●リプレイ本文
●命の価値とは?
──ノルマン江戸村・接触編
のどかな街道。
そこをまっすぐにシャルトルに向かい、途中で小道に分かれる。
そのまましばらく進んでいくと、右手にノルマン江戸村の姿が見えてくる。
だが、そこはいつもの江戸村の光景はない。
武装した侍が村の入り口付近を徘徊し、見える範囲では村人の姿は外に見えない。
「‥‥ふぅ。まあこうなっているとはおもいましたけれど‥‥」
と呟きつつ、ロックフェラー・シュターゼン(ea3120)は作戦通りに村に近づいていく。
「止まれとまれとまれーい。お主、この村に一体なんのようだ?」
と、入り口付近にいた見張りの侍が、ロックフェラーにそう問い掛ける。
「俺は、パリで鍛冶屋をやっているロックフェラーというものだ。この村にやってきた理由は、トールギス鍛冶工房で試作の武器を作りにやってきたんだが‥‥「
と告げるロックフェラー。
「ほう。鍛冶師か、ちょうどいい。我々の主人が、ちょうど武器の手入れをしている所だ。すまないが、ちょっと見てやってくれ」
と、侍はロックフェラーの持ち物を検査してから、トールギス鍛冶工房に連れていった。
「見てやってくれって‥‥この村の鍛冶師はどうした?」
「さあな。刃向かうから主が切り捨てた。そのままどうなったかまでは知らないな‥‥」
──ゴクッ
ロックフェラーの咽が鳴る。
同時に、目の前の侍に対しての怒りが爆発しそうになるが、ぐっと拳を握り締めて耐える。
(駄目だ‥‥ここで暴れたら‥‥駄目だ‥‥)
と、そのまま鍛冶工房にたどり着く。
内部はかなり荒らされており、壁に掛けられていた道具があちこちに散乱している。
さらに、土間の部分にはトールギスの5聖劍などの納められていた箱も散らかっている。
「主。鍛冶師を連れてきました」
と見張りの侍が中でハンマーを握っている男に話し掛ける。
「ああ、鍛冶師か。ちょっとこれを見てくれ‥‥」
と、主と呼ばれた男は、ロックフェラーに一振りの刀を見せる。
「ジャパンの刀ですか‥‥」
と呟いて受け取ると、静かに刀身を見定めるロックフェラー。
刃長は66.1センチ、先身幅2.5センチ、元身幅3.5センチ、反りは2.7センチ、身幅が広くて豪壮な造り。じつに綺麗な刀である。
「では失礼して‥‥」
目釘を抜き、銘を見る。
『典太』
その名前を見て、ロックフェラーは目眩がした。
本物かどうかは解らないが、噂に名高いジャパンの刀匠『三池典太光世』の作りし名刀である。
それに、虹色に輝くレミエラが一つ。
「どのあたりがおかしいのですか?」
「砥ぎなおしだ。血脂と骨砕きで刃がぼろぼろになってしまった」
その言葉に、ロックフェラーは静かに肯く。
「1日お時間を。それと、作業中は、この場所には立ち入らないでください」
「一人にはできぬな。見張りを付ける。阿部山、お前が見張りにつけ」
「了解。あんた名前は?」
阿部山と呼ばれた男がロックフェラーに問い掛ける。
「ロックフェラーだ」
「俺は阿部山純(あべやま・じゅん)だ‥‥それじゃあしっかりとな‥‥」
と告げると、ロックフェラーはそのまま作業に取り掛かった。
──一方その頃
「‥‥」
静かに川を眺めているのはロックハート・トキワ(ea2389)。
「そこからうごけないのか?」
川の中に移っているフィディエルにそう話し掛けると、フィディエルは静かに頭を縦に振る。
「正確には、その場所へは行けないという事。何かの結界が張られているのではないかしら?」
と切なそうに呟く。
「結界か‥‥それは考えていなかったな」
「その土地の、私の仲間たちに話を伝えておきますから、困った事がありましたら、静かに水に向かって囁いてください‥‥」
そう告げると、フィディエルは静かに微笑む。
「本当なら、お前に会いに来たのだが、少々厄介な事になっていてな‥‥まあ、友達の力を借りれるのなら、それで今は我慢しておくか‥‥済まないな」
そう呟くロックハート。
「それじゃあ‥‥気を付けてね‥‥」
やがて川に波紋が広がると、フィディエルの姿はスッと消えていった。
「さてと、それじゃあ準備が出来次第、盛大にいくとするか‥‥」
──さらにその頃
「‥‥あと15名分で終りです!!」
場所は酒場ノルマン亭。
その厨房で、蛮・O・ストームは給仕やメイドにそう告げる。
中では大量の食事が作られ、店の中で食事を取る侍達にさし出していた。
厨房の中では、何か薬を混入されないように、二人の侍が見張りをしている。
そんな場所で‥‥。
(蛮‥‥聞こえるか?)
それは天井からの声。
レンジャーの本気を出したリスター・ストーム(ea6536)が、静かに村の中に忍び込んで、さらに蛮ちゃんを探して酒場に忍び込んでいた。
(ダーリン‥‥)
静かに肯くと、周囲には聞こえないように口パクのみで会話を始める蛮ちゃん
(助けに来てくれたのね。ありがとう)
(全く。お前ほどの女が捕まるとはな‥‥よほど人質にされるのが好きなんだな‥‥得意の魔法はどうした?)
