●リプレイ本文
●さて、未知なるもののために挑戦
──ノルマン江戸村・ミハイル研究室分室
大勢の見物客が集まっているノルマン江戸村。
アトランティスから教授が帰ってきたという噂を聞きつけ、大勢の人々が『アトランティス』の話を聞きたいと集まっていた。
だが、とうのミハイル教授はというと、何やら怪しい実験を開始している模様で‥‥。
「しふしふー。これが図面ですかー。この通りに作るのですか?」
パタパタと跳びながら、ミハイルが手にしている図面を眺めつつそう呟いているのはパール・エスタナトレーヒ(eb5314)。
「おお、しふしふぢゃ。うむ、これが今回作るノルマン製ストーンゴーレム『バガン』ぢゃよ。判るのか?」
そう告げられて、パールがもう一度見る。
図面には完成図と全体図、そして制御胞と呼ばれる部分の解説が記されているだけで、製作方法についてはまだなにも記されていない。
「ううーーん。全く。それよりも教授? この巨大ゴーレム、僕達の世界で作った人はいないのかな?」
「うむ。ワシが過去に調べた様々な遺跡、それらにもこのようなものの遺物や記録はまったくなかった。それにゴーレムというのは、アトランティスでもここ数年の技術ぢゃて、我々の住む世界ではわしが初めてぢゃな」
そう告げつつ、もう一度図面を見直す。
「ふぅん‥‥」
何かに気が付いたようだが、それには確信できていないパールは、しばし図面をじっと眺めていた。
「教授、少しよろしいですか?」
そうミハイルに問い掛けたのはフォルテュネ・オレアリス(ec0501)。
「うむ、なんぢゃ?」
「今回のことなのですが、教授はどうしてこのようなゴーレムを作ろうと思ったのですか?」
いきなり核心に迫る問い。
「好奇心ぢゃな。考古学者として、あの世界でこのような『便利なもの』を見てしまうとな。ゴーレム機器については、わしが今後、世界を旅するのにも色々と便利そうぢゃし。まずは個人レベルで最も確実に実験できるものをと思ってのう‥‥」
その言葉に、フゥ、と溜め息を付くフォルテュネ。
「では、もしこれに成功した場合、これらの資料などは国家レベルでの管理体勢が必要になりますね‥‥」
そのフォルテュネの言葉に、ミハイルも静かに肯く。
「あちらの世界では、これらは選ばれた騎士のみが扱う事を許され、国家によって厳重管理されていた。成功したならば、それも構わないぢゃろうな‥‥。ただ、兵器としての運用だけがゴーレムではないとワシは思っておるから、あとは国でどう判断するかぢゃな」
その言葉に、フォルテュネは一安心。
「では、私は色々とガイドラインを考えてみますね。私では、ゴーレム作成の手伝いは難しいかもしれませんから」
「いやいや、強大な魔力は多い方がよい。その時は頼むぞ」
その言葉で、フォルテュネも協力体勢に入る。
「で、教授。このゴーレムというものは一体なんなんだ? 詳しく教えて貰いたいのだが‥‥」
と告げるのはシャロン・オブライエン(ec0713)。
「そうですね。私としても色々と教えて頂きたいものです‥‥」
そう告げるのは楠木麻(ea8087)。
「そうぢゃな。何をするのか判らなければ、なにも出来ないぢゃろうて‥‥」
ということで、ミハイルは集まった者たちに話を始めた。
膨大な精霊力により稼動するゴーレム。
さらにそれらに竜の加護を与える事によって生まれた超兵器ドラグーン。
国家レベルでしか管理されず、そして『鎧騎士』でなくては乗りこなすことの出来ない存在。
それらによっておこった悲劇、闘争など、ミハイルの見聞きしたこと全てが語り告げられた。
「‥‥凄い」
仮面の奥で瞳を輝かせているシャロン。
そして静かに話を聞き、さらなる興味を示す楠木と、ゴーレムの開発はさらにヒートアップ。
そしていよいよ、素体となる石の彫像が運び込まれる事となった‥‥。
●ストーンゴーレム、超動!!
