獣耳狂想曲〜浪漫を求めて?〜
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 63 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月12日〜08月19日
リプレイ公開日:2004年08月16日
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●オープニング
──事件の冒頭
そこはいつもの冒険者ギルド。
新たな依頼を求めて、多くの人たちがそこを訪れている。
その日、正午過ぎにギルドを訪れたその女性は、少し様子が違っていた。
この暑い日が続いているノルマンで、頭全体をすっぽりと覆うような大きな帽子と、フワッとしたロングドレス。
春や秋ならば、その服装は実にマッチするであろうが、真夏にその恰好は実にミスマッチ。
「あの‥‥仕事の依頼を御願いします」
モジモジと顔を赤らめて、その女性は静かに呟いた。
「あ、はいどうぞ。どのような依頼ですか?」
丁寧な口調でそう告げる受付嬢。
──ガバッ!!
と、女性は何かを決心し、勢いよく帽子を抜いだ。
取り立てて変わった様子はない。
濡れるように黒いロングヘアー。
綺麗な猫耳と、実に普通‥‥じゃない!!
「ね、猫耳だぁぁぁぁ!!」
何処かで冒険者が気付きそう叫ぶ。
良く見ると、スカートの裾からはリボンの付いた尻尾まで揺れている。
そして女性は慌てて帽子を被ると、受付けに話しはじめた。
──実は‥‥
その日、早朝の水汲みに出かけていた女性は、森の中から不思議な声を聞いた。
「ケッケッケッ。今頃、あの村の奴等、大慌てだろうさ」
「カッカッカッ。慌てろ慌てろ。そして俺達を満足させるんだ」
「これで俺達も、少しは待遇が良くなるだろうさ。ケッケッケッ」
「カッカッカッ。わざわざあの『薬』の処方を盗み見ただけのことはあるさ。人間どもめ、今頃は獣に姿が変わっているだろうさ」
その声のヌシをソーッと確認した女性。
と、そこには、見た事もない不気味な生き物が座っていた。
背中にコウモリの羽を生やした、毛むくじゃらの醜い小鬼。
それが2匹、声高らかに笑いながらそう呟いていたのである。
「ふぁあ〜あっと。そろそろ洞窟に戻って一休みしようぜ、兄弟」
「そうだなぁ。しばらくしてから、落ち込んだ人間達の姿を見て思い切り笑ってやろうぜ」
その声が恐くなり、少女は村に慌てて掛け戻った。
と、村では大変なことになっていた。
全ての村人の耳が、獣の形に変化していたのである。
どうやら、井戸の近くに落ちていた樽に何か秘密が有るらしく、樽は村長の家に保管してある。
が、それ以上は何もすることが出来ず、村人全てが途方にくれてしまっていた。
──ということで
「こんな姿では、私‥‥もうお嫁にいけません。どうか村のみんなの『耳』を直してください!!」
流石に、ギルド員もはなはだ困り果てていた。
が、これも依頼と、取り合えずは羊皮紙に書き留めると、女性に静かに告げた。
「掲示板には張付けておきます。後日、冒険者が集まったら、そちらに向かっていただくよう伝えておきますので」
そして女性はギルドから立ち去っていった。
──そして
「猫耳ねぇ。何か、困った冒険者が集まってきそうな予感がするわ‥‥」
そう呟きながら、掲示板に依頼を張付ける受付嬢。
受付嬢さん。
それ、多分正解。
●リプレイ本文
●微笑っていいかもしれないけれど〜ミミリアン参上〜
──とある村
さて。ギルドからの依頼を受けて、やってきました件の村。
到着したときには村人は開き直ったかのように村の中で農作業などを行なっていた。
だが、やはりどの村人も見事な獣耳。
