セーラ様がみてる〜ノルマンにて〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 36 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月29日〜09月03日

リプレイ公開日:2004年09月02日

●オープニング

──事件の冒頭
 あいもかわらず忙しそうな冒険者ギルド。
 これから冒険に出発する者や、依頼を終えて戻ってきた者など、様々な人で賑わっている。
 また、情報収集のためにギルドにたむろしている者に聞き込みをしている者など、じつに様々な人が出入りしている。
 そんな平和ないつもの夕暮れのことである。

「珍しいですね。今回はどうかなさったのですか?」
 それはギルドの受付嬢。
 眼の前にいる女性に対して、静かにそう呟く。
「ごきげんよう。実は、最近修道院の敷地内で不思議な出来事が起こっているのです。それで調べていただこうと思いまして‥‥」
 依頼人はノルマンの修道院で生活している修行中のシスター。
 この修道院は、中央にある広場に『慈愛神セーラ』の像が安置されている。
 その為、修道院のシスター達は、『セーラの乙女達』とも呼ばれているとかいないとか。
 どうやら依頼内容は、夜な夜な修道院の中庭や建物の内部を不審なものがうろついているらしく、それを調査して欲しいというものであった。
「修道院には、このノルマンの貴族様がたの御息女がいらっしゃいます。万が一その方たちに危害があった場合、取り返しの着かないことになるかもしれません。どうかよろしく御願いします」
 ペコリと頭を下げるシスター。
「判りました。手続きをしておきますね。あと、今回の依頼ですが、男性は内部に入って大丈夫ですか?」
 修道院という場所柄、その部分について訪ねる受付嬢。
「いえ、やはり殿方には御遠慮していただきたいのです。よろしく御願いします」
 そのまま依頼を書き取ると、ギルド員はそれを掲示板に張付けた。
「修道院に忍び寄る魔の手‥‥うーん、燃えるシチュエーションですわ」
 ギルド員はそう呟きながら。、掲示板に依頼書を張付けた。

●今回の参加者

 ea2649 ナスターシャ・エミーリエヴィチ(30歳・♀・ウィザード・人間・ロシア王国)
 ea2792 サビーネ・メッテルニヒ(33歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea3047 フランシア・ド・フルール(33歳・♀・ビショップ・人間・ノルマン王国)
 ea3412 デルテ・フェザーク(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea4919 アリアン・アセト(64歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea5066 フェリーナ・フェタ(24歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

●やってきました乙女の庭〜ようこそ〜
──修道院
 パリ郊外。
 セーラ神を奉っているその修道院には、毎日多くの礼拝者達が訪れています。
 そして、貴族を始めとする様々な身分の女性達が、この修道院で礼節や女性としてのマナーなどを学んでいます。

 そこはサン・ドニ修道院。
 『セーラの乙女たち』の学び舎。

「初めまして。私がこのサン・ドニ修道院の修道院長を務めていますアンジェラスと申します。今回は、わざわざご足労頂き、心より感謝申し上げます」
 丁寧に冒険者一行を迎えてくれたのは、この修道院の修道院長を務めているシスター・アンジェラス。
「御無沙汰しています、シスター」
 丁寧に挨拶を返すのは、アリアン・アセト(ea4919)。
 彼女は幼少の頃、ここの修道院で、セーラ神に関する事や様々な礼節を学んでいたようである。
「おやおや。しばらく見ないうちに随分とご立派になられて。シスター・アリアン、御元気そうで何よりですわ」
「院長先生はまだお元気でしょうか? 当時から大分ご高齢でしたけど」
 にっこりと微笑みながらそう告げるアリアン。
「ええ、お蔭様で。まだまだ私自身も学ぶべきものがあります。主の御許に抱かれるには、まだまだ‥‥ここで立ち話というのも礼儀に反しますので、皆様こちらへ」
 そうシスターが告げると、一行はそのままシスターに連れられて来客用の部屋へと案内された。
 途中、教会を通り内路を抜ける時、サビーネ・メッテルニヒ(ea2792)とフランシア・ド・フルール(ea3047)は、その造りの丁寧さに圧倒されていた。
 この修道院はかなり歴史が古いらしい。
 外周には、侵入者に対しての守りの為か、高さ2mの柵が作られている。
 修道院なんて懐かしいわ‥‥何年ぶりかしら? どこの修道院もあまり変わらないわね」
 サビーネが、建物の中を見渡してそう告げる。
「そうですわね。でも、このような厳粛な場所に、無断で足を踏みいれるものがいるなんて‥‥」
 フランシアがそう口を開く。
「『聖なる母』のものとはいえ、主の庭で狼藉とはなんと不遜な! 必ずや相応の報いを与えましょう。主よ、御名を汚す輩を裁く機会をお与え下さったことに感謝致します」
 そのまま両手を組み、静かに祈るフランシア。
「私達は、ひょっとして、居場所ないかしら?」
 ナスターシャ・エミーリエヴィチ(ea2649)が、横を歩いているデルテ・フェザーク(ea3412)にそう話し掛ける。
「うーん。クレリックの皆さんは、見事に溶けこんでいますけれど。私達はうまくできますでしょうか?」
 さらに横を歩いているフェリーナ・フェタ(ea5066)に話し掛けた。
「人生で初めての修道院‥‥女性の園に香る、神秘と不思議のにおい。夜な夜なうろつきまわる怪しい影‥‥っ!」
 あ、フェリーナは既に自分の世界に突入の模様。
 今宵、フェリーナは燃えている!!
「後で、皆さんにも色々と教えてさしあげますわ。わたくしにとっては聖句が異なる以外祈り、学び、働く生活は常と同じですので。主の庭での生活を最初のみお教えしますね」
 にっこりと笑みを浮かべると、フランシアがそう告げた。
「よろしく御願いします」
 そんな会話を続けているうちに、一行は来客用の部屋に通された。
 そこで、今回の一見に付いての詳細を聞かせて貰う。
 具体的には、次のような情況である。

