【ふぁっとまん】やつの名はガイ!!

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月11日〜04月21日

リプレイ公開日:2008年04月20日

●オープニング

──事件の冒頭
 ふぉっふぉっふっぉ。
 食卓に並ぶ豪華絢爛花吹雪。
 
スープ、蜂蜜クレープ、冷たいスープ
カリカリパン、黄金卿のポリッジ、グリル・ド・チキン
マスタードパン、星のオムレット、ニョッキのトリコロール
果実酒のゼリー、フィッシュマリネ、レインボー・フリッタ
アップルパイ、ルバーブ・クランブル、牛肉のエール煮込み
ボルシチのパイ生地包み、フルーツ&ナッツケーキ、黒パン
魚の蒸し物、フィッシュフライ、干魚、コリプニ唐揚げ
鱈と鯖のリエット、O・NA・BE、O・KA・MA
そば、寿司、刺身、ネギ味噌、モツ煮込み、十二目味噌汁
雑な煮物

古ワイン、新しいワイン、そこそこのワイン、ビンテージワイン
グレープジュース、シトロン・エト・ミール、シランガナ・シド・ミード
ポワール☆ポワール、グレープオレ、オーレーオレオレオレ、アペリティフ・ワイン
気の抜けたエール、気の入ったエール、ミルク、みくる
ベリー・エール、アップルジュース、ハーブティー、アデラ特製ハーブティー
熱燗、大吟醸『冒険者殺し』、大吟醸『女も一発でイチコロ』
甘酒、苦酒、茶、茶らしいもの

 これが一人の食事量とは、誰も信じないでしょう。
 けれど、これらの中から大体15品目ぐらいをペロッと平らげるのが、この屋敷の主である『ガイ・メタヴォリカーナ』である。
 今宵も各地のご自慢料理をテーブルに並べ、大量の汗をかきつつ食事をする。
 その光景は、なんというかとてつもなく見苦しい。

 そしてそれを見ていた執事が、ふと思った。
(このままでは、我が領地はガイどのに食べつくされてしまう‥‥)
 ということで、一計を案じた執事、領主の余りにもふとりすぎた体を案じて、こう告げた。
「ガイ様。今のままではお身体に触ります。健康こそが料理を美味しく食べる秘訣。いちど運動などでその体をシェイプアップしてみてはいかがでしょうか?」
 この言葉に、食いしん坊領主はシェイプアップを前向きに検討したのだが、問題はどうやって‥‥。
 ということで執事は冒険者ギルドに足を運んだ。
「冒険者達は、皆、引き締まった体をしている。きっと何か秘訣があるに違いないですねぇ‥‥」
 

●今回の参加者

 ea7871 バーク・ダンロック(51歳・♂・パラディン・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb0346 デニム・シュタインバーグ(22歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb7208 陰守 森写歩朗(28歳・♂・レンジャー・人間・ジャパン)
 ec0167 氷凪 空破(25歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●さて、どうやって痩せるか‥‥
──とある領地
「フーハーフーハーフーハーフーハー」
 額から流れる汗を吹きつつ、領主であるガイ・メタボリカーナはにこやかに冒険者達を見下ろした。
 現在、ガイ卿は応接間に安置されている椅子に『横たわり』、のんびりと甘菓子を摘まみながら来訪者である冒険者ににこやかに挨拶をしようとしていた。
「よーくきた冒険者たちよ‥‥話は聞いておる。私を痩せさせてくれるのだな?」
 そう告げると、ガイ卿は手にネットリとついている蜂蜜を、指一本ずつ舐め回し、椅子に掛けてある飾り布で拭った。
「‥‥ええ。では早速ですが、ガイ卿を痩せさせる為の様々な方法を試させて頂きます‥‥」
 と告げるのは、バーク・ダンロック(ea7871)。 
 そう告げると、バークはあらかじめ用意してきた『布鎧』を取り出すと、早速それを着て頂くようガイに進言した。
「フーハーフーハーフーハーフーハー。なんだか面倒くさいのう。こう、横になって美味しいものを食べつつ痩せられるほうほうはないのか?」
 そんな方法、俺が教えて欲しいわ!!
「そのような方法はございません。負荷の掛かった適度な運動が、今の領主には必要なのですから」
 と告げて、バークは全ての装備をガイに装着する。
 まあ、かなり小太りな冒険者のような体形には見えない事もない。
「こ、これは動きずらいのう。それに恰好が悪いぞ」
「いえ、恐れながら、布鎧ではまだ恰好良くはありません。けれど、体力がついて細身になった時は、金属鎧がピシッと決まる。ハゲでちょっと腹ボテな俺でも鎧を着れば、この通り!」

──ダブルバイセップス・フロント

 おお、その全身を美しく見せるシルエット。
 その姿に、ガイもなにか良い感じに見えたのであろう。
「う、うむ。では我が輩も少しがんばってみるかな?」
 と意気揚揚。
「では、私は領主の為に食事を作らせて頂く‥‥今からそのための食材を買い付けてきますので」
 と告げるのは陰守森写歩朗(eb7208)。
 そう告げると、早速この近くで新鮮な魚介類を得られる場所を聞き出すと、フライングブルームネクストで『ドーバー海峡沿岸の港町』まで飛んでいった。
 まあ、2日もあれば帰ってくるでしょう。
「では、食べ物を美味しく戴く為の第一ステップ。馬にのって遠出しましょう」
 と告げるのはデニム・シュタインバーグ(eb0346)。
「馬か‥‥ここ数年、乗ったこともないし。乗れる馬がおるかどうか‥‥」
 と呟くガイ。
「馬というものは丈夫で力強いものです。領主どのの体重を支えるぐらい、わけありません」
 ということで、一行はそのまま馬房へと移動。

