【ふらりノルマン】まったりといってみよう
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや難
成功報酬:5
参加人数:4人
サポート参加人数:2人
冒険期間:07月15日〜07月30日
リプレイ公開日:2008年07月23日
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●オープニング
──事件の冒頭
荒れ果てた村。
あちこちの建物は破壊され、所々からは腐敗臭すら漂ってくる。
大量に転がっていた死体の殆どは村の外に放置され、野犬や魔物がそれらを食い散らかしていた。
それらの荷物も殆ど取り外され、現在は領内の騎士団詰め所にて厳重に管理、調査が続けられている。
この村は、以前は『ノルマン江戸村』と呼ばれていた。
だが、ある日サムライと称する野盗の襲撃にあい、それらを取り締まる騎士団の襲撃を受けて全滅した。
首謀者すらその正体を明かすことなく。
大勢の村人(男性ばかり)が人質に取られていたのだが、辺境騎士団は人質の安否を気遣うことなく、事態を早急に納めるべく強行突破となったらしい。
その結果、村人の中から28名の犠牲者がでてしまうという惨事になってしまったらしい。
この報告を聞いた現領主マスカレードは、大量の書面を投げ棄てて騎士団長を問い詰めた。
だが、騎士団長は悪びれることなく、一言『多少の行き違いはあったが、想定内ですみました』と報告した。
「想定内だと? あれだけの犠牲者を出してか?」
「ええ。もっとも、今回の一件、冒険者の助力があればもっと穏便に事はすんだのでしょうけれど‥‥増援を冒険者ギルドに求めていたものの、結果は増援0。誰も私達の言葉に耳を傾けていなかったのでしょう。所詮冒険者というのはそういうものです。自分達の利益がもっとも大事、危険と判ると後ろから見ているだけ‥‥あんな奴等の存在など、このノルマンには‥‥」
「もういい。下がってくれ‥‥」
と、マスカレードは静かに呟くと、人払いをしたのち、静かに室内に閉じこもってしまった。
──その頃の
「‥‥全然手がたりません!!」
場所は変わって江戸村。
トールギス鍛冶工房でマイスター・クリエムが必死に叫びつつハンマーを振るう。
復興に必要な道具や資材がまったく足りないのである。
それらの助力をプロスト辺境伯領主に求めていたのだが、今だ返答はない。
ということで、できうる限りの自給自足モードとなっているらしい。
「猫の手も借りたい所ですね‥‥」
宮村武蔵も大工作業を行ないつつ、そう呟いていた。
はやく復興するといいのにね、江戸村。
●リプレイ本文
●情況は最悪だったらしい
──パリ・冒険者酒場・マスカレード
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
今にも消え入りそうな泣き声を上げているのはクリス・ラインハルト(ea2004)。
ノルマン江戸村を襲った野盗のサムライ集団。
それを駆逐するためにプロスト辺境伯領辺境騎士団が江戸村に強行突破、28名の人質の命が散ってしまった。
サムライ達は全て切り捨てられ、江戸村最悪の事件となった‥‥。
その話を冒険者ギルドに問い合わせたものの、ギルドではこの一件には関与していない為、詳しい情報は聞き出す事が出来なかった、
そのためクリスは仲間との合流も考えて、情報屋のミストルディンを訪ねた。
そして詳しい話を聞かされたクリスは、自分が何も出来なかったと泣いていたのである。
「ふぅむ。それならば、江戸村復興の為に教会で寄付をつのってみるとするか‥‥」
と告げて、ガルシア・マグナス(ec0569)は静かに席を立つ。
「ふぇぇぇぇぇふぇぇぇぇぇふぇぇぇぇぇぇぇ」
「クリスさん、もう泣かないでください。今回の一件、クリスさんに非があった訳ではありませんから‥‥」
と横で慰めているのは三笠明信(ea1628)。
「だって‥‥グシグシグシグシッ‥‥」
「私だって、もっと柔軟に対処できれば‥‥今回のようにはならなかったと思っています。あの場所は私にとっても大切な場所ですから‥‥」
と三笠は告げる。
「そうですよ。今回の一件、横で話を聞いている限りでは、強引に突入した辺境騎士団が悪いのですよ」
と、クリスの正面に座っていた玄間北斗(eb2905)がそう告げる。
──クシャクシャッ
と、クリスの頭に手を乗せて、髪をそっと撫で上げる秋夜。
