●リプレイ本文
●さがせ元素
──パリ・王宮図書館
「ふぅん‥‥」
大量の写本や粘土版を側に、ディーネ・ノート(ea1542)が何かを必死に書き写している。
「参ったなぁ‥‥普通に六元素って言うと、地面の石や川の水、松明の火をイメージするけども‥‥そんなに簡単じゃない気もするし‥‥」
精霊界へと向かう為に必要な6元素。
それが何かをディーネは調べていたらしい。
だが、それらに詳しそうな人物に心当りもなければ、それらについての記述も見当たらない。
「‥‥元素について詳しい人かぁ‥‥」
そう呟きつつも、とりあえず纏めたスクロールを片手に、ディーネは図書館を後にした。
──一方のそのころ
「ええええええええええええええええええええええええええ!!」
そこはパリ市内の吟遊詩人ギルド。
リル・リル(ea1585) はギルドにいるであろう『ザンク!!』の元を訪ねていた。
目的は一つ、『精霊剣フェアリィサークル』について、何か伝承が残っていないか問い掛けに来ていた。
「ああ、知って居るよ。どこに在るかも判っているけれど?」
「それは何処ですか? 誰かが所有しているのですか?」
そう問い付めるリル。
「まあ落ち着け。そしてハーブティーを呑め」
そう告げられて、リルはとりあえず椅子に座ってハーブティーを一口。
──ピリッ‥‥ピリピリピリピリ‥‥
しばらくして、リルの身体に変化が訪れる。
「そう。あれはこのパリから遥か南、シャルトルにある小さな湖の底。そこにある『古きものの神殿』。そこに静かに安置されていた‥‥」
(あ‥‥あれ‥‥おかしいな‥‥身体がぴりぴりする‥‥)
「‥‥そしてそのとき、一人の騎士が精霊に連れ去られていった王女を助けに単身で神殿へと飛込んでいった!! 」
いつのまにかリュートを構えて弾き語りを始めている『ザンク!!』。
「囚われの王女は牢屋の中。明日には古き魔物の生贄とされてしまう。だが、神殿に突入した騎士は手にした『6大精霊の杖』を一振りの剣に変化させる。その剣こそ、精霊の長のひとり『バハムート』の牙より鍛え上げられた『精霊剣』から、風の精霊を召喚すると、その身を風の如く変化させて、王女の‥‥リルリル、聞いているのか?」
「ぴ‥‥ピリピリする‥‥」
そう告げたリルが目にしたもの。
それはテーブルの横に置いてあるハーブの袋。
メイド・イン・アデラと記されたそれを見て、リルは絶句した。
「『ザンク!!』さん、簡潔に‥‥」
「あ、ああ。プロスト辺境伯が保管している筈だか?」
その言葉に、ガクッと力尽きて真っ白になるリルであった。
「燃えたよ‥‥真っ白に燃え尽きたよ‥‥」
それがリルの最後の言葉であったとさ。
──さらにそのころ
「天照様、ここから一番近い『精霊の元素を示す物』を探す手掛かりとなるモノをお教え下さいませ」
天気は快晴。
パリ郊外で八代樹(eb2174)はサンワードを発動。
太陽に『精霊の元素』を問い掛けている。
「アナタノアシモトニヒロガルセカイ‥‥」
太陽の輝きはそう囁く。
「私の足元に広がる世界‥‥」
──フワサッ!!
その刹那、一陣の風が吹きぬけていく。
草木のざわめく声、近くの小川のせせらぎ。
それらが一つ一つ、樹の耳に、目に届いていく。
「この世界そのものが、全ての元素によって構成されている‥‥」
ならばと、樹は印を組み韻を紡ぐ。
「天照様。『精霊剣フェアリィサークル』はどこにあるのでしょうか?」
「ソレハドコニモソンザイシナイツルギ‥‥」
太陽の輝きはそう告げる。
「せめて、手掛りを‥‥」
再び印を組み韻を紡ぐと、樹はそう問い掛ける。
「セイレイノツエハ、カシコキモノノモトニ‥‥」
そう答えが帰ってくる。
「精霊の杖? 賢きもの? 精霊剣とどんなつながりが?」
そう呟くと、ひとりで答えを求めるのが不可能と感じ、樹は仲間たちの元へと向かっていった。
●悲劇のあとにわ
──旧シルバーホーク邱中央・破滅の魔法陣爆心地
「あいかわらすだな‥‥」
草木一本生えていない土地。
かつて、ここは破滅の魔法陣の中心地点だった。
ラシュディア・バルトン(ea4107)とセイル・ファースト(eb8642)の二人は、この場所を訪れていた。
「そうだな。さて、それじゃあ始めるとするか」
セイルはそう告げると、道中『もふもふ』から借りてきた精霊の杖を大地に突きたてる。
「風の精霊よ‥‥精霊界への道を開くための道標を我に‥‥」
もふもふむより預かった『契約詠唱文』を大声で叫ぶセイル。
その横では、建てられている精霊の杖にラシュディアが魔力を注いでいる。
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
やがて杖に光が宿り、そして消えていった。
(立体迷宮最下層‥‥月の精霊の宮‥‥)
そう風が告げている。
「聞こえたか?」
「ああ。予想通りだ。あとは皆と合流し、元素と剣を手に向かうだけだな‥‥」
ということで二人はすぐさま仲間のもとへと向かっていった。
──一方・プロスト辺境伯領内では
♪〜
知っていますか?
