【黙示録】黙示録の塔・対黄金の羊編
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■イベントシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月25日〜09月25日
リプレイ公開日:2009年10月04日
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●オープニング
──事件の冒頭
大量の書物の並ぶ部屋。
プロスト卿の自宅書庫では、様々な碑文文献が並べられている。
先日、ロイ教授によって手渡された書物の解析。
それによると、ある魔法陣によって、塔が悪魔達の力から切り離されるという事。
それが為された場合、攻勢防壁は起動せず、塔の頂上に取り付いての力ずくでの突入も可能となる。
だが、その為には必要な資料が足りない
解析まで、もう少し時間が掛かるのかも知れない。
──その頃
「ば‥‥バカな‥‥全滅だと‥‥」
第20回廊。
そこである冒険者の一団は、『黄金に輝く羊』と相対峙していた。
その一匹の羊によって、仲間たち8名が殺害されている。
唯一生き残った女戦士もまた、瀕死の重傷を受ていた。
「ち‥‥畜生‥‥ボクが、もっと強かったら‥‥」
その言葉に、黄金羊は耳をピクリと動かす。
『ほう‥‥汝、力を欲するか‥‥』
低い声でそう呟く黄金羊。
「あ、ああ。貴様をぶっ殺す!! そしてボクは、仲間たちを連れて帰るんだ!!」
ゆっくりと立上がると、女戦士は最後の力を振り絞って、黄金羊に向かって切りかかる!!
「面白いぞ人間!! 名前は何という!!」
「ボクか。ボクの名前はニイナ‥‥死ぬ前に憶えておけ!!」
そう叫ぶと、女戦士は黄金羊に切りかかって‥‥。
●そして外の世界
──シャルトル・ノルマン江戸村
ノルマン江戸村近郊の森にて発見された不可思議な塔。
徘徊する魔物たちは、未だ知られていないものが多く、その対応にもかなりの時間が要している。
さらに付け加えると、『攻勢防壁』により、戦闘方法がかなり絞られてしまっていることにも要因がある。
さて。
先日、冒険者の手によって第20階層まで攻略された。
現在は、様々な冒険者達がこの塔に突入。さらなる活路を見出そうと奮起している。
だが、届く報告は、『第20回廊守護者の間にて、双子の少女と交戦。全滅した模様』ばかり。
そして塔にはめ込まれていた金色のプレートに書き込まれた古代魔法語は、以前と全くかわらぬときを刻んでいる。
それは以下のとおりである。
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塔に昇るものへ
さらなる階層に向けてのヒントをあげよう。
・一つの階層につき、上に昇る為の階段は一つのみである。鍵を探し出し、扉を越えて階段の間へと向かえ。
・階段の間に向かい、上の階に向かうには、『守護者』を倒さなくてはならぬ。
命惜しくば、階段の前は近寄るな。
・各階層には、様々な魔物が徘徊している。
命惜しくば、塔には挑まぬよう。
・守護者の回廊では、よけいな事を考えることなかれ。倒さなければ先へは進めず。
・この塔及びアビスの犠牲者たちの魂は、速やかに地獄へと送り届けさせて頂く。
あの御方が今一度復活なされる糧として‥‥。
──────────────────────
そして、これらを見た冒険者達が次々と試練を受けるべく向かったのだが、その殆どは負傷し、帰還していた。
さて。
この怪しげな塔。
攻略しますか?
