【ふらり試験】なんとなく旅にでよう
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 72 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月10日〜08月17日
リプレイ公開日:2008年08月19日
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●オープニング
──事件の冒頭
静かな朝。
ノルマン江戸村からちょっと外れた所にある『ノルマン冒険者訓練所』。
ここでは、日夜冒険者となる為に、様々な『転職組』の人々が、日夜腕を揚げる為にはげんでいた。
魔術師を目指すものは魔法理論や術印の実践。
僧侶を目指すものは日夜聖書に学び、人々に教えを説く。
戦士を目指すものは、ただひたすらに『俺ツエェェェェェェェェェェェェェェ』を実践する為に肉体の鍛練を、そして指先自慢達はレンジャーとなるべく、日夜特訓を続けていた。
そんなある日のこと。
「そろそろ、現在訓練を受けている者たちの『資質検査』を行う時期ぢゃな」
「ええ。そのようで。この試験で、実技と学科が一定に満たないものは『冒険者不適性』という事で、もとの職場に戻って頂く事になっています」
「うむ。それで、今回の試験を受ける者たちは?」
「全部で36名。内訳は以下の通りです」
・戦士希望者‥‥‥‥‥8名
・魔術師希望者‥‥‥‥6名
・僧侶希望者‥‥‥‥‥4名
・レンジャー希望者‥‥3名
・騎士見習い‥‥‥‥‥2名
・バード見習い‥‥‥‥2名
・ジプシー見習い‥‥‥2名
・武道家見習い‥‥‥‥2名
・パラディン見習い‥‥1名(この冒険者訓練場では認定していない)
・傭兵見習い‥‥‥‥‥2名(同上、戦士希望と思われるが)
・賞金稼ぎ見習い‥‥‥2名(同上、レンジャー希望と思われるが)
・ナンパ師‥‥‥‥‥‥1名(勘違い野郎)
・勇者‥‥‥‥‥‥‥‥1名(自称勇者らしいが、実力は皆無)
「ふむむ。追加で講師を派遣してもらわないといかんのう‥‥」
「ええ。実際にそれぞれの実技と学科を試験して頂く『ベテラン冒険者』に来て頂くよう依頼を出してあります」
ということで、皆さんは、この依頼を受けて、『冒険者の卵達』の試験をしてください。
*お・ま・け☆
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冒険者適性試験
Q1:冒険者にとって、必要最低限な携帯用品を3つ上げよ
Q2:依頼の最中に、現地にて別の依頼を頼まれた場合。それを受けるべきかどうか?
Q3:仲間が危機的状況に陥った場合。自身を犠牲にして助けるか、それとも援軍を求めて仲間の元から立ち去るか?
Q4:冒険者としてしてはいけないことを3つ述べよ
Q5:誰も踏みいったことのない古い洞窟遺跡を発見。まず最初に入り口の外でするべき事は?
Q6:道中で食糧が尽きてしまった場合。愛馬を食するか? それとも自身を傷つけて食するか?
Q7:依頼の最中に親友の訃報が届いた場合。依頼を放棄して親友の元に向かうか? それとも依頼を遂行するか?
Q8:受けていた依頼に実は裏が有り、知らないうちに犯罪に手を染めてしまった場合。依頼遂行後にもみ消すか? それとも依頼を放棄するか?
Q9:依頼がない期間、冒険者は何をするべきか?
Q10:冒険者になって、まず最初にするべきことはなにか?
