●リプレイ本文
●事前準備ということで
──パリ・冒険者酒場シャンゼリゼ
「さてと。風神のランプは大丈夫と。鷹のクリンも一緒ですし‥‥」
これまたいつものように、冒険者酒場ノルマン亭では、シャクリローゼ・ライラ(ea2762)が出発の為の準備を行なっている。
今回の黙示録の塔は、今までとは勝手が違う。
どこに行くのかまったく想像のつかない回廊、そこに向かうという前代未聞の挑戦なのである。
「ふう。駄目だ‥‥どうにも歴史学者というものが捕まらぬ‥‥」
頬をポリポリと掻きつつ、ルミリア・ザナックス(ea5298)が酒場に戻ってくる。
「どうですか?」
「いや、このパリにいるであろう歴史学者には話を伺ってきたのだが、一辺倒の、石碑や粘土版、口伝に残されている情報しか手に入らない。それゆえ、細かい部分など皆目見当もつかぬ」
そう告げつつ、ルミリアは静かに椅子に座る。
「ふう。待たせたな‥‥」
そう告げつつ、壬護蒼樹(ea8341)が店内にやってくる。
「首尾はどうだ?」
そう問い掛けるルミリアに、蒼樹は懐から取出した小袋を見せる。
「これが15G分の金だ。万が一の時は、これでなんとかしよう」
ニィツと笑いつつそう告げる蒼樹。
「しっかし。ここまで歴史について何も得られないっていうのは、問題はないか?」
そう呟いているのはニセ・アンリィ(eb5758)。
「まあ、詳しい話しは、その道の人に聞いた方がいいだろう‥‥」
そう呟くシェセル・シェヌウ(ec0170)。
やがて一行は、一通りの準備を終えた後、まずはシェセルの目的であったミハイル研究所へと移動していった。
──そしてミハイル研究所だった場所
そこは広い空き地。
建物が立っていた形跡など、どこにもない。
「確か、ここにミハイル研究所があった筈なんだが‥‥」
そう呟くシェセル。
「え? ミハイル教授って、ここに住んでいたのか?」
そう問い掛けるのはアハメス・パミ(ea3641)。
「‥‥確か、そうだったような‥‥」
ここまでやってきたシェセルですら、あまり自信がない。
その為、近くを通りかかった人に問い掛ける。
ここに、ミハイル『とかいう』人が住んでいた事がなかったか。
だが、答えは全てNoであった。
この近所の人は、ミハイルとかいう人を知らない。
そもそも、自分達がどうしてそんな知らない人を探していたのか、それすらも怪しい。
「なんか道草を喰ってしまったようだな‥‥さあ、急ぐとしよう」
そう告げるルミリア。
そして一行はノルマン江戸村へと向かっていった。
──場所は変わって
剣士の居留地。
バーク・ダンロック(ea7871)はそこにるいマスター・オズの元を訪ねていた。
おそらくマスター・オズならば、過去のバリ近郊で黒い石碑が現われたか心当りが有るだろうと踏んできたのだが。
「いや、ワシはそんなこと知らぬな‥‥」
と一言で終る。
「そうなのですか?」
「うむ。ワシはな。シャルトルよりもさらに北方、悪魔の住まう森というのがあったというのは聞いた事が有る。じゃが、その場所は魔導師が悪魔の召喚実験に失敗して、地域毎吹き飛んだという噂ぢゃな‥‥。それゆえ、わしも詳しい話しは解らないのぢゃ」
と告げるマスター・オズ。
「そうですか。ありがとうございました‥‥」
と告げると、バークはその足でニライ自治区へと向かう。
──そして
「‥‥立ち入り禁止区域だと?」
ニライ自治区に繋がる街道の全てが封鎖、各所にはセフィロト騎士団が詰めている。
「はい。ニライ自治区において悪魔が発生、現在セフィロト騎士団およびブラックウィング騎士団、南方討伐騎士団、異端審問官及び教団騎士団などが制圧に入っています‥‥」
セフィロトとブラックウィングはそれぞれヨハネス卿とニライの子飼いの騎士団、南方討伐騎士団はプロスト卿配下、そして教団騎士団は異端審問官配下の騎士団。
それだけのものが同時に制圧に入っているというのは、いったい何がおこっているのか‥‥。
事態を重く見たバークは、1度黙示録の塔へと戻ることにした‥‥。
──そして江戸村
酒場ノルマン亭。
そこを訪れた蒼樹は、黙示録の塔に挑戦した者たちから情報を得るべく、酒場を訪れていた。
「ん‥‥ああ、俺達の仲間が、例の月の回廊に挑戦している最中だ」
そう告げているのは、怪我が酷い為、調査に参加できなかった戦士。
「それはいつ頃の話だ?」
「昨日だったなぁ‥‥まあ、あまり長い間は調査しないと告げていたから‥‥」
そう告げている戦士の姿がスッと透き通っていく。
「それなら、今日には戻るのか?」
そう問い掛けている蒼樹だが、戦士の姿が消えはじめているのに気付いていない。
