌ(31歳・♂・カムイラメトク・パラ・蝦夷)
 ec3793 オグマ・リゴネメティス(32歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

綾小路 瑠璃(eb2062

●リプレイ本文

●前哨戦
──シャルトル・真アビス外・『限界バトル亭』
「‥‥まあ、しばらくは予定がないから、同行してもボクは全然かまわないよ?」
 にこやかにそう告げて居るのはフリーの魔導師ミーア・クライアンス。
「なら話は早い。こっちのパーティーに入ってくれ。これでこっちは安泰というところだな!!」
 と豪快に笑いつつ、御堂鼎(ea2454)は巨大杯に華国の招興酒・老酒を注ぐと、それをミーアに手渡す。
──グビッグビッ
 それを半分まで飲むと、御堂に返杯。
──グビッグビッ‥‥ぷはーーーー
 と、それを一気にカラにスルと、豪快に笑うミーアと御堂。
 このノンベ共が。
「いずれにしても、このアビスについてはわたくし達より君の方が詳しいでしょう。よろしく御願いします」
 と握手を求めるのは三笠明信(ea1628)。
「いえいえ、こちらこそ」
 と告げるミーア。
 そして仲間たちの居る席につくと、さっそく地図を広げる。
「今回はどちらの回廊に?」
 と問い掛けるミーアに、ルミリア・ザナックス(ea5298)が静かに話はじめる。
「19回廊には我等が。18回廊には、また別の仲間たちが向かう事になっている」
「そこで、第19回廊について、色々と教えて欲しいのだが」 
 そう問い掛けるのはガルシア・マグナス(ec0569)。
「地図はこちらに。あと、詳しいトラップの配置図はミリアが」
 とミーアが告げると、雇われレンジャーのミリア・イスマイルが羊皮紙の束を取り出す。
「第19回廊でもっとも問題になっているのは、第二の試練の扉と第三の試練の扉、そしてその奥に在る『魂の兜』との共鳴ですね」
 そう告げるミリアに、ガルシアが問い掛ける。
「第二の試しの扉は?」
「『剛腕をしめせ』です。そして第三の試しの扉は『爆発的な魔力を示せ』ですから、バランスのいいパーティーでしたら、問題なく進めるかと」
 と告げるミリア。
「その魂の兜との共鳴については?」
 とルミリアが問い掛けるが、それについてはミリアは頭を左右に振るだけである。
「今だに、それをクリアしたひとはいないという話です。まあ噂ですから、私も詳しいことは判りません‥‥」
 と告げる。
「あとは、そこに至るまでの敵との遭遇ですね」
 と三笠が告げると、ミリアが一言。
「アンデッド以外の確認はされていませんから‥‥」
 との事であった。
「レンジャー殺しと呼ばれているトラップについてだが、何か対策はあるのか?」
 と問い掛けるガルシアに、ミリアは静かに頭を左右に振る。
「レンジャー自身が対毒装備を施し、仲間たちの魔法によるバックアップが必要。それ以上となると、そのトラップの属性によるわね」
「属性?」
 そうルミリアが問い返したとき、ミリアは静かに肯いた。
「ええ。トラップは大体いくつかの属性というのに大別される訳。実際には『物理毒』『物理殺傷』『魔法』の三つ、そしてそこから細かく区分される訳ね」
 と、広げられた羊皮紙に図を記して説明を続けるミリア。
「最初の『物理毒』については、各種解毒剤を用意しておく事をお薦めするわね。即死毒というのはそうそうないから、ある程度の万能毒消しで十分。次の『物理殺傷』については、防具などで身を固めて、さらに魔法で攻撃を防いだりできるようにしておく事。加えるなら、回復魔法のバックアップが必要と‥‥」
 そう告げてから一拍おいて、さらに話を続ける。
「最後の『魔法』が一番やっかいね。私達レンジャーは、魔法にはとくに強い体勢をもっていないから、魔法物品や抵抗可能な魔法をかけて貰う、もしくはスクロールによって抵抗力を高めるというのがあるけれど‥‥」
 と告げて、しばし考えるミリア。
「私の意見だけれど、レンジャーがスクロールを使うというのは間違っているわよね。魔法は魔法使いやクレリックが、戦いは戦士達、そしてトラップの解除は私達レンジャーが。それぞれ役割分担をするからこそ、パーティーというものが成立すると『私』は思っていますから‥‥」
 その言葉には重みがある。
 もっとも、職業というものの考え方が苦手な人にとっては、この意見は当てはまらない。
 魔法の使える戦士『ナイト』や『志士』といったものもいれば、スクロールを専門とする魔法レンジャーもいる。
 そして素手格闘の得意なクレリックというのも存在している以上、自分にあった個性を磨き、そこを貫くというのもまたありであろう。
「あのー」
 と、一連の会話が終ったとき、ガルシアの影からミケヌ(ec1942)が姿を現わした。
「このアビスのトラップの解除方法を色々と伝授して欲しい!!」
 そう告げると、ミケヌは金貨の入った袋をミリアに手渡す。
「皆さんはいつ頃出発しますか?」
 とミリアが改めて皆に問い掛ける。
「こっちは、いつでもおっけーだよ‥‥ヒック」
 随分と出来上がっている御堂とミーア。
「と言うことですから、出発は明日で。それまでにミーアさんのお酒が抜けるということでよろしいのでは?」
 三笠がそう告げると、一同は納得。
 酔拳使いである御堂が酔っ払っているのは『問題ない』として、常に冷静に全てを 見渡す必要のある魔法使いがへべれけというのはどうよ?
「なら、明日までミケヌは私に付き合うという事でOK?」
「それで御願いします!!」
 と高らかに告げるミケヌ。
──ガシッ
 と、突然ミリアがミケヌの手を掴むと、そのまま酒場の外に出ていった。
「ど、何処で特訓ですかー」
「アビス第15回廊『トラップの間』。そこまでは安全に進めるルートがあるから、そこでみっちりとトラップをあける練習でもしてもらいましょーかー」
 ス、スパルタ特訓が開始された模様でー。


