【ウィザード・李】反撃の狼煙

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:5

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月08日〜10月18日

リプレイ公開日:2008年10月16日

●オープニング

──事件の冒頭
 それは突然起こった‥‥。
 アビス第6階層。
 いままでは平穏だったその場所を、突然アンデッドの群れが襲撃した。
 突然の事態にも関らず、その場に居合わせた冒険者達にょって、その騒動は無事に鎮圧されたのだが‥‥。
 その日を境に、第6階層から繋がる回廊から、頻繁にモンスターが出現しはじめたのである。
 セーフティーゾーンを失った冒険者達は、一時的に『限界バトル亭』に集結、事態の鎮圧の為に策を練りはじめた。
 その結果、幾つかの冒険者チームによって、第6階層までの各エリアを鎮圧、同時に第6階層の奪回、各回廊の封鎖という事態になってしまっていた。
 
 それから数日後。
 第六階層の各回廊に繋がる通路は魔法によって封鎖された。
 ベースキャンプとなった『限界バトル亭』では、これからどうするべきかを話し合い、採集的な意見が出はじめていた。
 それは、『選抜された冒険者による、第24回廊の攻略』であった。
 様々な冒険者から必要なアイテムを集め、トータルで4つのチームが進めるだけ数がそろった。
 あとは、どのチームがそこに進むかという事である。
 何分、第24回廊については誰も進んだ事がなく、何がそこに存在するのか、何が待ち受けているのかさえも全くとって良いほど皆無である。

「必要最低限の荷物を準備し、いかなるトラップにも対処でき、精霊魔法と聖なる力、そしていかなる敵をも薙ぎ倒していくパワー。
 それらのそろった冒険者は、今こそ名乗り上げて欲しい‥‥」

 そんな噂が流れ、とある冒険者チームがまずは向かっていった。
 だが、そのまま彼等は戻る事は無かった。
 彼等のチームは、以下の構成であった。

 ベテランの冒険者、重装ファィターと中装騎士、武道家、精霊魔法使い、セーラの癒し手、そして凄腕レンジャー。

 かなりの魔法武具と薬品、そして全ての鍵を手に向かったものの、まったく帰ってくる様子がない。
 そしてある日。
 彼等の無残な死体が、アビス外に放置されていた‥‥。

 さあ、だれか第24階層に向かうものはいないか? 
 腕に自信のある冒険者チームは『限界バトル亭』に名乗り出て欲しい‥‥。


*現在までの情報
注)ここに記されている情報は、冒険者ギルドの報告書および第六階層にて得られるものである。
 もし情報を使うのであれば、酒場にて『先人達』に告げてください。
 彼らの努力失くして、これらの情報は得られなかったのですから・・・・


・回廊No1〜12には、それぞれ鍵となる指輪が存在する。
 順に『白羊宮の鍵』『金牛宮の鍵』『双児宮の鍵』『巨蟹宮の鍵』『獅子宮の鍵』『処女宮の鍵』『天秤宮の鍵』『天蝎宮の鍵』『人馬宮の鍵』『磨羯宮の鍵』『宝瓶宮の鍵』『双魚宮の鍵』以上である。

・回廊No13〜16には、それぞれ鍵となる『精霊の彫像』が存在する。
 順に『炎の彫像』『水の彫像』『風の彫像』『大地の彫像』である。

・回廊No17〜19には、それぞれ鍵となる武具が存在する。
 順に『命の剣』『心の楯』『魂の兜』である。

・回廊No20〜24には、それぞれ指輪をあてはめる扉が存在する。
 それらは全て、第一回廊最下層に記されている4枚の『黒曜石の石碑』に記されている謎を解くことで、正しい扉が開かれる。