「あ、ギルドからいらっしゃったのですね。よろしくおねがいします」
そう話し掛けたのは依頼を持ってきた女性。
彼女は相変わらず麦藁帽子を被っていた。
「‥‥うわ〜、ほんとに皆獣耳。‥‥獣耳好きには天国ですね〜。これはこれでいいかも‥‥って、それじゃあ依頼料もらえないからダメですね‥‥。‥‥なんか解決するの惜しいな‥‥」
そう呟いたのはヒール・アンドン(ea1603)。
「そ、そんなぁ‥‥」
女性がそう呟いた時、ヒールの後ろでフォルテシモ・テスタロッサ(ea1861)がヒールを軽く小突く。
「この村の人たちにとっては、死活問題なのじゃ。不謹慎じゃぞ‥‥で、詳しい話を聞かせて戴きたいのじゃ」
「少し、その獣耳の事で聞きたいことがあるんだけれど、いいかな?」
そう告げるフォルテシモと夜黒妖(ea0351)。
その言葉に、女性は皆を村長宅へと案内した。
●さて、早速‥‥〜意外と即効性〜
──村長宅
「ようこそこの村へ‥‥依頼を受けていただいた冒険者さん達ですな。どうぞよろしく御願いします」
そう呟く犬耳村長。
「はい。それでは早速、今回の事件について色々と教えていただきたいのです」
相馬ちとせ(ea2448)が静かに頭を下げてそう告げる。
「実は‥‥」
そう告げたのは村長。
依頼が持ち込まれた2日前の朝。
いつものような朝、井戸の水を汲みに行ったときにそれは起こったらしい。
村の井戸水を呑んだ者たちが次々と獣耳に変化していった。
依頼を持ってきた女性も、その朝一番で井戸水を呑んだらしい。
どうやら、この村の唯一の井戸水に、何か細工をされたのではないかということである。
その日の夕刻、村の近くの森で奇妙な生き物が村を観察していたらしいという話を、村の若者からも聞いたという。
「で、これがその井戸の近くに転がっていた樽、こっちは井戸の水ですじゃ」
小さな樽と井戸水の入った槽。
樽の中には、薬のようなものが少し入っている。
「では、早速調べて見ましょう」
そう呟くと、サラサ・フローライト(ea3026)は薬を覗いてみる。
少し甘いような香りがする。
色は透明。
そんな薬を作る方法とは?
サラサは自分の知識にある毒草や薬草に関する事、伝承にそれらしい記述がないかなど、持てる知識をフル動員して思考開始。
──プスプスプスプス
どうやら解析不可能という結果が出た模様。
「どれ?」
「では早速」
「僕の犠牲で原因が判るのなら、喜んで犠牲になります‥‥」
黒妖、ヒール、そしてジャン・ダレク(ea4440)が、そう呟く。
各々、井戸水や樽の中の薬の毒見を開始。
そして。
──ニョキッ!!
黒妖、ヒール、そしてジャンに獣耳が突然生える。
今までの耳は何処かに消えてしまったらしく、今は生えてきた獣耳が自分の耳のようである。
──ポヨポヨッ
「‥‥これは参ったな‥‥」
サラサは銀狐の耳が生えているジャンを見て絶句。
ピコピコとそれを動かしながら、嬉しそうな表情をしてみせるジャン。
と、突然黒妖がスックと立上がる。
その頭には素晴らしく綺麗な毛つやの『猫耳』が生えていた。
「謎の獣耳伝道師にして獣耳部隊『ミミリアン』の『猫耳元師』こと夜・黒妖が見事に事件を解決して見せようぞ!にゃーはっはっは!!」
お、人格変化のスイッチが入った模様。
「‥‥なんで私はこんな耳なのですか?」
そう泣きそうな顔で呟くのは、金髪の中に綺麗に生えた『熊耳』のヒール。
正直言って、皆楽しそうである。
「はぁぁぁ〜。大丈夫かしら‥‥」
依頼を持ってきた女性が、トホホという表情でそう呟いた。
──一方
樽の調査は他の皆に任せて、ちとせは井戸水の調査を行っていた。
直接井戸から水を汲みあげ、それを一口呑む。
「特に変わった味もしませんわ‥‥この井戸水で本当に‥‥」
──ニョキッ!!
