●リプレイ本文
●事件は風の如く
──シャルトル・オーガキャンプ
「はじめまして。シャルトル地方査察官のセイル・ファーストだ。よろしく頼む」
「いえいえこちらこそ。今年からオーガキャンプの責任者を務めさせて頂いていますマクシミリアンと申します。前任者からの引き継ぎは全て終っていますので」
と丁寧に挨拶をしているのは御存知セイル・ファースト(eb8642)とこのオーガキャンプ責任者のマクシミリアン。
「で、早速何が起こったのか教えて頂きたいのですが」
と丁寧に告げるセイルに、近くで話を聞いていた薊鬼十郎(ea4004)とギュンター君が説明を始めた。
「あさおきたら、ひとがしんでた」
「と言うことです」
端的に説明するギュンター君と鬼十郎。
「ああ、なるほど。まったく情報にならないか。で、そのあとはどうなったのですか?」
とマクシミリアンに問い掛けるセイル。
「遺体は丁寧に教会で弔いました。その後日、お亡くなりになっていた人の仲間と言う方がいらっしゃって、遺品である剣を一振り回収されました。で、まだ仲間と逸れているらしく、パリに向かいましたが‥‥」
と説明捕捉をするマクシミリアン。
「ふむ。となると、死んだ人の移動ルートなども気になるか。ギュンター君、済まないが調査が終るまで数日泊めて頂けないか?」
そう告げるヘルヴォール・ルディア(ea0828)。
「うあ、べつにかまわない。きじゅろ、いいよね?」
そう問い掛けた鬼十郎の表情が一瞬だけこわばった。
「え、ええ。別に構いませんよ。調査ということですから‥‥仕方ありませんよね?」
と告げる鬼十郎。
「で、話は戻るが。その冒険者達はどこの国からやってきたんだ?」
「確か‥‥ザクセンと言っていましたね」
「出来ればその4名の詳しい特徴を教えて欲しい」
「ええ。では絵描きに似顔絵を書いてもらいましょう‥‥」
と告げると、セイルと同行しているレイア・アローネ(eb8106)の二人は人相書きを頼りにパリへと戻っていった。
──その頃
「む? 来客かな?」
剣士の居留地にて特訓をしていた壬護蒼樹(ea8341)は、谷の入り口から姿を現わした一人の冒険者に気が付いた。
「すいません。私は旅の冒険家でルドルフ・イェーガーと申します。この谷の方ですか?」
と告げる冒険家。
「ああ、ちょっと待っていてください。今マスターを呼んできます」
と告げて蒼樹は奥で静かに瞑想をしているマスター・オズを呼んでくることにした。
──そして
「私がここの責任者ですが、一体どんな用事でしょうかのう」
「実は恥ずかしながら。私は隣国フランクからやってきたものですが、つい先日、私共の所有していた剣がニ振り盗難にあいまして。それを盗み出した者たちを探している最中なのです。で、もし見掛けたのでしたらどっちに向かったのか教えて頂きたいのです」
と告げるルドルフ。
「ふむ。そういうことか。貴殿たちの探している剣じゃが、それは名匠カイザン作の剣では?」
と告げるマスター・オズに、ルドルフは驚きの表情を見せた。
「ええいかにも、ご老人、一体どこで見掛けたのですか?」
「ふぉっふぉっ。パリまで所用を納めに向かったときに、とある酒場で見掛けたのぢゃよ」
「それは何処ですか?」
と居所を訪ねるルドルフ。
「冒険者酒場マスカレードぢゃよ」
「冒険者酒場ですか‥‥さて、どうしたものか‥‥」
と頭を捻るルドルフ。
「それじゃあ、僕が連れていってあけましょう」
と言うことで、蒼樹はルドルフと共にパリへと向かっていった。
──ちょっと前のパリ・マスカレード
「ねぇミストルディンさん。ここ最近になって遺体で発見された冒険者さんって、素性判りませんか?」
と問い掛けているのは鬼十郎。
「いやぁ。ここ数日、ちょっと別件で仕事をしていたものでして。まあ詳しくはないけれど、話は聞いているわよ」
と告げると、ミストルディンは奥からスクロールを取出し、それを広げる。
「ふぅん。ここの街では『蒼き狼亭』を根城にしているらしいですね。それと、その人たちですが、月道を用いた『ご禁制品』の取扱もあるとかで‥‥」
「ありがとうよ。それじゃあな‥‥」
と後ろでこっそりと聞いていたセイルとレイアはそのまま『蒼き狼亭』へと向かっていった。
「おや? お客さんを連れてきたんだか。ルドルフさん、どうですか?」
と一緒に来店したルドルフに問い掛ける蒼樹。
「まあ、この中にはいらっしゃいませんが‥‥」
と告げると、そのまま近くの席に座るルドルフ。
「ああ、みんなに紹介しておく‥‥」
と蒼樹がその場の皆にルドルフを紹介する。
「あらら。どうやら貴方のお探しの方ですけれど、『蒼き狼亭』にいらっしゃると思いますけれど‥‥」
と告げるミストルディン。
そして一行は、急ぎ『蒼き狼亭』と向かう。
これから起こる悲劇に気付かないまま。
──場所は変わって『蒼き狼亭』
「上等だこの野郎っ」
はでにわめき散らしている人物が、今回のターゲットの一人である。
そのままケンカに突入したレイアとセイルに向かって襲いかかるが、レイアはそれを早く躱わし、セイルはそのまま鎧で受止めようとした。
「その程度の攻撃っ!!」
すかさず小手の部分を楯のようにしようとした刹那、レイアがセイルを捕まえてその場に引きずり倒した。
「なっ!! 何しやがる?」
「アレは魔剣だ。受止めると腕が飛ぶだけです」
そう告げるレイラの顔を見てから、セイルもまたゆっくりと立上がる。
「それなら相手のしがいがあるってものよっ」
そのまま査察官としての仲裁を行う事になったと思うか?