それとも‥‥。
●リプレイ本文
●強襲
──シャルトル・ノルマン江戸村・黙示録の塔付近
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
激しい爆発音が響き渡る。
今までは沈黙を保っていた黙示録の塔周辺。
塔の内部にどれだけの冒険者が侵入しようとも、決して塔の外では戦闘は起こらなかった。
だが、其の日、塔の周辺では、大勢の冒険者とかなりの数の悪魔達が乱戦に突入していた。
その理由は一つ。
先日、塔を調査していた冒険者達が内部に居たロイ教授から受け取った巨大魔法陣の図面。
ラシュディア・バルトン(ea4107)達がその魔法陣を作成しはじめたとき、悪魔達が突如襲来したのである。
「ちっ‥‥どうやらこの魔法陣は、悪魔達にはとってもやっかいな代物らしいな‥‥」
ラシュディアはそう呟きつつ、手にした楔で、大地に魔力を込めた魔法陣を書き込んでいる。
その周辺では、三笠明信(ea1628)やディーネ・ノート(ea1542)、リュリス・アルフェイン(ea5640)ら手練れの冒険者が、次々とラシュディアに向かって襲いかかってくる悪魔たちを蹴散らしつづけていた。
「‥‥ふう。あとどれぐらいだ?」
そうリュリスがラシュディアに問い掛けるが、ラシュディアは必死に羊皮紙を解読しつつ書き込みを続けていた。
「こ、この調子ですと、あと4時間は掛かります!!」
塔の周囲を偵察してきたクリス・ラインハルト(ea2004)がそうリュリスに告げる。
「クリス!! 次は竪琴だ!! ここの円の中に安置してくれ!!」
ラシュディアがクリスに次々と指示を与えていく。
「は、はい‥‥安置完了です!!」
そうクリスが告げると同時に、ラシュディアは安置された竪琴に魔力を注ぐ。
──ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
と、竪琴が光り輝き、精霊力を放出する。
そのままクリスが次のアーティファクトを設置すると、再びラシュディアが魔力を注ぐ。
──キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
と、アーティファクトを運んでいるクリスに向かって、双頭の蛇が襲いかかっていく。
──ヒュンッ!!
と、その背後から、縄ひょうが飛んでいくと、双頭の竜の後頭部に突き刺さる。
「貴方の相手はこの私です。さあ、アーティファクトの設置を急いでください!!」
ラスティ・コンバラリア(eb2363)が手にした縄ひょうを操りつつ、クリスに告げる。
「こ、ここは御願いします」
と頭を下げて、クリスも走り出す。
「それにしても、随分と数が多いわ‥‥どうしまょう」
と薬と笑いつつ呟くラスティ。
「つまりあれか? オレに全部始末しろと?」
と呟きつつ、リュリスがラスティに近づいていく。
「ええ。御願いしていいかしら?」
「まったく‥‥お前も戦えよなぁ‥‥」
と笑いつつ、リュリスは静かに武器を構えた。
目の前には、漆黒の翼を持つ悪魔が2体、そして黄金に輝く羊が‥‥。
「さて、それじゃあ暴れさせて貰うか‥‥オレの剣が昂ぶり燃える! 羊を狩れと轟き吼えるぅ!」
そう叫びつつ、リュリスはゴートスレイヤーを構えて黄金羊に向かって走り出した。
──一方その頃・塔内部
「はあはあはあはあはあはあはあはあ‥‥魔法陣はまだか‥‥」
全身傷だらけの壬護蒼樹(ea8341)が、壁によりかかりつつそう呟く。
「さあな。まあ、俺達は、俺達のしごとするだけだ‥‥さ、きたぜ、手強いのがよっ」
バーク・ダンロック(ea7871)がそう呟きつつ、回廊の向うから静かに歩いてくる二人の少女に向かって構える。
「ふう。これで大丈夫です‥‥」
バークの後方では、怪我をしたセイル・ファースト(eb8642)の傷をサクラ・フリューゲル(eb8317)がリカバーで治療していた。
「バーク、俺が前に出る。追い撃ち頼む!!」
そう告げつつ、セイルが前に出る。
「来たね。それじゃあいくよっ」
「了解おねーちゃん!!」
──ヒュンツ
一瞬のウチに姿を消した双子のステラとスピカ。
そして一気にセイルへと間合を詰めたかと思うと、二人同時にセイルに向かって襲いかかっていった!!
(やべ‥‥見えてない!!)
──ドシュッ!!
スピカの放ったダガーはセイルのアーマーの接合部から綺麗に内部に貫通。
腹部を切り裂かれていた。
そしてセイルの首を狙っていたステラのダガーは、その眼の前に飛び出してきた蒼樹によって阻まれている。
「これぞ奥義‥‥真剣白羽取り‥‥」
がっちりとステラのダガーを両腕で挟んでいる蒼樹。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
手にしたオーラソードを横一閃に薙ぐバーク。
その一撃で、ステラの首が胴部より弾き飛ばされてしまった。
「そ、そんな!!」
一瞬の心の迷い。
スピカの手の力が弱まり、蒼樹はそのまま彼女のダガーを挟んだまま横に投げ飛ばす。
そして同タイミングでセイルが剣を振り落とす!!