「みんなが心配している。もう泣くな‥‥」
「そーなのー、おねーちゃん無いちゃだめー。ガアガア♪〜」
と、ようやく報告を受ていた悪鬼こと『秋夜』とアンリエットが姿を現わした。
「悪鬼さん‥‥グシッ‥‥ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」
と悪鬼に抱きついて泣き叫ぶクリス。
「ほよ? たぬたぬさん? はじめまして、ガア君ですよガアガア♪〜」
「はじめまして。あひるさんの友達のたれたぬきさんなのだぁ〜宜しくなのだぁ〜」
とクリス&悪鬼がラブラブモード爆走中の横では、アンリ&玄間がぬいぐるみで遊ぼうモードに突入。
「まあ、詳しい話は聞いている。今回は冒険者ギルドの方でも人手が足りなかった以上は仕方あるまい。『不可抗力』として諦めてくれ」
と市政官のニライ・カナイも姿を現わした。
「不可抗力って‥‥人が死んでいるのですよ? それも罪のない者たちが‥‥それを不可抗力だなんて‥‥」
そう意見を述べる三笠だが。
「全てが終った今、死んだ者たちを嘆いても生き返りはしない。それに、自分達が絡んでいたら何か出来たとでも言うのか? 救えるものの数が減ったとでもいって、自分を慰めるのか? そんな事を言っている暇が会ったら、こんな所で時間を潰すなバカモノが!!」
そう叫ぶと、ニライは三笠にスクロールを投げる。
「パリ市政官として、ノルマン江戸村にできる援助目録だ。それを持って商人ギルドにでもいってこい!!」
そう叫ぶと、ニライはその場を立ちさって行く。
「‥‥随分と勝手な事いう人ですねぇ」
「ええ。あれが噂の市政官ですよ‥‥でも、ニライさんの言うことも一理あります。ちょっと腹立たしい所もありましたけれど‥‥」
と告げると、三笠は静かに立上がる。
「では参りましょうか。ニライさんの援助を無駄にしない為に‥‥」
「はいっ!!」
「そうですねー」
と言うことで、冒険者3名+アンリ&悪鬼は、一路商人ギルドへと向かっていった。
──一方、その頃‥‥
「‥‥これで8軒‥‥」
一つ一つのジーザス教会をまわり、援助を求めてきたガルシア。
必要なものは水と食料、生活必需品と、傷薬。
これらの援助品及び現地へのクレリックの派遣の約束などを取り付けると、ガルシアは次の教会へと向かう。
そんなことを夕方まで行なった後、当初の待合せ場所で栗栖達と合流すると、そのままノルマン江戸村へと向かっていった。
●明るい農村
──ノルマン江戸村
「怪我人の手当はこちらへ!! どんな怪我でも構いませんから!!」
江戸村に到着した一行は、まずは村長の元を訪れた。
そして挨拶を終えた後、神社の境内で物資援助と怪我人の治療を行なっている。
ガルシアは派遣されたセーラの方と共に無念の内に亡くなった方々の埋葬を行ない、簡易的ではあるが葬儀を行っていた。
「全ての者たちに、セーラは救いの手を差し伸べます‥‥この者たちに、安らぎと慈悲を、そして神の御許に向かう事をお許しください‥‥」
墓の前でそう祈りを唱えるガルシア。
その背後ではクレリック達が鎮魂歌を合唱。
クリスはクレセントリュートを演奏し、共に鎮魂歌を歌う。
墓には、クリスの持ってきたワインも備えられていた。
静かな葬式が行なわれていた。
「全ての魂が、天に召されますように‥‥」
そう心の中で呟くクリス。
「だめ‥‥そんなおうたうたっちゃだめなの‥‥」
と、後ろから女の子が呟く。
「どうして? お父さんを天に届けるためにね‥‥」
と告げたとき、女の子はクリスから一歩さがった。
「そのおうたをうたったら、もうお父さんがかえってこないからだめなの‥‥ね、おねーちゃん。おうたうたわないて。そうしたら、お父さんかえってくるよね‥‥おとうさん、やさしかった‥‥おと‥‥」
そこまで告げると、少女の顔は涙でクシャクシャになる。
その場に 座り込むと、泣きながら優しかったお父さんの名前を呼びつづけた。
「ごめんね‥‥もう唄わないから‥‥ごめんね‥‥」
そう告げつつ、クリスはなみだを浮かべながら、そっと少女を抱しめていた‥‥。
──そのころ
「冒険者は業深い仕事なのだ‥‥」
と、集まってきた子供達に向かって話をしているのは玄間。
「どうして?」
「業深いって何?」
と問い掛ける子供に、玄間は破顔の笑みを浮かべつつ、静かに諭すように話を始める。
