●リプレイ本文
●愉しい一時
──シャルトル・プロスト辺境伯領・とある小高い丘
「ギュンター君。早起きして美味しいの作って来ましたよ。はぁい、めしあがれ♪」
と、丘の上で愉しそうにピクニックバスケットから御弁当を取出しているのは薊鬼十郎(ea4004)。
久しぶりのギュンター君とのデート。
朝早くから起きて和洋折衷の御弁当を仕込み、それを持ってきていた。
「うあ、おにく!!」
とまあ、相変わらずカタコトで話すギュンター君だが、鬼十郎の作ってきた御弁当をヒョイヒョイと愉しそうに口の中に放り込んでいく。
「ああん‥‥もうギュンター君ったら‥‥」
その勢いに圧倒されるも、いつものギュンター君の姿を嬉しそうにジーッと見つめている鬼十郎。
ふと、空を見上げる。
ゆっくりと流れていく雲。
風の囁く声。
羽ばたいていく鳥。
丘の下では、農夫達が忙しそうに仕事をしている。
そして側には、大好きなギュンター君。
いつまでも、この時間が続きますように。
そう、こころから祈っている鬼十郎でした。
──Fin
●さて、そんな甘い話は放置しておいて
──剣士の居留地
「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
気合一閃。
激しく振るう剣の一撃。
それを受けて、バーク・ダンロック(ea7871)の目の前の岩が、音を立てて砕けていく。
「まだまだだね。剛剣術じゃなくて、力一杯力任せに岩を破壊しているだけだね‥‥」
目の前の少年に告げられて、バークは流れる汗を拭うことなく、少年に静かに語りかける。
「ラグナ殿。どうすればいいのか教えて欲しい。今のままでは、シヴァ・マハ=カーラにも勝つことが出来ない。あの黙示録の塔にさえ、シヴァ・マハ=カーラから出没している。奴から仲間たちを救うにも、力が欲しい‥‥」
そう告げるバーク。
「いい? 剛剣術にも二つのタイプがあってね。護りの剛剣術と攻めの剛剣術。見た感じでは、バークのタイプはどちらともいえない。護りの剛剣術を身につける為には、色々と面倒くさい修行が必要でね‥‥」
と告げると、バークは叫ぶ。
「どのような辛い修行でも構わぬ。頼む!!」
「ほいほい。それじゅあ始めようかね♪〜」
とあっさりと告げると、バークに全身の鎧を全て外すように告げる。
「ラグナ殿。これから何を?」
「オーラボディを絞る修練だね」
その言葉の意味がバークにはわからなかった。
オーラボディは全身に張り巡らすオーラの防護膜。
それを絞るというのが理解できない。
「絞るというと?」
「具体的にはこのとおり。感じれる?」
と、ラグナの全身オーラが巡回する。
やがてそれが左腕に集中し、左下腕部に集まる。
「おおおおおおおおおおおおおおお」
そのオーラの高まりに、バークは思わず声を漏らす。
「ね。本来ならば出来ない。けれど、剛剣術によって、オーラをコントロールする事で、この腕部は鋼よりも硬く、そしてしなやかさを兼ね備えている‥‥」
それがバークにあう剛剣術であることを説明されると、バークは早速オーラコントロールのレクチャーを受けることとなった。
──その頃の阿修羅寺院
「‥‥フィーム様、ご報告があります」
阿修羅寺院の奥の間。
結跏趺坐で瞑想をしているフィームの元で、鳳美夕(ec0583)が静かにそう告げる。
「よい」
「私は現在、セイルを代表とする『TN特攻隊』に参加しています。『チームノルマン』の名を冠してはいますが、政治的に国と繋がる訳ではなく、ノルマンを護り引いては世界の為に戦っていくという部隊です。宜しければフィーム様も参加願えないでしょうか?」
それは突然の申し出であった。
「これは代表のセイルにも既に相談しています。フィーム様も戦いに赴かれているとは思いますが、チームに参加する方が注目度も上がり、フィーム様の戦いにより全体の士気も上がると思います。よろしければご一考下さいませ」
その言葉ののち、約半日。
フィームの精神修練に付き合い、美夕も結跏趺坐で瞑想を続ける。
そしてそれが終ったとき、フィームの口から出た言葉は一つ。
「考えておこう。様々なチームにパラディンが参入しているという報告も聞いている‥‥話しはそれだけか?」
