●リプレイ本文
●事前準備ということで
──ノルマン江戸村・黙示録の塔近く・冒険者酒場ノルマン亭
「古の風の精霊よ‥‥盟約により、我シャクリローゼ・ライラに元に集い、義務を果たしなさい‥‥」
小さなランプの前で、シャクリローゼ・ライラ(ea2762)が詠唱を行なっている。
やがて、ランプの中から風神ジニールが姿を表わすと、ニコリとライラに会釈する。
「さて、これでよし。あとは装備を整え直して‥‥」
そう呟きつつ、ライラは指輪など『帯電』しそうな装備を次々と外していく。
今回突入する回廊は、壁全体が『放電』している為、少しでも帯電しそうな装備は全て取り外していた。
回りの席では、やはり同じ様に装備を外しているメンバーの姿がチラホラと見て取れる。
「すいません。ちょっとお尋ねしますが、貴方、レンジャーでしょうか?」
店内に座っているそれっぽい冒険者にそう話しかけているのはアルフレッド・ラグナーソン(eb3526)である。
今回の【雷回廊探索隊】には欠けている『レンジャー』を探しているようであるが。
「うあ。ぎゅんた、れんじゃーちがう」
おおっと。
「それは申し訳ありません。えぇっと、ちょっとすいません‥‥」
と、アルフレッドは別の客に話しかけれている模様。
「はい? わたしに何か御用でしょうか?」
そう告げるのは一人の女性。
「ええ。誠に申し訳ありません。ちょっとお尋ねしますけれど、その身なりいでたち、ひょっとしてレンジャーでしょうか? もしそうでしたら、私達と一緒に『黙示録の塔』へとご一緒して戴きたいのですか」
そう告げるアルフレッド。
「そうですねぇ。御幾らぐらい頂けますか?」
いきなり報酬の相談を振ってくる女性。
「そうですねぇ。大体30Gぐらいでしたら‥‥」
と告げるアルフレッド。
「ふぅん。ちょっと桁が違うんじゃないかしら? あの塔に向かうのでしょう? 最低でも100Gぐらいは戴かないと割に合いませんわよ」
にこりと微笑みつつ、そうアルフレッドに告げる女性。
「そうですか。いえ、それでしたら諦めるとします。お手数を御掛けして申し訳ありませんでした」
と頭を下げて、別のレンジャーを探しに向かうアルフレッドだったとさ。
──そのころ
「雷火と鬼火は、ソウルウエポンらしいですから帯電はしないと思いますけれど‥‥」
そこは『トールギス鍛冶工房』。
セイル・ファースト(eb8642)はそこを訪れると、以前作り出したソウルウェポンを解放し、クリエムにそう問い掛けていた。
「そうか。詳しいことはやはり『もふもふ』にしか判らないというところか‥‥」
「ええ。そうですね‥‥」
そう告げると、クリエムは再び仕事を開始する。
それをしばらく横目で見ていたものの、セイルもまた黙示録の塔に昇る為の準備をするのに、1度酒場へと戻っていった。
──出発前
「では、とりあえず皆さんでお互いの装備の確認をしてみましょう」
出発直前。
エミリア・メルサール(ec0193)は仲間同士で帯電装備がついていないかどうか確認してみようと提案。
それに全員が賛同し、細かい部分までチェックを開始していた。
やがて一通りのチェックが終了したとき、エル・カルデア(eb8542)が全員を一ヶ所に呼び止める。
「それでは、今からみなさんにレジストライトニングを施しますので‥‥」
そう告げてから、エルはゆっくりと詠唱を開始。
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイン
やがてエルの全身が輝く、そして引き続き今度は皆の体が静かに輝いた。
やがてその光は静かに消えていったが、レジストライトニングは正しく発動しているとエルは確信した。
「それじゃあ向かうとするか‥‥」
バーク・ダンロック(ea7871)はそう告げると、オーラボディとオーラエリベイションを発動。
引き続きミラ・ダイモス(eb2064)とセイル、ガルシア・マグナス(ec0569)もオーラを次々と発動。
そして素早く隊列を整えると、黙示録の塔へと突入していった。
●雷の回廊
──第6階層・雷のエリア
既に回廊全域を稲妻が駆け巡っている。
バジッバジッと弾けるような雷の音に加えて、あちこちではその雷が集まった光の球が発生している。
どう考えてみても、この中に『何もしないで』突入することは死にに向かうようなもの。
だがも一行は既にエルによってレジストライトニングが施されている為、安心して回廊へと突入していった。
次々と壁から打ち込まれる電撃だが、一行は何事もなかったかのように涼しい顔をしている。
──ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
廊下に手を当てて、じっと先をバイブレーションセンサーで探っているのはリーマ・アベツ(ec4801)。
「前方200m。こちらに向かってゆっくりと歩いてくるものが5体。大きさは大体人間大ですね」
そのリーマの言葉に、一行は早速戦闘準備を開始する。
「ヒューーーーーーーーーーーーーーヒューーーーーーーーーー」
風を斬るような声をあげつつ、一行に向かって近寄ってくるのは全身真っ黒の奇妙な人間。
目鼻といったものも一通りついており、普通に棍棒のような装備とレザー系装備を身につけている。
「あれは?」
そう一行に問い掛けているリスティア・バルテス(ec1713)。
「さあな。今ここにパラディンが居てくれれば、奴が何者なのかも判るのだが。全くといってよいほど情報がないのが現実だ」
そう告げつつ、ガルシアはロングロッドにオーラパワーを付与。
他の仲間たちも次々とオーラを発動して戦闘準備を行なっているさ中、ディーネ・ノート(ea1542)がまずは先制の糸口を開く!!