──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
一撃で右肩が切断されるステラ。
そのまま肩口を押さえつつ、フラフラと回廊を走りはじめる。
「い‥‥いたいよ‥‥おねーちゃん‥‥いたい‥‥よぉ‥‥」
ヨロヨロと回廊を走るステラ。
だが、バークとセイルはそのステラに一気に間合を詰めていく。
「悪いな‥‥」
「これも運命、諦めてくれ」
──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァツ
セイルとバーク二人がかりの攻撃。
その一撃でステラもまた首を刎ね落とされ絶命した。
「ふう。それにしても敵の数が多すぎる。いったいどんだけの‥‥」
とバークが呟いた刹那。
「伏せろ‥‥みんな伏せろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
セイルが絶叫。
その瞬間、全員が床に伏せた。
そして全員の頭上を何かが飛んでいき、そして戻っていく。
「クスクスッ‥‥よく気が付いたわね‥‥」
にこやかに笑みを浮かべている少女。
其の手には、漆黒の蛮刀が握られている。
「厄介だな‥‥」
と呟くセイル。
「わ、笑っています‥‥どうして‥‥そんなに笑っていられるのです?」
サクラが少女を見て動揺している。
こんな情況であるにも関らず、その少女は天使のような笑みを浮かべている。
「これがエンジェルモードって奴かよ‥‥洒落にならないぜ」
全身から冷たい汗が吹き出しているセイル。
大抵の敵の攻撃なら、この鎧で受止められる。
そう確信していた。
だが、いま、この少女の前に立っていると、自分が着ている鎧が『布』で出来ているかのような錯覚にも陥る。
「また止める!!」
蒼樹が前に出る。
そして少女に向かって間合を詰める。
「クスス。まず一人目っ!!」
そう笑いつつ、少女は蛮刀を蒼樹に向かって投げた!!
──ヒュンヒュン
綺麗な弧を描きつつ、蛮刀は真っ直ぐに蒼樹に向かって飛んでいった。
「なんのっ!!」
すかさず蛮刀の軌跡を見切ると、蒼樹は蛮刀の柄の部分を握った。
──ドゴッ!!
その瞬間、蒼樹の胸に鈍痛が走る。
「な‥‥んだっ‥‥て‥‥」
一瞬のウチに、少女が蒼樹の前に飛び出していた。
そして抜き手で蒼樹の心臓の部分を貫くと、貫通した其の手には蒼樹の心臓が握り締められていた。
「まず一人目ねっ!!」
──ブシャッ!!
そう少女が呟いて蒼樹の心臓を握り潰すのと、蒼樹が最後の力で少女を力強く抱しめるのはほぼ同時であった。
「な、は、離せっ、離せよぉぉっ」
必死にもがく少女。
だが、すでに絶命している蒼樹は少女から離れる事はない。
「ふぅ‥‥蒼樹、あとで教会まで運んでやるからな‥‥」
そう呟きつつ、セイルがその少女の首を刎ね飛ばした。
●超動する魔法陣
──カキカキカキカキ
次々と描き込まれている複雑な魔法陣。
その最後の部分が完成し、いよいよ発動に入る。
「必要な魔力は揃った。詠唱文はミハイル研究所で解析済み。魔力源であるアーティファクトはクリスが貸し与えてくれた‥‥あとは発動まで!!」
パァァァァァァァァァァァァァァァァァァンと両手を合わせ、そのまま詠唱を開始するラシュディア。
「奴を潰せ!! 奴こそ悪しき元凶なり!!」
上空で跳びつつ指揮を取っていたヘルメスが叫ぶ。
「キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ」
その命令と同時に、一斉にラシュディアに向かって襲いかかっていく悪魔達だが。
──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァツ
いきなり眼前の一体を凍結させるディーネ。
「申し訳ないが、ここから先には行かせませんっ!!」
その叫びと同時に、クリスも素早く詠唱。
「輝く月(アルテミス)の矢っ!!」
──ヒュヒュンッ!!
