【ふらり冒険】食欲の秋

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:4人

サポート参加人数:6人

冒険期間:10月22日〜10月27日

リプレイ公開日:2008年10月30日

●オープニング

──事件の冒頭
 レディース&ジェントルメン&おとっつぁん&おっかさん

 いよいよ収穫祭の季節がやって参りました。
 街のあちこちでは、綺麗な飾りが施され、あちこちの店では収穫祭の為の準備が行なわれていた。
 秋の葡萄収穫に伴って、ワイン作り大会や吟遊詩人達による宴も企画されているらしい。
 そんな中で‥‥。

──冒険者ギルド
「え? 依頼じゃあない‥‥では次の方どうぞ」
 受付嬢のビスタ・ウィンズは、カウンターにやってきた人物にそう告げると、次の依頼人を呼ぼうとした。
「あ、そうじゃなくてな。手伝って欲しいんだよ」
「ですから、それは依頼ですね?」
「依頼じゃあないんだ。これはパリに住む人間として、依頼や金銭を抜きにして手伝って欲しいんだ‥‥」
「つまり無償の依頼ということですね。当方ではそのような事はお受けできませんので。では次の‥‥」
「あーーっ、済まないがギルドマスターを呼んでくれないか? 商工会議所からの使いと言えば判ると思うんだ‥‥」
「商工会議所? 商人ギルドさんですか。では少々お待ちください‥‥」
 ということで、ビスタはギルドマスターに来客があることを伝える。
 その後、使いの者は執務室へと通され、10分ほどの話し合いの後、使いの者は帰っていった。

「お話し合いはお済みですか、お疲れ様です。それにしても、あの使いのものは図々しすぎます。無償で依頼をだせだなんて、そんなに冒険者は暇ではないですよね?」
 そう告げるビスタに、ギルドマスターは一言。
「この依頼を張付けてください‥‥では頼みましたよ」
 と告げて、一枚の羊皮紙をビスタに手渡した‥‥。
「う、嘘‥‥そんなぁぁぁぁぁ」
 はい、ビスタ乙。

●今回の参加者

 ea2762 シャクリローゼ・ライラ(28歳・♀・ジプシー・シフール・エジプト)
 eb7804 ジャネット・モーガン(27歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb9780 ディエミア・ラグトニー(21歳・♀・ウィザード・シフール・フランク王国)
 ec2048 彩月 しずく(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●サポート参加者

ジェイミー・アリエスタ(ea2839)/ ジェレミー・エルツベルガー(ea7181)/ レシーア・アルティアス(eb9782)/ アリア・ラグトニー(ec1250)/ アレクシア・インフィニティ(ec5067)/ ジョン・ナイスガイ(ec5162

●リプレイ本文

●お祭り騒ぎだどんじゃらほい
──パリ郊外
「ふぅ‥‥いい仕事してきましたわ」
 額に流れる汗を拭いつつ、ジェイミー・アリエスタは愛馬触れリアの背中を撫でる。
 知人であるシャクリローゼ・ライラ(ea2762)に依頼され、遠くの村まで『蜂蜜パン』や『フルーツ乗せパン』など、様々なパンを仕入れてきたのである。
 あとはパリ市内に戻り、彼女が準備している露店までそれを運んでいくだけ。
「あと半日もすれば、到着しますわ。さあ、後一息です、がんばりましょうね」
 と告げたとき、近くの林から、いかにも悪者風の人物達が!!
「おぉっとお嬢さん。命が惜しかったらその荷物をお言いってもらおうか?」
「ついでに馬も置いていってもらおうか?」
「さらにその綺麗なお洋服も全て脱いでもらおうか?」
「そしてそして‥‥うへへへへ‥‥」
 という下劣で下品な口調でジェイミーに話し掛けてきた!!
 危うし、盗賊達!!