そう告げられると、美夕はさらに一言。
「先日。ラグナ殿の元で剛剣術の修練を行なって参りました。もし宜しければ、見て頂きたいのですが」
「いいだろう。局地戦装備で道場に来い」
そう告げてフィームは瞑想の間をあとにした。
「き‥‥局地戦装備ですか‥‥」
全身に鳥肌が立つ美夕。
フィームは本気でくる。
それを理解すると、美夕は自身の思い付く限りの装備を整え、道場に向かった。
そこでは、白銀の鎧に身を包んだフィームが立っている。
武器はフィーム愛用のギルガメッシュ一振り。
道場の四方には阿修羅僧が待機し、美夕が到着すると同時に結界を施した。
「では見せて貰うとしよう‥‥この結果が良ければ、天位フィームの名の元に、鳳美夕をパラディンとしての実力ありと認め、候補生の名を外そう!!」
それはすなわちパラディンとして認められること。
「行きます!!」
気合は十分。
ラグナと共に特訓したその成果を、美夕は全てぶつけていった。
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
‥
「あは‥‥あはは‥‥天井が見える‥‥」
いったいどれぐらい叩きのめされただろう。
ラグナと共に鍛えていた剛剣術。
そのほとんどがフィームには届かない。
まだまだ修練不足とフィームは告げた。
その上で『再挑戦を待つ。他の候補生達にもそう告げておくよう』とも。
「美夕殿。治癒は終りました。失われた防具については、後日修復してお届けします‥‥」
阿修羅僧のその言葉に、美夕の瞳から涙が溢れた。
「やっぱり強いですね。世界最強の称号は伊達ではないですね‥‥」
その美夕の言葉に、阿修羅僧は静かに微笑む。
「優しさと強さを兼ね備えている御方です。けれど、苦手なものもあるのですよ‥‥」
と告げて、立ちさっていった。
「もう少しで届くかなぁ‥‥」
天井に向かって掌を伸ばしつつ、美夕はそう呟いた。
●ドラゴン僧侶
──アビス外・限界バトル亭
「ダメかしら‥‥」
ハァと溜め息を一つつきつつ、ディアーナ・ユーリウス(ec0234)はテーブルで羊皮紙をじっと眺めている。
「あと、ここにいるレンジャーにフリーは一人もいませんよ。フリーだった人たちもどこからチームに雇われてしまっていますし。ディアーナさんの知り合いの二人も」
「ダメだったからね‥‥どうしましょうか?」
鷹司龍嗣(eb3582)の言葉に続いて、ディアーナが困った表情。
「まあ、おいおいレンジャーは見付けるとしよう。それよりも、結局、七つの龍珠を集めた奴はいなかったのか? それになんで、華国にあるはずの宝珠がこんなところにあるんだ?」
そう七星導士に問い掛けているのは虚空牙(ec0261)。
ちなみに空牙と七星、ふたりは華国で面識が有るらしい。
「6つまではそろいました。ですが、それはとある組織に奪われてしまい‥‥それを巡っての争いが在ったのですが、その動乱のさ中に、龍珠は世界の彼方此方に飛んでいってしまったらしく‥‥」
そう告げる七星導士。
「そうか。まあ、その組織については興味がないが‥‥まあここの近くにあるというのなら、喜んで向かうとしよう」
●真実
──ミハイル研究所
パタパタパタパタ
忙しそうに走りまわっている研究員。
それを横目に、シェセル・シェヌウ(ec0170)は第一助手であるシャーリィ・テンプルと話をしていた。
その内容は、先日シェセルがミハイル教授の元を訪れたときの教授の言葉。
「パランスの問題ぢゃよ」
それが気に掛かっていた。
真実を知って居るのはミハイル教授であることは間違いない。
だが、それがどうして知らされないのか。
そしてもう一つの言葉。
「‥‥いついかなる時代にも、正しいのは我々人間だけとは限らないということぢゃ」
まるで、別に正しいものがいるかのような言葉。
それらの真実を尋ねに、シェセルはやってきていた。
ミハイル教授はというと、あちこち出かけていて最近は滅多に戻ってこないらしい。
その為、シャーリィが代理としてシェセルと話をしている。
先日の話しの全てを告げた後、シャーリィに一言尋ねた。
「先のミハイル教授の言葉には、恐らく元となった事実があるはずですので、その件についての確認を行いたいと考えています」
