【ふりーあたっく】見つけにくいものですか
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■ショートシナリオ担当：久条巧 対応レベル：11〜ｌｖ 難易度：難しい 成功報酬：5 参加人数：4人 サポート参加人数：-人 冒険期間：12月17日〜12月24日 リプレイ公開日：2009年12月27日 |
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●オープニング
──事件の冒頭静かな草原。
そこでオーガのギュンター君が遠くを見つめていた。
「ギュンター殿。そろそろ決心はつきましたかな？」
そう問い掛けているのはフードをかぶった一人の剣士。
「うあ、だいじょぶ。しばらくのるまんともおわかれ」
そう告げると、ギュンター君は静かに街道へと歩いていく。
そこでは１台の馬車が待機し、剣士とギュンター君を待っていた。
「本当にいいの？ ここには貴方の大切な人が待っているんでしょう？」
そう告げるのは、御者台に座っている女性。
「だいじょぶ、おてがみかいてきた。ぎゅんた、にんげんになるためにたびにでる」
強気にそう告げるが、瞳からは大粒の涙が溢れていた。
「ふふっ。そんな強気なこといってもダメですよ。どうしてその人と一緒に旅をしないの？」
「だって‥‥ぎゅんた、あまえる。あのひとまもるためにもっとつよくなる。あのひとしあわせにするためににんげんになる。ぎゅんたはおーが、あのひとにんげん。かみさま、そのしあわせゆるしてくれないからー」
そう告げると、ギュンター君は走り出す。
「わかったわかった。とりあえずドレスタットに向かおう。そこで船が待っているから、急いで準備とないとな‥‥」
と告げるとマントの剣士は馬車の飛び乗る。
「で、アイスマン、船は何処のをチャーターしたの？」
「えっと、ここに書類が‥‥あああったあった。グレイス商会の交易船『グレイス・ガリィ』号に乗る事になっている。そこからずっと商船航路で東に向かうさ‥‥」
と告げると、馬車がゆっくりと走り出した。
「さようならのるまん。さようならとーるぎす‥‥さようなら‥‥たいせつな‥‥」
●今回の参加者
ea1628 三笠 明信（28歳・♂・パラディン・ジャイアント・ジャパン）ea5640 リュリス・アルフェイン（29歳・♂・ファイター・人間・フランク王国）
ea8341 壬護 蒼樹（32歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン）
ec0501 フォルテュネ・オレアリス（30歳・♀・僧侶・エルフ・イスパニア王国）
●リプレイ本文
●江戸の町もパリの街も探したけれど見つからないのに──パリ・冒険者酒場マスカレード
「さて。それじゃあしばらくは戻って来ないかも知れませんので」
静かにそう告げつつ、荷物を手に店の外へと向かうのは三笠明信（ea1628）。
「あら、そうなの？ またどこか遠くにでも？」
カウンターの中で店主であるミストルディンがそう三笠に訪ねる。
「ええ。風の便りにギュンター君が遠くに旅にでると聞きましたので、その見送りに」
「うあ、みすとるただいま！！」
「ドレスタットに向かおうと思ったのですよ。多分船旅になると思いますから、色々とアドバイスも‥‥って」
とそこで会話を止めると、今買い物から戻ってきたギュンター君の方を見る。
「ち、ちょっと待って下さい。ギュンター君、貴方は人間になるために旅にでたのでは無いのですか？」
そう問い掛ける三笠。
「うあ？ ふねでない。だからしばらくようすみしている」
とにこやかに告げるギュンター君。
「成る程。それでしたらまあ‥‥」
と何となく頭を捻りつつ、三笠も席に戻っていく。
「そうなのですか。では、実際に出発するのはいつ頃なのですか？」
「あう、らいねんになるっていってた」
とフォルテュネ・オレアリス（ec0501）に告げるギュンター君。
「それで、目的地の場所とか詳しい詳細は判りますか？」
と羊皮紙を取出して詳細メモを始めるフォルテュネ。
「えっと、あいすまん、ちずとかもってる」
「アイスマン？」
と問い返したとき、二階から一人の冒険者が降りてくる。
「あー？ ギュンター君、呼んだか？」
「うあ。あいすまん、ふぉるてね、ちずのばしょしりたいって」
そう告げると、フォルテュネはアイスマンと呼ばれている人に軽く会釈する。
「はじめまして。魔導師のフォルテュネと申します」
