●リプレイ本文
●かならず最後に愛がぁぁぁぁぁぁぁぁ
──パリ・ニライ宅
静かな昼下がり。
暖炉に薪を放り込みつつ、温かいぬくもりを肌で感じているのは家主のニライ・カナイ市政官。
その側では、久しぶりにニライ宅を訪れた無天焔威(ea0073)が腕を組みじっとニライをみていた。
「ああ、ちょっと待っていてくれ。今、ハーブティーを出すからな」
と告げられてほーちゃんはしばし待つ。
10分程度でニライの用事が終り、テ─ブルにはティータイムの準備が出来た。
「で、用件はなんだ?」
「‥‥というわけで、結婚してみようと思うんだけども、どうよ?」
「ふむ。それは構わないが、相手はブランシュなのか?」
そう問い掛けられ、静かに肯くほーちゃん。
「彼女しかいないが?」
「まあ確認の為だ。が、いますぐ結婚というのは無茶だな。仮にも彼女は保護観察対象であったのには間違いがないが‥‥まあいいか。で、彼女にはその話をしたのか?」
「いや、口説くのはこれからだが‥‥んーーー。なんとかなるしょ?」
といつもの軽さで告げるほーちゃん。
「まあ、そういうことなら。で、結婚後も冒険者を続けるのか?」
「なんで?」
「冒険者というのは意外と安定しない職業だからな。それに命のやり取りもある」
「ああ、その件なら大丈夫。今の俺の職業、マスカレードのホール担当だし」
ていうか、お前いつのまに?
「ふむ。ならいいか。引越しが完全に終わったら連絡をよこせ」
と告げられて、ほーちゃんはニライに軽く挨拶をかわした後、その場を離れていった。
──一方その頃
「また意識が消えましたか」
ケイ・ロードライト(ea2499)がアンリエットの元にお見舞にやって来ていた。
「ああ。ここ数日は意識が戻ったり消えたりの連続だな。彼女を束縛していた悪魔の呪縛からは解放されたので、契約者であるシルバーホークの魂も昇華したと思ったのだが‥‥」
と告げて、秋夜が哀しそうな表情をする。
「何か、シルバーホークに関わる異変がこの近くで起こっていて、アンリエット嬢に影響が出ているとか、無いでしょうな?」
と告げるケイ。
「昏睡状態に時折落ちることが最近あった。何か大きな戦いでもあったのか」
と秋夜も、ケイの横にいる鳳美夕(ec0583)に問い掛ける。
「いいえ。破滅の魔法陣が起動しそうなのですよ。この前、うさぎのしろちゃんくろちゃんがそんな話をしていたのです」
そう告げると、美夕はもう一度アンリの寝顔をじっと見る。
「そんなバカな。あの魔法陣は、契約した悪魔達以外は扱えない代物だからな」
「ですよね。けれど、うさちゃんずはそう告げていましたですよ?」
「ふむふむ。まあその情報だけども確かなのですか?」
「ああ。起動におけるコア、その周囲の魔法陣、アリオーシュやベルフェゴール亡き今、あれは起動しない筈だが」
その秋夜の言葉に、とりあえず納得してみせるケイであった。
●アイの逃避行
──パリ・冒険者酒場
「どどどどどうですか? ギュンター君の居場所は判りましたか?」
そうカウンターにいるミストルディンに問い掛けるのは薊鬼十郎(ea4004)。
いとしのギュンター君がどこか遠くへと旅立つという噂を聞きつけ、なんとか先まわりしようと情報を集めていたらしい。
「風のたよりに、何処かの冒険者と旅をしているという話は聞いた事があるわね。まあ、危険な奴等ではないという報告書があるから、大丈夫なんじゃないかしら。‥‥まあ、このパリの近くにはいないようなきがするわね。それ以上の調査報告は今のところないわ」
そう告げるミストルディン。
ちなみに鬼十郎、ここにくる前にアーメット卿の元を訪れていた。
が、より確かな情報がない為、ミストルディンの元を訪ねてきたらしい。
「判りました。それでは失礼します」
と告げて、鬼十郎は酒場をあとにした。
●平和やねー
──パリ・ニライ宅
久しぶりにニライの家を訪れるのはセイル・ファースト(eb8642)。
先日シャルトル地方査察官に任命されたセイルは、そのお礼と挨拶を兼ねてニライの元を訪れていた。