だが、シャーリィは静かに笑いながら一言。
「私が教授の事を知って居る筈はありませんよ。一緒に遺跡を巡っていたのは数年前までですし、アトランティスでなにかそれらしいことを体験したのかも知れません。けれど、それらの事は教授自ら写本としてしたためていますけれど、それは見てはいけないと告げられています」
そう告げつつ、ハーブティーを口許に運ぶシャーリィ。
「私には教授の真意が判りません‥‥私に教授ほどの知識があったなら、その知識を生かしていま起こっている困難に立ち向かえるのですが‥‥」
そう口惜しそうに告げるシェセル。
「えぇっと、失礼ながら、それは無理ですわ」
そう告げるシャーリィ。
「何故ですか?」
「だって‥‥総てに対処できる知識。それをもってしても、人は運命という鎖からは逃れることは出来ないのですから‥‥」
「その運命の鎖すら、断ち切ることは?」
「うちの教授‥‥。この世界の森羅万象、総てに置いての知識を持っているといっても過言ではありません。精霊達から授かった精霊武具『知識の額冠』、あれによって、この世の全てを知ることが出来たのです。もっとも本人の望まない知識は得られませんけれど、あれによって教授はかなりの事を学びました‥‥ひょっとしたら、いま起こっていることでさえ、教授は判って居るのかも知れません。だからこそ、なにもしないのかもしれません」
その言葉の後、シャーリィは哀しそうに一言。
「全てを知るということは、学者にとっては絶望なのですよ‥‥」
その言葉の真意を理解すると、シェセルは静かに研究所をあとにした。
「今、教授は自らの意思で遺跡を巡ることはありません‥‥後任に、弟子達に全てを託しているのですよ‥‥」
そう最後にシャーリィの告げた一言が、いつまでもシェセルの心に響いていた。
──その頃・シャルトル・ノートルダム大聖堂
「‥‥」
大量の古文書に囲まれた部屋。
そこでエミリア・メルサール(ec0193)は必死に古文書の解読を行なっていた。
自身の持てる知識を全て動員し、それらに少しでもヒントが隠されていないか。
「‥‥ダメです。どこをどう見ても、何かが隠されているようなものはありません‥‥」
宗教的な蔵書や石碑などがあるが、それらには何かが隠されているとは思えない。
そのまま必死にヒントを探すエミリアだったが、ついにそれらしいものは見つける事が出来なかった。
そして最後の日、教会の司祭から聞いた一つのヒント。
「悪魔と戦う為の機関がありまして。ええ、セーラではなくタロンの教会ですね‥‥そちらに向かってみてはいかがでしょうか? 私達はその場所を知りませんけれど、エナッツ神父というエクソシストの話しはタロンの教会で聞くことができるかと」
その言葉に、エミリアはまた道を見つけた。
●そして
──各地のそれから
鬼十郎は再びプロスト城地下立体迷宮を訪れ、封印されている『もんた』の元を訪れていた。
だが、今だに『もんた』の心は暗黒面に囚われたまま。
再び凍結封印となってしまった。
バークはまだオーラのコントロールがうまくいかず。全身にまんべんなく走るオーラを今だコントロールできないまま。
それでも資質はありとラグナに告げられ、ただひたすらに修練を続けていた。
鷹司、ディアーナ、空牙の3名はフリーのレンジャーを見付け、第四回廊に進む。
だが、肝心のレンジャーが途中のトラップによって命を落としてしまい、止む無く帰還という形になった。
美夕は再び修練を開始。
ラグナの教えを再び思い出し、一つ一つの基礎からじっくりと反復練習を行なっていく。
シェセルは迷走している。
ミハイルの考え、シャーリィの言葉。
それらの真意を掴む為、じっといろいろと考えている。
エミリアは追いかけていた。
伝説のエクソシストであるエナッツ神父の道。
その教会がパリ郊外にあることまでは判った。
だが、教えの道が違うエミリアには、タロンの教会に踏込む勇気がまだなかった。
まだ、道はいくつもあります。
貴方は、あなたの信じた道を進んでください。
その先には、いくつもの困難があるかも知れません。
けれど、信じて進んでいけば、いつかきっと真実にたどり着く事ができるでしょう‥‥。
──本当のFin