「ああ、はじめましてだ。阿修羅僧のアイスマンという」
──ブッ！！
その背後で三笠が飲みかけのハーブティーを吹き出す。
「あ、阿修羅僧？」
「ええ。と、これははじめまして」
とすかさず立ち上がり三笠の足元に立ち膝となるアイスマン。
「影衣十兵衛配下の阿修羅僧、アイスマンと申します。勅名により諸国漫遊を行っています」
と丁寧に挨拶。
「はぁ。これは‥‥八部衆直轄ですか。頭を上げてください。私も実際は諸国漫遊組ですから」
と告げる。
「ええっと。阿修羅僧さんは三笠さんの知合いなのですか？」
とフォルテュネが問い掛けると、三笠は静かに肯く。
「パラディンになる為に、色々と‥‥で、阿修羅僧が動いているということは、何かギュンター君の行動に思う所があったのですか？」
三笠自身、ギュンター君の旅にたいして色々と助言をしようと思っていた。が、阿修羅僧が同行しているということは、ギュンター君の存在が認められていると判断できたのであろう。
「いや、人化の腕輪の件で‥‥あれって、モヘンジョ・ダロの発掘物なんですよ」
と告げるアイスマンに、三笠が頭を捻る。
「ということは？」
「ええ。紛れもなく『混沌神の申し子』の遺物ですね。それが何者かによって諸外国に持ち去られてしまっています。それらの中でも危険なものについては回収命令がでています。私の仕事はそっちですね」
と告げる。
「あの‥‥随分と重い会話ですけれど‥‥」
と心配そうにつげるフォルテュネ。
「ええ。インドゥーラの機密部分も多少。ですけれど、まあ、このあたりは問題なしという事で」
「そうでしたか。あの、もし遺跡などに向かわれるのでしたら、微力ながらお手伝いもできますので、その時は是非お声を駆けてください」
とつげるフォルテュネ。
「そうですね。私達阿修羅僧やパラディンには、精霊魔法という技がありませんから、その時はよろしくお願いします」
そう告げるフォルテュネに、アイスマンもニコリと微笑んで肯く。
「あ、一つ教えて貰っていいですか？ 今回の件ですが、フィーム殿は御存知で？」
と問い掛ける三笠に、アイスマンは静かに肯く。
「この地を訪れた時に挨拶は行っています」
「そうですか････」
と告げて、三笠はギュンター君の方を見る。
「いいですかギュンター君。今から言うことを心の片隅に置いといて欲しいのです」
と真剣な表情で告げる三笠。
「あい、わかった」
「ジャイアントや河童でさえ人間として生きている世の中、人間で有ろうという心を忘れずにいれば、いつかは人間になるという意味を知る事が出来るだろう････いいですね？」
と告げる。
まだきょとんとしているギュンター君だが、なんとなく言いたい事は判ってくれているだろう。
●生きているのが大切なこと
──シャルトル・剣士の居留地
「久しぶりぢゃのう」
と静かに挨拶しているのはマスター・オズ。
「ご無沙汰しています････」
と丁寧に挨拶しているのは壬護蒼樹（ea8341）。
今までの自分の生きざまを考えたうえで、蒼樹はこの地で今一度修行を行なおうと考えていた。
黙示録の塔や数々の悪魔との戦い。
それらの中で、蒼樹は仲間たちの力強さを知った。
チームワークと連携。
その流れを、蒼樹はいつも見ていた。
その流れの中に、自分の力は入っていたのだろうか？
そう考えた事もある。
だが、考えるよりも行動。
そうして今まで頑張ってきた。
だが、この前の悪魔との戦い。
蒼樹は心臓をぶち抜かれ、１度死亡している。
セーラの加護により今一度現世に舞い戻ってくる事が出来たものの、次に死んだとき、戻ってこれる保障はない。
むしろ、もう戻ってこれないのではという思いが蒼樹の中に芽生えてきた。
ならば、自分は強くならなくてはならない。
それは何の為に？
「僕はデビルと戦ってきました、しかし、思い知らされるのは自分の弱さ。力も心も足りません、どうか、ご教授願います」
そう頭を下げる蒼樹。
と、その心を見ていたのか、マスター・オズが優しい瞳で一言。
「まずは心の鍛練から始めるとしよう････剛剣術はそのあとぢゃよ。時間は掛かるかも知れないが、人を護る、仲間を護る為の技を貴殿に伝授するとしよう････」
そう告げられて、蒼樹は修行に入った。
精神修養から始まり、先ずは基礎鍛練。
それを日夜、同じことの繰り返し。
一つの型が終ると次の型。
そしてその次は二つ合わせた型と、じっくりと時間をかけて修行は行なわれていった。
そして時間が過ぎ去ったが、まだ蒼樹は剛剣術の体得まではなっていない。
