開港祭〜かかってこい? チームB〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月13日〜08月18日

リプレイ公開日:2004年08月17日

●オープニング

──事件の冒頭
 ノルマン北方のとある港町。
 海産物資源の中継港として発達してきたその港町では、間もなく開港祭が始まる。
 街中は綺麗に飾り付けられ、彼方此方に華やかな衣装を着た祭りの実行委員達が忙しそうに走りまわっている。
 一年に1度、この港町に多く野人が集まってくるため、街としてもこの祭りを是非とも成功させたかった。

 そんなある日の事。
 催し物の一つである『コンバット・ボートレース』の参加者が、原因不明の食当りで次々と倒れていった。
「あああ‥‥まいった。このままでは、ボートレースが中止になってしまう‥‥」
 主催である港湾責任者は頭をかかえて困り果てていた。

──ということで冒険者ギルド
「えーっと、つまり、そのボートレースに出場する選手をギルドで募集して欲しいと?」
 受付けのギルド員は瞳を丸くしてそう呟く。
「そうなのじゃよ。当日のボートレースの開催はもう決定してあるし、領主様もたいそう愉しみにしておる。そこで中止になどなってしまったら、一体どんなことが‥‥」
 その港湾関係者の言葉に耳を傾けながら、ギルド員は依頼書を作成する。
「では、依頼は『ボートレース参加者募集』でよろしいのですね?」
 その受付けの言葉に、港湾関係者はさらに呟く。
「戦闘有り、妨害作戦なんでもありなので、そこのところを捕捉してほしい。あ、殺人は駄目じゃぞ」
「当然です!!」
 そのまま注文を書き取ると、ギルド員はそれを掲示板に張付けた。
「何でもありのバトルロイヤル式ボートレース‥‥これは来るぞ、暇な冒険者は‥‥」
 ギルド員はそう呟きながら。、掲示板に依頼書を張付けた。

●今回の参加者

 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea1720 クリスティア・アイゼット(31歳・♀・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)
 ea1743 エル・サーディミスト(29歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea3477 ダギル・ブロウ(37歳・♂・ファイター・ジャイアント・フランク王国)
 ea4210 ティーア・グラナート(28歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea4582 ヴィーヴィル・アイゼン(25歳・♀・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●開港祭〜なんでもありましたか‥‥〜
──ノルマン北方・とある港町
 派手なお祭りはいよいよメインレースを残すのみとなっていた。
 無事に依頼を受けてくれた冒険者の姿を見て、依頼人である港湾関係者達はみな満足している。
「あとは、最後のレースだけ。何もなく無事に終ってくれ‥‥」
 そんな祈りが聞こえてきそうな雰囲気も流れていた。


──チームB控え室
「‥‥と、これが今回のコース。直線なので全く問題はなし。ただ、海流が湾内ではこう流れている。昼からは恐らくこう流れると予測されるから、そこの調整も多少必要となるだろう」
 それはティーア・グラナート(ea4210)。
 レース前に、ティーアはコースの下見を行なってきたらしい。幸い航海術を納めていたため、海流などの状態もある程度把握、レース時にはどのような力配分が必要なのかを説明しはじめた。
「さて、これで船の準備は良し」
 そう呟きなから、ヴィーヴィル・アイゼン(ea4582)は、レース用ボートの左舷に小さくて軽い板をたてかけた。
 レース中は相手の船が左舷を走るため、そちらからくる妨害工作に対しての準備をしていたのである。
「‥‥ちょっと問題が発生しました‥‥」
 海から戻ってきたクリスティア・アイゼット(ea1720)が、不気味な『マグロファイター』スタイルから元の人間に戻りながらそう告げる。
「どうしたの? マグロファィター、問題有ったの?」
 妨害を防ぐ立て板に白兎の絵を書いているエル・サーディミスト(ea1743)が、そう問い掛ける。
「私の持っている魔法『ミミクリー』では、マグロファイターには変身できますが、その場合はうまく泳げないのです」
 マグロファイター、つまり『手足の生えたマグロ』。
 マグロの遠泳能力を得るためには、どうしても手足は邪魔である。
「最悪、マグロになってロープで引っ張るか?」
 それはダギル・ブロウ(ea3477)。
 自分の席に座り、サイズを確認している。
 ジャイアントである彼は、この船にとっては可速力を付けるために必要な存在。
 ただ、その体躯があうかどうかに問題が有った。
「ふうサイズはギリギリだ。俺は漕ぎ手に専念させてもらう。で、取り敢えず舳先にロープの準備でもしておくか」
 そのままロープを手に、舳先へと向かうダギル。
「あ、それと漕ぎ手の妨害については駄目だそうで‥‥」
 港湾事務局から受け取ったルールには、妨害はあくまでも妨害工作選手のみと書いてあった。
 ただし、レース中に妨害工作員と漕ぎ手の交替、船体をぶつけるなどの『漕ぎ手による直接攻撃でないもの』は容認である。
 なお、船体に対しての直接攻撃はペナルティ1。
「ふぅん。これ、結構難しいね。場所まで替わらないと駄目なんだ」
 ルールを読みながらエルがそう呟く。
「まあ、出来る所まで頑張りましょう」
 そう呟くノリア・カサンドラ(ea1558)。
 そして一同は、最後の調整を行うとスタートまで英気を養っていた。