・全ての回廊は、4つの『試しの扉』が存在する。それらの『試し』をクリアしなければ、扉は開かない。

・いずれの回廊でも、最初の『試しの扉』を通り抜けるためには『レンジャー』が必要である。

・第1回廊・『第二番の試しの扉』は、精霊力によって解放されるが、その先の空間は『精霊力遮断空間』になっているらしい。

・第2回廊・『第二の試しの扉』の先は、『完全武具無効化空間』というものが存在する。そこでは、全ての『物理的攻撃』が無効化されるるらしい。

・第3回廊の二番目の『試しの扉』は、純粋にトラップと鍵によって閉ざされているが、これは敏腕レンジャーなら解除可能。

・第4回廊・二番目の『試しの扉』は、神聖力によって解放されるが、その先の空間は『神霊力遮断空間』になっているらしい。

・第5回廊の二番目の『試しの扉』に向かうには、『高さ、幅共に1mの回廊』を突破しなくてはならない。

・第6回廊・『第二の試しの扉』に向かう為には、長い階段を下り、そこから『回廊内を充満する、長さ400mの水路』を越えなくてはならない。その先の水中に、『第二の試しの扉』が存在する

・第7回廊・『第二の試しの扉』を突破する為には、その手前に在る、『果てしなく滑らかな壁を昇り、そこの天井にあるレバーを倒す』必要が有る。そこは精霊力が遮断されているので、自力で昇る必要がある。

・第8回廊第二の試しの扉には『全ての武器・防具を棄てよ』と記されている。ここでそれに従わなければ、そこから先に進んだとしても待っているものは破滅らしい。

・第9回廊・『第一の試しの扉』を越えた先は『絶対無音空間』となっている。この空間で物音を立てた場合、何処かに強制転移させられる。

・第10回廊・『第二の試しの扉』は、バードとジプシー二人の歌と踊りが必要である。

・第11回廊は、最初の試しの扉を突破した先から『完全魔法無効化空間』によって形成されている。
 守護者は『アクエリアス』、彼を倒す事で『宝瓶宮の鍵』を入手。
*ちなみに現在、冒険者達の手によって第11回廊は攻略完了。試しの扉は全て『魔法の鍵』によって解除可能。

・第13回廊・第3の『試しの扉』の正面には台座があり、『2400Gと等しい重さの物質』を載せる事で開くらしい。

・第14回廊・『第一の試しの扉』の手前には『レンジャー殺し』と呼ばれる石化トラップが仕組まれている。

・第16回廊は『第二の試しの扉』以後、3人で一つのパーティーでしか通れない。

・第17回廊には『キーステーション』と呼ばれるショートカツト用の部屋が存在。

・第18回廊の奥の小部屋に、第一回廊第三の『試しの扉』の鍵が存在する。
*ちなみに現在、冒険者達の手によって第18回廊は攻略完了。


・第19回廊は、『第一の試しの扉』までは無限に出現するアンデッドとの戦いが続く。
*ちなみに現在、冒険者達の手によって第19回廊は攻略完了。

・第20〜24回廊は、入り口が巨大な石壁によって閉ざされている。その壁には『24の指輪』を填める穴が存在している。

・第一の黒曜石の碑文
 第21回廊最初の扉の解除方法
『対となるものが指輪を填めよ、そして扉に順に手をかざせ・・・・』

●今回の参加者

 eb8642 セイル・ファースト(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ec0234 ディアーナ・ユーリウス(29歳・♀・ビショップ・人間・神聖ローマ帝国)
 ec0261 虚 空牙(30歳・♂・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ec0501 フォルテュネ・オレアリス(30歳・♀・僧侶・エルフ・イスパニア王国)
 ec1942 ミケヌ(31歳・♂・カムイラメトク・パラ・蝦夷)

●リプレイ本文

●限界突破まで
──限界バトル亭
 戦場。
 そう呼ぶに相応しい状態となりつつあるアビス。
 その外にあるこの酒場には、一時的な前線基地となっていた。
 第6階層まで到達するのですら難しくなったこのアビス、挑戦した冒険者たちが深手を追い、生き残ったものはなんとか仲間の手によって運びこまれてくる。
「随分と酷いものだな‥‥」
 セイル・ファースト(eb8642)は馬から降りつつ、次々と運ばれていく怪我人の様子をじっとみていた。
 その傷口を幾つか確認し、そのまま仲間たちの待つ酒場に入っていく。
「急いでお湯を湧かしてください!! 傷を消毒します」
「こっちの奴にリカバーを頼む。もう意識がないんだ!!」
「誰か、うちのリーダーを見掛けませんでしたか? 第3階層で逸れてしまったのです!!」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ。畜生。何でオマエまで逝っちまうんだっ‥‥これから俺はどうすればいいんだよっ!!」
 絶叫と怒号が響き、血とクスリの匂いが充満している。
 その一角では、次に第24階層に向かうパーティーの選抜が行なわれている。
 幾つかのパーティーが声を掛けられているものの、どのチームも辞退。
 第6階層までの道を切り開くならというパーティーならいくつも存在するが、さすがに第24回廊に突撃しようとするものは、今はいなかった‥‥。

