【ノルマン江戸村】なつまつり

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:4人

サポート参加人数:2人

冒険期間:08月01日〜08月11日

リプレイ公開日:2008年08月10日

●オープニング

──事件の冒頭
 ぴーーーーひゃららーーーー
 笛の音が鳴り響き、子供達が村の中を走りまわる。
 ここはノルマン江戸村。
 復興のさ中、年に数度の祭りの一つが始まった。
 ノルマン神社本祭は8月1日から始まり、7日間続けられる。
 この間、様々な神事が執り行われるが、同時に様々な催し物も開かれるという。

──ノルマン神社
「宮司!! 宮司はいらっしゃいますか!!」
 長い廊下を駆け抜けつつ、巫女の徳川葵が叫んでいる。
「ええい騒がしい。もっと落ち着きなさい‥‥どうしたのです?」
 と、書斎から姿を現わした宮司が、徳川葵にそう告げる。
「本祭で奉納舞を躍る巫女が、怪我をしてしまって‥‥間に合いそうにありません‥‥」

──冒険者酒場『ノルマン亭』
「ふぅ‥‥これは参ったねぇ‥‥」
 煙草を吹かしつつ、ノルマン亭の女将がそう呟く。
「一体どうしたのですか?」
 と戦うウェイトレスの九尾霧子がそう問い掛ける。
「本祭の日の弁当と、その他出前などなどでどうも料理人が足りなくてねぇ‥‥それと、食材も注文したものがどうも間に合うかどうか‥‥最悪、森の奥で狩をしてこないといけないねぇ‥‥」

──トールギス鍛冶工房
 ガギィィィィィィィィィィィィィィンガギィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
 激しく打ち鳴る鉄の響き。
 あ、こちらは今鎧作成の真っ最中なのですね。
 それは失礼しました。

──南部醸造所
「おお!! これは堪らん!!」
 必死に巨大な樽の中を覗きこんでは、隣の樽に移っていく南部杜氏。
「杜氏、いったいどうしたのですか?」
「予定よりも醗酵が早い。お前、なにかしたか?」
「いえ。最近の暑さで醗酵が早まったのでは?」
「急いで樽を冷やすぞ。でなければ、来週に樽詰めできぬぞ」
「あう、そう言えば、来週くる筈でした樽詰めの人たち、来れなくなったそうです!!」
「なんじゃと? 何が起こった?」
「はあ。元々冒険者だったらしく、アビスにいくので‥‥だそうで」
「ふぅむ。依頼がブッキングしていたのか。なら仕方あるまい‥‥じゃが、これはまいった‥‥」

──露天商組合
「まあ、まだ復興していないというのは仕方ないが‥‥露店の数も足りないですね‥‥」
 今回の江戸村に出店する露店。
 これらを取り仕切っているのが、彼『ミスター・夜風』。
 ここだけの話、『ミスター・夜風』は某闇オークションの責任者の一人らしいが、そんなの関係ねー。
 だが、その夜風さんも、今回は頭を悩ませている。
「いっそ、飛込みで露店を作る人はいないものか‥‥」
 ということで、場所が余っている露店でしたとさ。

 とまあ、どこもかしこもてんてこまい。
 さて、皆さんはこの村に来てなにをしますか?


●今回の参加者

 ea2004 クリス・ラインハルト(28歳・♀・バード・人間・ロシア王国)
 ea7181 ジェレミー・エルツベルガー(29歳・♂・レンジャー・エルフ・イスパニア王国)
 eb0221 紅 千喜(34歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ec4355 春日 龍樹(26歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

グロリア・ヒューム(ea8729)/ 水城 大河(eb0521

●リプレイ本文

●納涼というにはまだ熱い
──ノルマン江戸村
 のどかな村。
 あの惨劇よりかなり復興の進んだこのノルマン江戸村では、今まさに夏祭り真っ盛り。
 このジャパン伝来の祭りを見ようと、パリはおろか、ノルマン各地から大勢の観光客があつまり、村はかなり賑わっていた。

