●リプレイ本文
●いろいろあるのよ、大人の事情って奴は
「うあ!! みなさんはじめまして、ぼくおーがのぎゅんた、よろしくおねがいします」
深々と頭を下げてそう丁寧に挨拶し手稲のはオーガのギュンター君。
その横には、保護者(ということにしておこう。あとで何か言われるかもしれないけれど)の薊鬼十郎(ea4004)も立ち、静かに頭を下げている。
──スパァァァァァァァァァァァァァァァァン
「い、痛ったァァァァァァァァァァ。鬼十郎さんいきなりなにするですか?」
「今、何か余計な事考えていたでしょう? 貴方はギルドから派遣された記録係なのですから、『全て正しい真実』を記録してください」
「ああ、はいはい。では‥‥」
その横には、最近何の進展もしていない、ただのいい人止まりの薊鬼十郎も立ち‥‥。
──カチャッ
「うわわわわ、鬼十郎さん、その人は只の記録係です、ご乱心しないでください!!」
「お、乙女の心を傷つけたわねぇぇぇぇぇぇぇ」
いきなり暴れはじめた鬼十郎を羽交い締めにして止めに入るコルリス・フェネストラ(eb9459)であった。
──現在、記録が乱れています。
──記録係が戻るまで、少々お待ちください
「さ、さて、それじゃあ自己紹介の続きといこう。俺はラシュディア。よろしく頼む」
「同じく、我が輩はエセ・アンリィと申す。よろしく頼む」
とラシュディア・バルトン(ea4107)とエセ・アンリィ(eb5757)が自己紹介を終える。
(しかし‥‥オーガ族は罪深きカインの子孫。生まれながらに呪われた存在であり、神の加護にない。故に断罪されるべき存在なのだが‥‥)
と呟くと、横に立っているエミリア・メルサール(ec0193)をちらりと見る。
エミリアの立場はセーラ神につかえしビショップ。
司教という立場にあるものが、なぜこの場所にいるのか? それがアンリィには理解できなかった。
司教として正しい行動ならば、この場にて全てのオーガを断罪すべきである。
それゆえに様々な権限も与えられ、地域によってはカテドラルも与えられる。
それが何故‥‥。
「私はコルリス・フェネストラです。みなさんよろしくね」
と明るい笑顔で挨拶をするコルリス。
ということで、自己紹介を終えた後、一行は幾つかのグループに分かれて、いろいろと勉強会を始めていた。
●薊鬼十郎のケース
──とある家
「★△×■」
大勢のオーガが集まり、鬼十郎と一緒に手芸や料理の勉強会が始まっていた。
数名のオーガは、拙いながらもゆっくりと編み物をし、判らないオーガの子に色々と教えているという光景もあった。
「うう‥‥言葉が通じないけれど、魂は通じ合っています。きっと、みんな判ってくれますよ」
と自分に言い聞かせながら、鬼十郎は次のステップに進む。
数名のオーガと共に台所に立つと、まずは彼等の普段食べている食材を見せてもらう。
「これは‥‥鹿かな? こっちは兎と‥‥お肉が多いわね‥‥と、これは?」
と、台所の片隅に転がっている何かを発見。
それを手にしようとした瞬間、鬼十郎は硬直。
「ハ、蜂の巣? それもこんなに大きい‥‥」
と蜂の巣に手を伸ばそうとする鬼十郎を、オーガが制した。
「グゥオダヴァダヴェグウェ」
「え? 駄目なの? これ食べないの?」
「ウヴァグヴィグルゥム」
「ふむふむ。これは日常用で、まだ中に女王蜂がいるのね? それって危なくないの?」
「ウガゥグゥルルグァムゥ」
「ふむふむ。こっちのが食用で、中に蜂蜜があるのね?」
ちょっと待て、なんで鬼十郎オーガと語り合える?
「え? ギュンター君に教えてもらったから、カタコトならなんとなくニュアンスが判りますよ」
へー。成る程。
ということで、様々な食材を教えてもらい、愉しそうに食事の準備を始める鬼十郎であったとさ。
●ラシュディア・バルトンのケース
──ギュンター君の家
「こんにちは‥‥はい、リピート!!」
『グヴォン・ニィ・ヅィア』
集まったオーガ達が、一斉に叫ぶ。
ラシュディアはギュンター君に通訳を頼み、集まったオーガ達にゲルマン語を教えていた。
「ううーん。ちょっと違うな。ギュンター君、こんにちはをうまく発音して、教えてあげてくれないか?」
「うあ、わかった。みんな、こういう。『ゴンニツィア!!』」
『グォンニツィア!!』
「お、さっきよりよくなってきたな。その調子でどんどんいくぞ」
ということで、ラシュディアは真剣にオーガ達にゲルマン語を教える。
(ジーザスの教義ではこいつらは悪。今俺達のしている行為は、神に背く行為といっても過言ではないが‥‥)
静かに集まっているオーガ達を見る。
その表情のどれもが真剣であり、そして優しそうであった。
(俺は、今を生きるこの子たちを信じるさ‥‥)
「さて、続いては『こんばんは』。リピートアフターミー!!」
『グォンバンヴァ!!』
お、何となくコツを掴みはじめたオーガ達でありまして。
●エセ・アンリィの場合
──村の外れ、訓練所
「よし、それでは全員並ぶのだ。今から我が輩が『タロン体操』を教えてやる!!」
そう集まったオーガ達に叫んでいるのはアンリィである。
こちらは外での勉強。
まずは『タロン体操』をする事で、心身共に潔癖にする。
♪タロンな〜ら目立たなくっちゃ!! 教えだけ〜は守らなくっちゃ
顔が悪い時には〜 ミ・ミ・ク・リ・ィ!!
