【ふりーあたっく】いつまでもどこまでも?

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 2 C

参加人数:9人

サポート参加人数:3人

冒険期間:07月11日〜07月21日

リプレイ公開日:2009年07月20日

●オープニング

●事件の冒頭
 静かな朝。
 パリの中央では、一人の吟遊詩人がのんびりと歌を歌っていた。
 それはどこにでもあるような普通の英雄譚。
 とりたてて珍しくもない、ある若者の物語。
 だけど、妙にその声か気になり、いつのまにか吟遊詩人の回りには大勢の人が集まっていた。
「さて‥‥今日はここまで。また続きは今度、この場所で‥‥」
 と告げて、その吟遊詩人は何処かにいなくなってしまった。
 パリを出ていったという噂は聞かない為、この街の何処かにいるのだろうと人々は噂していた。
 だが、いつまでたっても、その吟遊詩人は姿を表わす事はなかった。
 物語の続きが気になって仕方ない人々は、あちこちの酒場を訪れては、吟遊詩人の奏でていた英雄譚の続きを教えてもらおうと、他の吟遊詩人に問い掛けていた。
 だが、パリに登録しているどの吟遊詩人も、彼の話していた英雄譚は知らない。

 さて‥‥。
 その吟遊詩人の名前は『カター・サリッド・サーガラ』。
 かれは今、どこにいるのだろう。

●今回の参加者

 ea1585 リル・リル(17歳・♀・バード・シフール・ノルマン王国)
 ea1628 三笠 明信(28歳・♂・パラディン・ジャイアント・ジャパン)
 ea4004 薊 鬼十郎(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea5298 ルミリア・ザナックス(27歳・♀・パラディン・ジャイアント・フランク王国)
 ea8078 羽鳥 助(24歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb5977 リディエール・アンティロープ(22歳・♂・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ec0501 フォルテュネ・オレアリス(30歳・♀・僧侶・エルフ・イスパニア王国)
 ec3660 リディア・レノン(33歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec6737 ホセ・ネロ(21歳・♂・レンジャー・人間・イスパニア王国)

●サポート参加者

レイア・アローネ(eb8106)/ サクラ・フリューゲル(eb8317)/ 篁 光夜(eb9547

●リプレイ本文

●いつまでもどこまでも
──パリ郊外・とある家
 そこは、つい最近まで誰も住んで居なかった。
 主が殺され、一緒に住んでいたオーガの子供も何処かへいってしまったから。
「うぁ‥‥ほこりだらけ‥‥」
 天井近くの蜘蛛の巣を払い、閉ざされていた窓を開き、新鮮な空気と日光を家の中に取り込む。
「さ、とりあえず急いで御掃除しましょ? じゃないと、い、い、一緒に‥‥ゴニョゴニョ」
 勢い付けて叫んでみたものの、後半は顔中が真っ赤になりうまく告げれない薊鬼十郎(ea4004)。
 二人はようやくこの家に戻ってきた。
 それまではオーガキャンプで愉しそうに生活していたギュンター君だが、今までのようにオーガ達と愉しく生活しているだけではダメと告げてきた。
 そして、人知れず練習してきた細工師としての技術を生かし、トール・グランツールの名を継ぐ為に、トールの住んでいた街へ、その家へと帰って来た。
 幸いな事に、領主であるヨグ卿も、いまではギュンター君の事を黙認している。
 元々ギュンター君を知っていた近所の人たちの助力もあって、ギュンター君はこの家へと帰ってくる事が許されたらしい。
「工具も全部一旦外に出さないといけないね。あ、こっちの部屋はどうするの?」
 と、トールの自室を見る鬼十郎。
「‥‥そこに、ぎゅんたーねる。だいじょぶ」
 と、懐かしそうに告げるギュンター君。
「一人で大丈夫?」
 と心配そうに問い掛ける鬼十郎に、ギュンター君は静かに一言。
「さみしい‥‥」
「じゃあ一緒に寝てあげるね?」
 とナチュラルに告げる鬼十郎。
 そして自分の発した言葉がどれだけ危ないかを瞬時に理解し、全身が真っ赤になっていく。
「うあ、きじゅろだいすき!!」
 そうにこやかに告げるギュンター君を見て、鬼十郎は素早く後ろを振り向く。
──ツツーーー
 鼻から血がポトッと落ちていく鬼十郎。
 まあ落ち着け。
 ということで、どっぷりと日が落ちるまで二人で掃除をしていましたとさ。