──場所は変わって
「つまり、この私には古ワインなど提供して頂けないとおっしゃるのですか?」
 そう高飛車に告げているのはジャネット・モーガン(eb7804)。
 今回の露店の為、ジャネットはまず冒険者酒場シャンゼリゼにやってきていた。
 そこで提供されている古ワインを分けて貰う為にやってきたのであるが、どうやらそれは分けて貰えないようである。
「ええ。誠に申し訳ありませんが、当店にある古ワインは当店にいらっしゃったお客様の為のものでして、どこの何方か判らない人に、しかも大量にお譲りするというのは‥‥」
 と厨師長がそう丁寧に告げる。
「なんですって? この私を知らないですって?」
 ワナワナと体を振るわせつつ、ジャネットがそう告げる。
 が、ここで怒ってしまっては全てが水の泡。
「ま、まあいいわ。それじゃあ古ワインは諦めるから、その代わり彼女達の来ている服を貸して頂けないかしら?」
 と店内のウェイトレスの着ている服を指差す。
「誠に申し訳ありません。あれは当店に務めている女性用の衣服でございまして、関係者以外にはお貸しすることはできません」
「あ、あら‥‥そ、そうなの‥‥ふぅーん」
 頬をヒクヒクと引きつらせつつ、そう告げるジャネット。
「なら、その服を仕立ててくれた御店を紹介してくださらないかしら? その程度なら構わないでしょう?」
「それでしたら‥‥」
 と言うことで、ジャネットは引き下がると、そのまま指定された仕立屋へと向かっていった。

──さらにその頃
「さてと、わたしはどうしましょうか‥‥」
 露店のある場所にたたずんでいるのは彩月しずく(ec2048)。
 いざ露店の申請をしてみたのだが、一体なにをしたらいいのか困り果ててしまっていた。
 なにやら色々と考えてはいたのだが、いざそれを実行するには材料の仕入れから全てが難しいことに気が付いた模様。
「‥‥本当に、どうしようかな‥‥」
 料理、できない。
 材料、ない。
 協力者、だれもいない‥‥。
 彩月、一世一代のピーーーンチ。

──そしてその頃
「店の飾りはこれでよし。お酒はそれでよしですねー」
 にこやかにそう告げているのはシャクリローゼ。
「ですね。思ったよりも上質のものが手に入ってなによりでしたね」
 とジェレミー・エルツベルガーが返答する。
 御店で売るワインはジェレミーと共に仕入れてきた。
 店内の飾り付けはアレクシア・インフィニティが手伝ってくれた。
 思ったよりもハイペースで開店の準備が進んでいるシャクリローゼ陣営。
 あとはパン類を仕入れに向かったジェイミーが戻ってくるのを待つばかりとなった‥‥。



●露店開店準備中
──パリ市内・露天商ちかくの仕立屋
「く‥‥くくっ‥‥これはいい感じですね」
 仕立屋で完成した衣服を着用し、クルクルとまわりながらご満悦のジャネット。
 黒と白を基調とした、スカート丈の短いドレス。
 その胸許は大きく開き、飾り紐によって軽く閉じられている。
 彼方此方にレース飾りが施され、どことなく踊り子のように見えなくもない。
 そのデザインは、何処か異性を魅了する扇情的なものであった。
「よくお似合いですわ」
「そう ? ありがとうございます‥‥ではこれで」
 にこやかにそう告げて支払いを終えると、ジャネットはすぐさま商人ギルドに向かう。
 そこで倉庫に残っている古ワインをなんとか頼み込んで買い付けると、いよいよ露店の準備を開始した。

──ジャネット店
 彼女の店の売り物は『硬パンを使った揚げパン』と『古ワイン』。
 そして目玉はなんといっても『彼女の接客』である。
「ふっふっふっふっ‥‥」
 煮えたぎる油の入った大鍋。
 その前で、ニイッと不適な笑みを浮かべると、手にした『一口大硬パン』を油の中に入れていく!!
──ジュワァァァァァァァァァァァァァァァ
 そのまま油の中で揚げられていくパン。
「あは、あはは‥‥アーーーーーーーーーーーーーーーーーッハッハッハッハッッハッハッハッハッ」
 高笑いというか、なんというかとにかく笑っているジャネット。
 やがてこんがりと揚がったパンを取出すと、そのまま横において軽く冷ます。
「これで完成ね‥‥あとは明日を待つばかりね」
 実に愉しそうである。

