●リプレイ本文
●やってきました竜の村〜飛んでる飛んでる〜
──村の手前の街道
「とりあえず、村に付いたら調査かしらねぇ」
それはレオンスート・ヴィルジナ(ea2206)。
今回の依頼は期間があまり長くないため、道中で一行は色々と段取りを行っていた。
「村人の所には、俺がいきましょう」
「出発前にギルドでドラゴンの詳細を訪ねてきたのだが、今一つはっきりとしない部分が多い。知識には多少自身があったのだが‥‥。まあ、俺も村人に聞き込みをするか」
それはアリアス・サーレク(ea2699)。
出発前にドラゴンについて調べてみたのだが、どうも確証の持てない部分が多い。
アリアス自身、多少は学問を納めている身。 ドラゴンについても多少の知識があったのだが、やはり専門的に学んだものではない為、殆ど役に立たない。
「私は、周辺の調査でもしてみよう。ドラゴンが何処から来るのか、多少は判るだろう」
ジャン・ゼノホーフェン(ea3725)がそう告げる。
彼も又、アリアスと同じく学問を納めていたが、やはり専門的な部分までは足を踏込んでいない。
「まず、初日は村人や村長から話を聞く者と、周辺の地理調査を行うものに分かれて調べたほうがいじゃろう。ドラゴンに遭遇したら厄介じゃが、必要最低限の情報を得ることは必要なことぢゃからのう」
七刻双武(ea3866)の提案。
そして双武はその事をジャパン語で氷雨絃也(ea4481)に通訳。
『なら、俺は村の中で調べ物でもさせて貰う。ドラゴンが興味を引くものがあるやも知れんからな』
氷雨がそう双武に告げる。
その氷雨の言葉を皆に伝えると、コトセット・メヌーマ(ea4473)が口を開いた。
「アリアスさんとジャンさんが今ひとつ確信がもてないというのは判る気がする。私は多少であるがドラゴンについては専門的に学んでいる。ここは一つ、私が事の真相を調べてみる」
流石はコトセット。伊達にモンスターについての全般的な事を学んではいない。
しかも専門分野にまで、その根を張り巡らせている所は、学問探求の使徒であるウィザードならでは。
「では、初日は全員で調査活動、翌日に本格的なドラゴン退治という所でよいのかな?」
アリス・コルレオーネ(ea4792)が纏める。
その言葉には皆、同意。
「問題があるとすれば‥‥このメンバーの中に、クレリックがいないという事か」
そのラックス・キール(ea4944)の言葉に、一瞬その場が静まり返る。
「リカバーポーションぐらいは持ってきているでしょお?」
「ああ。一本だけだか。これは出来ることなら使いたくない」
レオンスートの言葉に、ラックスがそえう返答。
とにもかくにも大方の段取りを終えた後、一行は村に到着した。
●初日〜情報ではお騒がせドラゴンの模様〜
──村にて
さて、一行は村に到着すると、何はさておき依頼人の元へと向かった。
そして一通りの挨拶を終えた後、荷物をその場に置かせてもらって一同は調査開始。
村の中は人の気配が少ない。
子供達や女性は脅えてしまい、家の中に閉じ籠っている。外を歩いているのは男達のみ。
それも、皆、ピッチフォーク(鋤)やスレッジハンマー(鍛冶用ハンマー)、ブッチャーナイフ(肉きり包丁)などで武装している。
そんな男達や、事情を説明して家の玄関口で聞き込みを行った結果、幾つかの情報を得ることが出来た。
・ドラゴンは村の上空を旋回する
・時折低空飛行しては、村人の頭上を通り過ぎていく
・何かを捜しているといった様子は感じられない
・ドラゴンは丘陵地の方からやってくる
ちなみに、丘陵地の奥には小さい洞窟が一つ、ポッカリと口を上げているという話。
昔からある洞窟だが、特に珍しいものでもなく、最近は誰も近寄っていないらしい。
そして、周辺を調査した結果、彼方此方にドラゴンの足跡らしいものが幾つか発見された。
その足跡から判断するに、ドラゴンのサイズは1m程度の模様。
周辺ではそれ以上の情報は得られなかった。
そしてなにより、コトセットが興味を示した情報が幾つかあった。
一つはドラゴンの姿。
そしてもう一つは小さい洞窟という話である。
とりあえずコトセットは、実際にドラゴンを見るまでは確証が持てなかった為、その日はお互いの情報をすりあわせて終了した。
●2日目〜ドラゴン退治の筈ですが何か?〜
──村にて
まずはドラゴンをおびき寄せる準備が必要。
レオンスートは村人に頼み込み、大量の生肉を調達。
ジャンはドラゴンの周回ルートを解析し、どの方角からやってきているか統計を出す。
そしてその進行ルートで、餌となる生肉が見易い場所を選択。
村から洞窟よりの草原地帯に、テーブルを用意すると、そこに生肉を配置。
