●リプレイ本文
●さあ、はじまりますよっ!!
シャルトル地方ノルマン競馬村
──パリ競馬G1前哨戦
久しぶりの競馬。
破滅の魔法陣によって中断されていた競馬が、まもなく開催される。
今回は、そのための最後の調整を兼ねた、宣伝目的のレース。
距離は2000mの楕円形コースを2周、トータル4000mで行なわれる。
そして参加する馬は、各厩舎から屈指の馬達が集められた。
一体どんなレースを見せてくれるか、今から愉しみである。
──オロッパス厩舎
「はっはっはっはっはっ。ようこそ我が厩舎へ」
にこやかな笑顔でアイシャ・オルテンシア(ec2418)を迎え入れるオロッパス卿。
そのスタイルはまさに乗馬スタイル、貴族の嗜みともいえる服装に身を包んで、黒毛の馬に跨がっていた。
「志士のアイシャ・オルテンシアです。よろしくお願いいたしますね」
とにこやかに挨拶をする。
「志士というと、ジャパンの方ですか?」
「はい。かねてより、ここの競馬の噂は聞いています。‥‥是非参加したかったのでよろしくおねがいします」
と告げる。
「ええ、こちらこそよろしく御願いします。さて、それでは早速、『風のグルーヴ』を見て頂くとしましょう」
とオロッパス卿が告げると、厩務員が厩舎の奥より『風のグルーヴ』を連れてくる。
以前よりもさらに引き締まった体躯、そして優しい瞳は健在。
その『風のグルーヴ』に近寄っていくと、そっと首を撫で上げるアイシャ。
「はじめまして。頑張りましょうね♪」
そのアイシャの言葉に、軽く『風のグルーヴ』が肯いたように感じた。
そして訓練が開始される。
何分にも、初めての経験なので、アイシャはまず『仲良くなる』ということを前提にコースを駆け抜ける。
「うわわわわ、見掛けよりもしっかりとはしるのですね‥‥それじゃあ、少しずつ本気を出していきましょうか‥‥」
と、『風のグルーヴ』と仲良くなる為に走りつづけた。
──オークサー厩舎
「ようこそ。今回はよろしく頼みますよ!!」
「こちらこそ、精一杯がんばらせて頂きますのでよろしく御願いします」
ケイ・ロードライト(ea2499)が挨拶に向かったとき、オークサー卿はにこやかに握手を求めてきた。
それに対してケイもまたがっちりと握手を返すと、しばらくの間は世間話に花が咲いた。
「ほほう。ノルマン江戸村のことについてはお噂は重々伺っていますよ」
世間話の中で、ケイは話の流れをノルマン江戸村のことに向けた。
「そうですか。では、今現在の情況も御存知で?」
「ええ。かなり荒れ果ててしまったとか」
「実はですね。私の友人を含む冒険者が江戸村の様子を見に行っております。できればですが、皆が愛した、異国情緒溢れる村に手を差し伸べていただきたいですぞ」
という援助の申し建てをする。
「そうですねぇ。では、私の領地からも幾分かの援助を行ないましょう‥‥後日、使いのものを送りますので‥‥」
というふうにうまく話を持っていった後、ケイは早速調教を開始する。
厩舎に向かい、調教師達に話を聞いてみるが。
「『名将・サムソン』は中距離馬ですからねぇ‥‥2000mまではただひたすら作戦なしで全力でいけるのですが、2200mを越えるとスタミナが落ちて、あとは下がっていくのですよ」
「やはりスタミナですか‥‥」
「ええ」
「カイゼルカップより長い、4000mの長丁場ですから、やはりスタミナ重視の稽古になりますね?」
「そうですね‥‥となると‥‥」
ということで、色々と打ち合わせた結果、ウッドチップコースを中心とした走り込みなどを行った。
あとは本番を待つのみ‥‥
──カイゼル厩舎
「待っていました。今回も来てくれると信じていましたよ」
厩舎にヤってきたウリエル・セグンド(ea1662)の姿を見るなり、カイゼル卿はウリエルに近寄ってそう話し掛けた。
「今回も‥‥宜しく頼む‥‥」
とまあ、相変わらず代わりのないウリエルを見て、満足そうなカイゼル卿。
「それでは、あとはお任せします‥‥」
と告げて、馬に乗ったままコースにでるカイゼル卿。
「だ‥‥そうだ‥‥それじゃあ、久しぶりに走るか‥‥」
と、厩務員に連れられてきた『深きインパクト』に話し掛ける。
──ブルルルルルルルルッ
と、『深きインパクト』も軽くいななくと、ゆっくりとウリエルに近づいてくる。
「フッ‥‥」
と、一瞬だけ口許に笑みを浮かべると、ウリエルは静かに『深きインパクト』の首を撫で上げる。
そして素早く『深きインパクト』に跨がると、そのままコースにでていった。
苦手だったスタートの練習、そして自力の強化。
それらを中心に、ウリエルは調教を始めることにした。
──マイリー厩舎
「はっはっはっはっ。久しぶりですね」
にこやかに挨拶してるのはマイリー卿。
その正面には、羽鳥助(ea8078)が愉しそうに立っている。
「ええ。卿もお変わりなく。今回からまた宜しくおねがいしますね」
「ええ。今回は『天国のキッス』ではなく『真紅のダイワ』ですので、軽く流してみてください」
「判りました。では早速‥‥」
