【職業・冒険者】悪魔がきたりて

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:21 G 72 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月30日〜12月15日

リプレイ公開日:2008年12月08日

●オープニング

 ──事件の冒頭
 最近のノルマンは、やたらと恋物語に花が咲き乱れているようで。
 パリ郊外・シャルトル地方のとある貴族の治める町でも、つい最近になって恋話に花が咲きました。
 領主の一人娘『シャルロッテ』は、同じ領地の農家の一人息子と恋に落ちました。
 ですが、その身分の違いに、二人の仲は引き裂かれます。
 しかし、二人はどうしても離れる事が出来ないと、ついにとある深夜、手と手を取りあっての逃避行を始めました。
 着の身着のまま、二人は一晩中走りつづけ、ついには領地の外れの森の中に身を潜めました。

 そして翌朝。
 娘の行方が解らなくなった領主は怒り心頭。
 自警団や領内騎士団に、娘を連れ戻すように命令。
 総勢200名による一斉捜索が行なわれた。

 だが、二人の姿はどこにもなかった。
 森の奥には、地下へと続く洞窟があり、そこに隠れているのではないかという噂もあった。
 そこには古くから『竜』が住んでいるという言伝えもあり、誰も近寄ることはない。
 そんな洞窟の入り口近くの薮に、娘の衣服の一部が引っ掛かっているのを見付けた以上、その洞窟の奥にいるということはほぼ確定している。
 
 だが‥‥そこに入る事が出来ない。
 そこで領主は考えた。
 竜をも殺せるという冒険者の噂を思い出したのである。
 そして早馬で、パリにある冒険者ギルドに依頼をだした。

──────────────────────
 最愛の娘が悪漢に攫われてしまった。
 こともあろうことか、そいつは『竜の住まう洞窟』に逃げ込んだらしい。
 噂では奴は竜を自在に操る『竜の末裔』らしい。
 どうか娘を取り返して欲しい。
 
──────────────────────

 さて、この依頼。
 あなたは受けますか? それとも受けませんか?

●今回の参加者

 eb7983 エメラルド・シルフィユ(27歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb8317 サクラ・フリューゲル(27歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 eb9212 蓬仙 霞(27歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ec0501 フォルテュネ・オレアリス(30歳・♀・僧侶・エルフ・イスパニア王国)
 ec1942 ミケヌ(31歳・♂・カムイラメトク・パラ・蝦夷)

●リプレイ本文

●未来を告げる巫女
──パリ・冒険者酒場マスカレード
「今回の依頼の裏ねぇ‥‥」
 ボソッと酒場のカウンターでそう呟いているのは、この酒場の雇われマスターであるミストルディン。
「ええ。どうも裏がありそうで恐いのですけれど‥‥何か情報はありませんか?」
 そう問い掛けているサクラ・フリューゲル(eb8317)に、ミストルディンは静かに頭を左右に振った。
「今の所、そっちの情報はないわね。っていうより、ここしばらくの間、シャルトル方面に行った情報屋や、手練れの人間は、次々と消息を立ってしまったからねぇ‥‥あの土地で何かが起こりはじめているっていうのは理解できるけれど、それがなにかまではここまで伝わって来ないわよ?」
 そう告げるミストルディンに、サクラは静かに肯いた。
「そうですか。もし何かありましたら、その時は宜しく御願いします」
「ええ、構わないわ。いつでもいらっしゃい‥‥」
 そう告げるミストルディンに別れを告げて、店から外に出ようとするサクラだが。

「失われた竜の血筋。カリバーンの意志を継ぐ正しき男。その武具の正式伝承者‥‥刻が来たら、彼のもの、竜の祭壇に向かう‥‥」
 
 ボソッと酒場のテーブルでそう告げる一人の少女。
「それはなに?」 
 気になったサクラが、そう少女に問い掛けた。
「本に記されている、これからの予言。気を付けてくださいね‥‥」
 と無表情で告げた。
「ありがとう。貴方、お名前は?」
「私は‥‥クロムウェル・サリット・サーガラ。世界を旅している冒険者でした‥‥」
 ニコリと微笑んでそう告げるクロムウェルであった。
 そしてサクラはその言葉を脳裏に叩き込むと、そのままその場を後にした。