──ミハイル研究室分室
えっさえっさえっさっさ
研究所の庭に巨大魔法陣が形成されている。
すでにミハイルが他のメンバーに対して話をしている間に、作業に入っていたサスケ・ヒノモリ(eb8646)である。
「ええっと‥‥この図面に示すのは、多重魔法陣と精霊の加護を得る為、そしてこっちの魔法詠唱と印かぁ‥‥」
ミハイルに渡された製作図面を参考に、サスケは次々と準備を続けている。
そしてときおり作業を止めると、図面の解析に入る。
「ここに記されている『ゴーレム魔法』って、俺の知っている魔法じゃないんだよな。確かゴーレムニストのオーブルとか言う人が作ったとか教授は言っていたけれど‥‥俺達の世界のゴーレム魔法とは違うし、この複雑な印と詠唱、契約が出来ていない俺に扱うことができるのだろうか?」
そう呟きつつも、一通りの作業を終える。
そして全長1mの、石製特注素体をその中央に安置すると、いよいよ準備完了。
「教授!! これでいいのか?」
その言葉に、ミハイルは走ってサスケの元にやってくる。
「どれどれ‥‥」
と、手渡した図面と描かれた魔法陣に差異がないか確認すると、そのままミハイルは静かに肯く。
「よし完璧ぢゃ。さすがはゴーレムニスト、このような紋章については完璧ぢゃな」
「まあな。そして、これからどうするんだ?」
その問い掛けに、ミハイルは図面を開きつつ、他の仲間たちを呼ぶ。
「早速ぢゃが始めるとしよう。これを一人一枚ずつ手にして、その四方に、そう、魔法陣の指定された場所に立ってくれ。そしてサスケが詠唱開始すると、続いて一人ずつ、順に詠唱を開始。印はゆっくりと、全員が同じタイミングとなるようにな‥‥」
その言葉に、シャロンを除く全員が肯くと、それぞれが配置についた。
なお、シャロンはその間、横の広場で『制御胞』と呼ばれる部分の作成に入った模様。
というか、はっきりいって大工仕事を開始した模様である。
「大地と大気の精霊よ。我が名サスケ・ヒノモリの元に集い、力を与えよ」
その詠唱の直後、サスケの足元の小魔法陣が輝き、回転を開始。
「水と炎の精霊よ、我が名フォルテュネ・オレアリスの元に集いて力を示せ」
今度はフォルテュネの足元に魔法陣が発動。
そしてゆっくりと回転を開始。
「太陽と月の精霊よ。我が名楠木麻の元に集まり、力を示せ」
さらに楠木の足元の魔法陣も回転を開始。
「我が名? パール・エスタナトレーヒの元に集いて力を示しなさい、全ての精霊達よ‥‥」
最後はパールの足元の魔法陣が回転を開始。
やがてそれらに同調して、巨大魔法陣も輝き、記された印が輝きはじめる。
やがてそこから大量の精霊力が溢れだし、中央の素体に向かって収束を開始。
「おおおおおおお!!」
歓喜に溢れるミハイル。
そして素体がさらなる輝きを示したとき、素体が一瞬動いた!!
「来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
天に向かって叫ぶミハイル。
だが、その瞬間に魔法陣は消滅し、中央の素体も沈黙した。
「ほ?」
あっけにとられるミハイルに、フォルテュネとサスケが同時に一言ずつ。
「魔力が足りないですわ」
「それにゴーレム魔法の法則も違うから。これはいくら改良しても、アトランティス製ゴーレムは作れないと思うぜ」
その言葉に、ポカーンとするミハイル。
「どどどどどどどういうことぢゃ?」
その言葉に、サスケが図面を開いて一言。
「ここの部分、我々には理解が出来ない。アトランティスでは精霊力を集めるそうだが、その魔法の法則がこちらと違うようだ」
「ふむ。成る程のう」
「それに教授? 魔法陣に集まる力にも法則性があるのですよ。私達はそれらを修得することで、魔法として扱うことが出来ます。ですから、ゴーレムニストにも、そのような『契約』が存在するとおもいますわ」
「ほうほう。ならば、アトランティスのゴーレムニストなら?」
その問い掛けに、サスケが一言。
「アトランティスのゴーレムニストが、正しい方法で魔法を使えば作れるかもしれない。けれど、今の我々にはその『方法』を知る術がない。断片化された情報だけの今回は、アトランティス製ゴーレムは作れない」
その言葉に、ミハイルは静かに肯く。
「成る程。では、今回の実験は失敗、ゴーレム作成については専門家に任せるとするか‥‥」
と落胆するミハイルだが。
「まあ、気を落とすなって。ほら」
と、サスケが一枚のメダルをミハイルに手渡す。
「これは?」
「あいつのコントロールメダル。アトランティス製ではないけれど、じいさん専用の普通のストーンゴーレムにならなるということだ」
まあ、これからさらに調整やらなんやらが加わるので、まだ完成ということではないが。
「そういうことならば、このゴーレムの外見デザインはボクに任せてくれ。最高の美しさを誇るストーンゴーレムを作り上げて見せよう」
と楠木もやる気十分。
「まあ、それならそれでよし。オレにも手伝える事があるなら協力するぜ」
とシャロンや皆の協力を得る事が出来たミハイルであった。
●そして
──ミハイル研究室
時間一杯まで粘った。
その結果完成したのが、ノルマン製普通のストーンゴーレム。
まあ、多少の手違いもあり、アトランティス製ゴーレムが作れない事が判っただけでも、ミハイルは良しとすることとなった。
そしてこの日、ミハルの研究レポートのうち、ゴーレムに関する部分は封印されていった‥‥。
──Fin