「ふぅ。ようやく到着したですねー」
 と額から流れる汗を拭いつつ、クリス・ラインハルト(ea2004)が馬車からゆっくりと降りてくる。
「そのようだな。しかし、随分と辺鄙な場所だ・・・・」
 ジェレミー・エルツベルガー(ea7181)も馬車から荷物を降ろしつつ、そう呟く。
 ちなみに二人とも、パリの『マスカレード前発・江戸村行き』の定期馬車にのってやってきた模様。
「あら、みなさん遅かったようですね」
 と既に到着して馬から荷物を降ろしている紅千喜(eb0221) 。
 ちなみに千喜は、自前の馬でのんびりと移動。それでも定期的に停車する定期馬車に比べれば、やはり多少は早かった模様で。
「まあ、馬車の旅というのも結構いいぞ。今度載ってみてはどうだ?」
 と、ジェレミーの後に馬車から降りてきた春日龍樹(ec4355)が、やはり巨大な荷物を降ろしつつそう呟く。
「それはそうと、みなさんお宿はどうしますか?」
 と一行に問い掛けるクリス。
「酒場に宿があるのでは?」
 と千喜が告げるが、その千喜の肩をトントンとたたくと、ジェレミーが酒場のほうを指差す。
 そこには、すでに大量の客が殺到しており、どうみても自分達の泊まるスペースなど存在しない。
「まさか・・・・こんなに凄いとは。皆さんはどうするのですか?」
 と今度は千喜が問い返すと、クリス以外の一行は腕を組んで頭を捻る。

──テクテクテクテク
「あら、どこの冒険者さんかと思ったら、クリスさんじゃないですか。このまえはお世話になりました」
 と、通りすがりの巫女・徳川葵がクリスに話し掛ける。
「いえいえ。あたしこそ、色々とご迷惑を御掛けしまして」
「いえいえ。私達も助かりました。それで、クリスさん達は、今回どんな依頼でやってきたのですか?」
 と徳川葵に問い掛けられると、クリスは頭を振りつつ一言。
「あのー。徳川さん、私達の泊まれるような場所ありますか?」
「ええ。皆さんぐらいでしたら、離れの部屋が空いていますので、どうぞこちらへ・・・・」
 ということで、なんだかんだという間もなく、江戸村でのベースキャンプ? を手に入れた一行。
 そしていよいよ、皆で祭りを愉しみはじめたとさ。


●クリスの場合
──江戸村納涼祭実行委員会詰め所
 早い話が、神社の境内。
 クリスはそこにやってくると、祭りの差配と宮司、そして関係者達に話を持ち掛けていた。

「ふぅん。納涼びっくり大会?」
「はい。要はマイルドな肝試しですけれど、時節柄幽霊やゴーストはナシで。可愛い『妖怪さん』メインでいかがでしょうか?」
 と話を進めるクリス。
 具体的には、江戸村の外に在る大森林。
 そこにホツンとある『お堂』に蝋燭を届けにいき、そして置いてある『御札』を取ってくるというだけ。
「そしてですね。今回の胆は、『妖怪さん』は全て子供達に御願いするということです!!」
「ふむ。愉しそうでいいのでは?」
「では、早速村の青年達にも助力を仰いでみよう。クリスさんは子供達にその話をこつそりと伝えて、手伝ってくれるか聞いてくれまいか?」
 ということで、早速クリスは子供達の元に向かって走り出した。