それでも、護る為の技は少しずつ身についていったのだろうと感じていた。
●走れ････翔ぶが如く
──アビス・第７回廊第４８階層
そこは今までに見たことのない空間。
真っ暗な回廊、上も下もなにもない。
足元もない。
光も見えない。
久しぶりにアビスに挑戦したリュリス・アルフェイン（ea5640）。
そこに求めているものが『ある』のか『ない』のか、それを見極めたくて、リュリスはここにやってきた。
悪魔達の反乱、そして地獄の門の解放と、様々な事件が繰り返し起きていた。
そしてベルフェゴールやアリオーシュなど、リュリスの知る限りの上位種悪魔はその存在が滅んでいった。
にも関らず、アビスは相変わらず存在する。
ここが悪魔達にとって恰好の『糧』であり『休息地』であることが、このアビスを今だこの地に留めている理由なのであろう。
各種回廊のギミックは大きく変わり、また壱から解読しなければならない所も多々ある。
が、リュリスは先行してこのアビスに踏込んでいたパーティーと手を組み、あちこちの階層を突破してきた。
そしてこの階層に足を踏込んだとき。
まず、仲間の一人であるクレリックが、自分の『体内』に食い破られた。
一体何が起こったのか、仲間たちは全く理解できなかった。
そして、ふたり目の犠牲者はトラップ担当のレンジャーだった。
彼は、自分の右腕に首をへし折られた。
苦しみつつ、あらがいつつも、最後には自分の握力で自らの首をへし折ったのである。
「おいおい････一体どういうことだ？」
そう告げていたリーターの騎士は、背後から自分の剣で真っ二つに切り裂かれた。
その姿を見た魔導師は、魔法の暴発によりこの世界から消滅した。
そして、リュリス。
今、まっくらな空間に、一人立っていた。
「････敵の名前は判った････悪いな。俺にはそれは通用しない････」
と呟きつつ。ニィッと笑うリュリス。
──サァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
と、突然視界が回復した。
今、リュリスの立っている場所は、広い部屋の中央。
その奥に、巨大な台座とそこに立てかけられている巨大な剣。
そして剣を取り巻く、幾条もの漆黒の鎖。
「おいおい････マジかよ････」
と呟きつつ、リュリスは剣に近寄ろうとする。
──ブゥゥゥゥゥゥン
再び周囲が闇に包まれる。
だが、それもまたリュリスの気合で元の空間に引き戻される。
「そうまでして、俺を近づけさせないってか････お前、何者だ？」
と鎖によって固定されている剣に問い掛ける。
だが、剣が何かを語る事はない。
そのまま剣の元まで歩み寄ると、リュリスは剣にそっと触れる。
──バジッ！！
その刹那、全身に電撃が走る。
あきらかなる拒絶反応であろう。
「この鎖は、ギルドの報告書にあった、以前何処かの遺跡にあった奴だな････神々の縛鎖かよ････てめえ、神の力で締め付けられる魔剣････か。伝説の魔剣という可能性もあるか････」
と告げると、リュリスはその台座に刻まれている文字を見る。
古き古の文字。
そこに何が刻まれているのかはまったく判らない。
だが、リュリスはその文字が、その剣の名前が何となく判ったような気がした。
「ジャックスエナー････王者の息子か。魔王殺しのキングスエナーの息子という話とか、覇王剣ダイナストのもう一つの姿とか、色々な伝説があるものの、その存在は歴史上では語られていない不遇の剣。それもそうか････」
と呟くと、その柄をガシッと握る。
「神々の力で、表にでないように悪魔の迷宮に封じられている。いわば、神と魔の二つの力で封じられていると････」
そう告げたとき、リュリスはふと違和感を感じた。
柄を握っている右腕から、何かが身体の中に入ってこようとしている。
──バッ
咄嗟に其の手を放し、一歩下がる。
「ふう。危ない････まあ、ここにそれがある事は理解した。そしてこれが現実ということもな････」
そう告げると、荷物を持ち、今来た回廊に戻りはじめる。
「心配するな。アンタを諦めた訳じゃない。アンタみたいなものに詳しいくそぢぢいを連れてくるさ････」
とミハイルを思い出しつつ、リュリスは１度アビスの外へと戻りはじめた。
いくつもの思い。
それが実を結び、そして再び大地へと帰る。
そしてまた何時か、人々の思いによって花開く。
貴方の思いは届きましたか？
そしてそれは花開きましたか？
──Ｆｉｎ