──一方その頃
 そこは小さな村。
 その中央の広場で、リル・リル(ea1585)が大勢の村人達と一緒に祈紐を結んでいた。
 あちこちの村を訪れては、リルは自分の芸を披露し、そして悪魔と戦う為に必要な祈紐を結んで貰っていた。
 ここにくるまでに、すでに4つの村をまわり、かなり大量の祈紐を結んで貰っている。
 同行している吟遊詩人の上杉楽人(うえすぎ・がくと)さんにも手伝ってもらい、コツコツと集めていた。
「‥‥で、これで籠が一杯になったが?」
 そう告げる楽人に、リルも静かに肯く。
「1度パリにもどったほうがいいねー。で、今度はドレスタットの方にいってみよー」
「籠一杯の加護か‥‥」
 真顔でそう告げるが、ジャパン語ではだれも理解していないよ楽人。
「今何かいった?」
「ん? ああ、早く次に向かおうとね。一つでも多くの人の祈りを集めるなんて最高です!!」
 無表情でそう告げると、楽人はリルの籠も一緒に背負う。
「大丈夫だよ?」
「しふしふは、道中の人にも笑顔を上げていなさい。俺は重いものを運ぶから‥‥」
 と告げる。
「そうだねー。それじゃあしゅっぱーつ」
 と言うことで、二人の珍道中はまだまだ続く‥‥。


──さらに別の場所では
「‥‥そういうことですか」
 場所は冒険者酒場マスカレード。
 巷で噂の吟遊詩人カター・サリッド・サーガラ、その人を捜していた三笠明信(ea1628)がたどり着いたのは、いつものマスカレードであった。
 そこにいたのは、クロムウェルという少女、彼女に話し掛けた三笠が、彼女から最初に聞いた言葉が『黄金の林檎は、海の向こうだよ』ということであった。
「ど、どうしてその事を?」
 動揺を見せないようにそう問い掛ける三笠。
 そのまチラリと『石の中の蝶』を見たが、とくに反応がない。
「この本に、貴方が来る事が書いてあったから‥‥」
 と呟く。
「‥‥それは予言書か何かですか?」
「アカスティアの書。これから起こる未来の全てが記されているから‥‥まだうまく読めないけれど、ここに貴方が来る事も記されていたの‥‥」
 と告げる。
「そこに私が来る事が‥‥では、貴方には、私の求めているものが判るというのですか?」
 と問い掛ける三笠に、クロムウェルは静かに肯く。
「黄金の林檎は、ドレスタット沖の小さな小島。断崖絶壁に護られているその頂点に‥‥琥珀の鳥は、満月の夜、シャルトルの忘れ去られた精霊寺院に安置されている‥‥今は、この二つしか見えない」
 と告げる。
「それは‥‥本当なのですか?」
「この書には、真実しか記されていないから‥‥これから起こる事も全て‥‥そして、記されていることは覆らない」
 そう告げると、クロムウェルは静かに本を閉じる。
「それ以上は問わない方がいいようですね‥‥では、色々とありがとうございました」
 と告げて、三笠はクロムウェルにお礼を告げると、とりあえず酒場を後にした。
 そして、取り敢えず仲間の待つ剣士の居留地へと向かっていった。

──さらに場所は変わってミハイル研究所
「‥‥竜の武具か」
 ルミリア・ザナックス(ea5298)は、マスター・オズの元へと向かう道中で、ミハイル研究所を訪れていた。
 そこで納められている竜の武具をじっと眺めるが、ふとルミリアはそれらになにか懐かしさを感じた。
「はて、どういうことだ? 我はこれを見た事が‥‥」
 と告げると、ルミリアは思い出した。
 これらの武具、インドゥーラの八部衆の一人影衣十兵衛が装備していたものと寸分変わらず。
「発祥がにているというのか? それとも竜の加護を受け継ぐもの?」
 と告げて、ポン、とルミリアは手を叩く。
「ドラゴンウォリアーか!!竜化の魔法、その力を封じられているのか? だが精霊の武具でもある‥‥」
 と呟く。
 いずれにしても、それら武具が本当に必要となるのはまだ早いと考えたルミリアは、一旦その場から離れて、1度剣士の居留地へと向かっていった。
 来るべき日の為に、剛剣術を身につけるために。

