●リプレイ本文
●事前準備ということで
──ノルマン江戸村・黙示録の塔近く・冒険者酒場ノルマン亭
「何となく攻略の勝手が分かってきたが‥‥しかし何でまた、こんな試験みたいな真似を‥‥。上級悪魔が関わっているだのと噂があったらしいが、悪魔のやり方にしては、宝や力を餌にするでも無し‥‥。かといって、天使の類がこんな余興じみた真似をするとも思えないし‥‥」
そう告げつつ、出発の準備をしているのは天城烈閃(ea0629)。
いつものように仲間たちとここにやってきてからは、最近までの情況を村人や酒場で確認、そして細かい作戦を練ろうというのである。
「熱いのを抜けたら、今度は極寒。何でもありですね‥‥。う〜ん‥‥先の時の烈閃の推理を参考にするなら、この塔自体が一種の混沌神なのでしょうか? 何でこんな人間を試すような所になっているのか、塔を登るうちに何か分かるのでしょうか?」
天城の目の前に座っているゼルス・ウィンディ(ea1661)がそう問い掛ける。
「まだ突入していない情況では、どうとも言いがたい所ですね」
シクル・ザーン(ea2350)がそう告げると、他の仲間たちも静かに肯く。
「内部ですけれど、明かりはどうなるのでしょうか? 炎の回廊のように明るいのでなければ、地図を作るのが困難になりますし。ランプはありますから、それを使ってという所ですか?」
シャクリローゼ・ライラ(ea2762)が困った様子でそう告げると、バーク・ダンロック(ea7871)も静かに肯く。
「必要なのは対冷気。レジーネスのレジストコールドが鍵になるのは間違いないだろう」
と告げるバークに、リアナ・レジーネス(eb1421)もコクリと肯く。
「万が一を考えて、燃えるものを少し多めに持っていく必要もあるか。ライラさん、第一階層から第三階層までの図面は持っているのか?」
そう問い掛けているのは陰守森写歩朗(eb7208)。
「写しでよければ、ここに」
と告げて、陰守に地図を手渡すライラ。
その地図から、階段や黒水晶のある場所をアル程度予測しようというのだろう。
「おおよその流れていくと、ここかここ‥‥」
その予測場所に印を付けていくと、それを仲間たちに説明しはじめた。
──別の席では
「過去の図面はこれで‥‥今回の図面のスタートポイントはここと‥‥」
あたらしい 地図を作る準備をしているのは西中島導仁(ea2741)。
「敵が出ないという噂ですが、回廊の守護者は出るのでしょう? そこまでは体力の温存も考えないといけないかと‥‥」
と拳を鳴らしつつ告げているのは李雷龍(ea2756)。
「ああ。俺も万が一の為に後衛にはつくつもりだ。」
李風龍(ea5808)も雷龍に告げられてそう告げると、クレア・エルスハイマー(ea2884)も近くで出発の準備。
すでに全日、宿で眠る前に仲間たちにフレイムエリベイションを唱えていたクレア。
その効果は絶大で、少なくとも今晩までは持続する。
「で、うちは偵察と調査がメインでええんやな?」
とクレアの横に座っているイフェリア・アイランズ(ea2890)が問い掛けると、マミ・キスリング(ea7468)が静かに肯く。
「そのようですね。無理は禁物ですから気を付けてくださいね」
「よっしゃまかせとき」
とドンと胸をたたいて告げるイフェリアであったとさ。
●絶対的極寒世界
──チームA・突撃しました
まず最初に見たのは極寒の世界。
回廊の天井、床、壁の全てが凍りつき、さらに回廊を凍てついた風が勢いよく拭きぬけている。
「炎よ。かのものたちに熱き炎の加護を与えたまえ‥‥」
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
全身が緑色に淡く輝くリアナ。
そして周囲に集まっていた仲間たちに一斉にレジストコールドが掛かる。
