【またもみた】とある魔法の目次録

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:5

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月09日〜10月16日

リプレイ公開日:2009年10月17日

●オープニング

 ──事件の冒頭
 そこは冒険者街の片隅の、ちょっとした貴族の屋敷。
 当主であった両親は病気で他界、いまはそこの一人娘が当主を務めている。
 まあ、両親の残した遺産と、王宮付司書官という身分が、今の彼女にとっての全てであった。
 そんなある日の事。
 両親が残した遺産の中から、一つの鍵が発見された。
 それは地下室にある大きな扉の鍵。
 彼女は好奇心に勝てず、その扉を開いてしまった。
 かび臭い室内。
 古い書庫のようなものらしく、そこには大量の羊皮紙と石版や粘土版が転がっていた。
 これ見よがしに、彼女はその石版などを解読しようと思ったらしいが、冒険者でもない彼女に、それらの意味不明な文字を解読することはできなかった。
「困った時は、ミハイル教授よね‥‥」
 ということで、ミハイル研究所を訪れたものの、とうのミハイル教授はどこかに旅に出てしまっていたらしいく、解読は不可能となってしまった。
 
 それから数カ月。
 しばらくは執務等に追われていた為、地下室の書庫のことを忘れていた彼女。
 だが、秋になり仕事も一段落したとき、ふと件の書庫が気になりはじめたらしい。
「こうなると、あとは‥‥」
 ということで、彼女は冒険者ギルドの扉を開いた‥‥。


●あれから数日
 ギルドに提出した依頼書。
 だが、掲示板を見た冒険者達は、他の割のあう依頼を選び、ウエンディの依頼には目もくれない。
「はぁ‥‥やはり無理があったのですか‥‥」
 と、手元に帰ってきた依頼書をじっと眺めつつ、ウエンディは帰路についていた。
「あとは魔術師ギルドとか酒場しかないですかね‥‥」
 はぁ、と溜め息を付きつつ、ウエンディは一か八かで冒険者酒場に直接乗り込んでいった。
「どなたか、手の空いている冒険者さんに依頼を御願いしたいのです!!」
 入り口を抜けて開口一番。
 そんな彼女を、冒険者達は好奇心の目で見ていた‥‥。  

●今回の参加者

 ea2004 クリス・ラインハルト(28歳・♀・バード・人間・ロシア王国)
 ea4107 ラシュディア・バルトン(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb2174 八代 樹(50歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3227 フレイ・フォーゲル(31歳・♂・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ec0290 エルディン・アトワイト(34歳・♂・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●混乱する時間
──パリ市内・ディアハート邱
 静かな秋。
 このノルマンにも秋が訪れた。
 収穫の季節を迎え、郊外の畑では大勢の人たちの収穫作業がピークを迎えていた。
 乙女たちはこれら収穫物の中からより選られたブドウを用いてワインを作る。
 それらはやがて教会や王城へと届けられ、今年の実りへの感謝を捧げられる。
 いま、巷で噂されているのは目下の所国王陛下の結婚話。
 どこからともなく様々な噂が流れ、それを耳にした者たちが一喜一憂しているとかしないとか。

 そんなは話はどっかに置いておいて。
「ウエンディさん、ちょっと御話し宜しいです?」
 クリス・ラインハルト(ea2004)が依頼人であるウインディにそう問い掛ける。
 これから始まる司書作業。
 その前に、一行は応接間に案内されてゆっくりとティータイムを愉しんでいた。
「はい、どうぞ」
「ウエンディさんは司書官ですよね? ご両親も司書官だったのですか?」
「いいえ。父は王宮付護衛官でした。母は普通の貴族ですが」
「ふむふむ。では、どうしてここにはこれ程の文献碑文があるのでしょうかー」
「恐らくは祖父のものも含まれているかと。私の祖父は、王宮図書館管理責任者を昔務めていた事があったそうです」
 その言葉に、一行は納得。
「では、お祖父様の残したものである可能性が高いと?」
 そう問い掛けるのはラシュディア・バルトン(ea4107)。
「ええ。つい先日、冒険者の方が地下書庫の整理を手伝ってくれまして。中はかなり整理されていますけれど、細かい分類まではまだ‥‥」
 おぉっと。
 それは一行の知らない世界。
 まあ、ギルドに報告書でもあるからそっちを確認して。
「‥‥あまりいい結果がでないですね‥‥」
 静かに占いを行なっていたのは八代樹(eb2174)。
「何か悪い結果でもでているのですか?」
 そう問い掛けるフレイ・フォーゲル(eb3227)。
「いえ‥‥そうではないのですが。こう、具体的に説明ができないのです。ただ、良くない暗示といい暗示が混ざりあっていて‥‥」
「まあ、いいことも悪いことも踏まえたうえで‥‥というところでしょう。では皆さん、そろそろ始めましょうか‥‥」
 とエルディン・アトワイト(ec0290)が締めくくり、全員にグットラックを発動する。
 そしてそれぞれが地下室に潜り込むと、まずは大雑把に調査を開始、そして自分の得意分野へとシフトを変更していった‥‥。