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●リプレイ本文
●なんとなく試験にきました
──シャルトル・冒険者訓練場
チュンチンチュンチュン。
雀が軒下で賑やかに騒ぐ。
まだ朝靄の掛かっている冒険者訓練場では、早朝から威勢のいい掛け声が聞こえてくる。
「まず、全ての基本は足腰の強化から・・・・」
そう叫びつつ、騎士見習い達を率いて走りこみをしているのはイクス・グランデール(ec5006)。
この冒険者訓練場での、彼の担当は『騎士』。
彼等に騎士としての資質があるかどうかを見定め、足りなければ手助けをする。それがイクスの教官としての使命。
「食事ののち、乗馬訓練に入る。それまで体力を温存しておくように!!」
イクスの言葉が騎士見習い達に響く。
「サー・イエッサー!!」
全員が歩幅を会わせ、一斉にそう返答する。
うーん、まだ騎士としては硬いですねぇ。
そして食後には訓練を開始。
「俺は主に馬の扱いについて教える。馬は騎士のみでなく冒険者に欠かせないパートナー。希望者がいれば是非申し出てくれ。馬を連れている者がいるのならば、そのものには騎乗云々の前に馬の世話のしかたを見せてもらおうか?」
お、オニ教官モードのイクスがやってきましたよ。
そのまま生徒たちの連れてきた馬と触れ合い、そしてそれぞれに駄目だしをするイクス。
世話がなっていない、毛つやが悪くなっているのは体調不良の証拠だの、とにかく細かい。
そののち一通りの乗馬講習を終えると、いよいよ郊外遠駆けを始めた。
──しばらく後
イクスチームはそのまま乗馬訓練を続行。
訓練場前に全員が集合すると、クリスチームとの合流になった。
そしてその場所に止められた数台の馬車の前に、『バード見習い』と『ジプシー見習い』達が集まっている。
「えーっと、それではこれより課外実習に入ります。担当教官はわたくしクリス・ラインハルトが務めさせて頂きます☆」
そう元気に叫んでいるのはクリス・ラインハルト(ea2004)。
ジプシーとバードは、人との関りが強い職種と思い、場の空気から、連綿と続く伝統の技と時々の流行を披露し分ける。
それを目的として、クリスは見習いたちと共に江戸村に向かうことにした。
「えー、これより向かうノルマン江戸村で、皆さんの成果を見させてもらいます!!」
「成果といいますと・・・・」
そう質問を返す見習いに、クリスは一言きっぱりと。
「みなさんは歌と踊りのエキスパート、それを実践して頂きます!!」
──ザワザワザワザワ
「あのー、私達は魔法を学べると思っていたのですが・・・・」
「それよりも、まず自分達がどのような職業であるかをもう一度考えてみてください」
そうきっぱりと言い切るクリスだが。
「月と陽の精霊魔法を駆使して戦う後衛ではないのですか?」
「魔法以外は、私達の職業は使い物にならないと思いますけれど」
「後衛である以上、魔法が使えないとどうしようもないのでは?」
とまあ、勘違いもいい言葉が返ってくる。
「ではみなさんに一つ質問をしますね。4大精霊魔法使いは確かに後衛ですけれど、彼等にとって必要なものは一体なんでしょうか?」
この問い掛けに、帰ってきた答えは一つ。
『強力な魔法です』
──ガクッ
「も、もういいです。早速実践に入りますので、馬車で移動しましょう・・・・」
ということで、クリス達は一路ノルマン江戸村へと向かって行った。
その馬車の護衛として、イクス達も随行する。
これもまた訓練。
●実践に勝る訓練はない
──冒険者訓練場外・演舞場
シュッシュッシユッシュッ
激しく撃ちなる剣戟の響き・・・・ではないな、なんだこの音?