「で、私も同行すればよいのですか?」
 そう話を始めたのは御存知ミーア・クライアンスとミリア・イスマイルの二人。
「頼むよ。二人の力が今回も必要なんだよ」
 そう頼み込んでいるのはミケヌ(ec1942)である。
「私達は別に構いませんよ。報酬さえきちんと頂けるのでしたら」
 と告げて、ミケヌは交渉成立。
 そのまま仲間たちの元に戻ると、いよいよ第24回廊攻略作戦が始まった‥‥。



●煉獄へとつづく道
──第24回廊、第31階層
 ここまで、いくつものトラップをくぐりぬけた。
「この次は、ここから先120m、そこにトラップですね」
 古い地図を見ながら、ミーアが指示を飛ばす。
 この地図は、途中のフロアにて全滅したのであろうパーティーが所持していたもの。
 虚空牙(ec0261)の提案で、とにかく道中に少しでも手掛りが在ったのなら、それを有効に使おうというものであった。
「えーっと、ここの仕掛けはと。ミケヌさん、その右の扉の前に、そこの穴に、この指輪を差し込んでください」
「了解っ」
「セイルさんは左の扉の前に。そこの穴には、こっちの指輪を御願いします」
「ああ、判った」
 と、ミーアの指示で、目に見えないトラップは次々と解除されていく。
 その間にも、ディアーナ・ユーリウス(ec0234)はマップに記されていない怪しい場所は『ディバンク』で確認し、暗然と判ると地図に書込んでいく。
「こっちの回廊はこれで全て問題なしですね。フォルテュネさん、そちらはどうですか?」
 通路の奥で、さらに先を見つめているフォルテュネ・オレアリス(ec0501)。
「暗すぎですね。ちょっと待っていてください」
 そう告げると、フォルテュネは印を組み韻を紡ぐ。
 やがてフォルテュネの全身が輝くと、そののちじっと手元を凝視した。
「魔法的物品の反応は0ですね。この先には、ただの回廊が続いているだけです」
「セイルさん、こっちは以上です。そちらはどうですか?」
 そう前方でトラップ処理をしているセイル達の方に話し掛ける。
「こっちは終った。あとは中央の扉だけらしいがな‥‥」
 そう告げつつ、セイル達は巨大な扉の前に立つ。
 そこには精霊碑と古代魔法語によって刻まれた紋様と魔法陣があった。
 それは静かに淡く蒼く輝いている。
「フォルテュネさん、これは判りますか?」
 そう問い掛けるミリアに、フォルテュネは静かに肯くと扉の前に立つ。
「古きものに血を捧げよ‥‥蒼い輝きを血によって封じる。さすれば扉、ひらかれん‥‥ですね」
 そう告げると、ゆっくりと仲間たちを見る。
「この蒼い輝きを血で消していくだけです。どうしますか?」
「了解。ならば」
 と空牙が告げて、指先を噛み切る。
──ブツッ
 そこから流れ出す血の付いた指で、空牙は魔法陣を静かに染めていく。
 そして全ての紋様が血によって消されていくと、静かに扉が開いた‥‥。