次々と発動し、飛行する悪魔達の翼を突き破るクリスのムーンアロー。
そのまま大地に落下すると、そこで待機していたリュリスが一気に真っ二つに叩き斬る。
「ふう。いい加減切れ味が鈍ってきたか‥‥」
と告げるリュリスもすでに全身がボロボロ状態。
黄金羊との戦いで、左腕が肘から吹き飛ばされていた。
だか、それと引き換えに羊は粉砕され、現世にはその肉体を止める事が出来ずに霧散化していった。
「リュリス、それ以上無理しないほうがいいわ」
そう告げるラスティ。
そのラスティもまた、アーマーや武器がほぼ使い物にならなくなっている。
彼女が倒した悪魔の数はもう30を越えていた。
「ああ、悪い。ちょっと休ませてくれや‥‥」
と告げて、リュリスは塔の壁にもたれ掛かった。
「いろいろなことがあったなぁ‥‥」
と、リュリスはかすれていく意識の中で、冒険者になってからの自分を思い返していた。
初めてのギルドの仕事は隻腕の剣士の討伐。
まだ駆け出しだった自分が、いま、悪魔達から世界を救うための力を身につけている。
多くの依頼、多くの人々の笑顔。
それを護る為に。
悲しみにくれた人に笑顔を取り戻す為に。
色々なことがあった。
「もう‥‥ここで立ち止まってもいいかな‥‥」
ズルルッと壁に凭れたまま大地に崩れ落ちるリュリス。
その壁には、大量の血が付着していた。
ラスティには見せていない傷。
それは人としては致命傷であった。
(‥‥みんな悪い。あとは任せた‥‥)
ニィッと笑いつつ、リュリスの意識は消えていく。
目蓋の裏には、つい先程まで戦っていた仲間の姿が浮かんでいく。
(三笠‥‥立派なパラディンになれよ‥‥ディーネ‥‥精霊とはちゃんと意志を通わせたか‥‥クリス‥‥悪鬼とはどうするんだ‥‥セイル‥‥あの奥さん相手に大変だな‥‥)
と、仲間たちに一人一人別れを告げていく。
(バーク‥‥どこまで強くなるんだよ‥‥壬護‥‥もっと鍛えろ‥‥サクラ‥‥あまり泣くなよ‥‥ラスティ‥‥生きていたよかった‥‥)
目の前が暗くなっていく。
リュリス自身、もう自分が死の淵へと落ちていくのを実感していた。
もう体が動かない。
意識する消滅しはじめていた。
(ラシュディア‥‥)
そう心の中で呟いた刹那。脳裏に『ぷりてぃ☆らしゅ』が浮ぶ。
(プッ‥‥)
さらにわんドシ君が脳裏に浮ぶ。
(この負け犬だワン‥‥)
そうわんドシ君が呟いたような気がした。
(ふ‥‥ふざけるな‥‥)
そう心の中で叫ぶと同時に、リュリスの意識が戻った。
「あ、もういいの?」
そうリュリスに問い掛けるラスティ。
「ああ、『プリティ☆らしゅ』と『わんドシ君』のおかげでな‥‥それじゃあ次にいこうか‥‥」
そう呟くと、リュリスは壷に入った薬を一つ飲み干した!!
──そして
「6つの精霊よ‥‥我ラシュディア・バルトンの名において、悪しき力を浄化したまえ!!」
最後の一文を読み終えた刹那、大地に記されていた魔法陣が光り輝く。
そして周囲に存在していた悪魔達の姿が次々と消滅していった。
──同時刻、塔内部
「こ、これは一体‥‥」
蒼樹に代わりアサシンガール戦に参戦していた三笠が、突然の塔の異変に動揺していた。
床全体が輝き、そしてアサシンガールの背中がそれに反応して輝く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‥‥熱い。熱いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
そう叫びつつ意識を失い、その場に崩れていくアサシンガール。
その背中に刻まれていたらしい契約の刻印が、床の輝きによってゆっくりと消滅していく。
「なあ、これって‥‥」
セイルがそう告げると、三笠とバークも肯く。
「魔法陣が発動し、浄化が始まったのですね‥‥」
サクラがそう告げつつ、ゆっくりと立上がる。
と、突然その場のメンバーの姿が床から消え、塔の外に転移されていた。
●結末
ラシュディアのほどこした魔法陣により、塔は結界に囲まれ魔力の殆どを失っている。
だが、塔の入り口は硬く閉ざされ、横に掲げられていた金のプレートには一つも文字が浮かんでいない。
内部に突入するにも、入り口が硬く閉ざされてしまっていた為、一行はそのまま様子を見ることにした‥‥。
──Fin