12ヶ月の幸せの言葉を集めた街の物語。
あなたの傍らの12の星の幸せ達。
今度は12の半分 6つの煌きの言葉達。
あなたなら何を示す? そっと教えて私だけに…
キラキラお日様 陽の光。
ひまわり 金貨 未来の夢… 教えてお日様のお友達。
♪〜
街角に響いているシェアト・レフロージュ(ea3869)の声。
それに導かれて、大勢の子供達が集まって、一緒に歌っていた。
「温かいお母さん。美味しいスープ。優しいぬくもり、暖炉の前」
「おっきいおはな」
「でっかい雲」
「教会の窓!!」
子供達の子度はの中から、一つ一つ考えていくシェアト。
自分では思い付かないことを、子供達は教えてくれていた。
けれど、やはり『ぴかぴかの金貨』というのが一番多かったのはどうしてでしょう?
そのまま場所を変えて、シェアトは6元素についての歌を紡ぎ、子供達から色々と教えてもらっていた。
●賢人? 変人?
──シャルトル・ミハイル研究室
「ふむ。そろそろここにくる事ぢゃろうと思っていたが‥‥」
そう笑いながら呟いているのはミハイル・ジョーンズ教授。
「ああ。いくつか教えて欲しい事があってな‥‥」
そう告げているのはシャロン・オブライエン(ec0713)。
「ふむ。で、立ち話もなんじゃから、みんな応接間にでもいっておれ‥‥」
ということで、集まった一行はそのまま応接間へ。
そしてハーブティーを入れてミハイルがもどると、静かに腰を下ろして口を開く。
「まず、誰からぢゃ?」
そう告げられて、先ずはシャロンが口を開く。
「上位精霊というのはいったいなんなんだ?」
いきなり核心を突く。
「そのとおりぢゃ。全ての精霊の頂点に立つ6つの精霊達。我々の住むこの世界ではます見る事の出来ない存在というところぢゃろう‥‥」
そのまましばし、沈黙していた。
●ということで
──プロスト辺境伯城地下立体迷宮
ミハイル研究室に集まっていた仲間たちと共に、一行はプロスト城地下立体迷宮へと向かっている。
第一階層、第二階層と一つ一つをゆっくりと降りていく。
過去に何度も来た事の在る仲間たちを前衛とし、そのままはるか地下へと降りていった。
そして、月精霊の住まう階層にたどり着くと、一行は『月精霊の住まう宮』の前に集まっていた。
「アルテイラ。知恵を貸して欲しい」
そうラシュディアが告げると、宮の扉が静かに開き、奥からアルテイラが姿を現わした。
「古き友よ。一体なんの御用でしょうか?」
そうアルテイラが告げると、エル・カルデア(eb8542)が静かに一礼し、アルテイラの前に進み出る。
「まずは御身に会えた事を光栄に思います‥‥」
と一礼し、貢ぎ物を差し出した後に、エルは今までの敬意を説明する。
「教えて頂きたいのです。精霊の元素を示すものを‥‥」
エルにはおおよその目処が付いている。
だが、それは全て候補であり、真実ではない。
「私達なりに考えました。元素とはなんであるのか?」
クリス・ラインハルト(ea2004)がそう告げると、さらに樹も口を開く。
「精霊の示す力。そして元素。それは私達の身近にある存在でした。大地と風と炎と水。それは全て私達の住まう世界を示しています‥‥」
樹のその言葉に、アルテイラも静かに肯く。
「これが私の考えたすべてです‥‥」
クリスが持ってきたものを一つ一つ並べていく。
それらの中には、シェアトの聞き出した金貨なども含まれている。
「全ての元素。これを扱うものは?」
そうアルテイラが問い掛けると、ひとりひとりが名乗りを上げる。
「大地は私エルが」
「水は私ディーネが」
「風はオレラシュディアが」
『月は私達が』
と、 シェアトとクリス、リルが告げる。
「陽は私八代が‥‥」
と、次々と名乗りを上げるが、火を司るものがいない。
「‥‥私が火を兼任してよろしいですか?」
ディーネが告げるが、アルテイラは頭を左右に振る。
「それは無理でしょう‥‥貴方は火と水、相反する二つの元素を同時に操れますか?」
その言葉に、ディーネは後ろに下がる。
「それなら、火は私レナードが引き受けましょう‥‥」
そう告げたのは、賢者レナード・プロストであった。
「プロスト卿‥‥よろしいのですか?」
シェアトが問い掛けると、プロスト卿は静かに懐く。
「では、みなさんそこに‥‥」
とアルテイラが大地を示す。
すると、突然大地に魔法陣が浮かび上がる。
「月を示すものよ、精霊剣を手に、中心へ‥‥」
その言葉に導かれて、リルリルが中央にふらふらと飛んでいく。
そして精霊剣を突きたてると、そのままその場に立ち止まる。
「一つだけ‥‥これからみなさんの向かう世界、そこに留まれるのは10分間のみです。その世界に存在するものは、この世界へは持ち込まないよう‥‥」
その言葉に肯く一行。
「6つの偉大なる精霊王よ、古の精霊騎士よ。彼等をかの地へと誘いたまえ‥‥」
その刹那、魔法陣が激しく輝いた‥‥。
●精霊の宴
──場所不明
やがて輝きは失われる。
気がつくと、一行はどこかの神殿の中に立っていた。
周囲の壁はなく、外が丸見えである。
そして外の風景。
果てしなく続く緑の大地。
湖と巨大な河、火を吹く山脈。
風が優しく流れ、そして空には太陽が輝く。
「ここが精霊界‥‥」
精霊魔法を納めている者は、自らの体内に眠る力が活性しているのが判る。
この世界には、精霊の力が充満している。
「そうなのか‥‥よく判らないが」
「らしいな‥‥」
セイルとシャロンの二人にはそれを感じ取る事が出来ない。
──フワサッ!!