──その頃のシャクリローゼ店
「すべて準備OKですね。あとはパンの到着を待つばかりなのですけれど‥‥」
 そう告げつつ、通りを見ているシャクリローゼ。
 既に他の二人は準備を終えて戻ってしまっていた為、あとは彼女を待つだけであった。
「それにしても遅いですわ‥‥」
 と、そのまま夕方まで、ボーッと待っていると。
──カツカツカツカツ
 夕陽をバックに、ジェイミーがやってくる。
 ちなみに満身創痍の姿で、愛馬の後ろには縛り上げられた盗賊達の姿もあった。
 そのままシャクリローゼの元にやってくると、そのまま無言でパンを降ろす。
「さ、これでいいでしょう? あとはお任せしますのでがんばってくださいね‥‥」
「え? は、はい。ありがとうございます‥‥けれど、その後ろの方たちはどうしたのですか?」
 そう問い掛けるシャクリローゼに、ジェイミーは一言。
「悪党退治。それじゃう私は自警団に向かいますので‥‥」
 と告げて、その場を後にした。
「なにか良く判らないけれど、ありがとうございました‥‥」
 そう深々と礼をすると、いよいよ最後の準備が始まった。


●そして露店当日
──パリ市内・収穫祭露店市
「なにをぐずぐずしているのかしら? とっとと食べなさいよ‥‥」
 と、近くの席に座っている客の元に注文の揚げパンを持っていくと、そう客に向かって叫ぶジャネット。
 わざと前屈みになって胸許を強調したりと色気を多量に振りまいたおかげで、そこそこに客は集まっている模様。
「こっちにも追加してください!!」
「俺は2こ、いや3こだ!!」
「おれにも!!」
 とまあ、色めきたった若者たちが集まってきてくれたので、ジャネットの内心はホクホクしている。
「ホーーーーーーーーーーーーーーーーーッホッホッホッホッホッホッホッ。いいわ。貴方たちにも売ってさしあげますわ。欲しければそこに並んでいなさい!!」
 ビシィツとそう叫ぶと、客は一斉に並んで、ジャネットからパンを手渡されるのを待っていた。

──その頃のシャクリローゼ
「ここのパン美味しいね」
「そうだね。あたしにもひとつ、こっちの蜂蜜のをくださいな」
「俺はこっちのワインと、こっちのバンを一つ」
 と、老若男女全てに受ているのは味で勝負のシャクリローゼ店。
 コンスタントにパンが売れ、ワインも大人にそこそこに売れている。
「はい、ありがとうございます。もう少々お待ちください」
 と、額に流れる汗を拭いつつも、笑顔で接客するシャクリローゼ。

 そんなこんなで、二人の露店は大盛況。
 おもしろいのは、シャクリローゼの店でワインを買い、そしてジャネットの店で揚げパンを買うという客があちこちにいるのである。
 この取り合わせがどうやら受けが良かったようで、最終日にはジャネットはシャクリローゼの店の売り子までやっていたという。

 そして‥‥

 最終日も終り、二人は露店を閉じた。
 売り上げもそこそこに、初期投資分はなんとか回収。
 さらに商人ギルドにも売り上げを渡し、そのままにこやかにその場を立ち去った模様。

「ふう‥‥いらっしゃいませー。ジャパン名物の団子はいかがですかー。美味しいお団子ですよー」
 と、故郷の味、駆使団子を売っている彩月。
 ちなみに串団子にあらず、まさに自身の全てを駆使して作り上げた逸品のようである。
 もっとも、味の方は保証できず、客足が今ひとつであったことはいうまでもない。

 そんなこんなで愉しい露店は無事に終了。
 まだまだ収穫祭は続いている。
 これから先、どんな催し物があるのであろう‥‥。

──Fin