●リプレイ本文
●納涼というにはまだ熱い
──ノルマン江戸村
のどかな村。
あの惨劇よりかなり復興の進んだこのノルマン江戸村では、今まさに夏祭り真っ盛り。
このジャパン伝来の祭りを見ようと、パリはおろか、ノルマン各地から大勢の観光客があつまり、村はかなり賑わっていた。
「ふぅ。ようやく到着したですねー」
と額から流れる汗を拭いつつ、クリス・ラインハルト(ea2004)が馬車からゆっくりと降りてくる。
「そのようだな。しかし、随分と辺鄙な場所だ・・・・」
ジェレミー・エルツベルガー(ea7181)も馬車から荷物を降ろしつつ、そう呟く。
ちなみに二人とも、パリの『マスカレード前発・江戸村行き』の定期馬車にのってやってきた模様。
「あら、みなさん遅かったようですね」
と既に到着して馬から荷物を降ろしている紅千喜(eb0221) 。
ちなみに千喜は、自前の馬でのんびりと移動。それでも定期的に停車する定期馬車に比べれば、やはり多少は早かった模様で。
「まあ、馬車の旅というのも結構いいぞ。今度載ってみてはどうだ?」
と、ジェレミーの後に馬車から降りてきた春日龍樹(ec4355)が、やはり巨大な荷物を降ろしつつそう呟く。
「それはそうと、みなさんお宿はどうしますか?」
と一行に問い掛けるクリス。
「酒場に宿があるのでは?」
と千喜が告げるが、その千喜の肩をトントンとたたくと、ジェレミーが酒場のほうを指差す。
そこには、すでに大量の客が殺到しており、どうみても自分達の泊まるスペースなど存在しない。
「まさか・・・・こんなに凄いとは。皆さんはどうするのですか?」
と今度は千喜が問い返すと、クリス以外の一行は腕を組んで頭を捻る。
──テクテクテクテク
「あら、どこの冒険者さんかと思ったら、クリスさんじゃないですか。このまえはお世話になりました」
と、通りすがりの巫女・徳川葵がクリスに話し掛ける。
「いえいえ。あたしこそ、色々とご迷惑を御掛けしまして」
「いえいえ。私達も助かりました。それで、クリスさん達は、今回どんな依頼でやってきたのですか?」
と徳川葵に問い掛けられると、クリスは頭を振りつつ一言。
「あのー。徳川さん、私達の泊まれるような場所ありますか?」
「ええ。皆さんぐらいでしたら、離れの部屋が空いていますので、どうぞこちらへ・・・・」
ということで、なんだかんだという間もなく、江戸村でのベースキャンプ? を手に入れた一行。
そしていよいよ、皆で祭りを愉しみはじめたとさ。
●クリスの場合
──江戸村納涼祭実行委員会詰め所
早い話が、神社の境内。
クリスはそこにやってくると、祭りの差配と宮司、そして関係者達に話を持ち掛けていた。
「ふぅん。納涼びっくり大会?」
「はい。要はマイルドな肝試しですけれど、時節柄幽霊やゴーストはナシで。可愛い『妖怪さん』メインでいかがでしょうか?」
と話を進めるクリス。
具体的には、江戸村の外に在る大森林。
そこにホツンとある『お堂』に蝋燭を届けにいき、そして置いてある『御札』を取ってくるというだけ。
「そしてですね。今回の胆は、『妖怪さん』は全て子供達に御願いするということです!!」
「ふむ。愉しそうでいいのでは?」
「では、早速村の青年達にも助力を仰いでみよう。クリスさんは子供達にその話をこつそりと伝えて、手伝ってくれるか聞いてくれまいか?」
ということで、早速クリスは子供達の元に向かって走り出した。
●ジェレミーの場合
──江戸村・近くを流れる河
フンフンフン♪〜
鼻歌まじりで釣り竿を垂らしているジェレミーと千喜。
ちなみに二人は、荷物を置いてから早速『ノルマン亭』に向かうと、そこで女将と交渉。
酒場の手伝いを頼まれたのである。
ジェレミーの得意分野は弓、千喜は弓でも釣り竿でもなんでもこいである。
早速話を聞いた千喜は、釣り道具一式を借りて釣り場に向かって走っていく。
「女将、何か獲物の希望があれば聞くが。この辺りの森だと、兎とか雉とか猪とかか?」
と問い掛けるジェレミーにも、女将は釣り道具一式を手渡す。
「食べれる川魚ならなんでもね。できれば鰻が釣れるとベストかな?」
とにこやかに告げる。
「お、女将・・・・こう見えても俺は植物にも詳しくて・・・・この辺りの森からハーブや食用のものならいくらでも・・・・」
「そうだねぇ。鰻なら30匹ぐらいは欲しいわね。それも毎日で・・・・」
──ツツーー
ジェレミーの額から汗が流れる。
「お、お、女将・・・・俺の得意分野は・・・・」
「それじゃあ頼んだよ・・・・あああ忙しいいそがしい」
──ヒュルルルルル♪〜
隙間風がジェレミーの心に吹きすさぶ。
「釣りなんて・・・・初めての経験だ・・・・やるしかないか・・・・」
ということで、ジェレミーはこの河までヤってきていました。
ちなみに現在じこくは夕方。釣果は0。
「ふぅ・・・・これはまたなんとも・・・・」
──ピクッ!!