と、遠くから何かが飛んでくる。
それは巨大な竜である。
静かに飛来したそれは、音もなくゆっくりと神殿の上に着陸した。
その大きさ、じつに50mほどもあろう。
白金の鱗を持つ、痩身で巨大なドラゴン。
その頭上には、王冠の様に並ぶ黄金の角が輝いている。
「あ‥‥あ‥‥」
その姿を見て、樹の瞳から涙が溢れている。
本物は見た事はなく、御研ぎ話や魔導書にのみ、その存在が記されている『陽精霊の王・バハムート』である。
「バハムート様‥‥」
全身から力が抜け、樹はその場に崩れ落ちていく。
「小さきものよ。この世界にどのような理由でやってきた?」
そう問い掛けるバハムートの優しい声。
と、サクラ・フリューゲル(eb8317)は神殿の中から外に出ると、そのまま振り返ってバハムートに向き直る。
「サクラ・フリューゲルと申します。お会いできて光栄ですわ。突然の訪問、平にご容赦の程を‥‥」
そう告げると、サクラは静かに話を続けた。
それは現在、世界に起こっている異変。
デビルの跳梁、自分達の置かれている現状を全て話したのち、サクラは告げた。
「私達にも彼らと戦いうる想いと力があります。それは貴方とは異なるかも知れませんがだからこそ力を合わせたいのです‥‥私達に、力を貸してください。」
その直後、その場に居合わせた全員がバハムートに向いて頼み込んだ。
「精霊の力が必要なのです」
「御願いします‥‥」
次々と懇願していく一行。
だが‥‥。
「小さきものよ。我は、そして全ての王たる精霊は、そう安易に汝たちに力を貸すことはできぬ‥‥」
その言葉が全員の胸に突き刺さる。
「何故ですか!!」
サクラの心の叫び。
「我等、地獄の門を越える事叶わず。我等が地獄に干渉した場合、その膨大な力によって、天界、地上界、そして精霊界、地獄界すべてのバランスは失われる‥‥その結果、全ての世界が崩壊するやも知れぬ‥‥」
そう告げると、バハムートは静かに上昇を開始する。
「力を加減して‥‥どうにかなりませんか?」
エルが懇願するが、バハムートは哀しそう瞳を見せる。
「我等精霊と盟約を結ぶものならば、その力の片鱗を手に入れる事が出来よう‥‥それでもなお、力を求めるか?」
その言葉に、だれとなく返答はしない。
だが、その心は一つであった。
「よかろう‥‥」
バハムートの周囲に6つの光が生まれる。
「精霊の力、探し求めよ‥‥」
その刹那、光はスッと消えていった。
そして一行の姿も、徐々にゆがみはじめた。
一瞬の後、一行は元いた地下迷宮に戻っていた‥‥。
──そして
地上に戻った一行。
今までの出来事が果たして本当なのか判らない。
ただ、バハムートの言葉だけが、いつまでも脳裏に焼き付いていた。
「あれは精霊武具とは少し違う‥‥ぢゃが、精霊の力の何かぢゃろう」
そうミハイルが告げる。
「もしあれを求めるのならば、精霊との盟約を結ぶ必要がある。その上で、探索に出るというのなら、これを貸してやろう」
プロスト卿がそう告げて、精霊剣を鞘に納める。
「用意ができたなら、いつでも来なさい。私は今は江戸村の管理の為にそっちに引越ししているから‥‥」
と告げて、ミハイルとプロスト卿はその場を後にした。
これからどうするのか。
強大な精霊の力を求めるのか‥‥。
──Fin