「この前は世話になったな」
「いや、私はただ執務をなしただけだが」
とつげるニライ。
「まあ、そう言うと思った。で、今日ここにきたのは他でもない。セフィロト騎士団の様子や、ほかにもなんか変わったことはないか?」
そう問い掛けるセイル。
「セフィロト騎士団か。それについては最新情報がある」
とピラッと羊皮紙をセイルに向けて飛ばすニライ。
それを手に取ると、セイルは静かに読み込む。
──ツツ‥‥
その額から汗が流れ出す。
「洒落になっていないな。どうする?」
「どうするもなにも。お前の仕事だが?」
と告げられて、セイルは取り敢えず作戦を考えると告げてその場を立ち去った。
さて、セイルの見た情報は。
のこり僅かの数日、もしくは年が開けてから、セフィロト騎士団が大規模作戦を行うであろうという情報。
騎士団長であったコナタ・ラッキースターは消息不明で、いまは別のメンバーが騎士団長代行をおこなっているらしい。
で、問題はその活動内容。
旧シャルトル地方で犯罪者や野盗などを束ね、急速に勢力を伸ばしている。
それらが近日中に、プロスト領城下街に対して侵攻、現領主であるマスカレードとその家族にたいして宣戦布告を発令、一族郎党皆殺しにするというものである。
その情報の信憑性については、書面に記されていたサインと『宿り木』の紋章。
「ミストルディンの情報か。こりゃあなんとか対処方法を考える必要があるか‥‥」
と告げつつ、セイルは一旦王城へと向かっていった。
──その頃
「そうですか。オルフェさんのご紹介ですか。では、本日はどのようなご用件でしょうか?」
そこはサン・ドニ修道院の『懺悔の部屋』。
その中で、エルディン・アトワイト(ec0290)はシスター・ディアマンテと話をしていた。
「実は。セフィロト騎士団についての情報を知りたい。シスターの情報網で分からないだろうか」
と問い掛ける。
「噂は幾つか。シャルトル北方の未探査地域での活動、古き『カリバーンの末裔』を味方に招きいれたこと、カリバーンの武具の回収、そして今、これから始まる新たなる戦いに必要な武具を得る為に、クリエムさんの元を訪れるでしょうということも。ですが、それらはまだほんの少し先。今現在のセフィロト騎士団の消息は不明。シャルトル地方にいるでしょうということは判っていますけれど‥‥」
それだけあれば結構。
ということで、エルディンは丁寧にシスターに謝罪し、一旦セイル達と合流することにした。
──ということで冒険者酒場マスカレード
「問題はセフィロト騎士団の隠れ家だよなぁ‥‥」
「はいいらっしゃいませ。こちらご注文頂いた季節のスープと特製パン、雉のグリルでございます」
丁寧にそう告げてから、ほーちゃんが客であるセイル達の元にオーダーを持ってくる。
「ちょっと待て。なんでほーちゃんがここにいるんだ?」
「厨房にはブランシュもいるが。あ、そうそう、セイル、俺達結婚したから。デハシツレイシマス。ナニカゴチュウモンガアリマシタラオヨビクダサイ」
後半はもう事務的な口調になっているホーチャン。
ちなみにあの直後に剣士の居留地に向かったほーちゃん。
そしてその場で熱烈プロポーズ。
ツンデレ属性のブランシュはそれにしぶしぶ承諾、今現在、ふたりはこの冒険者酒場マスカレードに住み込みで働いているらしい。
ちなみにブランシュは厨房担当、ほーちゃんはホール担当。
「現時点で、全く情報が入って来ないというのも何か引っ掛かりますね。フィーム様にも話を聞いてみたのですけれど、阿修羅僧やそっちの人のもとにも情報が入っていないのですよj
そう告げる美夕。
「いずれにしても、1度シャルトル方面の大規模調査を行う必要があるだろう。かなりの人数が必要になるが‥‥」
ケイがそう告げると、エルディンもそれに賛同。
「今は少しでも大勢の手を借りたい。旧知の冒険者の手を借りられないだろうか‥‥」
そうエルディンが告げると、一行は再び腕を組んで思考開始。
「ミストルディンさん、ギュンター君の情報何か判りました?」