●そしてレースは始まった
──スタートライン
「ミリーちゃん、全力で勝負、負けないからね!!」
 ノリアが、Aチームのミリランシェルに手を振った。
「あらら。貴方も参加なさっていたの。フフフ‥‥私も負けませんわよ」
「今日は敵同士だねっ。お互いに頑張ろう!!」
 エルもまた、Aチームのフェイテルにそう話し掛ける。
「こんにちは、お嬢さん。今回は敵同士になってしまいましたが、お互い頑張りましょうね♪」
 そう丁寧に挨拶するフェイテル。

 ちなみにボートの配列はこのとおり。

〜〜
・チームA
1.レム(妨害)
2.ミリランシェル
3.オイフェミア
4.レティシア
5.アリアス
6.フェイテル(妨害)


 チームB
1.クリスティア(妨害)
2.ヴィーヴィル
3.ティーア
4.ダギル
5.ノリア
6.エル(妨害)
〜〜

 既に会場は大勢の観客によって埋めつくされている。
 そして実行委員会からの挨拶も終ると、ボートはゆっくりと湾内を回り、再びスタートラインへとついた。
 そして会場全体がスタートへのカウントダウン開始。

 5‥‥4‥‥3‥‥2‥‥1‥‥0!!

 同時に2隻のボートがスタート。
 力一杯ボートを扱ぎはじめる一同。
「いきまーす。お・えす・お・えす・お・えす」
 チームBの音頭取りはヴィーヴィル。
 最初は加速を付けるために声の波を短くし、加速が付いたらゆっくりと長くした音頭に切替えるらしい。
 そして、いつのまにか両方の船が間合を縮めはじめた。
 見物客の方でも、そろそろ激しいバトルが始まるだろうと盛り上がりはじめた。
「魔法きます!!」
 ノリアが、チームAの妨害要員二人を見てそう叫ぶ。
 が、既にクリスティアは魔法の詠唱中。
「させないもん!!」
 エルが素早く詠唱。
 しかも高速で印を組み韻を紡いでいく。
──ザッパァァァァァァァァァァァン
 いきなりチームAの右舷で水柱発生。
 エルのローリンググラビティが発動した。
 大きく蛇行するAチームのボート。
 必死に体勢を立て直そうとしているのを横目に、間合を話そうとオールを力強く引く一同。
 と、突然ヴィーヴィルの全身が痺れはじめた。
(何? まさか魔法なの?)
 そう脳裏に思考が走ったときはすでに時遅し。
「あ‥‥」
 ヴィーヴィル、魔法抵抗失敗。
 突然の金縛りに襲われて行動不能‥‥。
(ごめんなさい‥‥なんか体が動かない‥‥)
 さらにムーンアローが、ダギルの手のオールに直撃。
 一撃では壊れなかったが、ビシッと亀裂が入った。
「ヴィーヴィルさんが‥‥動かなくなった!!」
 彼女のすぐ後ろでティーアが叫ぶ。
「ヴィーのオールをこっちに回してくれ!! 俺のはもう折れそうだ」
 そのダギルの叫びに、ティーアが急いでヴィーヴィルからオールを取ると、すぐ後ろのダギルに手渡す。
「‥‥行きます!!」
 素早く詠唱を終えたクリスティアが海に飛込む。と、その姿がマグロに変化し、あらかじめ舳先に備え付けてあったロープの先にある輪を頭に引っ掛ける。
 そしてタイミングを見計らって一気に引っ張ると、そのままマグロパワーで全力でボートを引っ張った。
 だが、Aチームは統制の取れた扱ぎ方で、徐々に間合を詰め始めてくる。
「ここで負ける訳にはいかない!!そーれい、おーえすおーえすーおえすー」
 声を掛けていたヴィーヴィルが行動不能とあって、ノリアが代わって号令担当。
「こんな所で負けてたまるかぁぁぁぁぁ」
 ダギルが全力で扱ぎはじめた。
 さらにマグロ・クリスティアが加速開始。
「追撃させる訳にはいかないモン!!」 
 エルが再び高速詠唱開始。
 Aチームのボートのちょっと前に向かってローリンググラビティ発動。
 だが、エルの魔法詠唱介しと同タイミングで、Aチームの船が蛇行する。