「さて、みなさん作業は進んでいますか?」
そう問い掛けているのは三笠明信(ea1628)。
彼と昏倒勇花(ea9275)の二人の担当は戦士系全般。
すでに学科講習は一通り終えて、いよいよ実技ということにになった。
ちなみに学科で生徒たちに問い掛けたことは『人を殺す・傷つけるという事の意味と必要性』。
これについては、人それぞれの答えが帰ってきて、なかなか興味深かったらしい。
中でも『殺すということは罪だが、死んだやつも弱いから悪い』などという答えすら帰ってきている。
まあ、そんなおもしろい奴はさておき、実技では長さ2mの木の棒とロープを調達してきて、訓練生達に自分にあった武器を作ってくるようにということであった。
おのおのがナイフで気を削り、木刀のようなものを作っている。
「うんうん、みなさんいい感じですね・・・・」
と皆の所をまわりつつ呟いている三笠だが、とある女性戦士の手前で止まってしまった。
その女性はナイフで木を削ってはおらず、皆の所で余った木を大量に集めていた。
「君・・・・君の名前は?」
「クリスティーナ・キャペルスです」
にっこりと微笑みつつ、そう呟くクリスティーナ。
「君は削らないのかい?」
「はい。こうしてこうして・・・・」
と、貰ってきた木の棒を自分の一番長い棒に重ね、ひとまとめにして巨大な『木の棍棒』を作り出す。
「これがあたしの武器です・・・・」
その言葉に、三笠はやれやれという表情で肯く。
「がんばってください・・・・」
それ以上の言葉はでなかった。
──一方
「ええっと・・・・この訓練場では、『ナンパ師』と『勇者』になる為の教練はありません。それに、そもそもそんな職業の冒険者はいませんので・・・・」
とニコリと『勘違い野郎達』に告げる勇花。
「ですが、よく聞く吟遊詩人のサーガには、必ずといっていいほど勇者が存在します。つまり、誰でも勇者になれるのではないですか?」
「俺は女性を口説いて、一生楽して生きていきたいだけなんです!!」
とまあ、こまった面子でいらっしゃること。
「いえいえ、サーガというものは、人伝に伝えられているもの、その中で勇者と呼ばれているにすぎず、彼等の元々の職業は戦士だったり騎士だったりするのよ。だから、まずはそっちに進んで、基礎をしっかりとつけてみなさいね」
「俺は勇者としての基礎は十分に学んできた。なんならあんた、俺と手合わせをしてみてくれ・・・・その上で、あんたが俺に勝てたなら、俺はあんたの言うことを聞く。元々俺は、自分より弱いやつの言うことを聞きたくないんでね・・・・」
なんという我が儘千万。
「えーっと、パラディン戒律・・・・私闘を禁ず・・・・これは指導であって私闘にあらずよね・・・・でも」
と呟くと、勇花はひとっ走り三笠の元に向かい、戒律について確認。
のち戻ってくると、戦闘教練という名目なので私闘にあらずと判断、パラディンである三笠の認も下りたので、勇者候補生と手合わせを始めた。
──そして
「そ、そんな・・・・この俺が、こんなオカマに負けるなんて・・・・」
「やーねぇ。オカマじゃないわよ。こう見えてもパラディン候補生よ!!」
とまあ、圧勝する勇花。
そんなこんなで勇者見習いは『騎士見習い』に転向し、三笠の元で基礎訓練を開始した。
そしてその光景を見ていたナンパ師は、いつのまにか訓練場から姿を消していましたとさ。
──一方その頃
「・・・・ひっこめー。酒が不味くなる!!」
「そんなへたくそな演奏、聞きたくねーよ!!」
とまあ、果てしなく罵詈雑言を叩きつけられているバード&ジプシー候補生達。
余裕をかまして江戸村にやってきたのはいいものの、実技としてノルマン亭に向かった一行。
女将との交渉の末、流しのバード&ジプシーとして一芸を披露。
その結果がご覧のとおり。
「わ、わたしたちは冒険者のバードやジプシーでして、歌や踊りは今ひとつ・・・・」
「魔法でしたら得意分野ですが・・・・」
と必死に弁解するも。
「そんなバードがあるかー。冒険者のバードやジプシーも、一緒だろーが!!」
「歌って踊れないバードやジプシーに、なんの価値が在るって言うんだー」
「ひっこめペタ胸──」