浮き代わりの『鳥の羽根』がクルクルと回転を開始。
それと同時に、糸がゆっくりと河に引かれて、そして一気にガツーーーンと辺りがくる!!
──バシッ!!
その動きに素早く併せると、釣り針をがっちりと魚の口にかませた!!
「ヒットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
そこからはジェレミーと魚との戦い。
相手の動きを読んで先に動く。
けっして無理をせず、相手の体力を奪うような棹捌き。
そして25分後、無事に一匹の河魚を釣り上げた。
大きさは33cm、まずまずの大きさである。
「よし、この調子で・・・・」
と、機嫌が戻ってきたジェレミーは、そのままノルマをクリアーするまでがんばりつづけたとさ。
──一方そのころ
河の上流。
そこで千喜は、静かに河の中に潜っていっては、川底を丹念に調べていた。
──ザバーツ
「川底の苔が食べられているし、河虫もかなり繁殖している・・・・この先には、かなり大物がいるみたいね・・・・」
と服を絞りつつそう呟くと、荷物をまとめてさらに上流へ。
そこで最高の釣りスポットを発見すると、千喜は早速竿を伸ばして糸を垂らす。
──ピクッ
ものの1分もたたないうちに、釣り竿に反応があった。
「いいわ。いい感触ね・・・・」
そのまましばらくは竿を握ったまま、相手の動きに任せる。
そして相手が疲れはじめたのを見ると、一気に引き抜いた!!
「あぁぁぁ〜ん。いいかんじね。この大きさ、太さ、堪らないわ!!」
と告げて魚篭に魚を入れると、、そのまま魚篭の口を閉じて河に沈める。
「ほう。いい型ぢゃな。それにいい腕だ・・・・」
と、近くで釣っていた麦藁帽子の老人が、千喜に話し掛ける。
「いえいえ、それほどでも・・・・」
「まあ、この辺りには『主』と呼ばれている巨大魚もいる。それに魅入られないことぢゃよ」
と告げると、老人は身軽な足さばきで岩をヒョイヒョイと飛んでいった。
「主ねぇ。そんなに大きいのなら・・・・と、またヒットー」
──ザッバァァァァン
ぶっこ抜きで獲物を釣り上げると、それを再び魚篭にいれようとする。
「ああん。ダメ。大きすぎて入らないわ・・・・」
ということで、近くの石を並べて簡単な生け簀を作ると、そこに放流。
そして日がくれはじめるまで、千喜は愉しい釣りライフを堪能していた。
●春日の場合
──トールギス鍛冶工房
「ほほう。いい工房ですねぇ」
と工房見学をしている春日が、クリエムにそう話し掛ける。
「かなり改造しましたから・・・・それで、ここにどのようなご用件でしょうか?」
と問い掛けられて、春日は愉しそうに自己紹介。
「お初にお目にかかる、俺は春日龍樹と言う者で鍛冶師を目指すものだ。もしよければ、後学の為、こちらの工房で学ばせてはもらえないだろうか?」
と告げる。
「学ぶといいましても、一般的なことしかここではやっていませんよ?」
「いやいやご謙遜を。トールギスと言えば、マシュウと並ぶノルマンの名工。拙者もそこそこに腕が立つ。いかがなものかと?」
と告げると、周囲にあるものをサッと一通り見渡す。
「え〜と、これは使う予定がないのかな? それならかんざしなどに作り直して、祭で売ってはどうだ? 俺もぜひ手伝いたいし、どうだろう?」
と、作りかけのダガーを見てそう告げる。
「まあ使いみちはまだですね。でも、かんざしとかに作り直すなんて、私にはできませんので・・・・」
と告げと、そのまま静かに作業を開始するクリエム。
「そうか。折角の儲け話だったのに」
「あたしは、鍛冶で儲けようとは思っていませんので。普通でいいのです、普通で・・・・」
そしてひたすらにスミスハンマーを振り落とすクリエム。
さすがにそこを邪魔してはまずいと、春日は一礼をしてその場からでていった。
●そんなこんなで
手伝いも順調。
夜、日が暮れると子供達が扮した妖怪達は森の中に消えていく。
そして肝試しが始まると、参加した大人達の叫び声や笑い声が、森の奥から聞こえてきた。
「愉しそう愉しそう・・・・そろそろですね」
と、茂みの近くの岩に腰掛けていたクリスも、そのまま順路を通ってくる男女を確認、そのまま手にした横笛を奏で始める。
ちなみにクリスの恰好、簪&花柄下駄を履いて、名器「桜の散り刻」を片手にしている。
「で、でた・・・・妖怪ペタ女だ!!」
男が動揺してそう叫ぶと、彼女の背中を押してその場から逃げていこうとする。
(うふふ・・・・驚いているようですね?)