──そのころの第18回廊チーム
「ということで、ミケヌがトラップ解除の特訓に向かったようだが」
 と冷静に話しているのはエセ・アンリィ(eb5757)。
「ええ。とりあえず私達も色々と調べられることは調べて置いたほうがいいようですね」
 と、ハーブティーを飲みつつ告げるフォルテュネ・オレアリス(ec0501)。
「なら、俺は内部に出没する敵についての情報を調べてくるか」
 と告げて、虚空牙(ec0261)もその場から離れると、その彼に続いてオグマ・リゴネメティス(ec3793)も行動開始。
「とりあえず私はここが初めてですから、皆さんのお邪魔にならないように‥‥」
 ということで、あちこちに情報収集に向かった模様。
 そんなこんなで一行が行動を開始した後、フォルテュネは賢者見習いのミーアの元に移動。
「あの‥‥アビスの中で仮面のウィザードを見掛けませんでしたか?」
 と問い掛けるフォルテュネ。
「仮面のウィザードですか。確かジェラールという高位の魔導師ですね。私が知って居る情報では、確かジェラールは犯罪組織に身を落とし、今は投獄の身であるということですが‥‥」
 と告げると、ミーアは静かにテーブルで眠りにつく。
「ああっ。ミーアさん、御願いです、もっと情報を‥‥」
 と叫ぶフォルテュネに、ミーアは寝言のように一言。
「賢人達の住まう屋敷に‥‥zzzzzzzz」
 ああっ。爆睡モード突入。
「賢人達の住まう地?」
 ふと頭を捻るフォルテュネ。
 なにはともあれ、今現在のヒントはソレしか無い為、フォルテュネはそのまま引き続き情報収集を続けることにした。