突然『馬耳』が生えてくるちとせ。
ちなみにこちらもスイッチ入った模様。
「あらら‥‥馬の耳‥‥ですわ‥‥クスッ」
そう困ったように呟くちとせ。
正直言って、困っていない。
──そして
「‥‥毛じゃな。話に出てきた化物の毛の可能性が高いのう」
村外れの小道に落ちていた毛を拾い、静かにそう告げるフォルテシモ。
「さて、それにしても暑い‥‥」
そして取り敢えず皆の調査が終るまで、フォルテシモは毛の落ちていた場所の近くの納屋を借りると、そこで小道の方を警戒していた。
が、流石に暑さには勝てず、フォルテシモは井戸から水を組んでくると、静かに魔法の詠唱を開始する。
まずは自分に対して神の加護を祈る。。
そして次に魔払いの聖句を唱えると、やむなく井戸水を飲み干した。
──ニョキッ
「‥‥やれやれ。神よ、是はわしに対する試練かのう‥‥」
ちっちゃいネズミ耳をそっと触りながら、フォルテシモがそう呟く。
あ、目がイってる。
●事件解決の為に〜洞窟で大仕事〜
──翌日
一日掛けての村での聞き込み調査などを終えて、一行は翌日、洞窟へ向かう準備をしていた。
「皆さん、獣耳はかならず治るです!!」
ジャンが、見送りに来てくれた村人達にそう叫ぶ。
そして一行は一路洞窟へ‥‥
──洞窟内部
そこは自然洞。
冷たい風が頬を撫で、ただひたすらに漆黒の闇が眼の前に広がっている。
「灯が必要ですね‥‥」
そう呟きながら、ヒールがランタンに火を灯す。
ボウッと明るい空間が広がった。
正面には、ただひたすらに下り坂が伸びている。
「とりあえず、この奥じゃな」
そう呟くフォルテシモ。
「依頼人の女性は、かなり奥まで入っていったのでしょうか?」
周囲をキョロキョロと見渡しながら、ちとせがそう告げる。
「昨日の話では、入り口すぐの所に隠れているんじゃなかったか? あの辺の岩影とか‥‥」
そう呟きながら、右手奥にある巨大な岩を指差すサラサ。
──ヒョコッ!!
と、その指差した先に、何かが動いていた。
「あ、いましたねぇ‥‥おーい、隠れてないで出てこい!!」
ジャンがそう叫ぶ。
──ガササッ
と、そのジャンの声に、2匹のちっちゃい化物が姿を現わした。
「『ミミリアン』パリ支部所属・地かける特攻乙女ことウマミミリアンのちとせ!!見参!!」
「貴方たちは一体何者なのです!! 何故あの村の人たちに危害を与えようとしたのです!! その返答しだいでは只ではおきません!!」
ちとせとヒールが力一杯叫ぶ。
と、その化け物の一体が皆の方をじっと見、そして口を開いた。
「はい、あっしたちはグレムリン言います。おいらは『ニッチモ』、こいつは『サッチモ』。あの村に危害を与えたのは、あっしら悪魔にとっては人の苦しみが快楽だからだす。苦しんでから死んでもらって魂貰おうと悪巧みしてました。この返答でも何かしてきますか? 何もないならワイらこれで失礼しまっさ」
えっへんと胸を張りながらそう叫ぶグレムリンのニッチモ。
「あ、アホじゃ‥‥こいつらアホじゃ‥‥」
頭に手を当ててそう呟くフォルテシモ。
「えーっと‥‥」
ヒールは言葉を失ってしまう。
いつものパターンでは、『ふっふっふっ。そんなこと貴様らに告げる義理はない、死ねぇぇぇ』とでも叫んで戦闘になる筈。
が、そんな様子もまったくなく、今目の前のグレムリンはウシャシヤシャと笑っていた。
「なるほどねぇ‥‥」
そう呟くと、黒妖がそのままサッチモに近づいていく。
「さてと、解毒剤の作り方を教えて貰おうか」
グイ、と首根っこを掴むと、静かにそう呟く黒妖。
「グハー、グガガガガっ」
なにかを叫ぶサッチモ。
そしてニッチモには、フォルテシモが詰寄っていく。
──チャキーン
腰からクルスソードを引き抜くと、それをニッチモに向かって突き出す。
「さあ、大人しく井戸に投げ込んだ薬を解毒する方法を吐くのじゃ‥‥言いたくないのなら構わんぞ? 騎士を辱めた罪、その身に存分に味合わせてやろうぞ」
剣呑な目つきで薄く微笑するフォルテシモ。