ということで、羽鳥は『真紅のダイワ』に跨がってコースにでる。
そのままトコトコと一周し、馬の状態を確認。
「ふぅん。安定しているね。それじゃあギャロップで‥‥」
と羽鳥は加速を開始、そのまま4000mを駆けはじめる。
その羽鳥の手綱裁きに、『真紅のダイワ』も素直についていく。
「ふぅん‥‥凄いね‥‥まるで俺の気持ちが判って居るみたいだ‥‥」
と呟きつつ、羽鳥は速度を上げていく。
そしてスタミナの持続時間などを見ていくと、それにあわせて特訓を開始した。
●レース当日〜江原卓・奥光和雄の『俺に乗れ!!』〜
──スタート地点
レース当日。
今回はひさしぶりのレースと在って大盛況。
スタート地点には大勢の人が集っていた。
「はい、今回からレースの解説をさせて頂く奥光和雄です」
「はい、同じく奥光さんの解説と予想に激しく突っ込みを入れさせて頂く江原卓です」
とまあ、特設ステージでは、二人の司会がレースを盛り上げていた。
「それでですね奥光さん。現在の所一番人気は『深きインパクト』です。新参者の『真紅のダイワ』と『名将・サムソン』は勝ち目が無いのでしょうか? ちなみに私のお薦めは『深きインパクト』一点ですが」
「そうですねぇ。仕上がりでは確かにその二頭はかなりいい感じに出来ているそうです。が、今回はダークホースが登場しています」
とまあ、色々と話が進む中、いよいよレースが開始される。
各馬一斉にスタートラインに到着。
そして今回のレースの主催者である6貴族から、カイゼル卿が代表として前に出て挨拶。
そしてそれが終ると、各馬一斉にスタートラインにつく。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」
各馬一斉にスタートしました。
先頭を走るのは『斬新・ユニバース』。豊武騎手が鮮やかに前にでました。
続いてアイシャ騎手の『風のグルーヴ』がぴったりと『斬新・ユニバース』をマーク。
その後方から『深きインパクト』『怒りのトップロード』『名将・サムソン』『真紅のダイワ』と続きます。
「ちょ、ちょっと、やる気十分なのね? ならこっちもいくわよ」
アイシャが手綱をゆるめる。
と同時に『風のグルーヴ』が加速開始。
「まだスタートなのに、あんな走り‥‥まるで素人だな‥‥」
ウリエルが手綱を引き締めつつそう呟く。
「伊達に調教騎手を続けていた訳ではないのでね‥‥」
とエヴィナ騎手もにこやかに告げる。
──残り3500m
依然変化無し
──残り3000mm
依然変化無し
全ての馬が現在のポジションをがっちりとキープ。
まるで相手の動きをじっと観察しているかのように‥‥
──残り2000m
依然変化なし
正面スタンド前にたどり着く一行。
順位はそのままで、どの馬もいつ仕掛けるかチャンスをうかがっていた。
──残り1500m
変化あり。
「‥‥どうしたの?」
わずかずつでは有るが、速度が下がりはじめた。
スタミナ配分ではない。練習の時は、もっと走れた。にも関らず、『風のグルーヴ』はここで速度ダウン‥‥。
「悪く思わないでください‥‥」
「その通りだ」
と、『風のグルーヴ』に入れ代わるように『深きインパクト』が上がってきた‥‥。
──残り1000m
変化あり
全ての馬が徐々に加速準備に入る。
それと同時に、熾烈なほどの内側争奪戦がさけれていく‥‥。
「この馬には、色々といい思い出がありますから‥‥申し訳ありませんが、ここまでのようです」
と『深きインパクト』が加速開始。
それにつられて、全ての馬が加速を開始した。
──残り500m
全てにおいて変化!!
「『深きインパクト』、ゴー!!」
ウリエルが手綱をゆるめる。それに合わせて、『深きインパクト』もリミッターを解除、全力モードになった。
「『真紅のダイワ』、加速開始っ!!」
このタイミングで大外に回り込み、最終直線に賭けた羽鳥の『真紅のダイワ』。
「御願い『風のグルーヴ』。私が就いているから、最後のふんばりをね‥‥」
と『風のグルーヴ』に話し掛けるアイシャ。
「最強ステイヤーの称号、お前が一番相応しいと私は宣言したいんだ!」
そう『名将・サムソン』に話し掛けると、そのままケイは鞭を入れる。
──そして‥‥。
「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉる。これは誰もが予測していなかった!! 一着は『斬新・ユニバース』。次点は『怒りのトップロード』 その差は首一つ!! ドレスタット競馬騎手によるワンツーフィニッシュだぁ!!」
1着:『斬新・ユニバース』
2着:『怒りのトップロード』
3着:『深きインパクト』
4着:『風のグルーヴ』
5着:『真紅のダイワ』
6着:『名将・サムソン』
歓声の中、豊武騎手は『斬新・ユニバース』の背中を撫でつつウィニングラン。
そしてエヴィナ騎手も、『怒りのトップロード』の走りを思い出しつつ、グッと拳を握り締めた。
「次こそは‥‥」
『怒りのトップロード』の背中で、闘志を燃やすエヴィナ騎手であったとさ。
──Fin