「うあ、けんかよくない!!」
突然乱入したギュンター君。
そのままセイルに向かって襲いかかった手練れにハンマーを持って突入。
「なんだこのオーガ。ここは人間の酒場だとっとと出て行きやがれっ!!」
──ズバァァァッ
その男の一撃をどうにか躱わすが、着ていたレザーアーマーが切り裂かれてしまった。
「ギュンター君っ‥‥貴方、いま、手を出しては行けない人に手を出しましたね‥‥」
と、フラッと酒場に突入した鬼十郎が、ギュンター君を斬った男にそう告げる。
「なんだてめぇ、ここはひっこんでいやがれっ!!」
と別の男が鬼十郎の肩をグイッと掴む。
──ヒュンッ!!
その刹那、肩を掴んだ男の首筋に小太刀がピタッと当てられる。
「‥‥命‥‥いらないんですね?」
その鬼十郎の瞳は懐かしいほどに殺意をたぎらせている。
「い、いや‥‥その‥‥」
「そんな女になにをてこずっていやがる!!」
別の男が鬼十郎に向かって走り出す。
──ヒュンッ!!
と、その瞬間、レイアが通り過ぎようとした男に向かって一撃を叩き込む。
それは男のズボンを真っ二つにし、足元にストーーンと落とした。
「とっとととととっ!!」
──ドンガラガッシャァァァァァァァァァァァァン
そのままバランスを失って倒れる男。
「ほう。まったくおもしろい。こんな所で俺達を苔にするとはな‥‥貴様達全員、この魔剣のサビにしてやる」
と4人組のリーダーらしき男が再び魔剣を構える。
「さて。ここまでいくと正当防衛が成り立つか‥‥不知火っ!!」
──ヒュンッ!!
と、セイルがその手にソウルウェポンを発動させる。
「おっ‥‥貴様も魔剣使いか‥‥なら一対一でどうだ?」
「ごちゃごちゃ言わないで掛かってこい雑魚が!!」
そのセイルの言葉に、男は素早く一撃を叩き込んでくる。
──ギィィィィィィン
それに対して、セイルは交差法で魔剣に向かって一撃を叩き込んだ。
その一撃で、男の魔剣は『粉砕』され、粉々になって床に落ちていく。
「‥‥で、どこの誰が作った魔剣だ? そんなクズでは、俺の友の作りし名剣に傷一つつかないが?」
と告げる。
「おっ‥‥おおおっ‥‥この野郎っ!!」
と、拳を握って殴りかかってくる男に向かって、こんどはギュンター君が飛込んでくる。
「せいる、あぶない!!」
──ドゴォッ!!
その男の一撃は、きれいにギュンター君の頭に直撃。
だが。
「うあ、いたい」
「イタタタタタッ。このオーガ、どんな頭していやがる?」
拳が砕けそうなほどの激痛。
「え? ぎゅんた、おーらであたまつよくした」
おいおい。
「こうなったらヤケだっ」
男の一人が懐からスクロールを取出して開いた。
──バァァァァァァン
と、突然店の扉が開くと、自警団とブラックウィング騎士団が店内に突入してくる。
「治安維持により、店で暴れている全員を捉える!!」
先陣を切って突入してきたニライ・カナイ市政官。
「助かった、こいつらが突然襲いかかってきて!!」
と4人組がセイル達を指差したが。
「ふむ。なんだセイルか。暴れていたのは?」
「あの4人だ。実剣で切りかかってきたので成敗した。あとは任せた」
「ということです。では」
「ギュンター君も襲われたのですよ。お気に入りのレザーアーマーが台無しです」
「うあ、にらい、ひさしぶり」
と告げつつ店から出て行く一行。
「ということだ。全員しょっぴけ!!」
ザクセンから来た4人に合掌。
──さらにその頃
深い森の奥。
ヘルヴォールは聞き込み情報を元に、一行が争っていた時間を思い出す。
「‥‥ここが戦場だった場所だと?」
その場所は未探査地域の奥であった。
そこには100名以上の騎士団が激しく戦ったような跡が残っていた。
だが、足跡を予告する限りでは、実際にその場にいた人数は7人。
大規模戦闘の後にも感じられたこの場所で、いったいどんな戦いがあったのであろう。
「ほう。こんな辺鄙な場所に一体どんな用事ですか?」
そう告げつつ、ひとりの老人が姿を表わす。
「ここで何か在ったのですか? 見た所ここ数日にこの場所でいさござがあった用ですが」
「おっしゃる通りで。隣国から逃げてきた冒険者と、その逃げた相手を追いかけてきていた冒険者の戦いが在ったのですよ‥‥結局決着はつかず、逃亡者が追っ手を撒いて森の奥へと逃げていったのです‥‥」
と告げられる。
その話を聞いた後、ヘルヴォールは1度パリへと戻ることにした。
●そして
調査を続けていた結果、『蒼き狼亭』にいた人物が隣国フランクの貴族より家宝である二振りの剣を持って逃亡、道中で仲間割れが起こってしまい、剣を持っていた二人が逃亡したらしい。
その後一人を追い詰め殺害、残った一人を探しにやってきていたというところであった。
セイルとレイア、鬼十郎、そしてギュンター君の4人によって、酒場にいた4名は全て取り押さえる事に成功。
のち、マスカレードにいたフランクの冒険者の手に委ねられ、一行はそのまま見送ることになった。
だが、残った一人と、片割れの剣については依然消息が不明。
どこにいるのであろうか‥‥。
──Fin