●ハードでバットな回廊
──チーム第18回廊
 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
 絶叫を上げているのはミケヌである。
 第18回廊は、最初はただの細い回廊であった。
 その先で行き止まりとなり、そこにあった扉を開いた瞬間から、一行の試練は始まった。
 扉の向こうには10m×10mの小部屋があった。
 そこの中央には台座が有り、そして小さな水晶球が安置されている。
 部屋の6方向全てに扉があり、様々な図柄が刻まれている。
 それらは全て『古代魔法語による何等かの紋章』であることは、一同が理解した。
 最初の部屋に入ったとき、ミケヌは水晶のトラップに気が付いた。
 水晶の差し出す問題、その解答がただしき道。
 そして水晶に降れたものが、解答する権利を得る。

──第一の小部屋
 ここで話を元に戻そう。
 絶叫を上げたミケヌ。
 とりあえず水晶についての謎は解読したのだが、その為に最初に水晶に触れてしまっていたのである。
 トラップとしては全く害の無いものの、次の部屋への『鍵』として存在している以上、ミケヌがその謎を解く必要が有った。
「で、その謎というのは?」
 静かに問い掛けるアンリィ。
 その間にも、オグマが扉の文字を静かに調べる。
(い、いえない‥‥初恋の女性の名前なんて‥‥)
 どうやら水晶には、降れたものの心を読み取る力でもあるのだろうか?
「あ、ああ、俺なら大丈夫。大丈夫だから‥‥」
 必死に動揺を隠しつつ、ミケヌは全て扉をじっと眺める。
 だが、古代魔法語で記されているその文字配列は、ミケヌには読めない。
「‥‥こ、これは‥‥フォルテュネ、ちょっと‥‥」
「?」
 自分を呼びさしつつ、きょとんとした表情で部屋の角で呼んでいるミケヌの元に向かうフォルテュネ。
(あ、あのな‥‥扉の文字読めるだろう?)
(ええ。古代魔法語ですので問題はありませんけれど?)
(なら、その中に(P♪〜)っていう文字はどこにある?)
 そう問い掛けられ、フォルテュネはしばし扉を観察。
「あ、ミケヌさん、あそこの文字がフガムグムグ!!」
 咄嗟にミケヌがフォルテュネの口を手で塞いだおかけでギリギリセーフ。
「ということで、ここの道はこの扉の先にっ!!」
 と告げて、ミケヌがトピラのチェック開始。
 どうやら仕掛けが無いらしく、そして噂の『レンジャー殺し』の仕掛けもないと確認すると、次の部屋へと向かっていった。

──第二の小部屋
 静かな小部屋。
 そして先程と同じ綴りの文字配列。
「お、俺は触らないからな!! 見た感じでは仕掛けは一緒だし」
 とミケヌが一歩差がってそう告げる。
「なんら、俺が‥‥」
 と空牙が告げて水晶に手を触れる。
──キィィィィィィン
 脳裏に浮ぶ言葉。
 それは、『精霊でない存在を示せ』であった。
「森羅万象、全てのものに霊は存在する‥‥が」
 ふと頭を捻りつつ答えを考える空牙。
 その間にも、フォルテュネはとある扉の手前に立って、じつと周囲を見ている。
「ああ、すまないがフォルテュネ、ここに記されている扉に記されている文字教えてくれないか?」
「ええ。ここが大地、こっちが水、そこが風、上が月、下が炎、私の前が竜ですね」
 って、解答の手前に立っているフォルテュネ。
「ならば答えはそこ、竜の扉だ‥‥」
 と告げて、空牙が扉を開く。
 そこには、新しい部屋があった。