「一度依頼に出たら両親恋人の危機であろうと途中で投げ出す事は出来ないのだ。そして、成立しなければ駆けつける事すら出来ないのだ‥‥おいらは、胸張り裂ける思いで祈る事しかない人達を沢山見てきたのだ」
そう十字架を胸に抱いて告げる。
「冒険者さんって、哀しいんだね‥‥」
「自分の為になにかできないんだ」
と問い掛ける子供たち。
「人の為に何かをするのが冒険者さんなのだ。その為に、自分を犠牲にすることはあっても、それ以上に他の人たちに幸せを届けなくてはならないのだ!!」
拳を握って力説。
そんなことをしばらく続け、気力を失って笑みも浮かばない子供達を励ましているのであった。
──さらに
「で、現在商人ギルドからの援助品がここにかかれているだけ、私達の持ってきた援助品とセーラの教会からの物資を纏めるとこれだけになります‥‥」
三笠は村長やクリエム達のいる詰め所を訪れると、今回持ってきた援助品などについて報告をしている。
「ありがとうございます‥‥」
「いえ、私達に出来る限りのことはさせてください。もし冒険者の手が必要でしたら、いつでもおっしゃっていただければ‥‥」
と三笠がつげるが、村長は静かに頭を左右に振った。
「これだけのものを頂けただけでも十分です。ありがとうございます‥‥」
とだけ告げた。
「村は現在復興を続けています。まあ、これだけの物資があれば、村は元に近い状態までは戻せますね」
とクリエムも告げる。
「やはり完全には戻りませんか」
「ええ。父親を失った子供達、稼ぎ頭を失った家族、そして今回のサムライたちの襲撃で心に恐怖という傷を追ってしまった子供達。全ては元には戻りません。けれど大丈夫ですよ。時間があれば‥‥」
とクリエムが説明するが、それには三笠はなにも告げられなかった。
口を開くと陳腐な慰めの言葉しかでなさそうであった。
ならば、言葉ではなく行動で‥‥
「三笠、全て集めおわったが‥‥」
と、悪鬼が三笠にそう告げる。
「助かりました‥‥では、そーさっそく始めるとしましょう」
と告げて、三笠と悪鬼はサムライ達の遺体を掻き集めて比較的温度変化の少ない所に安置し、アンデット化に備えて清らかな聖水をふりかけた。
すでに村の犠牲者達は村のほうで葬式を終え、先程ガルシア達によって弔いの言葉もかけられていた。ならば、サムライ達がアンデット化しないようにとの配慮で、三笠は儀式を行なっていた。
そしてそれぞれが行動を終えると、炊き出しに壊れた建物の復興等を全員で行う。
そしてそれは、任務期間ギリギリまで続けられていた。
●そして
──パリ・阿修羅寺院
「‥‥なるほど。御苦労だったな‥‥」
江戸村から戻った三笠に、報告を受けたフィームは静かにそう告げた。
「阿修羅の使徒として、私達に出来る事はありませんか‥‥」
そう三笠が問い掛けると、フィームは静かに頭を縦に振る。
「今後、このような哀しい事件が起こらないよう、全てのことにたいして目を向けるように、この国の冒険者達が成長してくれる事を望む。それだけだ‥‥高千穂、当面江戸村に詰めてくれ。手紙はこちらで用意する」
と三笠に告げたのち、阿修羅僧の高千穂にそう告げた。
「もう一つ。今後の為に必要になるかもしれませんが、パラディンは任務の為にセーラやタロンの教会に入れるのでしょうか?」
そう三笠が問い掛けると、フィームは静かに頭を縦に振る。
「ジーザス教のこの国の教会に、他宗教の者が入るということは無理であろう。いくら我々パラディンと言えど、他国の宗派には受け入れがたいものがあるだろう‥‥パラディンとしてではなく、冒険者としての協力を申し入れれば、セーラ教会ならぱ受け入れられるだろうが‥‥」
と告げる。
そして、三笠は阿修羅寺院の人々に挨拶を行うと、そのままその場をあとにした。
──場所は変わってマスカレード
江戸村から戻ってきた一行。
今回は精神的にかなり疲弊したらしく、ほぼ全員が椅子に座ってぐったりとしている。
「あうぅぅぅ‥‥もうへとへとです」
「ああ。そうだな‥‥まあ、これで少しでも彼等の助けになれたのなら、この疲れも心地好いものだ」
クリスの言葉にマグナスがそう返答する。
「それに、子供達にも笑顔が戻ったし、きっとまた昔のように戻る事が出来ますよ」
と玄間も告げる。
──クシャッ
「まあ、またなにかあったら、いつでも声をかけろ‥‥それじゃあな」
「おねーちゃん、まったねーガアガア♪〜」
とクリスの頭をクシャクシャッと撫で上げて、悪鬼&アンリも酒場を後にした。
ノルマン江戸村のみなさんに、ふたたび笑顔がもどりますように‥‥。
──Fin