「ついでにぃ、これも置いておくといいってカンジぃ?」
レオンスートはそのままワインをテーブルに置いておく。
「いや、いくらなんでもドラゴンはワイン飲まないだろ?」
そういうジャンの突っ込みは敢えてパス。
そのテーブルのちょっと離れた場所、森の入り口付近に、準備が終った一行は隠れるように待機。
アリアスの提案で2、3匹ずつに分けての各個撃破となった。
「子供といえどもドラゴンだからな。コトセット、説明のドラゴンだった場合、どのような攻撃をしてくると思われる?」
アリスがそう問い掛ける。
「もし、ドラゴンが本物ならばという事で話をさせて貰う」
まずはそう切り出すコトセット。
「ドラゴンの子供‥‥つまりドラゴンパピィだとすると、大人ほど強力ではないが、ブレスはあるだろう。説明通りだとすると、相手はボルゲイドドラゴン。凶悪という点ではトップクラスだな」
そう告げるコトセット。
「何か含んでいるな。相手はドラゴンじゃないのか?」
そう問い掛けるラックス。
「いや、まだ確定ではない‥‥が、小さい洞窟というところが気になる。ドラゴンパピィの生態については詳しくはないが、確か幼生は大人と共にいる筈。大人のドラゴンが小さい洞窟にいるはずはないし、最近になって移り住んできたとは考えられない‥‥」
その言葉の直後、上空を何かが飛んでくる音が聞こえてくる。
──ヴァサッ、ヴァサッ
上空から羽ばたく音が聞こえてくる。
それは全部で5体。
ゆっくりと下降してくると、そのままテーブルの近くに着地し、注意深く周囲を見渡す。
(しまった‥‥ワインの栓を抜きわすれた‥‥)
ジャンがそのときになって始めて気付く。
テーブルにワインを置いた時、コルク抜きもその場に置き忘れて居たのである。
その間、コトセットは注意深くドラゴンを観察する。
(プッ‥‥成る程)
その顔には満面の笑みが浮かんでいた。
(5匹、厄介だな‥‥タイミングあわせる)
そう静かに呟くアリアス。
だが、コトセットはそれを手で制すると、ドラゴン達の方を指差した。
その光景に、一行は絶句。
ドラゴンは、ジャンが置き忘れたコルク抜きを手に取ると、丁寧にそれを使ってワインの栓を抜く。
そして楽しそうにその場の5匹で回し呑みを始めたのである。
(‥‥えーっと。どういう事か説明してくれ‥‥)
そう呟くアリス。
(偽者だな。何者かがドラゴンに変身して、そのまま村人達を驚かしている‥‥さて、取り敢えずふんじばって吐かせるとするか)
その言葉は双武を通じて氷雨に通訳。
それと同時に、氷雨は素早く駆け出す。
──ガサササササッ
小走りで草原を駆け抜けると、素早く抜刀、氷雨はドラゴンに向かって斬りかかった。
『さて、貴様達の正体、見せて戴く!!』
──ザシュッ ドシュッ ズバァァァァン!!
氷雨の鋭い3連撃が炸裂!!
それを真面に受けたドラゴンが、その場に崩れ落ちる。
「キシャーーーーーッ」
「ピキャーーーーッ」
「ヴェェェェェェェィ」
「グォォォォォォォォォッ」
「ミギャーミギャー」
ドラゴン達がその場でオロオロしながら絶叫を上げ始めた。
氷雨に斬られた奴は、かなり弱々しい声でひたすら鳴いている。
『俺の3連撃を受けて、尚動ける‥‥流石はドラゴンといった所か』
そのまま氷雨は腰溜め水平に刀を構える。
その直後、森の方からは冒険者御一行が飛び出した。
そしてドラゴン達を囲むと、皆戦闘態勢に入る。
「さて‥‥ドジなドラゴンさん。そろそろ正体を見せて貰おうか?」
コトセットがそう呟く。
が、ドラゴン達は何のことか判らない様子で、口を大きく開いて一気に息を吸い込む。
「ブレス?」
レオンスートが一瞬身構える。
アリアスは既に発動させてあったオーラシールドを前方に突き出し、ブレスから実を守る体勢を取る。
その後ろに、ジャンとアリスが移動。
双武とラックスはそのまま戦闘態勢を維持。
コトセットとドラゴンの交渉を、じっと聞いていた。
「まあ、こっちの言葉‥‥人間の言葉は理解できないというそぶりか? だが‥‥尻尾までちゃんと変身していないと、駄目だと思うが?」
コトセットがそう告げながら、一匹のドラゴンを指差す。
当然、尻尾は普通のまま。
コトセットの口調巧みな『引っ掛け』である。
「何? どこをどう見てもドラゴンの尻尾じゃ‥‥って‥‥ヴェイ」
そして、そのコトセットの話術にあっさりと引っ掛かったドラゴンが一体。
──ニィッ
コトセットの口許が緩む。
「随分と、人間の言葉が巧みなようで。とっとと正体を表わして貰おうか? 死にたくはないだろう?」
そう呟いた直後、ドラゴン達は『やばいっ』ていう感じの表情で羽ばたきはじめる。
「‥‥甘いね‥‥」
その瞬間、アリスの魔法完成。
既に詠唱を開始していたアリス。