そしてとうとう、戦士がその場からスーッと消えてしまったとき、蒼樹は静かに酒場を見渡す。
「ふむ。どうやら今日は、挑戦してみたらしい冒険者は来ていないのか‥‥」
戦士は‥‥すでに存在していなかった。
●ということで出発
──黙示録の塔入り口
「ふぅん‥‥構造は今までのものと恐らくは変わりがない筈。いつも通りに『鍵』『扉』『守護者』という回廊の構造と一緒な筈。違うのはそれらが配置されている場所がダンジョンではなく、オープンフィールドで゜あることだけ‥‥」
アハメスが塔の入り口で集まっている皆に向かってそう告げている。
「取り敢えず隊列は二つに分ける。むかった先で鍵の回収、扉の探索、守護者の討伐。それを最優先とするか‥‥」
セイル・ファースト(eb8642)がそう告げる。
その言葉に一行は肯くと、そのまま隊列ごとに扉をくぐりぬけていった。
●やってしまったチームA
──パリ・シャンゼリゼ通り
どこをどう通ったらこんな場所にやって来るのか。
バーク、ラシュディア、フィーネ、壬護、セイル、アハメス、シャクリローゼ達は、建物の配置や景観をじっと眺めていた。
「どこをどう見ても、パリだよなぁ‥‥」
そう呟くラシュディア・バルトン(ea4107)に、一行は静かに肯く。
「とりあえず情報を得るのが先決か‥‥」
と言うことで、一行はラシュディアの提案により1度冒険者ギルドへと向かっていった。
──場所は変わって冒険者ギルド
「いつもご苦労様です。本日はどのようなご用件でしょうか?」
入り口横にある受け付けで、受付嬢が一行にそうといかける。
「悪魔がらみの依頼を探してきたんだ。掲示板見ていいかな?」
「ええ、ごゆっくりと‥‥」
ニコリと微笑む受付嬢。
そのまま一行は掲示板をじっと眺める。
だが、大きい依頼は余りない。
ゴブリン退治とか、オークの集落の破壊、はては攫われた恋人を盗賊から救い出すなどなど、一般的な依頼が張付けられている。
「これじゃあ仕方ないわね‥‥それじゃあ」
そう告げて、フィーネ・オレアリス(eb3529)は近くで掲示板を見ている冒険者風の男性に話し掛ける。
「すいません。ちょっと宜しいでしょうか?」
そう話し掛けられると、男はゆっくりと振り向く。
「ええ、どのようなご用件でしょうか?」
「今年は何年でしたでしょう? 私インドゥーラからやって参ったばかりでして‥‥こちらの暦をよく知らないのです」
そうカタコトのゲルマン語で告げるフィーネ。
「神聖歴972年ですね。やはり外国では暦が違うのですか?」
そうつげる冒険者にコクリと肯くフィーネ。
そのまましばし歓談を愉しむと、1度仲間たちの元へと戻っていく。
「私達のいた時代から大体30年ぐらい昔ね。今の情勢は神聖ローマ帝国との間で小さい小競合いが続いている状態ね‥‥」
そうつげられて、ラシュディアは静かに一言。
「この世界では、あと7年後には1度ノルマンは滅ぶ筈だな‥‥」
その言葉に一行は静かに肯く。
「神聖ローマの侵攻、それを止める事はできるかも知れません。けれど、それらの情報がもたらされる事で、私達のいた時代が変化することになるかも知れません‥‥今は、鍵と扉、そして守護者を探しましょう」
そう告げると、一行はギルドの端で待機している冒険者達を確認した。
ちょうど今、新しく張り出された掲示板の依頼をじっと見ている魔導士風冒険者。
「おいシルバーホーク。本当にどれでもいいんだな?」
その魔導師はテーブルで待機していた若いレンジャーにそう叫んでいる。
「俺は別に構わない。ラビィやミハイル、イーグルアイはどうする?」
そう告げられて、戦士のイーグルアイは静かに肯く。
「おれは 構わんよ。ラビィは回復魔法いけるよな?」
「ええ。私は大丈夫です。まだ司祭クラスの力はありませんけれど、癒しの奇跡は起こせます‥‥ただ」
そう告げて、クレリックのラビィは、横でボーッと本を呼んでいる若い騎士を見る。
「ん? わしか? わしはどこでもいいぞ?」
そう告げつつ、スクロールをじっと眺める騎士ミハイル。
「おーい、ミハイル。お前が騎士叙勲して初めての依頼だ、緊張感を持ってくれないと困るんだが‥‥」
そうイーグルアイが告げると、ミハイルもニィッと笑いつつ静かに肯く。
「わかっておる。判っておる‥‥ただ、この古い遺跡に関するものが愉しくてのう‥‥」
と告げると、再び書物の解析に没頭する。
「それじゃあ、これでいいんだな。シャルトル南方の『悪魔の住まう遺跡』。ここの調査でいいんだな?」
そう若い魔導師が告げる。
(なんだよじいさん達かよ!!)
