【ふらり鍛冶師】鉄は熱いうちに打て

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月09日〜09月19日

リプレイ公開日:2008年09月18日

●オープニング

──事件の冒頭
 ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 水面が激しく波打ち大量の水蒸気が吹き出す。
 その手前で、鋏(やっとこ)を握り締めて渋い顔をしているクリエムが、静かに引き上げた剣を横に並べる。
「・・・・またですか・・・・どうしてこんなのができるのでしょうね・・・・」
 そう呟きつつ、クリエムは父の残した資料を今一度よく眺める。
 そこに記されている材料を魔法炉に入れ、そして魔導師に頼んでイクスティンクションの炎を発生させる。
 そして溶けた材料を引き出し、鋼材にしてから再び加熱、刀剣を打ち出す。
 その行程に間違いはない。
 だだ、その行程でできる筈の金属が出来ないのである。
「完成すると、こんな感じでできるのに・・・・」
 そう呟きつつ、クリエムは『赤褐色の刀身に木目調の紋様の入った刀剣』をじっと眺める。
 同じものを作ろうとするが、どうにもうまく精製できない。
「父様の残した資料には、ヒンドゥー語で記されているものも多いから・・・・ここの部分のものが偶然出来たって言う事かしら?」
 そう呟くと、クリエムはしばし炉のなかをじっと眺めていた。


 さて。
 世の中には様々な名刀と呼ばれるものが存在します。
 それらのものの中には、偶然出来上がってしまったものも多く、そしてそれらは二度と作る事の出来ない魔剣として扱われているものも存在します。
 鍛冶屋を目指しているみなさん、自分の力でそのような名剣を生み出してみたくはありませんか?

●今回の参加者

 eb2927 朧 虚焔(40歳・♂・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb9212 蓬仙 霞(27歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb9226 リスティア・レノン(23歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec2965 ヴィルジール・オベール(34歳・♂・ファイター・ドワーフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●鉄は熱いうちに打てってか
──シャルトル・プロスト領城下街
「随分と大きい城だなぁ‥‥」
 プロスト辺境伯城の目の前で、朧虚焔(eb2927)は静かにそう呟いている。
 今回彼は、プロスト辺境伯代行に、自分が使っていいと許された第二鍛冶工房にやってきていた。
 が、そこの入り口で、守衛の人に止められ、許可証をプロスト辺境伯代行に貰ってくるように告げられたのである。
「‥‥ふむ、みかけぬ顔じゃな。ここにいかな用じゃ?」
 そう入り口で朧に呟く東洋風の女性。
「はじめまして。朧虚焔というものだが、プロスト辺境伯代行にお目通りを御願いしたい。用件は、第二鍛冶工房の許可証が戴きたいと伝えて頂ければ判るので」
 そう告げられて、女性はふむ、と頭を傾げてから、城内に入っていった。
 そしてしばらくしてから、先程の女性が羊皮紙を手にスッと姿を表わす。
「ほれ、貰ってきたぞ。倉庫の備品については、そこの管理人に申請して貰ってこいということだそうじゃ。その他わからない事があったら、管理人に聞きなさいとも申しておったぞ」
「ああ、助かる。それじゃあな‥‥」
 と頭を下げて、朧は第二鍛冶工房に向かった。

──第二鍛冶工房
 そこは巨大な鍛冶工房。
 いくつもの工房が入っている巨大な建物、その一角に、朧用の第二鍛冶工房がある。
「ふぅ。これからここで作業するのか‥‥」
 そう呟くと、朧はまず炉に火を入れ、備品のチェックを開始した‥‥。