──ドッパーーーーン

 エルのローリンググラビティ発動。
 だが、Aチームは間一髪で直撃を真逃れた。
 もっとも、完全に避けきったわけではない。
 どうやら、最初に聞いた詠唱で、エルがローリンググラビティを使うことを誰かが察知、その上で詠唱が完成する前に船を回避行動させただけである。
 当然魔法など回避できるものではない。魔法からの回避ではなく、発生する波からの回避である。
 運が悪かった場合は突然の高波に飲まれてあわれ沈没だったであろう。
「なんで‥‥、なんで避けるのよぉぉぉ」
 エル、悲しみの余り叫ぶ。

──ビシッ!!
 突然ノリアの体にも痺れが走る。
「レム‥‥何かしたわねぇ!!」
 おっと、ノリアはレムの魔法攻撃に完全抵抗した模様である。
 流石は『殴りア‥‥もとい殴りクレリック』である。
 さらに畳み掛けるように、Aチームからは魔法の応酬。

──ビシッ!!
「‥‥この野郎‥‥」
 おっと、ダギルにもスリープ発動。
 だが魔法抵抗成功したため効果無し。
 魔法耐性に弱いダギルだが、よくぞ耐えたというところである。
「エル、これでも投げてやれ!!」
 そう叫びながら、ティーアがあらかじめ用意してあった袋をエルに手渡す。
「おっけい!! これでも食らえっ!!」
 魚、海老、貝‥‥新鮮な海の幸がAチームのボートに向かって投げ付けられるる
「ティーア!! こんなの渡してどうするつもりなのよぉ」
 動揺しているエル。
 その間にも、Aチームは全力でボートを扱ぎ続けている。
 一定の間合を取り、常にレムの魔法の範囲に入れられてしまうBチーム。

──ビシッ!!
「レムぅ。この借りは必ずかえすからね‥‥」
 あら、今度はエルにコアギュレイト。だが、エルも魔法抵抗成功。

 そしてAチームフェイテルのスリープも、再び発動したらしい。
──ビシッ!!
「フェイテル!! 同じ手は喰わないぜ」
 なんと、ダギルさらに魔法抵抗成功!!
「このぉぉぉっ」
 エルが手にした小麦粉をAチームのボートに向かって次々と投げ付ける。
 空中で小麦粉の入った袋が破れ、Aチームの視界を奪う。

──ドゴォォォッ

 そして直後、Aチームの船体に大きな揺れ。
 そしてその近くで、頭に瘤を作ったむマグロ・クリスティアがブカーッと浮いていた。
 どうやら小麦粉の煙幕に紛れてマグロ・クリスティアが体当たりを敢行。
 Aチームの船体に亀裂を入れた模様。
 だが、クリスはそのまま意識を失ってしまった。
 ちなみに、泳げないマグロの結末を知っているものは、この情況が如何に危険であるか御存知であろう。
「く、クリスっ!!」
 そのままでは窒息してしまうため、浮いているクリスを回収して船体横に固定、水流が頭から流れるようにした。
 そしてBチームも更に加速を開始する。
 が、既に時遅し。
 Aチームの船はゴールの浮きを越えていた。
「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっるっ」
 実行委員の叫び声で、レースは終了した。


●そして大宴会 
 ボートレースも無事に終り、一同は愉しい一時を過ごしていた。
 昨日の敵は今日の友。
 もっともいつもギルドや酒場で顔を突き合わせている連中なので、いつものような雰囲気に戻っただけである。
「‥‥この料理、大変おいしゅうございますわ」
 宴会といえばミリランシェル。
 既に宴会を仕切って楽しく過ごしている模様。
 そして宴会は朝まで続いた‥‥。

〜FIN〜