それがドンピシャリのタイミングで発動した。
──カチィィィィン
はい、ドラゴンの氷づけ一体完成。
アリスのアイスコフィンが発動。
羽ばたいていたドラゴンが一体、氷の棺に閉じ込められた。
「兄じゃ!! よくも兄じゃを!!」
とうとう開き直ったドラゴン達。
仲間を救うべく勇敢にも戦いを挑んだのだが‥‥。
この戦い、微妙に冒険者達には不利であった。
なんといっても、この偽ドラゴンには通常の武器による攻撃が全く通用しない。
が、それが判った瞬間、コトセットがバーニングソードを、双武がライトニングソードを発動。
仲間たちの武器や矢に、魔法を附与していった。
飛んで逃げようとしたドラゴンには、燃え上がる魔法の炎に包まれた、ジャンのダガーが翼に突き刺さる。
さらにラックスが、自慢の弓で稲妻走る矢を発射。次々とドラゴンを大地に叩き落とす。
それでもなお逃げようともがく奴には、双武の必殺ライトニングサンダーボルトが炸裂。
レオンスートとアリアス、氷雨が、落ちてきたドラゴンに次々と会心の一撃を叩き込み、弱りきったところを、アリスのアイスコフィンが止めとばかりに発動。
ドラゴン達を氷の棺に閉じこめ、最後には全身ボロボロの一匹を残し、全て氷づけにしてしまった‥‥。
「‥‥ここまでアイスコフィンが決まるとは、思っても居なかった‥‥」
アリス、驚きの表情である。
「それでは、そろそろ正体をあかして欲しいジャン!!」
ハルバードをドラゴンの首筋にピタリと付けるレオンスート。
『まだ、抵抗するのか? ならば‥‥』
氷雨もまた、刀を垂直に構えた。
俗に言う『唐竹割り』である。
「まあ、仲間たちもこの状態ですし、とっとと正体を明かしたほうが無難だな‥‥」
コトセットが、そうドラゴンに告げる。
「判った判った。まったく‥‥だから、この作戦は俺ッチは反対だったんだ‥‥」
ブツブツと呟きながら、ドラゴンの姿がムニュムニュと変わる。
それは一匹の小鬼である。
背中にコウモリの羽を生やした鉛色の小鬼。
先端が矢尻のような形をした長い尻尾、そして耳元までバックリと裂けた口。
「‥‥貴様何者だ?」
おっと、コトセット、ここでド忘れ。
「インプか‥‥珍しいな」
「確かに。こんな所で何をしているのか‥‥」
ジャン、アリアス、奇蹟の記憶術で小鬼の正体を思い出した。
「ケッ‥‥。ドラゴンに変身したら、人間共は恐がるだろうと思って‥‥あの村の連中の恐怖心を集めていたのに、なんでまた冒険者がやってきやがったんだ‥‥」
いや、君達が浅はかすぎるだけ。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花‥‥ということじゃよ」
そう呟いた後、双武は氷雨に事情を説明。
『小鬼か。悪であることに変わりはない』
チャキツと刀を構えなおす氷雨。
「ああああ、待った待った。ちょっと待った。これ以上悪さしないから許してくれ」
平に謝りまくるインプ。
「で、もし許して貰ったら、これからどうするつもりだ?」
ラックスが問い掛ける。
「そりゃあ、また別の村に行って、こんどは冒険者達に気付かれないように‥‥ってウソウソ」
やはり、君は浅はかすぎる。
「今回の依頼は、村を脅かすドラゴンを何とかして欲しいだったな。で、脅かしていたのはドラゴンよりも達の悪い悪魔‥‥か」
アリスが、スッと印を組み韻を紡ぐ。
「つまり、手加減は無用ということだな」
ラックスが力一杯弓を引く。
「では、俺達の依頼成功の為に」
コトセットも印を組み韻を紡ぐ。
「村の平和を守るために‥‥」
アリアスもまた、ソードを構える。
「悪魔と判った以上、只では帰さないってカンジぃ」
神聖騎士レオンスート、マジである。
「ここで悪魔の皆の衆には、死んでもらおうかのう‥‥」
双武も魔法詠唱準備よし。
『人の世を乱すものは斬る!!』
じりじりと間合を詰める氷雨。
そして‥‥
「ごちゃごちゃ言わせねぇ。とっとと死ね!!」
ジャン、切れた模様。
──そして
戦いはあっさりと決着がついた模様。
翌日には、インプは全て全滅。
そして事のなりゆきを村長に説明すると、一同は疲れた表情でパリへと帰還していった。
●そして冒険者ギルド
「ドラゴン、どうでしたか? 皆さん無事のようでしたけれど、大丈夫だったんですねぇ」
受付嬢が心配そうにそう問い掛ける。
「でも、ドラゴンを倒したっていう事は、みなさんドラゴンスレイヤーじゃないですか?」
そうニコリと告げる受付嬢に、コトセットが静かに口を開いた。
「いや、俺達は‥‥『どらごんすれいやぁ☆』って所だな‥‥」
ちょっと発音が違う。
そしてコトセットのその言葉に、一同は苦笑しながらギルドを後にした。
〜FIN〜