「大体1時間程度は保たれます。いままでの私の経験からして、本日これを唱えられるのは素であと2回、つまりトータルで3時間しか回廊での行動はできません‥‥」
そう説明するリアナに、仲間たちは静かに肯く。
「ならば調査は急いだほうがいいな‥‥まず、地図に記されていた場所に向かうとするか」
バークの掛け声と同時に、全員が一斉に第四回廊へと突入していく。
──そのちょっと後
「き、きついな‥‥」
冷気に身を震わせるのは西中島。
スケイルメイルを伝達して、冷気が肌を突き刺す。
「すぐにレジストを」
すかさずスクロールを広げると、クレアは西中島にレジストコールドの魔法を付与。
だが、それはわずか6分しか持たず、しかも消費する魔力も膨大な為、一時しのぎにしかならない。
「確かに、我々でもこの冷気はかなり辛いな」
「ええ。とりあえずは限界までは頑張るつもりですが、それほど期待しないで下さい‥‥」
風龍と雷龍の二人が仲間に告げる。
ちなみに二人の鎧は布鎧、確かに西中島よりはまし。
「確かに、この冷気はかなり厳しいものがありますね」
とマミも告げるが、どうすることもできない。
頼みの綱はクレアのスクロールのみである。
それでも危険と思われていたマミにもレジストを施すと、こちらもまた急いで第四回廊へと突入していった。
──しばらくして・Bチーム
第四回廊に突入してすでに1時間。
一行は‥‥遭難していた。
というのも、敵が全くといって出てこない回廊。
ならば待っているのはトラップのみ。
それについては、随時イフェリアが解除してきたのであるが、そのうちの幾つかについては失敗してしまったものもある。
加えて、壁実験の為にクレアの唱えたファイアーボムは、的確に攻勢防壁によって反射され、クレアに大火傷を与えていた。
そして思いがげないトラップ。
パラスプリントゾーン。
床に仕掛けられていたらしいその魔法ギミック(紋章?)を踏んだ刹那、踏んだもののみがどこかにテレポートされてしまっていた。
床に掛かっていた霜や冷気が、その紋章らしき紋様を巧みに隠していた。
結果として、全員がバラバラとなり、あるものは外に、またあるものはこの回廊の何処かで、冷気に晒されてしまっている。
「‥‥吹雪のせいで、前が全く見えないわ‥‥」
冷気は炎の指輪によって防いでいるものの、視界が全く見えない事には迂闊に動く事も出来ない。
手探りでゆっくりと先に進んでいくものの、万が一トラップでもあったら致命傷になりかねない。
やがて、クレアは移動する事を諦めると、その場に一時的なベースキャンプを設置すると、他の仲間たちが自分を発見してくれる事を切に祈っていた。
──そして
「遭難してからすでに6時間。俺達は吹雪によって視界を奪われ、やむなくこの場所に留まる事となった‥‥」
手にしている地図にそう書込みはじめる風龍。
その近くでは、雷龍が立派なかまくらを完成させている。
「雷龍、1度このなかに避難だ。吹雪がドンドンと強くなっている」
「ええ‥‥了解しました」
ということで、李兄弟は一旦かまくらに避難し、吹雪が止むのをじっと待つことにした。
──さらにその頃
「どうするか‥‥」
「私達だけ外に飛ばされてしまった見たいですね」
そう困り果てているのは西中島とマミの二人。
共に塔の外にテレポートしてしまったらしい。
「仲間たちが心配だ‥‥いくか」
そう呟いて金のプレートに手をかざすと、二人は走って上の階段を目指していった。
そして第四回廊に突入後、前方に見える雪山から、死にかかっているイフェリアを救助。
「しっかりしろ。意識はあるか?」
そう叫ぶ西中島に、イフェリアは静かに呟いている。
「あはは‥‥おおきなオッパイがいくつも見える。どれがいいかな‥‥あははは‥‥」
──パシッ!!