──馬房
「ひえぇぇぇ。り、領主さまが遠乗りですとぉぉぉぉぉ」
 厩舎員がそう叫びつつ、領主の愛馬を奥から連れてくる。

──デブーーーーーン

 これまた、なんと申しますか。
 ペットは飼い主に似るを地でいっているなおなかぼてぼてんのウォーホースが、一行の前に連れてこられた。
「こ‥‥これは‥‥牛?」
 恐る恐るそう問い掛けるデニムに、ガイは一言。
「フーハーフーハーフーハーフーハーこれが我が愛馬の『シャイニングシューティングスター号』だ。出生厩舎はかの有名な『カイゼル厩舎』。その足の速さは、そんじょそこらの馬の比ではない!!」
 いや、確かに。
 ということで、デニムはそのままぼてぼてんな馬に跨った、これまたぼてぼてんな領主と共に郊外に遠出に出発。
──1時間後
「フーハーフーハーフーハーフーハー。もうそろそろ帰ろうかのう‥‥十分に動いたと思うぞ?」
 そうデニムに告げるガイ。
「領主殿。このさきに、美味しい木ノ実がなっている場所があるのです。一汗か板後の、取れたての果物と木ノ実、それは大変美味しいですが‥‥それを諦めてしまいますか‥‥」
 と演技かかって残念そうに告げるデニム。
「い、いや、いくぞ。その道の果物を食べる為に!!」
 と、食い意地が全開になった領主は、デニムの誘いにのってそのまま森の奥へと向かっていった。

──そして午後
「領主様のお仕事には、領民を見て回るというものがあります。それに、定期的に領内の見回りや毎日、騎士様方の訓練にも参加して乗馬や剣を鍛えればいいのですー」
 と執務室で告げているのは氷凪空破(ec0167)。
「し、しかし、今日の日課はすでに終っていて‥‥あとは執務室で午後のティータイムを愉しむだけなのだが‥‥」
 と出不精(デブ症ともいうのか?)のガイが空破に告げる。
「でも、そうしないといつまでたっても痩せられませんよ。いまの領主様の姿を見てください!!」
 と、空破がファンタズムを発動。
 領主の脳裏には、客観的に領主の姿が良く見えていた。
「‥‥こ、これがワシの体‥‥」
 ドキドキしているガイ。
「ええ。そんな体形では、領民から嫌われてしまいますよ」
「まだまだイケルじゃないか。このワシも‥‥」
 いや、ちょっとまて、その言葉には異議ありだ!!
「そ、そう考えているのは領主どのだけですってば!! ではいきますよ!!」
 ということで、ズルズルと領主を引きずって空破は外に見回りに移動。


 その日から、朝昼晩とデニムのファンダズムによって嫌でも自分の体形を見せ付けられる領主。
 朝は起きたらまずバークによって鎧が装着され、そのまま執務開始。
 午後の食事の前に、デニムと遠出、そして昼食の後に空破とともに領内散策と騎士団との手合わせ。
 そこではバークも手合わせに参加。
 午後からの執務を終えると、陰守の特製『海鮮料理でダイエット大作戦』が発令。
 陰守が吟味した特選料理でダイエットを行なおうという事になったのだが‥‥。
 


●最終日
──領主の舘。
「これが最後のメニューです‥‥如何ですか? 御自分で作られた物の美味しさは」
 そう告げる陰守。
 ここ数日は、領主は陰守と共に川や山に出向き、自分で食材を得る愉しみを知った。
 以前よりもよく動けるようになリ、そして心なしか体が軽くなったような感じはじめているらしい。
 見た目は殆ど変わっていないのはバークのつけている鎧のサイズで明らかなのだが。

 ということで、最終日。
 食後の一服の後、全員で領主の目方を計る事になった。
 最初と同じ様に大量の金貨を用意し、それを計りに乗せて領主の体重が金貨何枚分であるかを調べる。

──ギィッ‥‥ギィィィッ
 計りがミシミシと音を立てる。
 そして水平になったとき、一行は溜め息を揚げる。
「‥‥なんで、体重は変わらないんだ?」
 と問い掛ける陰守。
「あれだけ動いて、それなのに?」
 嘆くデニム。
「まさか、夜中にこそりと何かを食べているのでは?」
 疑う陰守。
「ああ、余分な贅肉が筋肉になって、そのまま変化なしって言う所だろう。ここからさらに絞ると、痩せはじめるが‥‥」
 と、冷静に告げるバークに、移動は唖然とする。
「つ、つまり報酬は0?」
 その衝撃に一同落ち込むが。
「いやいや。ここまで体が動くようになったのは皆のおかげじゃ。せめて、皆にも最高の料理を振る舞わせて貰おう‥‥」
 ということで、最終日は領主の粋な計らいで『世界の料理』が並ぶ豪華なパーティーとなったらしい。
 そして贅を尽くしたもてなしに舌鼓をうちつつ、一行はパリに帰還する。

 なお。
 パリに戻ってから、夜中に冒険者街を走る冒険者の姿が出没するようになったのは、その翌日のことであったとさ。
 まあ、太るわな。

──Fin