●クリスの調査報告
 瞳がキラキラと輝いているクリス。
 その理由はただ一つ。
 眼の前には、大量のスクロールの山。
 それら全てが、今だ伝えられていない英雄達のサーガであった。
「こ、これは‥‥誰も知らない英雄達の物語ぃぃぃぃぃぃぃぃ」
 興奮冷めやらぬままに、クリスはそれらをゆっくりと読みはじめる。
 内容を一字一句記憶し、時間があれば余っている羊皮紙に書き写す。
 そうして仕上げたサーガ、なんと118編。
 その中にはクリスの求めていた『6つの精霊との約束』と『精霊騎士』の完全版はなかった。
 が、その写本らしきものは確認でき、さらに『精霊騎士』は全部で6つの詩編から構成されているところまで理解できた。
 ここにあったのはそのうちの4編。『精霊騎士と竜騎士の友情』『悪魔ベルフェゴールを倒し封印したカリバーンの剣士』『全てのものを呑み込む巨大魔法陣』『6つの精霊武具と、それらを封じた6つの遺跡』は完全に読解した。
「ああああああ‥‥こ。これは‥‥」
 狼狽するクリス。
 まあ無理もない。
 求めていた答えが次々と出てきたのである。


●ラシュディアの調査報告
 ゆっくりと資料を調べる。
 今の所、ラシュディアに判らない石版碑文は存在しない。
 全てを読解し羊皮紙に書き写す。
 幾つかの魔法陣は外に出て実践し、それらが『使えるもの』であることも確認した。

・精霊石を用いたブースター魔法陣
・全ての悪魔を退ける聖なる護符
・いかなるものをも呑み込む『コキュートスの魔法陣』
 
 これら3つについては確認できた。
 が、実際に用いるとなるとかなり難しい。
「で、これが‥‥古来民間伝承系魔術か‥‥」
 それは古い文献。
 おそらく元々は誰かの口伝だったのだろう。
 それを纏めた石碑か粘土版からさらに写し、それをさらに伝えた‥‥というところだろう。
 中には使えるか判らないものまであった始末。

・好きな彼女、彼氏に告白し、いい答えを貰える御呪い
・今年の豊作を祈願する儀式
・生まれてくる子供が男か女か当てる呪い
・動物や異性に変身する秘薬の調合方法
・特定の虫を呼び寄せる魔法

「‥‥ま、まあ‥‥これだけはなんとか‥‥」
 引きつりつつも羊皮紙に書き留めるラシュディア。
 なお、その様子を途中からエルディンが眺め、一部記憶していた事は言うまでもない。
 そして、ラシュディアが最も関心を寄せていたのが、『竜の民』と『精霊の民』に関する資料。
 それによると、竜と精霊の民は、このノルマンより遥か南方に住んでいたらしい。
 そこから僅かの民がこのノルマンの地に移住し、小さな村を作っていた。
 ノルマン王国が建立する以前は、それでも交流があったらしい。
 が、竜や精霊と会話し、その力を行使できる二つの民は、やがて『異端』として扱われてしまった。
 時同じくして、この二つの民は神聖ローマからやってきた異端審問官や司祭などから弾圧され、現在未探査地域と呼ばれる土地へと追いやられてしまった。
 その資料によると、未探査地域にある竜の民の集落は全部で6つ、ラシュディアの知らない集落がまだ3つほど残っていた‥‥。
「これは‥‥訪ねてみる価値はあるが‥‥」
 そう呟きつつ、ラシュディアは再び資料を纏めはじめた。


