●リプレイ本文
●噂と嘘、真実と偽りの狭間
──冒険者酒場マスカレード。
その二階席で、ラシュディア・バルトン(ea4107)はミストルディンと静かにハーブティーを飲んでいる。
「エルハンスト・ヨハネス卿については、表向きあまり悪い噂がないのよねぇ。質実剛健な領主ってところかしら?」
ミストルディンがそう告げると、ラシュディアはそのまま羊皮紙を広げ、筆談の準備に入る。
「で、裏は?」
と告げると。ミストルディンはペンを取り、羊皮紙に精霊碑文字を走らせる。
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エルハンスト・ヨハセスは悪魔崇拝者である。
自領とその近辺にて悪魔が徘徊しているのを確認、セフィロト騎士団は、悪魔達が『領内の民間人』に被害が及ばないようにする為の交渉人である。
アビスを支配している悪魔『ベルフェゴール』との密約もあり、あまり大きな動きは見せていない。
アビス自体が、悪魔達にとって効率良く魂を得る為の場所であるから。
その場所を提供し、その見返りを受けているらい。
なお、これらの情報については、確証の段階ではなく、今までに得られた情報を元にした推測である。
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「ふぅ‥‥なるほどねぇ」
そう告げると、ラシュディアは羊皮紙を手に取り、近くの暖炉に放り込む。
「まあ、そこまでの話が聞けただけでもいいや。それじゃあ行くとするか‥‥」
「まあ、気を付けてね。相手は普通じゃないから」
そのまま手をヒラヒラと振りつつ、ラシュディアは酒場を後にした。
●COMBAT
──タラララッタターラララッタッター
シャルトル地方・ヨハネス領。
その南方に位置する広大な未探索地域。
その奥に存在するオーガの砦。
それを攻略する為に、一行はベースキャンプの設置されている最前線にやってきた。
「ふぅーん。これがねぇ‥‥」
ベースキャンプの中、テーブルに置かれている一枚の羊皮紙を見ながら、騎士団長のコナタ・ラッキースータは肯いている。
「ええ。先日の襲撃の際に、敵忍者が使用していたナイフです。どこかで見たとか、何かこころあたりはないのですか?」
そうリディエール・アンティロープ(eb5977)が問い掛けると、コナタはウンウンと頷いている。
「これがまた、さーーっぱり見当もつかないんだよね。この手のナイフなら、どこにでも売っていそうだからさぁ‥‥」
「そうですか。では、オーガの領域に踏み込んだらこうなる‥‥というような伝承だとか、バアルの言葉にあった『古き習わし』についてご存知の事はないでしょうか?」
と次の質問に入る。
「オーガの領域っていうか、あのあたりは『領内の未探索地域』なため、こっちで調査するのは自由なんだよねぇ。どちらかっていうと、オーガ達が勝手に領内に入ってきて、勝手に砦を作ったって言うかんじなんだけれどねぇ‥‥」
「コナタ騎士団長の言い分は判りますけれど、領地という概念のないオーガですから、仕方の無い事ではないでしょうか?」
そう意見しているのはエミリア・メルサール(ec0193)。
「うーーん。まあそうなんだけれど、少しでも領内を豊かにする為には、新しく開墾する必要があるんだよねぇ‥‥で、あいつら臭いしじゃまだし」
──バン!!
コナタの言葉に、薊鬼十郎(ea4004)がテーブルを叩く。
「それは偏見です。オーガは悪い輩ばかりではありません。ギュンター君みたいに優しい子だっているんですから」
そう力説する鬼十郎。
「うあ?」
ああ、横でギュンター君が頭を捻っている。
あまり難しいことは厳しいのね?