「あ、あの音色を聞いていると、女性は全て『ペタ胸』になるんだ!! だからにげろー」
おいおい。いつのまにそんな噂が・・・・。
とまあ、そんな感じで次々と人が逃げていく。
「るーるるるー。どうして・・・・ペタムネはダメなのですか?」
と多少自虐的に落ち込んでいるクリス。
──クシャッ
「あとは任せろ。最強の『恐怖』を味合わせてくる・・・・」
と告げて、秋夜がその場から立ちさって行く。
「あ、悪鬼さん・・・・どうしてここに?」
と問い掛けるクリスに、悪鬼はクリスの後ろを指差す。
「がぁ?」
『丸ごとアヒルさん』を身につけたアンリエットが、頭を捻って笑っている。
──ダキシメッ!!
と、素早くアンリを抱しめると、そのまま静かに問い掛ける。
「お祭りにきたかったんだね。よかったねー」
「そうなー。があがぁ」
──ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
と突然、絹を引き裂くようなこえがした。
「お、オニがでたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
とクリスの前を駆け抜けていく先程のカップルの男。
その後ろからは、浴衣がはだけてあられもない姿の彼女が追従していた。
その光景にきがつくと、クリスはアンリの目を両手で目隠し。
「どうしたのー?」
「ア、アンリちゃんにはまだ早いのです!!」
「じゃあ、クリスおねーちゃんは?」
と問い掛けられ、何かを考えるクリス。
──現在、クリス超妄想大爆発中。しばしお待ちください・・・・。
ということでした。
──そして
手伝いも終えて、ジェレミーと千喜も露店で買い物三昧。
ちなみに依頼でないとはいえ、そこそこの報酬を貰ったので、二人はそれぞれ別々に行動していた模様。
「そ、それでは、この江戸村手拭いとフンドシ、髪飾り、おまけにこの紅を合わせて4Gでどうだ?」
「ダメダメ。それ全部だと7G。それ以上は負けられないな・・・・」
「じゃあ5Gでは?」
「うーん・・・・6G5S。ここから先はだめだよ」
とまあ、商魂たくましい値切り合戦を展開しているジェレミー。
ちなみに、すでにお土産は買いおえていたので、そのままショッピングを愉しんでいるという感じである。
「それでは、次に空中3回転など・・・・」
と大道芸・軽業師をしている千喜は、さらにお捻りを大量に貰っている。
そしてそれを元手に露店をまわり、さんざん散財してしまったらしいとさ。
「ふぅ。弟子入りというりは大変なのだな・・・・」
とクリエムに話し掛けている春日。
ちなみに手伝いという事で工房での作業を行なっているが、弟子入りではなかった模様。
「貴方の腕とかよりも、まず私達はトールギスの遺志を受け継いでいなくてはならないのです。まだこの村に初めてきただけの貴方を、直には弟子入りさせる訳にはいきませんので・・・・」
と告げるクリエム。
そしてふたたびクリエムの意識が集中すると、それにあわせて春日も同調。
一人の刻よりも効率的な作業が進んでいた。
そして。
一行は祭りを堪能し、そして再びパリへと戻っていく。
再びこの地を踏むことはあるだろう。
その時には、今よりも高みを目指してがんばっている人たちが・・・・。
──Fin