【ふらり酒場】タダのみ客更正日記
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:1〜5lv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:4人
サポート参加人数:1人
冒険期間:10月01日〜10月06日
リプレイ公開日:2008年10月10日
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●オープニング
──事件の冒頭
いつもは静かな冒険者酒場マスカレード。
平和なこの店にも、いよいよ悪の魔の手が伸びてきていた‥‥。
「いらっしゃいませー。御注文はなににしますかー?」
と明るく接客しているウェイトレスに、その二人組の客は静かに一言。
「古ワインを二つください」
「では少々お待ちください‥‥」
と返事を返し、ウェイトレスは厨房から古ワインの入っている樽から木製のマグにワインを注ぐ。
「お待たせしました。古ワイン二つです」
「ああ、ありがとう‥‥」
そのまま静かに古ワインを飲む二人組。
「他に御注文はございますかー?」
とにこやかに告げるものの、男達は一言。
「古ワイン二つ。これってタダだよね?」
「え、ええ。サービスですので‥‥」
「じゃあさ、これ、樽でもってきてね」
「え、それは困ります‥‥サービスですけれど、他のお客様の分まで無くなってしまいますから」
「そんなに固い事いわないでさ。とっとと持ってきてよ。表通りのシャンゼリゼなんて、いくらでも飲み放題だよ? こっちの店はサービス悪いんだねぇ‥‥」
「し、少々おまちください‥‥」
と慌てたウェイトレスが厨房に走る。
それから少しして、シェフが厨房からやってくる。
「お客様。当店ではお一人一杯となっております。シャンゼリゼはシャンゼリゼ、うちはうちですので‥‥」
「あ、そーなの。じゃあまた明日くるから‥‥」
とあっさりと引き下がった二人。
そして翌日、二人組は知合いと共に10名の団体でやってくる。
そして店の一角を占拠すると、静かに古ワインを飲みはじめた。
そんな日々がしばらく続いた後、二人組は10人、そして15人と徐々に人数を増やしてやってくるようになった。
たった一杯の古ワインを、1時間もかけてチビチビチビチビと飲んでいる。
それはまるで営業妨害そのものであるが、『1杯の古ワインはサービス』と言い切ってしまった以上、邪険に帰す事も出来ない。
そしてとある日。
店内をびっしりと埋めつくした『例の古ワインのみの客と友人』。
それも一番人の入る夜の時間である。
「ふぅ‥‥これは困ったわねぇ‥‥」
と情況を愉しんでいる店主のミストルディンが、愉しそうに冒険者ギルドに向かっていった。
●リプレイ本文
●美味いワインはお金を払って飲むワイン
──パリ・冒険者酒場マスカレード
いつものように酒場を訪れたクリス・ラインハルト(ea2004)。
これまたいつもの席に座ると、溜め行き混じりに苦笑いしているミストルディンににっこりと話し掛ける。
「依頼の件ですけれど、どうやら本当のようですねぇ‥‥」
「ええ、判る?」
「それはもう‥‥えーっと。ミストルディンさん、思いっきり疲れていますよ」
と告げると、クリスは静かにハーブティーを一口。
「もうそろそろくるのですか?」
「そうねぇ。そろそろね‥‥」
という会話をしているさ中に、ズラズラと大量の客が店内に入ってくる。
そして各々適当な席に座ると、さっそく注文を開始し始めた。
「いらっしゃいませー。御注文はお決まりでしょうかー」
とにこやかに接客を開始したのは、臨時ウェイトレスを買って出たアレーナ・オレアリス(eb3532)。
「ああ、いつものように古ワインだけでいいから。人数分たのみます」
と丁寧に注文をする古ワイン党代表。
「他にも色々と御注文はございますけれど、いかがなされますか?」
「いや、古ワインだけで結構」
「本日のお薦めはバスの高僧焼きとえんどう豆のスープ、野兎のグリルとなっております」
「い、いや‥‥古ワインで結構」
「あのお客様。どうして古ワインに固執するのですか?」
ついに切り出したアレーナだが。
「そんなことはこっちの勝手だろう? 早く古ワインを持ってきてくれないか?」
と突っぱねられてしまった。
その為、止むを得ず、アレーナは厨房にオーダーを通すことにした。
まもなくして、各テーブルに古ワインが運ばれていくと、アーシャ・イクティノス(eb6702)は各テーブルに試供品として『季節の野菜のポトフ』を配っていった。
「おーい、こんなもの注文していないぞ」
「これはタダで食べていいのかよ?」
という言葉があちこちのテーブルから聞こえてくる。
「はい。今お配りしたメニューは試食用ですので。もしお気に召したら御注文御願いしまーす」
と告げる。
そののち静かに食事が始まり、各々がポトフを突きつつ古ワインをたしなみはじめる。
そののち、アーシャは静かに歌を歌いはじめる。
うまくもなく、それでいて聞けないほどでもない‥‥。
そしていいムードになってくると、アレーナは給仕のふりをしつつ、各テーブルを回る。
目的は情報収集。
聞き耳を立てつつ、客の話を聞き取っていた。
それはたいしてとりとめもない話ばかりだが、その中のいくつかに違和感をかんじた。
『そろそろ、古ワインの在庫がなくなるころだよね‥‥』
それはどういう意味なのか?