──第三の小部屋
 静かな小部屋。
 そして先程と同じ、全ての扉に文字配列。
「では、我が輩が‥‥」 
 ということで、今度はアンリィが触れる。
 そして聞こえてくる言葉は『神ならざるものの名を示せ』であった。
「ふむふむ。フォルテュネ、すまないが扉の中で『大いなる父の御名』の記されているものはどこだ?」
 そう問い掛けられて、フォルテュネはふと周囲を見渡す。
「ここの文字配列が、大いなる父を表わしています」 
 と告げる。
「ということは、その扉以外のどれでも問題がないということか」
 と呟くアンリィ。
「ち、ちょっとまってください。アンリィさん、どういう問いだったのですか?」
 と問い掛けるオグマに、アンリィは静かに一言。
「『神ならざるものの名を示せ』だった。ということは、我が国教であるタロン以外の神は存在せず」
 きっぱりと言い切るアンリィ。
「ということは、もしその問いが俺だった場合、『ブッダ』以外は神でないと言い切れるが?」
 という空牙の言葉に、アンリもムッとする。
「つまり、ここには各国の神の名らしきものが記されているという事で、そこに当てはまらない名が、すなわち正解という事では?」
 フォルテュネの言葉に、一同が納得。
 ということで、フォルテュネがそこに記されている文字配列を書き記した。

・平和を紡ぐもの
・解脱した存在
・唯一の存在者
・聖なる母
・嘆きの川の主
・大いなる父

「‥‥これは参りましたわ」
 頭を抱えるフォルテュネ。
 どれもが神のようであり、そして神を表わしていないようでもある。
「大いなる父。そしてその対となる聖なる母は間違いなかろう」
 そのアンリィの言葉には全員が同意。
「解脱した存在は、我が祖国のブッダ。これにもまちがいはないな」
 と告げる空牙に、一応皆が納得。
「で、問題は、ここから先なんだよね」
 ミケヌがそう告げて。残った3つを示す。
「どうみても、平和を紡ぐものか嘆きの川の主だよな」
 アンリィがそう告げるが、それには空牙が反対意見。
「唯一の存在者がそうだと思う。神は眷族があり、唯一という表現はない」
「ちょっとまった、我が父は絶対なる神だ」
「けれど、聖なる母と対極ですから‥‥唯一というのには当てはまりませんね」
「でも、そうなると全ての神には眷族があり、『唯一の存在者』というのが神以外のものを示しているということですね?」
 オグマがそう纏めると、一行はそれで納得。
「では、開くぞ‥‥」

──ギィィィィィィィッ

 巨大な石の扉が開かれると、一行はそのまま目の前に広がる巨大な空間に足を進みいれた。



●ソフトでグッドな回廊
──チーム第19回廊
 この回廊にはすでに一度やってきた事がある。
 問題は大量に出現するアンデッド。
 その対応策として、とにかく各個撃破、次から次へと出現する敵を潰しつつ進むという作戦に出た。

 なお、恒例の

〜〜〜図解〜〜〜
・上が先頭になります
・アビス内部での灯は御堂とミーアが担当
・マッパーはミリアが所持しているものを使用
 トラップ関係はミリアが担当
・戦闘時はミーアを中心に戦闘形態を展開
・また、必要に応じて各員が松明の準備

     三笠、ミリア
     ミーア、御堂
     ガルシア、ルミリア

〜ここまで

 ということで、すでに突入してから1日が経過。
 ここまで休息無しの24時間戦闘モード。
 倒したアンデッドの数はすでに200を突破。
 グールやズゥンビを始めとした雑魚クラスから、名も知らない上位クラスに至るまで、実にかなりの敵を殲滅。
 但し、一行もただではすまず、すでに持ってきていた薬類は底をつきはじめている情況である。
「ふぅふぅふぅふぅ‥‥魔力限界です。もう魔法撃てません!!」
 そう中心で叫ぶミーアと、前方でただひたすらにシャクティを振回す三笠。
──ズバババババババババババババハバッ
 三笠のスマッシュ連撃がただひたすらに敵を破壊。
 仕留め損ねた奴は御堂の拳が破壊する。
 後方からの追撃にたいしては、ガルシアとルミリアの最強コンビネーションが壁となり、中央に逃げているミーアとミリアを護りつづける。
「前方、三笠っ、道はできたかっ!!」
 そう後方から叫ぶルミリアに、三笠が静かに一言。
「あの前方の‥‥あれが‥‥」
 三笠の視線の先には、漆黒の石碑が立っている。
 そしてそれは、ルミリアも知っているものであった。
「御堂、あれを先に破壊してくれ!! あれがアンデッドの発信源だっ!!」
 その言葉と同時に、ルミリアが一人で後方の壁となる。
 そしてガルシアが体勢を整えて前方に走り出すと、御堂の為の道を作る!!