(馬鹿。人質が居なかったらなんとかなったわよ‥‥)
(その人質のことだ。どこにいる?)
(女性と子供達はノルマン神社に、老人達は宮村剣術道場に纏められているわ。男の人たちはあちこちの納屋とかに隔離、怪我人は離れの納屋に放り込まれているわよ)
それらの場所に食事を運びこんだので、その程度の情報はあったらしい。
(サンク。やっぱりお前は最高のパートナーだよ‥‥かならず助けに来る。それまで我慢してくれ‥‥)
そう告げると、リスターは気配を断った。
──さらにそのころのトールギス鍛冶工房
「どうだ? この俺の★△×■どうおもう?」
太く硬いそれをにぎりしめて、ロックフェラーはそう阿部山に問い掛けた。
「す、凄く‥‥大きいです‥‥それに何か凶悪そうで‥‥」
そう告げると、阿部山は静かにロックハートに近寄る。
「触っていいか?」
そうロックフェラーに告げると、ロックフェラーは静かに肯くと、それを阿部山の手に握らせる。
「ああ‥‥」
阿部山は感嘆の声をあげると、そのまま力強く握り締める。
「初めてか?」
そうロックフェラーが問い掛けると、阿部山は静かに肯いた。
「大丈夫。判らない所は俺が教えてやる‥‥まず力を抜け‥‥」
ロックフェラーのその言葉に、阿部山は力強く握り締めていた手の力をそっと抜く。
「そうだ‥‥いい感じだ‥‥」
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
‥
──数刻後
さっぱりとした表情で鍛冶工房から出てくるロックフェラー。
何があったのかは解らないが、ロックフェラーは阿部山から絶大なる信頼を得、外出を許されたらしい。
「さてと、それじゃあ源さんの所にでもいくか‥‥」
そう呟くと、ロックフェラーはそのまま走り出した。
──その頃の‥‥
静かに雨が振り出した。
ロックハートが雨を欲して川面にそう告げたらしい。
それがどう伝わったのかは解らないが、確かに雨は振りはじめた。
その中で、ロックハートは人質の捉えられているであろう大きな建物を次々と回り、人質の捉えられている場所を確認。
それらには大体5〜6名ほどの見張りが付いている為、内部に対しての潜入は非常に困難であった。
(大きなポイントは二つか‥‥それでも厄介だな‥‥)
とロックハートは呟くと、そのまま他の場所について調査し、外に待機している仲間たちの元に戻っていく。
そしてロックフェラーを除く全員が合流したら、最終的な打ちあわせを開始、そのまま作戦決行となった。
●作戦決行?
──ノルマン江戸村
無事にロックフェラーとリスター、宮大工の源さんは合流、ブービートラップについてのレクチャーを受けると、一行はいよいよ突撃準備。
あらかじめリスターとロックハートの調べた見回りの時間にあわせて、全員で一つ一つの人質が囚われている場所を襲撃。
「‥‥悪く思わないでください‥‥」
そう呟きつつ、三笠明信(ea1628)は目の前の見張りに向かって無慈悲にもスマッシュを連撃。
──ドゴドゴッ
それらを受けて、見張りの一人は意識不明に陥る。
「眼の前に3名か‥‥数としてはちょうどいい」
虚空牙(ec0261)も静かに告げると、タンタンタンとステップを踏んで攻撃のタイミングをじっと見る。
「このしんにゅ‥‥」
そう一人が呟いた時、すでにその男の首に空牙の手刀が突き刺さっている。
「朧拳最源流技・手練の2‥‥雷牙‥‥」
素早く手刀を引き抜くともさらに次の獲物の首筋にも一撃を叩き込む。
そして最後の一人にも。
それらの流れるような殺人技を傍らに見つつも、アイザック・トライスター(ec0141)は目の前の見張りの正面で、手にしたシャクティでスマッシュを叩き込む。
──ズバァァァァァァッ
その一撃でほぼ瀕死状態の見張り。
さらに逃げようとする敵に向かっても、同じ様な一撃を叩き込む。
やがて制圧が完了すると、人質撤退のタイミング待ちとなる。
その間にも、一行は次のポイントへと移動、同じ様に人質を解放してはタイミングをじっとまっていた。
──そして
タイミングはOK。
誰かが起こした騒ぎで、江戸村の内部がにわかに騒がしくなっていく。
そこで リスター達の仕掛けたトラップで敵を次々と迎撃すると、そのまま村から全員が撤退。
そのタイミングで子供達も安全な場所に逃亡、あとは冒険者の出番という事であった。
●結論
──パリ・冒険者酒場マスカレード
今回の作戦で、女性や子供、そして老人達の避難は完了させた。
だが、まだ中には男性達が残っている。
逃亡時に三笠やアイザック、虚空牙が殿を務めてくれたおかげで、余計な追撃は来なかった。
それでも、数は少し減らしただけ。
まだ江戸村には、70名ほどの侍達が残っている。
江戸村の平穏はいつになったら取り戻すことができるのでしょうか。
──Fin