●真実を追跡する知恵
──とある領地・とある貴族の舘
「‥‥」
 静かな舘。
 そこの応接間で、エメラルド・シルフィユ(eb7983)が依頼人である領主と話をしている。
「駆け落ちしたお嬢様の相手なのですが、一体どういう男なのですか?」
 そう問い掛けるエメラルドに、領主は一言。
「くだらん農家の息子だ。それも、その家とは血の繋がりも何もない。小さいときに、この先の森の中を彷徨っていた所を保護されただけにすぎないしな‥‥つまり、元をただせば、どこの馬の骨とも判らないやつだ‥‥」
 そう告げると、領主は不機嫌そうにハーブティーを喉に流し込む。
「その男性との面識はありますよね?」
「当然だ。全く、あいつの顔を思い出しても腹が立つ‥‥」
「その男性は、どんな人なのですか?」
「実にくだらん、我が家の家系とは天と地の差もある。女を口説くのを生きがいに感じているような奴だ」
 かなり感情的になっているらしい。
 正しい情報としては、どこまでなのか‥‥。
「噂では、その少年が『竜の民の末裔』ということですが、それは本当なのですか?」
「ん? これを見ろ」
 と領主が告げて、小さな彫像をテーブルにゴロッと投げる。
 それは綺麗な装飾の施された竜の彫像である。
「奴が小さい時に保護されたとき、唯一身につけていたものだ。税を納められなかったときに、その代わりに奪い取ったものだが、たいした価値はないらしい‥‥で、知り合いの好事家に話を聞くと、どうやら本物の彫像らしいことがわかってな‥‥」
 その彫像を手に取るエメラルド。
「その少年が、自分が竜の民の末裔であると告げたのですか?」
「いや。小さいときからそんなもを持っているのは、くだらん竜の民ぐらいだからな‥‥」
 そう吐き棄てるように告げる領主。
「判りました‥‥では、今回の依頼についての詳しい話を御聞かせください」
 そうエメラルドは話を切り出した‥‥。


──一方・その頃
「‥‥シィどのは、この奥、霧の湖で『竜の巫女』の試練を行なっておる。今は会う事が出来ないじゃろう」
 マスター・オズは竜の巫女であり、ここに避難しているシィについて、フォルテュネ・オレアリス(ec0501)にそう告げた。
「そ、それはこまりましたわ‥‥」
 と動揺するフォルテュネ。
「ふむ。なにか事情があるようぢゃな‥‥もし良かったら話してくれないね?」
 そう告げるマスター・オズに、フォルテュネはゆっくりと話を始めた。

──中略

「ふむ。竜の民の末裔とな‥‥。シィの同族がまだ生きていたのか‥‥しかし、今は修行中であり、来るべき『刻』の為に、力を蓄えなくてはならぬ時期。今はお会いさせることはできません‥‥」
「ええ、それは仕方の無い事です。竜の洞窟の結界を解除する為に、彫像を御貸し頂けたらと思ってきたのですから」
 と告げるフォルテュネに、マスター・オズが一言。
「もし、そのものが本当に竜の民の末裔ならば、結界は解除できそうな気もするのぢゃが」
「それがそう簡単にはいかないのですよ‥‥まあ、それでも何とかします。もしシィさんが出てきたら、その時は宜しく伝えてください‥‥」
 そう告げて、フォルテュネは取り敢えずその場から離れると、真っ直ぐに『竜の民の住まう村』へと向かっていった。


──そのころの領主の住まう領地では
「‥‥色々と情報があったわねぇ‥‥」
「そうだね。で、何処から整理していくんだい?」
 サクラ・フリューゲル(eb8317)とミケヌ(ec1942)、蓬仙霞(eb9212)の三人は、この領地に一緒にやってきていた。
 そしてサクラは個人で『吟遊詩人』のフリをして街のあちこちで、今回の依頼の件についての情報を集めてきた。
 その後、エメラルドとサクラ、ミケヌ、蓬仙の4名は酒場で合流、お互いの情報を交換していた。
「まず、私の得た情報は‥‥」
 とサクラが話を開始。
「今回の事件、実は『話にでてきた竜の末裔の男と、領主の一人娘は駆け落ちした』っていう情報があるのよね」
「へぇ‥‥それなら依頼は解決っていうことで? 二人は見つかりませんでした、竜の洞窟には二人のいた痕跡が有りましたけれど、その姿は見えませんでしたサンキュー。でおしまい」
 と笑いつつ告げるミケヌ。
「まあ、二人の幸せを考えるとそれでいいと思いますけれど‥‥竜の民の末裔ですか‥‥それが気になるのです」
 そう告げるエメラルド。
「まあ、直接行って確かめておく必要はある。行くか、ミケヌ?」
「そうだ。取り敢えず現場を確認してからだな。事件はここで起きているのじゃない、現場で起きているんだって、何処かの有名な吟遊詩人が行っていたな‥‥」
 まあ、そうともいう。
「という訳だ。先に行かせて貰う」
 と告げて、ミケヌと蓬仙の二人はその場を後にした。
 そしてエメラルドとサクラの二人も、細かい打ち合わせをしたのち、その場から離れていった‥‥。