──ズババババハッ

「邪魔だっ!! とっとと散りやがれッ!!」
「なんであれがここにもっ!!」
──ズバァァァァァッ
 広い空間。
 その両サイドからの敵全てをガルシアと三笠が撃破。
 そして正面に道が出来たとき、御堂が勢いよくダッシュ!!
「その鉄扇に激しい一撃を。華麗に舞いつつ繰り出される必殺の一撃!!何仙姑っ!!」
 そう叫ぶと同時に、右足を軸として御堂が素早く回転した!!

──ドゴォォォォォォッ

 その遠心力を鉄扇に乗せて、漆黒の石碑‥‥黒曜石の石碑を一撃で粉砕する。
 と、その瞬間、周囲のアンデッド達の動きが遅くなる。
「今のうちっ!!」
 そのガルシアの叫びと同時に、全員が一斉に戦闘を開始。
 やがて周囲からアンデッドの気配が全て消え去った。


●第19回廊・第一の試しの扉
──第一の試しの扉
 静かに扉に手をかざす。
 フゥゥゥゥゥンという音と同時に、扉が共鳴を開始。
「さて、それじゃああけますよー」
 と告げて、ミリアが手を当てる。

──ガチャッ‥‥ギィィィィィィィッ

 と静かに扉が開くと、眼の前に回廊が開けた。
 回廊といっても、そこにあるのは『幅50cm』ほどの細い橋。
 天井も壁もなにも見えず、橋の下にはただひたすらに暗黒の空間が広がっているだけである。
「‥‥この道だと一人か‥‥」
「そうですね。で、ここの先にも敵がでます。オーガ系ですけれど、誰が先頭に立ちますか?」
 と問い掛けるミーア。
 この幅では、戦えるのは一人のみ。
 とりあえず先頭は変わらず三笠が務める。
 そのままただひたすらに、ゆっくりとした下りの回廊をすすむ一行。
 途中途中で休みつつ、食事をとったりして体力を温存する。
 が、ミーアの失った魔力はまだ回復できない。
 このような極限状態では、安静に睡眠時間を稼ぐということは出来ない。
 そして、僅かずつの休息では、失った魔力は取り戻すことは出来ない。
 このアビスが『魔法使いに嫌われている』という理由の一つであろう。
 実際、第一の試しの扉を突破するまでに、ルミリアとガルシアのオーラもほぼ底を付いている。
 それでも、この細い回廊を突破する必要があった。
 ただ、この暗く長い回廊を進み、『魂の兜』を手に入れる為に‥‥。

──そして

 静かに進んでいくと、突然眼の前に開けた空間があった。
 石畳で出来ている直径10mほどの床。
 その表面には様々な紋様が刻まれ、そして中央には一枚の扉が立ててあった。
「それが第二の試しの扉ですね‥‥」
 そう告げるミーア。
「で、その扉の解放は?」
 と御堂が告げたとき、ミーアは一言。
「『正しき道を進みなさい。さすれば扉はひらかれん』です」
 と告げて、ミーアがてくてくと石畳を歩いていく。
 一つ一つ、足を踏込むたびに紋章が輝く。
 そして扉にたどり着いたとき、静かに扉は開かれた。
「記されている紋章は、人によって違うように見えます。その道は、貴方にとっての人生の道です。正しい道を進んでください」
 と告げるミーア。
 ミリアも来慣れたものらしく、ひょいひょいと石畳を辿っていく。
「ふむ。人生の道ということは‥‥」
 ガルシアが石畳の紋章をじつと見る。