その通りに受けとっていいのかと疑問を感じるアレーナであった。
そしてアーシャの歌をバックに、食事は無事に終了、首謀者の二人を筆頭に、全員が店から出て行った‥‥。
「さて、ここからはオレの出番か‥‥」
レオ・シュタイネル(ec5382)は店から外に出る客の中から、今回の首謀者二人のあとを付けていくことにした。
そのまま一人、また一人と男達は挨拶をしてわかれ、そして首謀者達はパリの商業区に向かっていった。
そしてレオは聞き耳をたてて、男達の話をじっと聞いていた。
『あの店の古ワインはそろそろ底を突きそうだな』
『ああ。時間が掛かったけれど、これでなんとか間に合うな』
『しかし、痛い出費だったよなぁ。あれだけの人を集めて、古ワインを飲ませにあちこちの店に派遣して‥‥』
『まあそういうな。これでなんとか、今年の出荷までに間に合いそうだからな』
『俺達アルザスのワインこそ、一流のワインだからな‥‥古ワインなんかで需要が潰されたくないからなぁ‥‥』
そんな会話を耳にしつつ、二人が入っていった小さな宿を確認すると、レオはそのままマスカレードに戻っていった。
──そして
一通りの情報をまとめていたクリス達の元に、レオのもたらした新たな情報。
今回の古ワイン騒動の元は、自分達の作っていたワインの需要を伸ばす為に行なっていたという事実が判明した。
「えーーっと。とりあえず周辺の店の情報も聞いてみたい所ですので、あたしは明日にでも近所の聞き込みを行なってみますね」
と告げるクリス。
「では、俺は彼等の言っていたアルザスのワインについて明日にでも」
「わたしとアーシャは、明日にもまたあの客がくるでしょうから、また試供品を仕込んでおきますね」
ということで、話は決定した。
●そして翌日
──冒険者街近辺
「ふむふむ‥‥」
クリスは昨日の予告通り、あちこちの酒場に聞き込みに向かっていた。
そして話を聞いてみると、マスカレードのように古ワインのみを目当てにやってくる客が最近になって増えてきたらしい。
それも何も他の注文は行なわずに。
どの店でもそれだけを注文されると売り上げに響くので、一杯とか二杯だけとか、料理の注文が無かったら古ワインは呑めないか、色々と対処は行なっているらしい。
「一つ伺って宜しいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
「この御店の古ワインの在庫はどうなっていますか?」
「そうねぇ。最近はよく飲まれるので、もうほとんどないわね。うちの古ワインは、仕入れてあったものが劣化しているものだかららねぇ。醸造所から格安で卸されている『古ワイン』じゃないのでね」
と笑いつつ告げていた。
「醸造所から?」
「ああ、そうさ。このノルマンにはあちこちにワインの醸造所があるだろう? 古ワインってううのは、そこの売れ残った古ワインを在庫処分という形で卸し売りしているのと、普通に買ったワインが劣化したものの二つが有ってね。確かシャンゼリゼとかは前者で、うちみたいな小さい店は後者だね‥‥」
という話を聞き出していたクリスであった。
──そして夜
「それではいってみましょーーー!!」
マスカレードの中に在る小さなステージ。
その上で、クリスが集まってきた『古ワイン党』の人々に向かって叫んでいる。
ステージには、アーシャとアレーナ、そしてレオンも立っている。
「それではこれから、愉しい一時を過ごして頂きましょう。まず一曲目は『私は街のパン屋さん』。聞いてください!!」
と突然ショーが始まった。
そのタイミングで各テーブルには古ワインと、本日の試食品が運びこまれていった。
最初はそんなことを気にするようすもなく、静かに試食品を食べつつ古ワインを飲んでいた一行であったが、やがてクリス達の歌に魅入られてしまっていた。
リズムをとるもの、手を振るもの、なんとなく歌を口ずさむものなど、徐々にノリが良くなりはじめてきた。
そしてついには‥‥。
「彼女、こっちにワインを一つくれ!!」
と、古ワイン以外の注文が始まったのである。
「ちょっと待て、それは契約が違うだろう?」
と二人組の一人は叫ぶが、注文した男も返答を返す。
「もう十分だろうさ‥‥」
そしていつしか、客達は各々が注文を開始、いつのまにか二人組の姿だけが消えてしまっていた‥‥。
●顛末
翌日、クリス達は二人組の宿に向かった。
そこで彼等から直接事情を聞こうと思っていたらしい。
運よく、二人組も宿から出てきた為、近くの酒場で食事を取りつつの話し合いに持ち込んでいった。
詳しい話を聞いてみると、二人組はアルザスのワインセラーの関係者らしく、今年の新酒がそろそろでまわる時期になったらしい。
だが、セラーにくる注文は新酒ではなく『去年作った古ワイン』が圧倒的に多く、それ以外は必要ないという話が何件も来ていた。
その為、現在市場に流通している古ワインを撲滅し、今まで通りに普通にワインを買ってくれるようにしたいと考えた二人は、今回の作戦を決行、市場に流れている古ワインを減らしつつ、他の醸造所に古ワインの販売を差止めるようにと御願いして回っていたらしい。
いずれにしても今回の一件は、クリス達の手によって見事に解決された。
愉しく飲んでいる分には、古ワインも普通のワインも関係無いって言うことを、あらためて教えられたようである。
なお、この後数週間、街の小さい酒場から古ワインがメニューから消えたことはいうまでもない。
──Fin