「あら。ギュンター君なら、ついさっき月道管理局に向かったわよ。鬼十郎ならすぐくるよっていったら、また戻ってくるって‥‥って、もう」
話の途中で走り出した鬼十郎。
「と、シャルトル地方ならオーガキャンプにも増援を頼めるが‥‥どうするよ?」
「それと剣士の居住地にもですね。マスター・オズにお願いすれば」
と一つ一つ色々な部分を生めていっている一行。
いずれにしても、セフィロト騎士団が事を起こすのはもはや時間の問題のようでして。
──そして
「うあ、きじゅろ」
にこやかに告げるギュンター君。
その後ろには、見た事のない冒険者達が立っている。
「ハアハアハアハア‥‥ぎ、ギュンター君。旅にでるって本当なの?」
そう問いかけると、ギュンター君はにこやかに一言。
「ぎゅんた、このひとたちとたびにでる。ぎゅんた、にんげんになってかえってくる」
そのギュンター君の気持ちは、鬼十郎の心に深く深く刻みこまれていく。
だが。
「本当に‥‥本当にそれでいいの?」
そう問い掛ける鬼十郎。
オーガとして生まれたギュンター君には、この世界はやはり風当たりがキツい。
それでも、ギュンター君は頑張って生きて来た。
シャルトルでは、もはやギュンター君を一般のオーガの仲間という認識するひとはあまりいない。
ギュンター君を一つの個人として認めつつあるのである。
だが、それを許さない存在も確かにあった。
「ギュンター君が人間になるための理由ですけれど」
そう後ろの冒険者が告げる。
「あ、は、はじめまして。ギュンター君がお世話になっています」
「いえいえ、で、話は戻しますけれど、現在、ギュンター君を捕獲抹殺しろという勅名がでています」
その言葉に、鬼十郎は目の前が真っ暗になった。
「それは一体どこの誰ですか?」
「シャルトル南方、エヴァンシル教会司祭長からの勅名です。これにより、教皇庁寄りのシャルトル南方教会はギュンター君を『完全なる異端児』として認定、子飼いの正統騎士団及び同盟騎士団であるセフィロト騎士団が行動を開始しました‥‥」
「そんなことなら!! この私が護ってあげるから」
「でも、勅名の内容はですね。ギュンター君抹殺だけではないのですよ。彼に関っていた者たちが、もし、今なおもギュンター君の味方をするのなら、その一族郎党すべて異端とし、異端審問に掛けよ‥‥というのもでています。つまり、ギュンター君の味方はすべて異端として扱われます。その家族も、知人も全て‥‥そしてこれは絶対命令です。その為の組織が、隣国よりシャルトル南方に向かっています」
みんなに迷惑を掛けたくない。
でも、みんなとは離れたくない。
オーガだった自分。
そして、噂に来た『人化の腕輪』。
それがあれば、ギュンター君は人間になれる。
大切な人を護る為。
そして
愛する鬼十郎を護る為。
ギュンター君は決断したのであろう。
その思いは鬼十郎の胸にも届いた。
もう何も言えない。
ギュンター君の決意は硬い。
だったら、鬼十郎は何をしてあげられるのか。
「一緒に‥‥私も一緒にね。いつまでも一緒だから‥‥」
そう告げると、鬼十郎は後ろの冒険者達に一言。
「お願いします。どんなことも手伝いますから、私も一緒に連れていってください」
と告げる。
「あ、ああ。それはそれで構わないのだけれど。出発予定が若干のびたので、しばらくはパリに逗留することになったんだ」
と冒険者の一人が告げる。
「といいますと?」
「教会から手がまわったらしく、月道はもとより船舶の使用もすべて禁止されている。貿易船の全てにギュンター君の御触書が届いてしまったから、これから移動する方法を考え直さないとならないんだ」
と告げられる。
「で、しばらくはパリのマスカレードに泊まるから情況が変わったら必ず連絡するからね」
と告げられると、鬼十郎もようやく落ち着いたらしい。
そのままギュンター君をギュッと抱しめる。
「よかった‥‥」
「うあ、きじゅろ‥‥だいすき」
その言葉と同時に、ギュンター君もしっかりと鬼十郎を抱きしめかえしていた。
──Fin