心の中で一行はそう呟く。
そのままバークも依頼書をじっと眺める。
(パリから離れた所の『悪魔の住まう森』か。これは先回りしたほうがいいな)
そう思い、バークは仲間たちに合図を送ると、そのまま1度ギルドを後にする。
そして依頼にあった場所に先回りする為、素早く移動を開始した。
●大波乱のBチーム
──??????
暗い洞窟。
どうにかあかりによって照らされているものの、周囲を取り囲む悪鬼魍魎相手に、全員が疲労していた。
「相手はまだでてくるのかしらっ!!」
そう叫びつつ、円巴(ea3738)は前方からやってくるグールの群れに向かってソードボンバーを叩き込む。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
大爆音と同時に、グール達が次々と消し飛んでいく。
「こ、この世界を攻勢しているものは、おそらく誰かの意志。それが元凶であり、鍵であり、扉であると推測されますが‥‥」
そう冷静に告げているのはフレイ・フォーゲル(eb3227)。
「その意志の持主がだれか解らないのか?」
アンリィがそう問い掛けるが、フレイが頭を左右に振る。
「それが判らない事には話になりませんね‥‥」
シェリル・オレアリス(eb4803)がそう呟く。
「そんなこと放している暇がありましたら、一体でも敵をかたづけてくださーい!!」
鳳美夕(ec0583)がそう叫びつつ、敵アンデットに向かって飛込んでいく!!
それに続くようにアンリィとルミリアも突撃、次々と敵を撃破していく。
──そして1時間後
ガチャーン
装備を元に戻しつつ、一行は静かにその場に座り込む。
「‥‥おかしいですわ」
フォルテュネ・オレアリス(ec0501)が静かにそう呟く。
其の手には、彼女にしか見えない水鏡が握られている。
ミラーオブトルースによって、フォルテュネはこの世界を分析していた。
その水鏡には、この世界の風景が普通に反射している。
「まったくの異世界‥‥どうしたらいいでしょうか‥‥」
そう呟くフォルテュネ。
「まあ、取り合えずは周囲を調べる事ですね。幸いなことに、この先は回廊に続いているようですし、先に進んだ方がいいでしょう?」
そう告げるシェセルの言葉に従い、一行はまず周囲の安全を確認した後、先に進むことにした。
──そして先
回廊の先は広い空間。
その正面に一枚の扉が設置されており、さらにはそこに『人型の手形』がレリーフ状に作られていた。
「扉自体が魔法の物品ですね‥‥」
フォルテュネが水鏡で確認。
だが、それが魔力によってロックされていたとしても、それを開く手段はない。
「‥‥アビス、第ニの試練の扉ですか‥‥みなさん、ここはアビスの内部ですね‥‥」
そう呟くのは、やはり経験者であるフォルチュネ。
「レンジャーが必要な回廊か‥‥」
そう告げるルミリア。
「となると、正攻法で先に進むしかないということですか‥‥」
シェリルがそう呟くと、一行はそのまま先に進むことにした。
もしこれがアビスなら、この先に待っているのは『鍵』であり『扉』であり『守護者』なのである。
●切り替わる運命
──悪魔の住まう森
そこは小さな村。
中央には教会が安置され、それを中心とした村が形成されている。
悪魔の住まう森、その由来は、この地鎌の森で、時折『悪魔崇拝者達』が、異端の儀式を行なっているのである。
多くの命が生贄として捧げられ、淫媚な儀式が毎夜繰り広げられているという。
Aチーム一行は、この村の近くベースキャンプを設立、悪魔達の儀式が執り行われているという場所の偵察を行なっていた。
すでに時間は深夜。
噂の儀式はもうクライマックスであった。
悪魔バフォメットの像、それに絡み付くような全裸の女性。
像の正面の魔法陣の中には、大勢の男女が全裸で、淫猥な儀式を繰り広げられていた。
「オオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオ」
やがて司祭らしき男が黒い布に包まれた、巨大な何かを魔法陣の中に持っていく。
そして布を取り払われたとき、一行は絶句する。
そこには、黒水晶によって形成されている小さな像がある。
さらにその手には、『鍵』のようなものが握られていた!!