●正しき道と、隠された真実
──竜の民の村付近
 情報によると、ここが二人の衣服が発見された場所。
 その場所にやってきた蓬仙とミケヌの二人は、周辺の調査を開始した。
「‥‥この衣服が、ここに引っ掛かっていた‥‥どう思う?」
 そう呟くミケヌ。
「どうと言われても‥‥何か問題はあるのか?」
 そう告げられた蓬仙が返すが、ミケヌのそのまま話を続ける。
「彼女達の衣服が引っ掛かっていたのは、この高さ‥‥丁度、俺の身長よりちょっと高い位置のこの枝だが?」
「この服、男性物のシャツと女性物のスカートの端だろう?」
 そう呟いて、蓬仙がふとなにかにきがつく。
「随分と‥‥高い身長の女性で?」
「だろう? この高さに女性のスカートの、それも裾の部分が引っ掛かってるなんてあり得ない。男性用のシャツの裾もまた然り。スカートだけならなんらかの弾みでとも考えられるけれど‥‥偽装工作?」
 と告げるミケヌ。
「その可能性はあるわね‥‥」
 と、フヨフヨと空を飛んでいる石臼に跨がって、フォルテュネが二人に話し掛けた。
「フォルテュネも来ていたのか?」
 ミケヌがそう告げると、フォルテュネは静かに肯く。
「この先の湖の畔、村のあった廃墟で、人がいた跡があったわ。どうやら、そこから何等かの方法で、湖を渡ったと思うけれど‥‥」
 と告げるフォルテュネ。
 そしてそのまま一行は、件の村へと到着、フォルテュネの告げていた後のある場所へと移動。
 その場所で、さらにサクラとエメラルドの二人も合流した。
「人のいた痕跡が確かに有りますね‥‥」
 サクラがそう告げると、ミケヌが細かい所の調査を始める。
 その場所には、焚き木と食事の跡が残っている。
 そして少し離れた場所では、どうやらここに置いてあったらしい船を引きずった跡が、湖まで伸びていた。
──キィィィン
「湖よ‥‥最近ここを通ったものはいないか?」
 蓬仙がパットルワードを発動。
 そのまま湖に問い掛けるが、湖は何も答えない。
「水たまりじゃないしねぇ‥‥」
 と、何か察知したミケヌがそう呟くと、蓬仙は顔中を真っ赤にした。
「で、ここで二人は船にのって湖の中央の小島に向かったと‥‥」
 エメラルドが外からそう告げて、そのまま湖の方をじっと見る。
「調べてきますか? 私はこれで飛べますから‥‥」
 とフォルテュネが告げる。
「では私も同行します」
 とエメラルドも告げて、ケルピーのナイアスに騎乗。
 そのままフォルテュネは空を飛び、エメラルドはケルピーに跨がったまま水中を泳ぐ。
 腰まで湖に浸かったものの、そのまま小島まで移動することができた二人。
 そしてそこには、一槽の船が繋がれていた。
「ここに二人が来たことは事実、そして洞窟に潜っていったということには間違いはないですね‥‥」
 フォルテュネがそう告げると、エメラルドも静かに肯く。
「問題はこの奥。先に進みますか?」
「皆さんを呼んでこないと‥‥」
 というフォルテュネの意見で、二人は一度村まで移動。
 エメラルドが船に乗り、それをケルピーが村まで引いていく。
 その方法で一行は小島まで全員が移動完了。
 そのまま夜が吹けてしまった為、一行はそこでベースキャンプを設置、内部調査は翌日ということになった‥‥。



●想定外の情況
──竜の住む洞窟・最深部
 懸念していた結界は存在せず、一行はただひたすらに洞窟を突き進む。
 途中に住み着いていたデミヒューマンやインセクト、はてはアンデッドを次々と撃破しつつ、最深部にまでやってきた。
 そこで一行は、二人の姿を確認。
 どうやら無事だったらしいが、ミケヌ達が二人を連れ戻しに雇われたのではと必死に抵抗。
 だが、事情を説明すると、二人はホッと一安心。
「さて、これからどうしましょうか?」
 そう呟くエメラルド。
 そしてサクラは静かにシャルロットに問い掛ける。
「貴方たちはどうするの?」
「私は彼と一緒にいたいの‥‥いつまでもお父様のいいなりになんていたくないし、政略結婚の為に連れ戻されたくもないの‥‥」
 と告げるシャルロット。
「なら、教会で正式に結婚しましょう。そうすれけば、お父様もそうそう手を出してはこないでしょう?」
 フォルテュネがそう告げると、二人は安心したような表情を見せた。
「さてと、これで話しは終わりだけれど‥‥これってナニ?」
 ミケヌがそう告げつつ、目の前の祭壇をじっと見る。
 そこには、3つの台座に腰掛けている3つ鎧と、その前に突き刺さっている1本の巨大な剣、一振りの巨大な斧、一本の剛弓があった。
 その全てに竜の刻印が施されている。
「竜騎士カリバーンの鎧です。この4つの台座に一つずつあったのですが、一つはどうやらだれかが持ち出したようです‥‥」
 そう青年が告げる。
「これ、もっていっていいのか?」
「さあ‥‥鎧が主と認めるのなら‥‥ですね。まだこれらは眠っているようですから‥‥」
 と男性は告げる。
「ど、どうして判る?」
 とミケヌが突っ込みを入れるが、男性はサァ? と頭を捻るだけであった。

 そして翌日。
 一行は二人を洞窟から開放し、一路プロスト辺境迫領へと向かう。
 そこで結婚式をー行ない、ふたりはしばらくの間、身分を隠して町の中に溶けこむことにした。
 
 依頼については誰も居なかったという報告を提出。
 がっかりとした表情の領主をよそに、一行はパリへと戻っていった。

──Fin