●ジェレミーの場合
──江戸村・近くを流れる河
 フンフンフン♪〜
 鼻歌まじりで釣り竿を垂らしているジェレミーと千喜。
 ちなみに二人は、荷物を置いてから早速『ノルマン亭』に向かうと、そこで女将と交渉。
 酒場の手伝いを頼まれたのである。
 ジェレミーの得意分野は弓、千喜は弓でも釣り竿でもなんでもこいである。
 早速話を聞いた千喜は、釣り道具一式を借りて釣り場に向かって走っていく。
「女将、何か獲物の希望があれば聞くが。この辺りの森だと、兎とか雉とか猪とかか?」
 と問い掛けるジェレミーにも、女将は釣り道具一式を手渡す。
「食べれる川魚ならなんでもね。できれば鰻が釣れるとベストかな?」
 とにこやかに告げる。
「お、女将・・・・こう見えても俺は植物にも詳しくて・・・・この辺りの森からハーブや食用のものならいくらでも・・・・」
「そうだねぇ。鰻なら30匹ぐらいは欲しいわね。それも毎日で・・・・」
──ツツーー
 ジェレミーの額から汗が流れる。
「お、お、女将・・・・俺の得意分野は・・・・」
「それじゃあ頼んだよ・・・・あああ忙しいいそがしい」
──ヒュルルルルル♪〜
 隙間風がジェレミーの心に吹きすさぶ。
「釣りなんて・・・・初めての経験だ・・・・やるしかないか・・・・」
 ということで、ジェレミーはこの河までヤってきていました。
 ちなみに現在じこくは夕方。釣果は0。
「ふぅ・・・・これはまたなんとも・・・・」
──ピクッ!!
 浮き代わりの『鳥の羽根』がクルクルと回転を開始。
 それと同時に、糸がゆっくりと河に引かれて、そして一気にガツーーーンと辺りがくる!!
──バシッ!!
 その動きに素早く併せると、釣り針をがっちりと魚の口にかませた!!
「ヒットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
 そこからはジェレミーと魚との戦い。
 相手の動きを読んで先に動く。
 けっして無理をせず、相手の体力を奪うような棹捌き。
 そして25分後、無事に一匹の河魚を釣り上げた。
 大きさは33cm、まずまずの大きさである。
「よし、この調子で・・・・」
 と、機嫌が戻ってきたジェレミーは、そのままノルマをクリアーするまでがんばりつづけたとさ。
──一方そのころ
 河の上流。
 そこで千喜は、静かに河の中に潜っていっては、川底を丹念に調べていた。
──ザバーツ
「川底の苔が食べられているし、河虫もかなり繁殖している・・・・この先には、かなり大物がいるみたいね・・・・」
 と服を絞りつつそう呟くと、荷物をまとめてさらに上流へ。
 そこで最高の釣りスポットを発見すると、千喜は早速竿を伸ばして糸を垂らす。

──ピクッ
 
 ものの1分もたたないうちに、釣り竿に反応があった。
「いいわ。いい感触ね・・・・」
 そのまましばらくは竿を握ったまま、相手の動きに任せる。
 そして相手が疲れはじめたのを見ると、一気に引き抜いた!!
「あぁぁぁ〜ん。いいかんじね。この大きさ、太さ、堪らないわ!!」
 と告げて魚篭に魚を入れると、、そのまま魚篭の口を閉じて河に沈める。
「ほう。いい型ぢゃな。それにいい腕だ・・・・」
 と、近くで釣っていた麦藁帽子の老人が、千喜に話し掛ける。
「いえいえ、それほどでも・・・・」
「まあ、この辺りには『主』と呼ばれている巨大魚もいる。それに魅入られないことぢゃよ」
 と告げると、老人は身軽な足さばきで岩をヒョイヒョイと飛んでいった。
「主ねぇ。そんなに大きいのなら・・・・と、またヒットー」
──ザッバァァァァン
 ぶっこ抜きで獲物を釣り上げると、それを再び魚篭にいれようとする。
「ああん。ダメ。大きすぎて入らないわ・・・・」
 ということで、近くの石を並べて簡単な生け簀を作ると、そこに放流。
 そして日がくれはじめるまで、千喜は愉しい釣りライフを堪能していた。



●春日の場合
──トールギス鍛冶工房
「ほほう。いい工房ですねぇ」
 と工房見学をしている春日が、クリエムにそう話し掛ける。
「かなり改造しましたから・・・・それで、ここにどのようなご用件でしょうか?」
 と問い掛けられて、春日は愉しそうに自己紹介。
「お初にお目にかかる、俺は春日龍樹と言う者で鍛冶師を目指すものだ。もしよければ、後学の為、こちらの工房で学ばせてはもらえないだろうか?」
 と告げる。
「学ぶといいましても、一般的なことしかここではやっていませんよ?」
「いやいやご謙遜を。トールギスと言えば、マシュウと並ぶノルマンの名工。拙者もそこそこに腕が立つ。いかがなものかと?」
 と告げると、周囲にあるものをサッと一通り見渡す。
「え〜と、これは使う予定がないのかな? それならかんざしなどに作り直して、祭で売ってはどうだ? 俺もぜひ手伝いたいし、どうだろう?」
 と、作りかけのダガーを見てそう告げる。
「まあ使いみちはまだですね。でも、かんざしとかに作り直すなんて、私にはできませんので・・・・」
 と告げと、そのまま静かに作業を開始するクリエム。
「そうか。折角の儲け話だったのに」
「あたしは、鍛冶で儲けようとは思っていませんので。普通でいいのです、普通で・・・・」
 そしてひたすらにスミスハンマーを振り落とすクリエム。
 さすがにそこを邪魔してはまずいと、春日は一礼をしてその場からでていった。