(あれが鍵か‥‥)
ルミリアが心の中でそう呟く。
あれを奪回すればいい。
そう思った刹那!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
大爆音と同時に、バフォメットの像が爆発する。
「悪いが、こんなくだらないパーティーはおしまいにしようぜ!!」
ギルドで見たレンジャーと魔導士が、儀式に割って突入してきたのである。
さらに後方から馬に乗った騎士が、一直線に魔法陣に向かって突撃する!!
其の手には巨大なハンマー。
そしてその先に有るのは『鍵』!!
「ちょ!! ちょっとまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
セイルがそう叫んで魔法陣に向かって突入。
──ガギィィィィィィィィン
騎士の激しい一撃を、どうにか受け止めたのである。
「貴様も悪魔崇拝者か。その若さで残念ぢゃのう」
そう告げる騎士ミハイル。
「これはどうしても必要なんだ。悪いが渡すわけにはいかなくてね!!」
そう叫びつつ、セイルが像から鍵を奪い取る!!
「それは異世界の鍵。この世界と地獄を結ぶものぢゃ!! それは破壊しなくてはならぬ!!」
そうさけぶ騎士ミハイルだが、こっちはこっちで必死である。
──ヒュルルル‥‥パシッ!!
セイルが投げてよこした鍵鍵を、ライラが上空でキャッチ!!
「ああっ!! 干渉したくなかったのにぃ‥‥」
涙声でそう呟くライラ。
だが、あれはやむを得ない。
そのままライラが逃走したのを確認すると、一行もまた散り散りになって急いで移動開始。
そして1時間ほどして、一行は近くの村にたどり着く。
そして酒場に向かうと、一息入れる為に扉をくぐっていった‥‥。
●帰還の為の道
──アビス?
最下層。
巨大なドラゴンを倒したBチーム一行。
ルミリアの阿修羅魔法のみが、まったく発現しないという緊急事態が起こったものの、どうにかドラゴンを倒すことはできた。
そしてその奥に、巨大な扉を発見する。
だが、鍵がない。
扉の形状を確認するに、明らかに黙示録の扉である。
「どうしたらよいか、さっぱり判らぬ」
そうルミリアが呟く。
「ここまできたのなら、1度引き返して外に戻った方がいいと思う。その上で、Aチームを探し、情報を交換。それがもっとも最善の道だな‥‥」
シェセルがそう告げる。
と、一行もまた、その意見に同意する。
かくして一行は、今来た道をゆっくりと引き返していくことにした。
そして外に出る回廊を通り抜けると、その先に外の光が差し込んできた‥‥。
●帰還?
──黙示録の塔・外
確かに外に居る。
Aチームは酒場の扉をくぐりぬけてきたはず。
疲労にどっぷりと使った体が、それを真実と伝えてくる。
「‥‥どうして外なのでしょう?」
そう告げるフィーネ。
「ああ、全くだ。ここまで狡猾なトラップは見た事がない‥‥」
ラシュディアも静かにそう叫ぶ。
──ドンッ!!
と、突然後方から、つまり黙示録の塔の入り口から、Bチームもやってくる。
「えええ? あ、あれ?」
狼狽する円。
そして一行は、疲れきった頭を癒す為、まずは冒険者酒場ノルマン亭にて合流。
お互いの意見を交換しあう。
そして一通りの出来事について理解すると、ふとライラが自分の持っていた筈の鍵がないことにきがつく。
「き、きえた? 一体どこに?」
そう告げるが、どこに消えたのかもまったく判らない。
それでもとりあえず、無事にクリア出来たか黙示録の塔に再挑戦。
そして月の回廊の扉を開いたとき、一行は直に扉を閉じた。
まだ、月の回廊はクリアーされていない。
鍵と黒水晶、扉はそれぞれまったく別の場所で発見できたのだが、それらを繋ぎあわせる事が出来ていない。
何等かの方法で、もう一度月の回廊に挑むしかない。
そして後日談。
パリに一行が戻っていったとき、普通にミハイル研究所は存在していた。
そしてそれが昔から在ったという証言も、近所の人々から得る事が出来た。
ルミリアの阿修羅魔法はまったくといっていいほど発動せず、それどころか阿修羅の加護すら失いかけていた‥‥。
一体、ルミリアに何が起こったのだろう‥‥。
──Fin