 ここ2週間の間、深夜に修道院の内部を徘徊する何かが確認された。
 最初の内は、内路の辺りをうろうろしていたらしいが、やがてそれは教会の内部を徘徊。
 数日前には、皆の生活している廊下などを深夜、徘徊している模様。
 第一発見者は、深夜見回りをしていたシスター・リィホウ。発見場所は内路。
 第二発見者は、リィホウの報告を受けて見回りをしていたシスター・ベルチェ。
 特にベルチェは、徘徊する何かを追いかけたらしいが、直に見失ってしまった。
 その後も、一日おきとかに教会を徘徊する何かが確認された。
 最近は、皆の宿舎の廊下を徘徊している。
 
「ということなのです。どうかよろしく御願いします」
 アンジェラスが深々と礼をする。
 そして一行は一旦宿舎へと向かうと、与えられた部屋に荷物を置き、全員が礼服に着替える。
 一旦礼拝堂に皆が集められると、シスターより十字架を授けられた。
「依頼とは言え、これを付けていない方をここにお泊めすることは出来ませんので‥‥」
 そう告げると、アンジェラスがアリアンに十字架の入った箱を渡す。
 それを受け取ると、アリアンがナスターシャ、デルテ、フェリーナに順番に十字架を授ける。
「主よ‥‥この者に、祝福を‥‥」
 一人一人順番に十字架を受け取る。
 そして一行は、ようやく調査開始とあいなった。

──ナスターシャ
「随分と古いですわね」
 ナスターシャは、修道院長の元を訪ねると、この修道院の見取り図を閲覧させて貰っていた。
「ええ。この地に修道院が建てられて既に500年。その間、この修道院は数多くのセーラの乙女たちを育てて参りました」
 その話を聞きつつ、ナスターシャは図面から人の隠れられそうな場所を捜していた。
(困ったわ‥‥何処にでも隠れられそう)
 建物が古く、時代毎に建て増しされているため、何処にでも隠れる場所が有る。
 そこでナスターシャ、ここに来る途中の地形を参考にして、修道院の中からは見えにくく、且、隠れていやすいルートを算出。
(可能性はここの一ヶ所だけ。でも、本当にこんな所に?)
 ナスターシャは、割り出したポイントのある場所を見てそう思った。

──サビーネ
「では、其の日の深夜、貴方の部屋の前までその気配があったのですか?」
 サビーネは宿舎での聞き込み。
 シスター達に、何か気が付いた点や気になる点を問い掛けていた。
「ええ。確かに私の部屋の前で、その気配‥‥というか、足音が止まったのですわ。私は恐くなって、毛布にくるまって震えて居ましたから‥‥」
 そのまま聞き取り調査を続けるサビーネであった。