「げ、解毒剤だな、よし上等だ、奥にあるから今持ってきてやる。それまで待ってろ覚悟しやがれっ!!」
ニッチモもまた、フォルテシモの迫力に呑み込まれて少々混乱ぎみ。
そしてまっすぐに奥の岩影に走っていった。
「ぐはーぐはー、兄貴ぃぃぃ。見捨てないでくれよぉぉぉぉぉ」
必死にニッチモに助けを求めるサッチモ。
「大丈夫だ。無事に解毒剤を持ってきたら解放してやらんこともない」
サラサがそう呟く。
「そうです。獣耳の薬と解毒剤、この二つを我がミミリアンに献上するのです」
ちとせ、まだスイッチ入ったままの模様。
そして一行は、ニッチモが戻ってくるのを待っていた。
──1時間後
「‥‥グイっ」
黒妖がサッチモの首をキュッと締める。
「ぐはーぐーはーー。兄貴ぃぃぃ」
「まさかとは思うけれど‥‥サッチモ君、君、見捨てられた?」
そう呟くジャン。
「そそそそそそ、そんなことは‥‥」
かなり動揺している模様。
そしてヒールとフォルテシモが奥に進んでみる。
そこには、何処で調達したか判らないが、小さい家具が綺麗に配置してある。
テーブルの上には、何やら怪しい薬の瓶が一本。
「‥‥あ、本当に逃げたようじゃのう」
そう呟くフォルテシモ。
「まあ、サッチモさんが残っているのですから、聞いてみましょう?」
そのままサッチモの元へと戻っていくと、一同、サッチモに洗いざらい聞くことにした。
●そして〜判ったことと、これからのこと〜
──洞窟奥
サッチモを締め上げて聞き出した情報。
獣耳薬というのは、人を動物にする効果がある薬をつくろうとして失敗したものである。
それは彼等の上司、つまりもっと高位の悪魔が作っていたものを彼等が盗み見て作ってみたらしい。
ニッチモ達が作った薬はいわば失敗作。
いずれ効果が切れるので、新しい薬を作るための準備をしていたらしい。
「つまり、解毒剤はないのですか?」
ジャンが静かにそう問い掛ける。
「おうともさ。この薬は新しい試薬。あの薬は間もなく効果が切れるだろうさ‥‥ケッケッケッ」
それはそれでよし。
「で、お前の上司は何処にいる‥‥」
黒妖がそう問い掛ける。
が、サッチモは地面を指差す。
「ずーっと下だぁぁぁ。貴様達下賤な人間共になど、到底たどり着くことのできない世界だぁぁぁぁぁぁぁ」
──プス
その叫びの直後、ヒールがサッチモの頭を後ろから刺す。
「態度大きすぎですね。自分の立場を、もう少し理解してはいかがかしら? ついでに例の薬でも結構ですので渡していただけませんか?」
既に依頼は成し遂げられたと考え、一同(のうちの一部)は、本来の活動(なのかは定かでないが)を開始。
「あぅぅぅぅ。もうありましぇん。ただ、あの井戸水はもうしばらく効果があるはずでしゅ‥‥」
神妙になって口調も弱々しくなり、そう呟く哀しいサッチモ。
「では、あの井戸水だけでも持って帰りましょう。我等が獣耳部隊『ミミリアン』の為に」
そのちとせの言葉に、満足そうな黒妖であった。
●そして〜後日談〜
たとえ神妙にしても、悪魔は許すべからず。
神聖騎士であるヒールとフォルテシモの二人にとっては、悪魔は絶対悪。
あの後、サッチモは成敗され、村に戻った一同は事の顛末を村長に報告。
その直後、薬の効果が切れたらしく、一人、また一人と獣耳が元の人間耳に戻っていった。
そして獣耳部隊ミミリアンは、村に残って布教活動を開始した。
冒険者一同も、パリに到着した翌日には獣耳が元に戻ったらしい。
「‥‥で、なんで二人は耳がそのままなの?」
冒険者酒場で食事をしていたヒールが、目の前の黒妖とちとせにそう問い掛ける。
「この井戸水があれば、我等獣耳部隊ミミリアンの天下なのです!!」
水筒を見せてそう叫ぶちとせ。
「‥‥穴あいてるな‥‥」
サラサが冷静にそう突っ込む。
よく見たら、水筒からポタポタと水が落ちていく。
──ポムッ
そして黒妖とちとせの耳も元に戻る。
「‥‥さて、ちとせ、冒険にでようか」
「ニッチモを捜すのですね!!」
まだ二人の野望の火は消えていなかった。
〜FIN〜