 
●うまの王子様!!
──シャルトル競馬村・マイリー厩舎
 ブルルルルルルッ
 ゆっくりと駆け足で走るのは競走馬『天国のキッス』。
 その鞍上には、羽鳥助(ea8078)が跨がっていた。
「以前よりも体躯がしまっているねー。それに加速もいい感じ‥‥」
 久しぶりの感触を愉しむ羽鳥。
 と、横を同じ速度で走っているマイリー卿に、ゆっくりと話し掛けた。
「マイリー卿? もう競馬は行なわないのですか?」
「いえいえ。行ないたくても、冒険者の数が足りないでしょう。今、皆さんは地獄に向かい、悪魔と戦っているそうですね‥‥その一件が終わったら、改めてギルドに依頼を持っていくことにしましょうね‥‥」
「それは助かります。っていうか、それじゃあ久しぶりに全力でいくよーーーっ」
 と叫んで、嬉しさのあまり羽鳥は、『天国のキッス』と共に高速で走り出した。
 なお、羽鳥はその後、悪魔に関する情報を色々と調べてみた。 
 結果、ここいらへんに出没していた下級クラスの悪魔が、ノルマン江戸村へと向かっていくという話を聞く事が出来た‥‥。
 あそこには、何か悪い噂が流れているようだが‥‥。

──ということで一世一代の勝負
 場所はヨハネス領・領主の舘。
 そこの応接間に、リディエール・アンティロープ(eb5977)は静かに座っていた。
 その側には、ヨハネス卿の娘、ユーノ・ヨハネスが静かに座っている。
「だ、大丈夫でしょうか‥‥」
 と動揺するユーノ。 
 その手をギュッと握り締めると、リディエールは静かに微笑む。
「大丈夫ですよ。信じましょう‥‥」 
 と告げるリディエール。
 だが、事態は思わぬ方向へと進んでいった‥‥。
 居間にやってきたヨハネス卿に軽く会釈をおこなうと、リディエールは静かに話を切り出した。
「卿がご存知だったかどうかは存じませんけれど‥‥以前から、ユーノ様とは親しくさせて頂いておりました」
 その言葉に、ヨハネス卿は若干険しい表情を見せる。
──パタパタパタパタ‥‥
 リディエールの石の中の蝶がパタパタと蠢いている。
 今現在、室内にいるのは自分達以外にはセフィロト騎士団員が二人と執事が一人だけである。
「ふむ。それはどうも‥‥」
「それで‥‥先日一生お側にいさせて下さいとお願い申し上げて‥‥肯定のお返事を頂きました。異種族である事は重々承知しております。
 それでも、この方と共に在りたいと思いました。
 子を為すつもりはありません。公に夫婦と認めて下さいとも申しません。ただ、愛し合っている事を否定しないで頂きたいのです‥‥」
 そう告げると、ヨハネスはニコリと笑みを浮かべる。
「まあ、種が違う。それだけですね。貴方には御引き取りを戴きましょう‥‥」
 と告げられる。
「どうか、お願いいたします。娘さんを、私に下さい。ユーノ様の最期の時まで、お側にいる事をお許し下さい‥‥」
 と深々と頭を下げるリディエールだが。
「ユーノは、近日、婿を取る事になった。そこの男と結婚し、ヨハネス家の嫡子をもうけてもらう‥‥これは決定事項だ‥‥ユーノも早く部屋に戻りなさい。当面の間外出を禁止する」
「待ってくださいお父様!! そのような話、私は聞いていません」
「後日説明しようと思っていた。が、まあいい、そういうことだ。来月には結婚式の手配も行う。それまで家からでないように‥‥では、リディエールさんとおっしゃいましたね。自分の生まれを呪ってください‥‥貴方が人間だったら良かったのですよ‥‥ただそれだけなのです‥‥」
 と告げられると、ユーノは側近によって奥の部屋へと連れていかれた。
「待ってください。話を‥‥」
──パチッ
 そのリディエールの言葉を、ヨハネス卿は指を鳴らして遮る。
「御引き取りを」
「御意‥‥ではこちらへどうぞ」
 と、ヨハネスの指示で、セフィロト騎士団の一人がリディエールを外に放り投げる。
 そのままリディエールは、これからの対策を静かに考えはじめた。
 

