【彫刻家達の宴】不思議なお祭り

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月20日〜04月25日

リプレイ公開日:2009年04月27日

●オープニング

──事件の冒頭
 レディース&ジェントルメン&おとっつぁん&おっかさん

 時は4月。
 街のあちこちでは、春らしい香りや彩りが飾り付けられ、今まさにノルマン春真っ盛りという感じです。
 あちこちの店では、春にちなんだ催しが色々と行なわれているようで。
 そんな中で‥‥。

──冒険者ギルド
「え? また依頼じゃあない? では次の方どうぞ」
 受付嬢のビスタ・ウィンズは、カウンターにやってきた『彫刻工房ギルドの使い』にそう告げると、次の依頼人を呼ぼうとした。
「あ、そうじゃなくて。今回はイベントの参加者を募集したいのです」
「ですから、それはつまり依頼ですね?」
「依頼じゃあないのですよ。うちのギルドの外部顧問『海王堂・天馬』が商店街を盛り上げる為に、彫刻を街の彼方此方に飾りたいと申しまして。それを製作してくれる彫刻家を冒険者から選出したいということで‥‥」
「つまり、彫刻を作って欲しいということですね? 当方ではそのような事はお受けできませんので。では次の‥‥」
「あーーっ、これでいいのでしょう? 商人ギルドマスターと彫刻工房ギルドマスターからの依頼書と委任状。これと今回の申請書と依頼金。あとはなにが必要ですか??」
「まあ、申請書式と依頼書がそろっていれば‥‥ではお受けしましょう‥‥」
 とにっこりと微笑むビスタ。
 その顔を見て、『可能ならば無償で、無理ならば格安で』と告げられていた事を思い出しつつ、溜め息を吐きながら帰路につく使いの者であったとさ。
 はい、お使いさんまたしても乙。

●今回の参加者

 ea7372 ナオミ・ファラーノ(33歳・♀・ウィザード・ドワーフ・ノルマン王国)
 ec6222 キース・ヘーゲン(12歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ec6400 マハラジャ・カーン(44歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・インドゥーラ国)
 ec6402 カレン・バーソロミュー(30歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●なんてすてきな彫刻大会
──パリ・彫刻ギルド
「うーーーーーーーーーーーーーむ」
 ギルドの司書官が腕を組んで唸っている。
「一体何が在ったのですか?」
 と問い掛けるギルド員に、司書官が静かに一言。
「今回の大会なのですが、一般参加者が0、冒険者枠が4。ですが本日より開始の筈なのに、二人がまだ開始していないのです」
 困り果ててそう呟く司書官に、ギルド員が一言。
「なるほど。まあ、始まってしまったものは仕方がないので、その二人でとっとと終らせちゃいましょう!!」
──スバァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
 と、ギルド員の後頭部に突っ込みハリセン一閃。
「そんなことでどうするんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。この大会は格式ある由緒正しい大会。それを運営する我々が、そんなやる気のない事でどうするというのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 その言葉にハッとするギルド員。
「ギルドマスター様。私が間違っていました」
 ブワッとなみだを流し、そう叫ぶギルド員。
「判ってくれたか!!」
「はい!!」
 そのまま熱い抱擁をする二人。
 いやーーー、見ていて実に暑苦しい。

──そんなこととはまったく離れて
 そこは小さな草原。
 そこにたたずんでいる1頭のグリフォン。
 その近くでは、ナオミ・ファラーノ(ea7372)が木炭を手に、目の前のグリフォンをスケッチ中。
「ふむ。この角度からはこんな感じですか‥‥」
 と、大量のスケッチを行ないつつ、渾身の作品を作りあげる為のデザインをしている。
 すでにかなり大量のスケッチが散乱している。
 それを時折拾い上げては、再び投げ棄てて別のスケッチを書きはじめる。
 となかく、作品に妥協を許さない彫刻家であるらしい。

──一方その頃
 チャッポォォォォォォォォォォォォォォォォン
「はい、また傘‥‥」
 釣り上げた大物を針から外しつつ、キース・ヘーゲン(ec6222)はそう呟く。
 これまでに釣り上げた大量の傘や手袋、靴下などがそこには大量に置かれている。
 そして、目的であった魚については、まったく釣れる様子はない。
「ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん。かくなる上は、これらを材料とした最高の彫刻を作ってみる事にしましょうか‥‥」
 ということで、キースもまた、今回の大会の出展作品のイメージが完成した模様。
 ということで、これらの使えないものたちを早速自宅工房へと運びいれると、キースもまた作品の製作を開始していた。


──そして翌日・近くの森
「この木かな?」
 彫刻に使う木の選定を行なっているナオミ。
 作りあげるものは躍動感溢れるグリフォン。
 国を護り、人を護る。
 紋章におけるグリフォンが示すものは二つ。
 一つが『知識』、そしてもう一つが『王家』。
 それを彫刻として完成させる為には、どうしても時間が足りない。
「多少粗削りにはなるけれど‥‥止むを得ませんね‥‥」
 と切り出した木の選定を終えると、いよいよナオミは工房で製作を開始した。

──同時刻
「あーでもないーでもない‥‥」
 とまあ、実に情況の判りやすい台詞ではあるが、キースは頭を悩ませていた。
 彼の彫刻‥‥というか芸術は、川から釣り上げた様々な残骸。
 それらをなんとか組み合わせつつ、芸術作品を組み上げていこうということである。
 ちなみに彫刻ではないので、審査の時点ではかなり危険ではあるのだが、それはまあ結果を御愉しみという事で‥‥。



●栄光を君に!!
──パリ・中央区画・『彫刻の宴』会場
 街の彼方此方に置かれている様々な彫刻。
 一般参加者もなかった為、ギルド員達が丹精込めて作りあげられた力作が勢揃い。
 そんな中でも、冒険者の作り上げた力作には、大勢の人々が集まっていた。

 『勇猛なる友』とタイトルの付けられたナオミの彫刻。
 今にも飛び上がりそうなグリフォンの彫像には、大勢の観客が集まっていた。
「ええ、この彫刻のテーマは『街を、国を、人を護るもの』です。粗削りではありますけれど、細部までなんとか仕上がっています」 
 そう説明を行なっているナオミ。
 それを見ていた者たちは、彼女のこの作品を絶賛していた。
 貴族達が大勢集まり、ナオミに賛辞を浴びせていた。

──そんな中

 『最近の釣果 』と名前の付けられたキースの芸術。
 今にも崩れそうな、紙一重の作品には、ふぅんという納得している街の人々が集まっていた。
「はい。この作品のテーマは『環境美化、ごみを河川にそのまま捨てるな』です。最近、川に多くのゴミが投げ棄てられている為、何とかしたいと思いました」
 そう説明を行なっているキース。
 それを見ていた人々は、彼のこの作品をなんとなく誉め湛えていた。
 町人や職人達が大勢あつまり、キースになんとなくぼんやりとした喝采を浴びせていた。

 そして二人の作品は、このままノルマン市内に飾られることとなった。
 パリ中央商店街を訪ねてきたら、是非見てください。
 夕陽に向かって叫ぶグリフォンの雄姿を。
 そして、朝日に輝くゴミゴミした作品を。

──Fin