──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴコ
 綺麗な回廊。
 壁は大理石によって綺麗に磨き上げられ、そして真紅の絨毯が敷き詰められている。
 壁には燭台が固定されており、いくつもの明かりが燈されている。
 まるで、どこかの屋敷の廊下のようであ。
 その前方に、漆黒の鎧に身を包んだ人物が一人、静かに立っていた。
「やっとおでましか。済まない、あいつの相手はこの俺にやらせてくれ」
 そう告げると、セイルが剣を引きぬいて前方に立つ。
「大丈夫なのか?」
 そう空牙が問い掛けると、セイルは静かに肯く。
「ここから先は、壮大な親子喧嘩だ‥‥命がけのな」
 その言葉に、正面に立つダース・ファーストも肯くと、一行に道を譲る。
「君達にとっての試練はこの先にある。心して進みなさい」
 そう一行に告げるダース・ファースト。
 その声には殺気は感じられず、むしろ一行に対して諭すように告げていた。
「セイルさん、かならず生きて戻ってきてくださいね‥‥」
「無事をお祈りします」
 ディアーナとフォルテュネの二人がそう告げると、セイルは後ろ姿の一行に向かって、親指を立てたままの右手を差し出す。
「最下層で会おう!!」
 そして一行の姿が回廊の奥に消えると、セイルは静かに抜刀する。
──ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
 ダース・ファーストもまた紋章剣を発動させると、ゆっくりと間合を取り始める。
「ほう。名工ローン・マカブインの剣か。いい武器だな。それならこのオーラの刀身を受止めることができるか‥‥」
「ああ。それじゃあ死合うとするかよっ!!」
 そう叫ぶと同時に、セイルは全力でのソードボンバーを発生させる。
 生み出された剣圧はスマッシュ並の威力を発生させ、そしてダース・ファーストに向かって襲いかかった!!
「広範囲の衝撃波。これはいくら紋章剣でも防ぐことは出来ない‥‥筈‥‥だ‥‥が?」
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 セイルの発生させた剣圧を、ダース・ファーストもまた剣圧にて相殺する。
「実体のない刀身で剣圧を生み出すのかよ‥‥」
「実体の有無は関係無い。その一撃を生み出す速度と力。そういうものだ‥‥」
 と告げるや否や、二人は臨戦体勢に突入した。