「そもそも、どうしてここにギュンター君がいるのですか? わざわざ今回の依頼だって、ギュンター君にお使いを頼むなんて‥‥」
「ああ、ちょっとそれは違うね。ギュンター君ではギルドにたいしての依頼の護衛を御願いしただけ。まあ一緒に来てもらったのは、戦力として適当だから。同じオーガなら、相手の出方も判って居るだろうし、なにより『オーガを騙しての奇襲』にも繋げられるから」
そう告げる副騎士団長のアーカード・マイスター。
「貴方はギュンター君に同士を騙せとおっしゃるのですか?」
怒りでワナワナと拳を握る鬼十郎。
「すまないね。使える戦力はフルに使わせてもらう。必要ならば仲間だって切り捨てる。そういう生き方をしてきたものでね‥‥まあ、話し合いで解決しなかったら、その時はその時ということだ。最前列で、森の中のオーガに向かって叫ぶぐらいはしてもらわないと、こっちだって大金払っているんだから」
そのアーカードの言葉に、鬼十郎はギュンター君を見る。
「どうして、こんな危険な依頼を引き受けたの?」
「だって、ぎゅんたが話合いすれば、余計な血が流れないから」
そうにこやかに告げるギュンター君。
「ということだ。交渉決裂の場合は戦うしかないだろう?」
ニヤニヤと笑うアーカード。
「まあ、こっちも契約できている以上はやれるだけのことはやらせて貰うさ。早速だがコナタ騎士団長今までの敵の配置と種別、装備等教えて欲しい」
仕事モードに突入したセイル・ファースト(eb8642)と、その横でさし出された地図をじっと見ているバーク・ダンロック(ea7871)とシャロン・オブライエン(ec0713)の二人。
「砦近くまでは飛行で‥‥そこから突撃していくか」
ある程度の戦術を固めたバーク。
「オレとセイルが前衛、その後ろに交渉人のギュンター君っていうところか。バークは上空を飛行して、隊列の中程にエミリアとラシュディアっていうところだな」
シャロンが現状の戦力から、配置を考えはじめる。
「左右は?」
「重騎士と軽騎士のペアを一つずつで良いだろう? もう一人の軽騎士は鬼十郎、ギュンター君、そして魔術師の護衛についてもらうということで。で、レンジャーは後方から弓で警戒、忍者にも十分に注意を払うという事でどうだ?」
そう告げるシャロンに、他のメンバーも肯く。
「あの‥‥その仮面ですけれど、森に入るのにキツくありませんか?」
エミリアがシャロンにそう告げる。
「ん? ああ、これか。オレはパラディン候補生だから、可能な限りは付けていた方がいいらしい‥‥」
ちなみにシャロンとバークの二人、今回の依頼を受けた直後にパリ郊外の阿修羅寺院に向かい、フィームから教えを受てきた。
バークがパラディンとして参加する事については問題は無い、候補生のシャロンが受ける事に付いても同上。候補生の責務については、パラディンと同じと告げられた為、5戒その他も全て適用されているらしい。
「それじゃあ、早速いくとしましょうか‥‥」
そうセイルが告げると、一行は出発の準備を開始した。
●ダイハードな展開
──未探査地域
「‥‥ぎゅんた敵じゃない、話し合いに来た!!」
未探査地域に突入してから半日。
斥候のオーガと鉢ち合せになり、すぐさまギュンター君が交渉に入った。
『この土地俺達の土地、人間はいるよくない』
『この土地人間達の土地、お前たちがあとからきたよくない』
『この土地が人間達の土地、それ人間が勝手に決めた。俺達この土地に昔から住んでいる』
『話し合いする。どこかで判りあえる』
『いや、人間は俺達を殺す。人間は敵、判りあえない』
『まって、話まだ終っていない』
『オマエオーガなのに人間の味方する、それは敵!!』
ああっ。交渉が決裂した模様。
その直後に斥候のオーガが大声で叫ぶ。
それと同タイミングで、森の奥から大量の矢が飛んでくる!!
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
だが。
矢が飛んできた直後、ラシュディアが高速詠唱でストームを発動。
飛んでくる矢を全て竜巻で叩き落とす。
そして竜巻が収まると、今度は後方のレンジャー部隊が矢の飛んできた方角に向かって大量の矢を放つ!!
──ウグゥグウァァァァァァァァァァァァァァァァァ
森の置くから絶叫が聞こえてくる。
そして次々と武装したオーガ達が姿を表わすが、セイルとシャロン、鬼十郎の三人がすぐさま武器を構えてそれらを押さえに走る!!
「悪いな‥‥死なない程度には押さえるが‥‥自信ねぇなっ」
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
走ってくるオーガに向かって、セイルがスマッシュを叩き込む。
それも自分の前方に来る敵オーガに向かって、衝撃波を叩き出した!!