──フランシア
 フランシアは、建物の部屋の配置や高価な物の安置場所などを確認中。
「ここには、人影は無いようですわ‥‥」
 修道院という建物には、その宗教的な立場上、自然と寄付などが集まる。
 それらを取りまとめているのがシスターから選ばれた監査員。
 その彼女の案内で、此処の修道院に寄付されたもので高価なものなどが置かれている部屋に案内してもらった。
 外部から侵入する泥棒の事を考え、その部屋には窓も無い。
「ええ。普段は鍵が掛けられていますし、その鍵も私が管理していますので」
 ジャラッと鍵把をみせる監査員。
「では、ここの部屋以外の鍵も貴方が?」
 そう問い掛けるフランシア。
「宿舎などの鍵は修道院次長が管理しています。私は教会やこの安置室など、金品に関る場所の管理を行なっているのです」
 そのまま彼女の管轄である部屋を一つ一つ回るフランシア。
 だが、特に怪しい場所や気が付いた点は無かった。

──デルテ
 彼女の担当は修道院内の間取りの確認。
 侵入した者が使うであろう侵入経路や逃走経路の有無、それらの場所を一つ一つ丹念に調べている。
「‥‥ここが建築されたのが、500年前‥‥まさか、その当時に此処に何かを埋めた人が取りに戻ってくるなんていう事は‥‥」
 そんな奴がいたら、人間ではない。
「ぶっちゃけあり得ないわね‥‥可能性としては、多分、修道女の中の誰かが落し物でもして探しているだけだと思うけど‥‥」
 自問自答。
 そのまま調査を続行するデルテであった。

──アリアン
 彼女の任務は噂の真意。
 謎の徘徊者という噂自体が、たんなる噂の可能性を考えたアリアンは、目撃者を一人ずつ訪ねると、その辺を注意して聞き込み開始。
 だが、噂の殆どは共通点があり、信憑性も高い。
 内部犯による自作自演という考えは、この時点で消えた!!
「となりますと‥‥昔よく使っていたあの秘密の抜け道はもう塞がれてしまったのでしょうか?」
 そのままアリアンは裏庭へと向かう。
 その一角、パン焼き小屋の横を通り抜けると、その木陰にある小さな抜け道を確認。
 この建物の中で唯一、外周の柵が切れている場所。
 そこは昔、アリアンがこの修道院を抜け出していた秘密の抜け道である。
 だが、そこには抜け道は存在しない。
 最近になって柵の改修も行われたようで、既にそこも柵によって完全にガード!!
「不粋ですわ」
 そう呟きながらアリアンがそこから立ち去ろうとしたとき。
 その柵の一部に傷が就いているのを確認。
「この傷は?」
 そっとそれに触れてみる。
 と、アリアンは何かを思い付いたらしく、その場から立ち去った。

──フェリーナ
「可能性は、その男だけだっのに‥‥」
 フェリーナはシスター達の聞き取り調査を終えて、修道院の外へと聞き込みに向かっていた。
 修道院の回りにはそれほど大きい建物は存在しない。そのため、聞き込みにはそれ程時間も掛からなかった。
 そしてフェリーナは、ここ2週間の間、この修道院の周囲をうろつきまわっていた男が存在することを確認。
 その男も最近は姿を見せていないという。
 そのまま聞き込みを続け、男の姿や特徴などを聞き出すと、フェリーナは修道院へと戻っていった。


●夜の修道院〜あらまぁ‥‥あっさり〜
──夜
 静かに夜の帳が降りてくる。
 夕方の祈りを終えて、一行はシスター達と共に夕食を取る。
 そして、その後の自習の時間に一行は集まり、皆の調査結果をすりあわせていた。
「シスター達は真実を語っていましたわ」
「それに、建物の外周で侵入できそうな経路はチェックしましたが」
 そのまま一人一人報告を続ける。
「ということは、問題は、建物を外から見ていた怪しい男という事になりますわね」
 ナスターシャが一通りの意見を纏めると、ゆっくりと口を開いた。
「ええ。ナスターシャさんの作ってくれた見取り図なら、その男がどうやって内部に侵入したのかも判ります」
 フェリーナが、ナスターシャの作った見取り図に印と時間を書込んでいく。
 アリアンの確認した傷は、フックによるもの。
 そして一通りの推測を元に、男の行動を考えだした。

 男はシスター達の就寝時間である夜8時過ぎ、そして起床時間である朝3時半までの時間に、フック付きロープで内部に侵入。
 そのまま建物の内部に潜り込むと、またフックを使って天井裏へと移動。
 そして全ての部屋へと向かえるポイントに待機。
 食堂から残り物を盗みだしては、それで飢えを凌いでずっと待ちつづけていると推測。