使徒なら鍛えなくっちゃ ムキムキッと鍛えなくっちゃ
鍛え上げて ご一緒にデ・ス・ト・ロ・イ!!
ブラックホーリー レジストエンジェル
ビカムワースで虚脱感、
一時の過ち、ロブメンタル
スタミナ、ストレス、ロブライフ
み〜んな、まとめてデ・ス!!
国王だって領主だって
内緒だけどやってるんだ!
♪明日からは国民全員でレジストエンジェル!!
とまあ、訳の判らない体操を終えた後、アンリィはオーガ達に剣術指南を開始した。
ちなみに午前中は礼儀作法を教えていたので、騎士としての礼節はある程度理解していると思う。
「では、全ての剣術の頂点に立つレオン流剣術を指南しよう‥‥では皆、我が輩に続いて剣を構えるのだ!!」
──ザッ!!
一斉に木剣を構えるオーガ達。
だが、その構えを見て、アンリィは不満そうな表情。
「むぅ。その構えはコナン流‥‥何故その構えを?」
「ギュンタグァ、コレウォオスィエテグゥレェタァ」
「ギュンタ、コナンツカイ」
「ふむ。ということは、ギュンター君に誰かがコナン流を伝授したということか‥‥まあいい、ならば、我がレオンも伝授しよう。このキャンプのオーガは、二つの流派を使いこなせるように‥‥」
おいおい。
ということで、オーガ達はアンリィに続いて様々な型を修めはじめた。
●コルリス・フェネストラの場合
──森の入り口
大量の木材が転がっている森の入り口。
そこでコルリスは、オーガ達に『木材加工』と『楽器演奏』を教えていた。
もっとも、彼女の持っていたリュートやここに来て作った楽器などを色々と試してみたのだが、どうも音楽というものにはあまり興味を示してくれない。
だが、木材加工が始まると、じっとコルリスの話に耳を傾け、実際にナイフを使って彫刻を始めていた。
「そうそう、その調子ね‥‥随分とうまいわねぇ」
とコルリスが誉めるのも無理は無い。
彼等の飲込みの速さはかなりのものであり、夕方には木製のボールや皿などを作りあげていた。
「いい? この調子で色々と作ってみてね。そうしたら、私がパリの商人さんの所に持っていってあげる。うまく話がついたら、商人さん達は、この村まで貴方たちの工芸品を買いにくるかもしれないからね?」
オーガに働くということ教えるコルリス。
人間との共存には、どうしても彼等なりの特技が必要なのである。
例えば、モンスターが多く生息する森に入って狩りをして、収穫物を人間相手に売るとか、先程の工芸品を大量に作りあげるとか。
それらを元手に交易が成立すれば、この村も活気が湧いてくるであろう。
ということで、コルリスはオーガ達と共に工芸を続けていた。
●エミリア・メルサールの場合
──ギュンター君の家の祭壇前
しばらくはオーガキャンプの調査をしていたエミリア。
そもそも、彼女が此処に来た理由は、この村の存在を教会が認知していないという事実を確認する為。
彼女達の教義の中では、オーガは『絶対悪』であり、駆逐されるべき存在。
それゆえ、エミリアの目の前で、懸命に『セーラ像』に祈りを捧げているオーガを見ると、どこか暖かさを感じてしまう。
(この国の教会はオーガキャンプを公式には認めていない‥‥けれど、正しき道を学んだオーガは、聖書に記される悪とは程遠い存在。全てのオーガがジーザスの教えを守っていけば‥‥)
と考え、ただひたすらに布教活動とゲルマン語の教育に集中した。
●そして後日
一行は依頼最終日ぎりぎりまでオーガキャンプにて色々と教えていた。
期間こそ短かったものの、オーガ達はメキメキと何かを吸収し、自分のものにしつつある。
そしてギュンター君と別れた後、一行はパリへと帰還していったのだが。
──とあるセーラの教会
「この書簡を教皇猊下へお届けください」
そう告げて、エミリアは今回の報告書を教会の司祭長に手渡した。
その内容とは、オーガキャンプのオーガ達に可能性を感じること、そして引き続き動向を見守る必要がある旨が記されている。
そして最後の部分には、彼等を排除ではなく静観してもいいように許しを得たいという彼女の重いが綴られていた。
「ではエミリア、セーラと司祭長の権限を持って、書簡を閲覧させて頂きます」
「それは教皇猊下への親書。内容を改めるというのはどういう事ですか?」
「ここ最近の悪魔の暗躍に伴い、教皇の元に届けられるものは全て司祭長より上のものが1度閲覧させて頂く事になっていますので‥‥」
そう告げると、エミリアの書簡を開き、内容を検分している。
──そして
「シスターエミリア。何故あなたのような敬虔なるものが悪しきカインの末裔に誑かされているのでしょう‥‥」
「失礼ながら。私は誑かされてなんていません」
「ならば、この最後の一文。彼等は駆逐するべきものであるにも関らず静観ということは‥‥貴方が誑かされている以外の何者でもありません」
「ですが、セーラの教えを学んだオーガは悪しき心を持っていません」
「黙りなさい。いいですかシスターエミリア。そのような発言は、ビショップである貴方の言葉ではありません。恐らく貴方は誑かされているのです‥‥」
そう告げると、司祭長は書簡をしまい込む。
「これは私だけの心に留めておきます。けれど、エミリア、もし今後このような事がありましたら、貴方のビショップとしての資格を全て失効させていただきます‥‥いいですね?」
そう告げると、一方的に司祭長はその場を後にした。
心優しいオーガ達。
貴方たちの安らぎは、何時になったら訪れるのでしょう‥‥。
──Fin