『生まれたのはビザンチン』

 と記された石を見つけた。
「ほう。そういうことか‥‥」
 と呟いて、ガルシアはその石に足を踏込む。
 と、眼の前の石に次々と紋章が浮かび出す。
「テンプルナイトとなりて‥‥と」
 次々と石畳を歩み、そして扉にたどり着く。
「正しき道は、自分の歩んできた道か。嘘偽りさえしなければ、ここでつまづくことはないだろう‥‥」
 そのガルシアの言葉に従い、一行は進んでいく。
 そして全員が扉にたどり着くと、そのまま更に奥へとはいっていった。



●さて、ここは何処でしょう?
──第18回廊チーム・第?階層
 広い空間に足を踏みいれてから、すでに1日が経過していた。
 周囲が薄暗く、少し先まで見渡せる為、一行は交代で睡眠を取る事ができた。
 そのおかげで、失われていた魔力やオーラは回復し、再び戦闘できる状態にまで戻っていたのだが。
「‥‥ええっと‥‥ここの印はすでに12回目かな?」
 そう告げつつ、ミケヌは足元に記された『ミケヌマーク』にさらにチェックを一つ入れる。
 万が一道に迷ったときには、これをたよりにしようとミケヌが床に刻んだ似顔絵であるが、どれだけ進んでも、どんな方角に進んでも、かならずここにやってくるという状態になっている。
「方角が‥‥狂っているのでしょうか?」
 そう告げると、フォルテュネはブレスセンサーを発動する。
 だが、反応があるのは、自分達のみ。
「元の扉に戻る事も出来ず。といって先に進む事も出来ず‥‥これはどうしたものか?」
 とアンリィが呟き、さらに別の方角に進む事を提案。
 それに従って、一行はさらに別の方角に進むのだが。

──1刻後
 一行の目の前には大量の白骨死体が転がっている。
 そしてその側には、同じく大量のネズミ達がちょろちょろと走りまわっていた。
 時折ボリボリと骨を齧る音も聞こえてくる。
「‥‥どこかにこいつりの出入りしている道があるということか。だが、この死体は一体どこから?」
 そう空牙が告げたとき、上空から何かが降ってきた。

──ドサッ
 
 それは一つの死体。
 全身を包むフルアーマーに魔法の剣らしいもの、そしてバックバックといういでたちは、どうみても冒険者そのものである。

──ドサドサドサッ

 やがて次々と様々な死体が落ちてきて、白骨の上に倒れていく。
『うわわわわわっ。こ、これはどういういこと?』
 ミケヌとオグマが抱き合いながら叫ぶ。
 と、どこから発生したのか大量のネズミが姿を現わし、死体に群がって喰いはじめた。
 大量に流れるちまでもすすり、さらにはバッグバックまでも齧りつくす。
 全てのものが食い散らかされ、最後に金属聖の鎧と剣などが残った。
「‥‥死体処理‥‥ここはそういう場所ということは?」
 空牙がそう告げたとき、ミケヌが一言。
「こ、この道、ジツハマチガッテイタンダネ‥‥」
 ああっ。声が上ずってますってば!!
「さて、どうしましょう。ここから後ろに引き返しても扉までは届かず。先に進むしかありませんけれど、出られるか保証はありませんわ」
 と告げるフォルテュネに、一同が静かに肯く。
「なら、先に進むしかあるまい」
 アンリィがそう告げて、一行はさらに先へと進んでいった。


──そして

 一体どれぐらい道を進んだであろう。
 やがて奥に壁が見えたとき、一行はようやく安堵感を取り戻した。
 そこには巨大な扉が一つ。
 そしてそこにも文字が記されていた。
 それは古代魔法語。
 フォルテュネはそれをじっと解読し、そして全員に告げる。
「今から文字が浮かび上がります。それを私が読み上げるので、皆さんはそれに続いて声を出してください‥‥とかいてますね」
 そのフォルテュネの言葉に、全員が納得。
「ではいきます‥‥『私達は』」
『私達は』
 全員が一斉に声をあげる。
「このアビスから」
『このアビスから』
「帰還しますって‥‥えええ?」
『帰還しますって‥‥えええ?』

──そして全員がテレポート!!