とまあ、酷評盛沢山。
「く、クリス教官・・・・これはどういうことなのですか?」
「芸不足ですね」
とキッパリ切り捨てるクリス。
「みなさんそれが判らない限りは減点ですね。人を感動させる、喜びや悲しみを共有する・・・・それができなくて、何がジプシーですかバードですか? そんなことも解らないのでしたら、もう一度訓練所で基礎からやり直ししたほうがいいのです!!」
きっつーいお小言のあと、一行はもう一度村の隅で練習を開始、午後からはそこそこの腕前になったのでまあ『可』ということで。
──そしてその頃の
「皆さんの課題は『私に料理を作ってくる』です。制限時間は夕方まで、それではスタート!!」
と、突然の課題に動揺する訓練生たち。
「き、教官、それはどういう意図でですか?」
「それを知るのも試験ですから」
とニッコリと微笑む三笠。
そして一行は、それぞれがあちこちに走り出す。
食材を求めて山野を駆け巡るもの、旅の行商人から食材を求めるもの、河で釣りを始めるものなど。
それらのなかで、何名かは他の教官の元に走り出し、『三笠教官の好きな料理を教えてください』と質問するのだが。
「へ?」
と、別の場所で実技指導をしていた勇花の元に、例のクリスティーナとその友達のリノアがやってくる。
「あらあら、貴方たちも三笠さんの好物を知りたいの?」
と、他の生徒の打ち込みをあっさりと躱わしつつ、二人に問い掛ける。
「いえ、パラディンの戒律について教えてください。特に食生活についてです」
と問い掛けていた。
(あら・・・・三笠の課題をクリアーできるのね。中々見所があるわ)
と心の中で笑っている。
「そう・・・・それじゃあね・・・・」
と、他の訓練生のうちこみを受け流しつつ(鬼のような教官だこと)、勇花は戒律について説明を始めていた。
──そして
「・・・・ほとんど料理は食べられませんね・・・・」
と、並べられた一通りの料理を見つつ、三笠がそう告げる。
「一口も味見をしないで、どうしてそういうことがいえるのですか?」
と駄目出しされた生徒が叫ぶ。
「これは貴方のつくった料理ですね。スタミナを付ける為の香辛料、そして肉、魚と、バランスの取れた料理です」
その言葉に、うんうんと肯くものの。
「では、私の職業を思い出してください」
「パラディンですよね?」
「そう。私の職業には戒律が存在します。それについては調べていなかったのですか?」
と問い掛けられ、口篭る。
だが、そんな中でも、クリスティーナ&リノアの料理には舌鼓を打つ。
「計算されていますね。これはヤギですか、それも年老いたものですね・・・・香辛料の使い方も、やや辛すぎますけれどいいかんじです・・・・宗教戒律をよく理解していますね」
と告げる。
「そ、そんなのどうやって調べればいいんですか?」
「私に聞いてきたら良かったのですよ。皆さん、私の好きな料理は聞きましたけれど、職業によるタブーについては触れていませんでしたね?」
ということで、殆どのものが実技では失格。
まあ、色々とあるさね。
そんな中、勇花のほうも次々と襲ってくる生徒たちの攻撃をひたすら躱わし、そしてカウンターを放つ。
スタンアタックなので致命傷に至らないものの、稚拙な腕前のものが多い。
「ふぅ・・・・あんたたち、もう一度基礎からやり直していらっしゃい・・・・かすらせることはおろか、何かの腕の片鱗を見せてくれてもよかったのに・・・・」
ちなみに勇花の実技をクリアーしたものは3名のみ。その中にも例のクリスティーナはいた。
彼女の戦闘は流派などはなく、巨大棍棒をブンブンと振回す、俗に言う『ブンブン丸』である。にも関らず、勇花は2回も直撃を受け、そのうちの一撃で肋骨が砕けた。
手当を受けたのでまあ大丈夫ではあるが、とにかく強かった。
──そして
一通りの訓練を終える。
無事に卒業できたものは騎士1名、戦士2名。
三笠の期待していたパラディン候補生希望者は、その戒律の説明などを受けた翌日に荷物ごといなくなっていたというから堪らない。
それでも、未来を担う冒険者達が生まれたことはとても喜ばしい。
先輩諸君、これからも皆の手本となるべく精進してくれたまえ・・・・。
──Fin