『グウォグギィィィィィィィィ』
その衝撃を真面に受けたオーガ達はすぐさま撤収。
入れ代わりにオーグラとミノタウロスの混成部隊が突撃してくるが、こんどはシャロンとバークが迎撃体勢に入った!!
「邪魔だ、死にたいのかっ!!」
──ズバァァァァァァァァァァァァァァァッ
そう叫びつつシャロンがデスサイズを振回す!!
その直撃を受けた数体のオーガは戦意喪失でその場から逃走。
「ふんっ‥‥うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
一方、バークは魔法の事前発動を行なった後、敵オーガの軍勢のど真ん中に向かって飛んでいく。
そのバークを迎撃する為に次々と矢を放つオーガ達だが、それらはバークの鎧で受け止められていた!!
「すまんな‥‥」
そうバークが呟いた直後、バークを中心にオーラの波動が四方八方に飛んでいく。
その直撃を受けたオーガ達もまた逃亡を開始。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
後方では、レンジャー部隊に向かって突然飛び出してきた忍者達に向かって、リディエールが高速詠唱アイスブリザードで対処。
──ガギン!! キィィィィィン ガキィィィィン
「こっちにきたら加減しないわっ!!」
「うが。にんじゃたたかうよくない!!」
鬼十郎&ギュンター君の息の合ったコンビネーションも炸裂。
忍者の襲撃に対して一歩も怯むことはない。
「こっちは大丈夫です、早く砦まで!!」
そのリディエールの言葉に、セイルが敵オーガを切り裂きつつ突撃!!
森が開けて眼の前に巨大な作りかけの要塞が目に入った。
「ふん‥‥怪しげな要塞。怪しいものは壊してもいいわけだから、まったく問題はないな!!」
そう叫びつつ、砦の外で身構えているゴブリン達を威嚇。
そのまま蜘蛛の子を散らすように散っていくゴブリンは放っておいて、入り口をさがすセイル。
さらにバークもフライで砦の上空に移動、大量の矢はデッドオアアライブで受止めつつ、敵の頭上でオーラアルファーを発動!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
「このまま撤退するなら命は助けよう。だが、はむかうならば容赦はしない!!」
怒気を孕みつつ叫ぶバークに、その場のオーガ達も降参撤退を開始。
そして後方部隊も到着すると、一気に砦の内部に突入、内部の掃討作戦を開始した‥‥。
●そして
──オーガ砦
内部には大量のオーガの死体が転がっている。
後続部隊や魔術師達が撤退や降伏するオーガにむかって攻撃を続けていたのである。
「命乞いをするオーガまで殺すなんて‥‥」
そう叫ぶ鬼十郎に対して、アーカードは又しても一言。
「やつらは忌み嫌われし血族だからなぁ‥‥死んだ方がいいんだ」
「そんな言い方ってないです!!」
そう叫ぶ鬼十郎だが、アーカードの言葉もごもっとも。
「みなさん、ちょっとこれを見て頂けませんか?」
エミリアがそう告げながら、木箱を幾つか持ってくる。
「それは?」
「倉庫に置いてあったのですけれど‥‥」
ちなみにエミリアは、占拠した砦内部の検分を行なっていたらしい。
「まあ、どれどれと‥‥」
ラシュディアも箱を見る。
「内部は綺麗に並べられた武具か。サイズはゴブリンからオーガ用までと‥‥特注だな」
そうラシュディアが呟くと、セイルも武器を手に取る。
「ああ、握りの部分の大きさは確かにそうだな‥‥出荷した奴の名前は‥‥焼き印もなしか」
そう呟くと、バークの方を見る。
「今回の一件、このオーガ達の背後になにやら大きな組織が関与している可能性もあるか‥‥」
「そして悪魔も関与していると‥‥」
ラュディアはそう告げつつ、周囲をじっと見渡す。
悪魔の気配があるかどうか感じているのだが、それらしいものは感じない。
そして一通りの調査を終えた後、砦はエルハンスト領の人々にあけわたし、冒険者一行はパリに向かって歩いていった‥‥。
──Fin