●二つの道
──第19回廊チーム
 石畳の扉を越えて、一行は普通の通路に戻った。
 両側には一定の間隔毎に石の扉が付いている。
「‥‥ここは?」
「ここがすでに次の試しの扉です。正しい扉は一つだけ。まずは適当な扉に入ってください」
 ミーアの言葉に、一行は一番手前の扉にはいる。
 小さな石造りの部屋。
 正面には台座があり、様々な指輪が置いてある。
 そしてその手前には、プレートが一枚填められていた。

 汝、富を得るか?
 それとも禁欲なるままに先に進むか?

 そう記されているプレート。
「こ、この指輪は、ひょっとして?」
 そう叫ぶ三笠。
「そう。三笠の告げる通りだな。これはオーガパワーリングだ」
 ルミリアがそう告げつつ、全ての指輪をじっと観察する。
「ここは触れないでくださいね。正しい道は、触れずに立ち去るです。正しい扉は一つですが、それ以外の扉には、人の欲を揺さぶるような誘惑がまってますから」
 と告げる。
「ならば、扉を開いても、中を確認しないで次の扉に進めばよいのでは?」
 と三笠が問い掛けるが、ミーアが一言。
「プレートの文字を読み取る事が鍵の一つなのですから‥‥」
 と告げる。
 いずれにしても、正しい扉を探すまでの苦労が想像できよう‥‥。

──さらに2刻後

「ふうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 全身疲労。
 そして精神の限界。
 全員で開いた扉は全部で245。
 それらの中の誘惑全てに打ち勝つと、ようやく一行は『第三の試しの扉』にたどり着いた。
「ここの扉は簡単なのですけれど‥‥」
 と告げるミーア。
「成る程ね‥‥ここの扉に刻まれていてる文字が、全てを物語っているね」
 と三笠が告げる。
 扉にはこう記されていた。

 己が欲望のままに扉を引くならば、扉は貴方の進みたい場所に繋がる。
 己の欲望を押さえて扉を押すならば、更なる試練が待っている。

「なら、話は早い。とっととこの回廊から最下層に‥‥」
 と呟いてガルシアが扉に手をかける。
 が、その場で立ち止まった。
「ミーア殿、ここはどうすればよい?」
「ボクは押したよ。地図を作りたかったし、攻略の為の知識が欲しかったからね」
 と告げるミリア。
「ならば、いまさら試練の一つや二つ、我の恐れるものではない‥‥」
 パラディンの試しの試練に比べれば、この程度というところだろう。
 そのまま一行は、静かに扉を押した。

──ギィィィィィィィッ

 静かに開かれた扉。
 その奥には、台座が一つあり、そこに一つの兜が安置されている。
「それが『魂の兜』だよ。20回廊より上のナンバーの扉に必要な鍵だね」
 ミリアがそう告げると。ガルシアがそれを手に取る。

──スッ

 と、その刹那、正面に扉が二つ発生する。
「これは?」
 三笠が問い掛けると、ミリアが一言。
「一つは帰還の扉。そしてもう一つが『第4の試しの扉』。ボク達はここで帰ったから、第4の試しの扉なんて入ったことないよ」
 と告げる。
「ここに入ってからの時間、そして全員の疲労度。先に進むべきか?」
 そうルミリアが問い掛けるが、全員の答えは一つであった。
 やがて全員が、『第4の試しの扉』を越えていった‥‥。



●結末
 第19回廊チーム、無事に帰還に成功。
 途中にて『魂の兜』をダッシュ、それはガルシアが責任をもって保管。
 さらに最下層にて、ルミリアと三笠、御堂がそれぞれ『金色の魔法の鍵』を3本ゲット。
 それぞれが一本ずつ責任をもって保管することとなった。
 
 そして全員が戻ってくるのを、『限界バトル亭』で待っていた第18回廊チーム。
 すでに帰還して『精神的にうけた大ダメージ』を癒し、次の挑戦の為に、色々と準備をしている所であった。
 いずれにしても、アビスという所は一筋縄ではいかないものの、攻略の鍵は一つずつ見えてきたという事で。

──Fin