●弟子として大切な事
──ノルマン江戸村・トールギス鍛冶工房
「これが噂の魔法炉ですの?」
 クリエムのいる工房を訪れたヴィルジール・オベール(ec2965)とリスティア・レノン(eb9226)、蓬仙霞(eb9212)の3名。
 今回はヴィルジールの弟子修行のサポートとしてやってきた二人だが、初めて見る工房に、皆心を踊らせていた。
 特にウィザードであるリスティアは、魔法炉にかなり興味を持ったらしい。
「ええ。今から火をくべますので」
 と告げると、クリエムは一本のロットを手に取り、意識を集中する。
 やがてその先に炎が点ると、それを炉の入り口に差し込み、素早く引出す。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 瞬時に炉の中で炎が渦巻きはじめる。
「起動には、このロットを用いて‥‥ふむふむ、最高温度に達するまでは、どれぐらいの時間ですか?」
「大体30分ぐらいですね」
 そう話をしていると、作業着に着替えたヴィルジールが姿を表わす。
「さて、それじゃあお手伝いといきますか」
 そう蓬仙が告げると、ヴィルジールも静かに肯く。
「クリエム殿、改めてご指導のほう、よろしく御願いしまする‥‥まずは見学というところですか?」
 そう問い掛けると、クリエムはニコリと微笑んでから、近くのテーブルの上に置かれている羊皮紙を指差す。
「そこに置いてあるのが今日から手掛ける注文品のの仕様書ね。そこからどれでも一枚選んで、それを作って頂戴」
 といきなり告げられる。
「早速実践でござるか。では‥‥」
 と告げてから、ヴィルジールは仕様書を一通り見る。
 様々な武具の使用が記されているものの、作り方などは一切書かれていない。
「クリエム殿? 作り方はいかように?」
「あ、選んでくれればこちらから指示を出しますので‥‥」
 と告げられ、ヴィルジールはとりあえず手頃な魔法剣の注文書を取り出すと、それをクリエムに手渡す。
「この魔法剣では?」
「いいわね。では‥‥」
 と告げて、クリエムは必要な材料をメモし、それをヴィルジールに手渡す。
「それを倉庫から持ってきて、記されている定量を計って炉に入れてね。あとは溶けてから普通にロングソードを作り出す方法で御願い」
 と告げられると、早速ヴィルジールは材料を取りに走った。
 そして額から汗を流しつつひたすらにハンマーを振るうクリエムを見て、リスティアが一言。
「レジストファィアで熱さを防ぎましょうか?」
「いいわ。この熱さが必要なの。実際に自分の肌で温度を感じないと、体感できないとなにも作れないから‥‥」
 と返答を返す。
「そ、そうですよね‥‥」
「ええ。お気遣い感謝しますね」
 とニッコリ微笑むと、すぐさま真剣な表情になってハンマーを振るうクリエム。
 その工房の奥では、完成した武具を丹念に磨き、用意されている鞘に納めている蓬仙の姿もあった。
「これが魔法剣、でこっちが魔刀‥‥ずいぶんとすごいものが一杯あるんですねー」
 とにこやかに告げつつ、完成した刀剣をじっと観察する蓬仙。
 その冷たくも鋭い刀身に、心を奪われそうになっている。
「ん? それはクリエム殿の作品ぢゃな。たいしたものぢゃろう」
 と倉庫から材料を持ってきたヴィルジールが静かにそう蓬仙に告げる。
「ヴィルも刀をつくるのかな?」
「わしはロングソードタイプぢゃな。まあ、うまくいくように祈っていてくれ‥‥」
 と告げられ、静かに肯く蓬仙。
 そしてヴィルジールとは入れ代わりに、リスティアも蓬仙の元にやってきた。
「どうでした?」
「もう全然駄目。話もできないぐらい真剣ね‥‥」
 と、少しガッカリしているリスティア。
「ふぅん‥‥」
 と納得していると、ふと蓬仙はあることを思い付いた。
「そういえば、リスティアは魔法がつかえるんだよね?」
「え? ええ、そうだけれど?」
「なら、ボクにも教えてほしいな。ほら、ボクってば、志士のクセに剣ばかり磨いてきたから。そろそろいっぱしの魔法を覚えたいんだ。ティアは、水魔法使うの?」
 と、瞳を輝かせつつ問い掛ける。
「そうね。まあ水は使えるけれど?」
「御願いしますっ!!」
 と頼み込み、リスティアと蓬仙の二人は外に移動、そこで魔法の修練を開始した。



●進む作業
──プロスト領城下街・第二鍛冶工房
 ガギィィィィィンガギィィィィィィィン
 激しく打ち鳴らされる鉄の響。
 工房内の温度はかなり高まっている。
 そんな中で、魔法炉によって溶かされた原料を引き出し、魔法のスミスハンマーでひたすら叩き続けている朧。
 魔法炉によって溶かされた魔法剣の材料。
 それをひたすら叩きつづけ、不純物の全てを飛ばす作業。
 それが終るまで、体感時間で約10日。
 今回はその感覚を養うだけで時間が掛かってしまう。
「ふぅ‥‥これはなかなか大変だな‥‥」
 と告げるものの、ジャパンの普通の刀など、まともに作るのに約100日はかかる。
 魔法炉と魔法の鎚、そしてそれらの材料と、一通り揃っていてどこまで時間が短縮されるか。
 その感覚を養うだけでも、今回はじつに有意義であった。
 そして倉庫に置いてある材料と、簡単な魔法剣作成のレシピ。。
 さすがにブランについては厳重管理の上、使用許可はなかなかおりないらしい。
 それ以外の材料と少量のブラン、そして核となる魔法核などについてはあるていど使用許可が降りていた。
 そして朧はただひたすら、様々な材料比率の金属を精製し、ダガーサイズのナイフを幾つか作りあげる。
 時間の関係上、そこまでしかできなかった‥‥。
「比率がほんの僅か違うだけでも、そして材料を鍛練する時間が長かったり短かったりするだけでも、かなり強度や切れ味が変わってくる‥‥」
 たのしそうにそう告げると、朧はただひたすらに作業を続けていく。
 側には、一番簡単な魔法のナイフの作り方の記されたレシピがおいてあった‥‥。



●そして
──ノルマン江戸村・トールギス鍛冶工房
 愉しい食卓。
 皆で囲みつつ、食事を取る。
 それぞれの修行の話や、ヴィルジールがクリエムにコツを尋ねたりと、じつに愉しそうな時間が流れている。
「そういえばクリエム殿。ワシは『魔法の野太刀』を作りあげたいのぢゃが、材料費などで大体どれぐらいかかるのじゃ? 200Gぐらいか?」
 と問い掛ける。
「野太刀ですか‥‥そうですね。簡単な見積もりとして大体ですけれど、吟味した材料を一から集めれば2000Gぐらいですね」
 その金額に、ヴィルジールは意識が遠くなっていく。
「に、二千ですと?」
「ええ。野太刀でしたらそれぐらいで」
「なら、ふつうのロングソードでは?」
 そう朧が問い掛けると、クリエムはキッパリと
「800Gぐらいね」
 と告げる。
「そ、そそそ、その程度でしたら‥‥こここここんどボクにも一振り」
 と声が震えつつ呟く朧に、クリエムは一言。
「今提示した金額は、大体の『売り値』ですから、材料費などはその半分程度で済みますね。失敗しなかったということが前提ですけれど。今度時間がありましたら、一振り作ってさしあげますよ」
 とにこやかに告げるクリエム。
 そして残った時間、ヴィルジールはひたすらに仕様書とにらめっこ、実践でクリエムの技術を肌で感じ、色々と指導をしてもらっていたらしい。


 さて、朧とヴィルジール。
 二人の生み出す魔剣が世間に姿を表わすのは、いつのころのことだろう‥‥。

──Fin