マミがイフェリアの頬をたたき、ポーションを飲ませる。
「あはっ‥‥マミさんのおっぱい‥‥」
──スパァァァァァァァン
「とっとと目を冷ませっ!!」
すかさず突っ込みをいれた西中島と、その一撃で意識を取り戻すイフェリア。
「はっ!! うちはいままで何を‥‥」
「とりあえず、1度この塔から脱出してくれ。この回廊、自然との戦いとなるから、今のままでは不利だ‥‥」
そう告げられて、イフェリアは静かに肯くとそのまま下の回廊へと移動していった。
●こっちは快適チーム
──チームA
「視界が悪いのは‥‥どうしようもないか」
対冷気に関してはほぼ完璧のAチーム。
だが、吹雪による視界の劣化が、かなり厄介である。
「風よ‥‥かのものに向かって吹き荒れろ!!」
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
前方にかざしたゼルスの掌からストームが発生。
前から吹き込んでくる吹雪を押し飛ばすと、床に積もっていた雪なども消し飛ばす。
そして壁に直撃した突風はそのままゼルスに戻り、そのゼルス自身を後方に吹き飛ばす。
「うわっ!! これを忘れていましたっ!!」
「危ないッ!!」
後方に飛んでいきそうになるゼルスに手を伸ばすバーク。
「これでよし」
「ええ、ゼルスさんのおかげで、貴重なものまで発見しましたよ‥‥」
と告げる天城。
その指差す先には、転移の魔法陣が床に記されていた。
「成る程ねぇ。知らずに歩いていくと、これを踏んでどこかに転移っていうところかしら?」
そう告げるライラに、リアナが肯く。
「床と、その上の空間に干渉していますね。リトルフライでは避けられませんから、別の道を進むしかありません」
そうリアナが告げると、一行はそのまま別ルートへと移動方向を変更する。
そんなことを幾度と繰り返していると、一行は、目の前の通路に不自然に盛り上がっている雪山を確認。
「‥‥ベースキャンプ?」
そう呟きつつ雪山に移動。
と、その外の声に反応して、中からクレアがヒョイと姿を現わした。
「ふう。助かったわ。吹雪もどうやら一段落したみたいね」
そう呟くと、クレアはそのまま一旦チームAに合流する。
それにしても、建造物の塔の内部で、吹雪から実を護る為にベースキャンプとは。
中々貴重な体験をしたクレアであったとさ。
──そして
クレアと共にに1度塔から外に出ると、ノルマン亭で二つのチームは合流。
翌日、さらに調査を続けることとなった。
●二つの思いと血の代償
──チームA
目の前には巨大なゴーレム。
透き通ったその姿から、水晶か何かで作られていることは明白。
ただし、それは一歩も動かず、ただじっと階段の手前に立ち止まっていた。
「階段の守護者というところでしょうか。ですが、動けないとはお粗末ですね」
ゼルスがそう告げつつ杖を構える。
だが、反応はまったくない。
「いずれにしても、動かないのなら先に進むしかあるまい。Bチームの方もうまくやったようだしな」
バークがそう告げたとき、突然回廊を走る冷気が止まった。
──その頃のBチーム
目の前には崩れかかった巨大な黒水晶の柱。
雷龍、風龍の二人と西中島、マミの合計四名による一点集中攻撃。
これにより黒水晶の柱を破壊。
それと同時に、回廊を流れていた冷気が完全に停止した。
「とりあえずは、これで大丈夫か?」
「ええ。あとはあっちのチームが階段の守護者を破壊してくれればいいのですが」
西中島の言葉に、雷龍がそう呟いた。
──さらにその頃のAチーム
目の前にはくだけ散ったゴーレム。
そしてその向うにある上り階段。
黒水晶の柱とはちがい、こっちはかなり頑丈に出来ていたらしい。
破壊しなければ階段に昇る事も出来ない為、全員でもてる限りの力で攻撃を仕掛けていた。
その結果、全員の魔力も気力もつき果てた頃、ようやくこれは砕けてたいった。
もし、これが動き、反撃してきたとするならば、何名かは死人が出ていてもおかしくはなかった。
「とりあえず魔力の回復を待って、先に進むしかないでしょうか‥‥」
シクルがそう告げると、他のメンバーも静かに肯く。
「クレア達もうまくやったみたいですし、1度塔の外で回復を待ったほうがいいでしょう。私達魔導師は、ただ休んでいても魔力の回復は微々たるものですから」
ゼルスの言葉に納得して、全員が1度塔から外に出て行く。
そして宿で一泊した後、翌日、いよいよ第5回廊に挑戦となった。
●結果
無事に第5回廊の黒水晶が破壊できたのはさらに3日後。
守護者も第四回廊と同じであった為、対策は一緒であった。
やはり問題であったのは冷気。
それも第6回廊は、わざとテレポートを繰り返さなければたどり着けない部屋というのが存在し、そこに安置されていた為、余計に時間が掛かってしまっていた。
そしていよいよ第6階層。
階段を上り扉を抜けた刹那、西中島に向かってライトニングサンダーボルトが直撃。
そのまま後方に吹き飛ばされてしまった。
「と、扉を早く締めろ!! 危険すぎる!!」
その西中島の言葉に、バークが慌てて扉を締める。
「一体何が在った?」
「回廊全てが放電している。それに、何か人型の魔物がいた。黒くてよく判らなかったが‥‥兎に角、金属は危険だ‥‥1度対策を練り直す必要がある」
その西中島の言葉に、一行は1度塔を離れることにした‥‥。
──Fin