──場所は変わってノルマン江戸村・プロスト邱
 大量の書物が積まれている書庫。
 そこでフォルテュネ・オレアリス(ec0501)は、賢者となるための勉強を行なっていた。。
「竜はジーザスの教えでは悪。だけど阿修羅の教えでは善も悪もあると‥‥その宗教によって、悪と善の定義が違うから難しいですね‥‥」
 と呟きつつ、フォルテュネはさらに調査を続けていく。
「天使が堕天したものが悪魔‥‥表裏一体の存在‥‥でもデーモンとはまた違う存在‥‥信仰の違い‥‥興味が湧いてきますわ」
 とにこやかに告げる。
「調子はどうですか?」
 そう告げつつ、プロスト卿が書庫へとやってくる。
「ええ。調べていくと、また興味が湧いてくるものばかりです。あ、プロスト卿、一つ質問よろしいでしょうか?」
「ええ。私で判る事でしたら‥‥」
「地獄でのマルバスさんの言動を考えるとカオスの歴史、世界を作った三柱の神々と暗黒神の神話は天使長の叛乱とどちらが先に起きた事件なのでしょうか」
 その問いに、プロスト卿はしばし頭を捻るが。
「私の考えでは、神々の神話が先、天使長の反乱はその後でしょうね‥‥もっとも、正解というのは誰にもわからないものですから‥‥」
 とだけ告げる。
 もしこの答えを知っているものがいるとすれば、それは正に『神のみぞ知る』というところでしょう。
「では‥‥もう一つだけ。賢人達の住まう屋敷について御存知でしょうか?」
「ムーセイオンの事でしょうか?」
 とだけ告げる。
「ムーセイオン? それは?」
「うーん。まだ早いですね。アカデメイアやリュケイオンなど、色々とありますけれど‥‥これらは賢者になってから学ぶものでしょうから‥‥さ、とりあえず勉強を続けましょう‥‥賢者として必要な事は知識とその実践。フォルテュネさんは、これからは実践も経験して戴きますからね」
 と告げられる。
「実践ですか?」
「ええ。といっても、難しいことではありません。いままでとは視点を変えて冒険を続けてください。個ではなく全、一つ一つの事象を考え、それぞれの真理を探求していただきます。その都度、冒険したことを記録として認め、貴方なりの解析を行なってください」
 とだけ告げられる。
 そしてプロスト卿はその場を後にした。
「せ、先生‥‥レベルが高すぎます‥‥」
 ヘトヘトになりつつも、フォルテュネは再び勉強の続きを始めた。


●占い
──パリ、マジックドラゴン・パフ亭
「‥‥どの方が占師さんですか?」
 酒場を訪れたリディア・レノン(ec3660)が、話しにでていた占師に会う為に酒場を訪れていた。
 そのまま店内をぐるりと見渡すと、そう手近の人に問い掛ける。
「ああ、そこの角のテーブルだぁな。今も占いをしているみたいだから、順番をまっていな」
 とだけ告げられる。
 止む無く、リディアは一緒にやってきていたホセ・ネロ(ec6737)と共に、静かに酒を飲む。
 と、やがてその占師が、リディアの元にやってきた。
「御待たせしました。何を占えばよろしいのですか?」
 そう告げると、リディアは静かに口を開く。
「上位‥‥は恐れ多いので中位の精霊と交友を結びたいの。方法あるかしら?」
「では‥‥」
 と告げて、占師は水晶をじっと見つめる。
「‥‥鍵を求めなさい。全ての精霊と友達になる為の鍵を。それは遥か海の底、水の精霊の住まう海底神殿に眠っています‥‥それがあれば、精霊と友達になることができましょう‥‥」
 おお、噂通りの的確な意見。
「そこにいく方法は?」
「船で沖へ。豪傑なおかみさんが、そこまでの道をしっているでしょう‥‥」
 おっと、こんどはかなりアバウトだが、それ以上の話しは聞く事が出来なかった。
 そのため、リディアはお礼を支払うと、すぐさまシャルトルへと旅立つ。

──そして
「ここにカター・サリット・サーガラが来るらしいんだけれど‥‥」
 ホセはカター・サリット・サーガラに会う為にこの酒場にやって来ていた。
 あちこちで聞き込みを続け、ここにやってくる確率はすでに80%と予測。
 だが、其の日、そこにはカター・サリット・サーガラはやってこなかった。
 そのまましばらくここにかよっていたが、ついに会う事は出来ず。

──そして
 シャルトルの『竜の民の生き残りの男性』の元を訪れたリディア。
 サクラから紹介状を受け取ってきたものの、その彼の家は封鎖されている。
「ち、ちょっと、何があったのですか?」
 そう近くに居た人に問い掛けるが、帰ってきた言葉は一つ。
「ヨハネス領の異端審問官が二人を連れていっちまったよ‥‥家の中の家財道具全て没収の上、投獄されちまったらしい‥‥おお恐い恐い‥‥」
 と呟いてその場から離れていく。
 そのまましばし茫然とするリディア。
 だが、どうしてもなにか腑に落ちない。
 この一件、裏で何か大きなものが暗躍してるのを、リディアは感じ取っていた‥‥。


──Fin