●八代の調査報告
 見つけたのは、かなり劣化した『精霊魔術の秘儀が記されているスクロール』。
 大量に発見できたものの、それらを解読し行使するのはかなり困難であった。
 だが、それらの中にも幾つか使えたものはある。
 それも、精霊との契約ではなく、魔術師自らの知力と魔力をベースとする魔術であった。
 それらは、写本によると『ブラックワード』と記されており、扱うことはかなり難しいらしい。
 現在の精霊魔法とは大きく異なり、準備や媒体、魔法発動の条件などがこと細かく記されていた。
「‥‥これだけの魔術の秘儀‥‥実践してみたいですけれど‥‥」
 と呟きつつ、八代は一冊の写本を広げていった。
──スーーーーーーーーーーッ
 そこに記されている印を結び、魔力を高める。
 その魔力を右人差し指に集中し、それで空中に韻を刻みはじめた。
「そ‥‥それってどうやっているのですか?」
 そう問い掛けるクリスに、八代はあとでと告げて、全ての韻を空中に刻みおえた。
「‥‥で‥‥ええっと‥‥次が‥‥」
 さらに韻を指でなぞり、魔力の含まれた息を吹き込む。
 やがて空中に記された韻が形を形成し、一匹の兎になり掛かった所で消滅した‥‥。
「ああっ‥‥惜しい‥‥もう少しだったのに‥‥」
 そう呟きつつ、次のスクロールを開く。
 そこに書かれている韻を脳裏で唱え、次に大きなモーションで記された印を紡いでいく。
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
 と、八代の足元に精霊魔術の魔法陣が広がり、輝きはじめた。
「ふう。まずはこれで完成‥‥と」
 一息入れた所で、ラシュディアからの突っ込みが一言。
「あー、そのブースター魔法陣、精霊石かそれに近い純度の精霊力がねーと発動しねーよ」
「そうなのですか。うーーん。惜しい」
 パーーーンと手を叩き、魔法陣を消滅させる八代。
 まあ、まだ他にも色々なものがあったため、八代は次のスクロールを開き解読を開始した。


●フレイの調査報告
「‥‥あ。これは危険ですねぇ‥‥こっちもダメ‥‥」
 次々と整理された写本などを仕分けるフレイ。
 古代魔法語、現代語、精霊碑など、こと細かに分類し、さらにそれらを『一般』『要注意』『碑文・危険』の3つに仕分ける。
 それらが終ると、フレイはそれらの中から自分に必要なものを探し出し、読みはじめた。
 なかでも気になっていたのは、錬金術師による『生命の誕生』『ゴーレム創造』である。
 流石に施設がない為、『生命の誕生』については不可能であるが、ゴーレムについては不可能ではないらしい。
 手近にある羊皮紙を手に取ると、そこに碑文を書込む。
 それに自身の魔力を注ぎこむと、次は素体の製作。
 今回は近くにあった羊皮紙をつかって人形型を作り出すと、そこにさらに魔法をとなえる。
 そして完成した依巫に、先程の符を張り付けると完成らしい。
「‥‥さあ、まずは動いて見てください」
 とフレイが命じるも、ピクピクとしているだけで一向に動く様子はない。
「資料によると、『より人間に近い形と構成であるほどよく動く』と書いてありますが。要は鎧甲冑に魔法処理を施せばいいということでしょうかね」 
 と呟きつつ、別の書物を探すフレイであったとさ。


●エルディンの調査報告
「‥‥困ったですね」
 と呟きつつ、エルディンは分別した『危険書庫』からゆっくりと離れていく。
 そこには『異端に関する文献』や『悪魔崇拝に関する資料』、果ては『デビノマニになる為の技法』などなど、焚書確定の書物がずらりと並んでいた。
 それらに目を通すのが危険と判断したエルディンは、それらを別の仲間の未分別資料にそっと混ぜると、自分は古い聖書をゆっくりと読みふけっている。
「‥‥この聖書自体にも魔力が感じられますねぇ‥‥」
 と呟きつつ、エルディンはミラーオブトゥルースを発動。
 室内に置いてある幾つかの物品が魔法的であることを見定めた。
「この聖書とそこのランプ、壁に賭けてある装飾剣と装飾楯、この箱の中のネックレスが魔法物品と‥‥」
 分別したものは全てウエンディに預けると、またエルディンは静かに資料を調べはじめた。


●そして
 殆どの分別が終った地下書庫。
 それでも、まだ内容まではまったく手を付けていないものが殆どである。
 ウエンディの計らいで、いま、ここにいる人たちはいつでも地下書庫を利用していいという御墨付きを貰った為、一行はまずはウエンディに挨拶し、それぞれ自宅へと戻っていく。

 静かな帳が降りてくる。
 もう外は夜。
 人の時間から魔物の時間へと、時はゆっくりと流れていく‥‥。

──Fin