●そんなこんなで
 手伝いも順調。
 夜、日が暮れると子供達が扮した妖怪達は森の中に消えていく。
 そして肝試しが始まると、参加した大人達の叫び声や笑い声が、森の奥から聞こえてきた。
「愉しそう愉しそう・・・・そろそろですね」
 と、茂みの近くの岩に腰掛けていたクリスも、そのまま順路を通ってくる男女を確認、そのまま手にした横笛を奏で始める。
 ちなみにクリスの恰好、簪&花柄下駄を履いて、名器「桜の散り刻」を片手にしている。
「で、でた・・・・妖怪ペタ女だ!!」
 男が動揺してそう叫ぶと、彼女の背中を押してその場から逃げていこうとする。
(うふふ・・・・驚いているようですね?)
「あ、あの音色を聞いていると、女性は全て『ペタ胸』になるんだ!! だからにげろー」
 おいおい。いつのまにそんな噂が・・・・。
 とまあ、そんな感じで次々と人が逃げていく。
「るーるるるー。どうして・・・・ペタムネはダメなのですか?」
 と多少自虐的に落ち込んでいるクリス。
──クシャッ
「あとは任せろ。最強の『恐怖』を味合わせてくる・・・・」
 と告げて、秋夜がその場から立ちさって行く。
「あ、悪鬼さん・・・・どうしてここに?」
 と問い掛けるクリスに、悪鬼はクリスの後ろを指差す。
「がぁ?」
『丸ごとアヒルさん』を身につけたアンリエットが、頭を捻って笑っている。
──ダキシメッ!!
 と、素早くアンリを抱しめると、そのまま静かに問い掛ける。
「お祭りにきたかったんだね。よかったねー」
「そうなー。があがぁ」

──ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

 と突然、絹を引き裂くようなこえがした。
「お、オニがでたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 とクリスの前を駆け抜けていく先程のカップルの男。
 その後ろからは、浴衣がはだけてあられもない姿の彼女が追従していた。
 その光景にきがつくと、クリスはアンリの目を両手で目隠し。
「どうしたのー?」
「ア、アンリちゃんにはまだ早いのです!!」
「じゃあ、クリスおねーちゃんは?」
 と問い掛けられ、何かを考えるクリス。

──現在、クリス超妄想大爆発中。しばしお待ちください・・・・。

 ということでした。


──そして
 手伝いも終えて、ジェレミーと千喜も露店で買い物三昧。
 ちなみに依頼でないとはいえ、そこそこの報酬を貰ったので、二人はそれぞれ別々に行動していた模様。
「そ、それでは、この江戸村手拭いとフンドシ、髪飾り、おまけにこの紅を合わせて4Gでどうだ?」
「ダメダメ。それ全部だと7G。それ以上は負けられないな・・・・」
「じゃあ5Gでは?」
「うーん・・・・6G5S。ここから先はだめだよ」
 とまあ、商魂たくましい値切り合戦を展開しているジェレミー。
 ちなみに、すでにお土産は買いおえていたので、そのままショッピングを愉しんでいるという感じである。
「それでは、次に空中3回転など・・・・」
 と大道芸・軽業師をしている千喜は、さらにお捻りを大量に貰っている。
 そしてそれを元手に露店をまわり、さんざん散財してしまったらしいとさ。

「ふぅ。弟子入りというりは大変なのだな・・・・」
 とクリエムに話し掛けている春日。
 ちなみに手伝いという事で工房での作業を行なっているが、弟子入りではなかった模様。
「貴方の腕とかよりも、まず私達はトールギスの遺志を受け継いでいなくてはならないのです。まだこの村に初めてきただけの貴方を、直には弟子入りさせる訳にはいきませんので・・・・」
 と告げるクリエム。
 そしてふたたびクリエムの意識が集中すると、それにあわせて春日も同調。
 一人の刻よりも効率的な作業が進んでいた。


 そして。
 一行は祭りを堪能し、そして再びパリへと戻っていく。
 再びこの地を踏むことはあるだろう。
 その時には、今よりも高みを目指してがんばっている人たちが・・・・。


──Fin