●第二ステージ
──第85階層
 セイルから別れてすでに15時間。
 今だ後ろからセイルのヤってくる気配はない。
 そうしているうちに、いよいよ第二の試練の扉にたどり着いた一行。
 ここまではトラップとアンデッドの群れとの戦いであった。
 そしてようやく扉にたどり着くと、静かに鍵の指輪を3つはめ込む。
──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴコ
 ゆっくりと扉が開き、大きな部屋に出る。
 綺麗な装飾、豪華な調度品がしつらえられた部屋。
 その奥の椅子に座っている仮面の魔導師。
「ようこそ。試練の間へ‥‥」
 そう告げると、仮面の男・ジェラール・プロストは右手を前に差し出す。
「みんな飛べっ!!」
 その空牙の叫びと同時に、ジェラールは指を鳴らす。
「そしてさようなら」
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 ジェラールの右腕から発せられた稲妻が、一直線に一行のいた場所に向かって飛んでいく。
 それは石壁に直撃し、さらにその石壁すら破壊していた!!
「ライトニングサンダーボルト‥‥ではないのですか?」
 その魔法を見て、フォルテュネがそう叫ぶ。
 もしライトニングならば、石壁は破壊できず吸収されてしまう。
 だが、いまの魔法は石壁を破壊していた。
「数でいけば魔法は対象をとれない‥‥だろう?」
「その通りだねっ!!」
 空牙とミケヌがそう叫びつつ、攻撃するタイミングを待っている。
「行きます!!」
 フォルテュネがそう叫ぶと、一瞬のうちにジェラールの周囲に竜巻が発生する!!
「ジェラールはあの竜巻で巻き上げられている筈です。収まったら全力で御願いします!!」
 そのフォルテュネの叫びが周囲に響く。
 そして竜巻が収まったとき、その中心には『まるでなにごともなかったかのように立っている』ジェラールの姿があった。
「いい連携ですね。けれど、詰めがまだまだです」
 そのジェラールの頭上には、漆黒の球体が浮いていた。
 やがてスッとその球体が消えたとき、ディアーナも高速詠唱で魔法を発動させた!!
──ビシィィッ
 一瞬にして全身を束縛されたジェラール。
「コアギュレイト。これであなたは身動きする事も出来ません‥‥」
 そう告げるディアーナだが。
──ビシィッ
 それすら打ち破り、ゆっくりと腕をまわすジェラール。
「いい判断です。けれど、同流派の魔法による相殺までは計算されていませんね」
 そう告げてから、空牙とミケヌの方を向く。
 ちなみに二人は、じっと相手の出方を待つしか無かった。
 相手は術師、うかつに攻撃を仕掛けた場合、その力がそのまま返ってくる可能性が有る。
「蚩尤師父の教えどおりだな。術師を相手にする事なかれ‥‥か」
「飛び道具やどんな攻撃も無効化されるからねぇ‥‥」
 そう呟く空牙とミケヌ。
「どうします? いままでので手詰まりですか?」
 そう一行に問い掛けるジェラール。
「そうはいってもなぁ‥‥魔法との連携までは、まだまだだからな‥‥」
 そう告げているさ中に、近くではミケヌがあとずさり。
 そしてジェラールの視線がミケヌから外れた瞬間に、パラのマントを全身に被り、姿をスッと消した。
(この状態だと動けないけれど‥‥ここの近くに来たときには襲撃できる‥‥)
 まさに待ち伏せ奇襲用のマントである。
──ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
 この間にディアーナはホーリ─フィールドを展開、ミケヌを除く一行はその結界内に移動。
「さて、どうするか‥‥ここまでとは想定していないな」
「ええ。私の精霊魔法、ディアーナさんの神聖魔法、どちらも中和されてしまいます‥‥」
「かといって、格闘戦を仕掛けるとしても、近接距離まで持ち込む前に、カウンターで魔法を仕掛けられてくる。やっかいな敵だな‥‥」
 そう告げているさなかにも、ジェラールは静かに印を組み韻を紡いでいる。
「あれは精霊合成魔法ですね。賢者クラスの使用する大技です」
 ミリアがそう告げると、ミーアもダガーを構えて色々と試行錯誤。
「相手は賢者かよ‥‥」
 空牙のなかにも絶望が見える。
 ちなみに空牙、実は賢者を良く知って居る。
 本国である華仙教大国には、最強の賢者である完顔阿骨打師父がいる。
 今、目の前の敵は、彼と同じ危険さを醸しているのである。
「来ます!!」
 フォルテュネが目の前のジェラールを見てそう叫ぶ。
 既に魔法は完成していた。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォ
 一行の足元が爆発した。
 ホーリーフィールドは一瞬にして破壊され、全員が炎の竜巻に巻き上げられ、天井に叩きつけられた。
 やがて全身に火傷を追った一行が床に叩きつけられると、ジェラールはそのまま椅子に座った。
「帰りたまえ。今の君達では、この先を生き抜くことは出来ない‥‥」
 ちなみに、この魔法によって被害を受けていないのはミケヌのみ、さらにミーアとミリアは一撃で即死した‥‥。
「そん‥‥な‥‥」
 絶望に打ちひしがれるフォルテュネ。
 倒れている二人を抱き上げ、必死にリカバーを唱えているディアーナ。
 そしてゆっくりと立上がると、そのまま二人のカバーに入る空牙。
「どういうことだ? 今のオマエの力なら、一撃で俺達を全滅することもできただろう?」
「そうでもない。伏兵は一人、そっちにもいただろう?」
 その言葉に、ミケヌはダガーを構えたまま姿を現わした。
「隙がまったくないから、こっちとしても動けないし‥‥」
 と冷静に返答するミケヌ。
「ここは引かせて貰う‥‥いくぞ」
 と告げて、空牙は一行と共に地上に向かった。
「ええ。いつでも来てください。皆さんの為の道は示されていますので、ここまではいつでもくることができるでしょう‥‥。歓迎します」
 と告げられた。
 そして帰還の途中で、右腕を失い、意識を失って倒れているセイルを回収し、一行はそのままプロスト辺境伯領のノートルダム大聖堂へと向かった。


●そして
──ノートルダム大聖堂・とある部屋
 ミーアとミリアの甦生も終り、セイルの失った腕の『再生』も無事に完了した。
「一体、なにがあった?」
 そう空牙に問い掛けられるセイル。
「腕は互角、オーラの力は相手が上、武具の強度も相手が上、そして築き上げた経験は相手が上‥‥ただそれだけだ‥‥」
 不機嫌そうに告げるセイル。
 あののち、一騎打ちは一進一退の攻防を繰り広げられていた。
 だが、相手に一日の長があっただけにすぎず、セイルは腕一本をうしなっただけでで命を長らえていた。
 いずれにしても、決着をつけるのは次回ということになりそうである。

──Fin