「水よ、彼のものを貫きなさいッ!!」
領の手の中に集めた水の球。
それが超高速で敵の一体に向かって飛んでいった!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォツ
それはもろに直撃したが、敵は一瞬だけ歩みを止め、そして再びこちらに向かって歩いてきていた。
──ヒュウッ!!
ライラのジニールがウインドスラッシュを発動。
ディーネの狙った敵とは別の敵に向かって、真空の刃を叩き込む。
それは致命傷とまではいかなかったが、そこそこにダメージを叩き込む事は出来た。
「汝に悪しき存在から身を護る加護を与えたまえ‥‥」
アルフレッドの唱えたレジストデビルが、虚空牙(ec0261)に対して発動。
「これは助かる。で、どうだ? 奴等の動きは?」
そう近くに立って書物を開いているリスティアに問い掛ける。
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
やがて、リスティアの手にしていた書物が光り輝く。
それと同時に、こちらに向かって進軍してきた敵の動きが、心なしかゆっくりになったように感じる。
「思っていた通りですね。ここの塔の中を徘徊しているたち、確か話では『混沌神の申し子』ですか? 彼等はデビルでもあり、そして神の眷族でもあります。それゆえ、神を封じる『魔導書アルマデル』の効果が存分に発揮しています!!」
そのリスティアの言葉に肯くと、空牙が一気に敵に向かって走り出した!!
「ヒュゥッ!!」
口から漏れる空気。
そのまま敵の一体に向かって神速の連撃を叩き込んだ後、空牙はさらに追撃のストライクを叩き込む。
──ドッゴォッ
そして敵がバランスを失った瞬間、その頭部に向かって爆虎掌を叩き込んだ!!
そのままフラフラと崩れ落ちていく敵。
その横を、セイルとミラの二人が追い抜いていく。
──ドッゴォッドゴオッ
そして次々と敵に向かって一撃を叩き込んでいくセイルとミラ。
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
「大奥義、重力反転!!」
エルのローリンググラビティが発動。
セイルやミラ、空牙によって追込まれた敵達が次々と範囲の中に飛びこんでいく。
そしてそのまま天井に向かって叩きつけられると、やがて重力が元に戻り、今度は床に向かって叩きつけられた!!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
さらに討ち逃した敵にたいしては、バークがさらに追撃を叩き込み、敵を完全に沈黙させていった。
──そして
とりあえずは一旦休息。
再びエルによってレジストライトニングを唱えてもらうと、一行はさらに進攻を開始した。
●地図にないっ!!
──第6階層・雷のエリア
あれからどれぐらいの時間が立ったのだろう。
次々と襲いかかってくる敵にたいして、同じ様な戦法で次々と敵を撃破してきた一行。
一番の問題点であった雷撃からの防御が為されている時点で、以前よりもマッピングがスムーズに進んだ。
「ふぅん‥‥どう見てもおかしいよねぇ‥‥」
マッパー担当のライラが、頭をポリポリを書きつつ地図を眺める。
ちなみに地図を持っているのはジニールであり、ライラはその肩口にちょこんと座って見ていた。
「どうかしたのですか?」
そうライラに問い掛けるリーマに、静かに肯くライラ。
「ちょっと皆さん、1度集合っ!!」
そのライラの言葉に、一行が円陣を組むように集まる。
「一体どうしたのですか??」
ミラがそう問い掛けると、ライラは地図を広げて一言。
「この階層の地図が完成しました‥‥」
──エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ?
一行が驚きの様子を見せる。
「それは本当なのか?」
そう空牙が問い掛けるが、やはりライラは静かに肯く。
「まだ行っていない場所はないですね。但し、見知らぬ空間が全部で4ヶ所。恐らくは、このうちの何処かが上に繋がる『守護者の間』、そしてもう一つが『黒水晶の間』でしょうね」
「この残った二つは?」
そう地図を指差しつつエルが問い掛ける。
「そこまでは実際に調べてみないと判らないわね‥‥どうする?」
そうライラが一行に問い掛ける。
「先に進む。兎に角隠されている通路なり階段なり小部屋がある可能性がある。それを皆で調べるしかないだろう?」
バークがそうつげると、一行は再び全身を開始した。
そして、バークの告げたとおりに全員で一か八かの探索を開始、二つの場所から『守護者の間』と『黒水晶の間』へと続く隠し扉を発見した。
そのまま一行は、まずは『水晶の間』に向かい、そこの水晶に記されている停止の祝詞をリーマが詠唱。
これによって空間に生み出された混沌神の申し子と雷撃が全て停止した。
そして最後に守護者の間へと向かうと、そこで一行は『三面八臂の魔人』と遭遇、なんとかこれを撃破した。
●後日談
あの翌日。
同じ流れで第7回廊もなんとかクリアーした一行は、そのまま第8回廊へと調査に向かった。
そこは通常の空間となんら変わりがない。
だが、一歩進んだ瞬間、全員の体が床に向かって押し付けられていった。
まるで、全身に巨大な重りがぶら下がったかのような、そんな感覚である。
その重さゆえ、満足に身体を動かすこと叶わず‥‥。
さらに最悪な事に、回廊の向うから、全身銀色の鎧のようなものに身を包んだ獅子『銀獅子(シルバーレオン)』が姿を表わし、そのまま一行をじっと睨みつけていた。
その姿を察するに、奴等にはこの激しいまでの重力は影響していないように感じられた。
なにはともあれ、今のままでは危険な為、一行は1度塔をあとにした。
そして一通りの打ち合わせを行なった後、次の挑戦への準備を開始するのであった。
──Fin