 つまり、男は今、この時間にも、そのポイントにいるということである。
「あとは、それを実際に確認して、捕まえるだけですね」
「まったく神聖な修道院で不審者なんて許せませんわね」
 フランシアの言葉にサビーネが続く。
 かくして一行は、作戦開始までの時をじっと待っていた。

──深夜
 相手に気取られないよう、宿舎を出るときから足音を忍ばせて目的の場所へと向う冒険者達。
 教会内部にたどり着くと、ナスターシャは静かにブレスセンサーを発動。
「やはり、天井裏ですか‥‥」
 そのままナスターシャは、他のメンバーを手で合図しながら各ポイントへと移動させる。
 そして全員が配置に付くと、さらにサビーネがデティクトライフフォース発動。
(天井裏に一人‥‥大人ですね)
 それを更に仲間たちに合図で知らせるサビーネ。
 そして時は来た!!
「天井裏の侵入者さん、今直ぐ出てこなければ実力行使をさせていただきますわ」
 ナスターシャのその言葉と同時に、デルテが詠唱開始。
 しかも、上に潜んでいる男にも聞こえるようにはっきりと。
──ドタドタドタ
 突然、天井裏が騒がしくなる。
 そして天蓋の一部がスライドすると、ストッとフードを被った人物が姿を表わす。
「やっぱり。貴方が、一連の事件の犯人ですね。おとなしく掴まっていただけたら、こちらとしても手荒な真似はしません」
 ナスターシャがそう叫ぶ。
 と、男は観念したのか、その場にへたりこんでしまった。

──そして
「何をしていたのか教えてもらえますか?」
 それはデルテ。
 男を縄で縛り上げると、一行は何故、このようなことをしたのか問い詰めた。
 男は、ゆっくりとした口調で次のようなことを語った。

 この修道院には、貴族を始めとする様々な身分の女性が生活している。
 その中の一人を誘拐して、身の代金をたんまりと取り上げようと思ったらしい。
 だが、いざ侵入したのはよいものの、どの女性が貴族の子女なのか判らなかったため、普段の生活の中から、それらについて聞き出そうとし、ここに住み着いていたらしい。
 ようやく目処が付いたとき、冒険者達がやってきたとの噂を聞いたので、これからの事を考えていたようである。
 
 そして、男はそのまま鍵のかかる部屋に閉じ込められた。
 翌日には、騎士団に引き渡すということらしい。


●次の日〜冒険よりもきついかも〜
──朝の礼拝
「天にましますわれらの母よ。願わくは御名を崇めさせ賜え‥‥。御国を来たらせたまえ。御心の、天に成るが如く、地にもそれをなさせたまえ。我等の、日用の糧を、今日も無事に与え賜え‥‥」
 礼拝堂で、シスター達が朝の礼拝を行う。
 皆、其の手に聖書を持ち、静かに、そして厳粛な雰囲気で言葉を綴る。
 兎に角、朝がこれほどきついとは、冒険者一行(クレリック除く)は予想外であった。
 今は朝の5時。
 先日は大捕り物があっため、ゆっくり休めると思っていた冒険者であったが、ここで生活する以上は、規則として皆と同じ行動をしなくてはならない。
 そして其の日の夕方。
 一行は無事にパリへと帰還することが出来た。


●パリにて〜流石は修道院長〜
──冒険者酒場
 無事に報酬を受け取った冒険者一一行は、今回の依頼の成功を祝い、ぱーっと愉しい一時を過ごすために酒場にやってきていた。
「ケーキを御願いします」
「私にはハーブティーと、果物の蜂蜜漬けを」
「こちらにも同じ物を。ええ、ハーブは、心休まる奴で‥‥あそこの薬師さんに聞いたら判ると思いますので」
 とまあ、一行は皆、バラバラに注文を行なっていた。
 そしてそれらがテーブルに運ばれたとき、一行は全員同時に手を組むと、静かに瞳を閉じて食事の前の祈りを捧げる。
『今日一日の、神の御加護に感謝します。主よ、私が空腹を覚えるとき、パンを分ける相手に出会わせてください‥‥』
 ああ、シスター・アンジェゥラス。
 貴方の教えは、皆の心に深く刻みこまれていますようです‥‥。
『それでは、かんぱーーーい!!』
 前言撤回‥‥。

〜Fin〜