【ふらり冒険】なんとかしよう

■イベントシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:5

参加人数:13人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月19日〜01月19日

リプレイ公開日:2010年01月26日

●オープニング

──事件の冒頭
 あのねあのね。
 ぼくたちもそろそろおわかれなのー。
 オワカレなのー。

 こんどねこんどね
 おやまににかえるのー
 カエルのー。

 そのまえにね、ぼくたちね、とどけものをしにきたのー。

 と冒険者酒場マスカレードの入り口で騒いでいるのは、御存知喋る兎の『しろちゃん』『くろちゃん』。
「で、何をしに来たのかな?」
 ミストルディンが突っ込むと、しろちゃんが1度軒下に潜り、一枚の古い地図をひっぱりだしてきた。
「これが届け物かい?」
 と告げつつ、ミストルディンが地図を見る。
 だが、一体何が書いてあるのか、全く見当もつかない。
「これじゃあどうしていいか判らないよ? この地図はなに?」
 と問い掛けるミストルディン。
「あのねあのね、これは伝説のクスリなのー」
「くすりなのー」
「どんな願いも叶えてくれる魔法の‥‥」
「魔法の‥‥」
 と告げた刹那、しろちゃんとくろちゃんがぐったりしてその場に倒れた。
「ち、ちょっと待ってて‥‥いまシスターを呼んでくるから‥‥」
 と慌てて二匹を酒場にいれると、ミストルディンはシスターを呼んできた。

──そして
「呪い?」
「ええ。この兎達ですけれど、恐らくは元々は人間でしょうね。何等の呪いでこの姿にされてしまい、その刻のショックで記憶も失っているのでしょう‥‥」
 そう告げられても、ミストルディンにはどうする事も出来なかった。
「いずれにしても、呪いの二次効果でもあるのでしょうが、徐々に体力が奪われています。このままですと、あと数日で‥‥」
 
 おいおい。
 随分とシリアスな展開だな。

●今回の参加者

クリス・ラインハルト(ea2004)/ ロックハート・トキワ(ea2389)/ ロックフェラー・シュターゼン(ea3120)/ 薊 鬼十郎(ea4004)/ ラシュディア・バルトン(ea4107)/ リュリス・アルフェイン(ea5640)/ デニム・シュタインバーグ(eb0346)/ 十野間 空(eb2456)/ 玄間 北斗(eb2905)/ セシリア・ティレット(eb4721)/ 十野間 修(eb4840)/ セイル・ファースト(eb8642)/ 国乃木 めい(ec0669

●リプレイ本文

●あのねあのね‥‥もうなのー
──パリ・冒険者酒場マスカレード
「ふぅん。まあ、一時的に意識が無くなっているだけだね。時期、元に戻るとは思うけれど‥‥呪いの根本を断ち切るか解呪しないとねぇ‥‥」
 そう告げているのは、パリ在住の薬師ラビィ。
 クリス・ラインハルト(ea2004)に引っ張られて、意識を失って倒れてしまった兎さん達の容体を見にやってきたらしい。
「それで、どうすればいいのですか?」
 そう告げるクリスに、ラビィは一言。
「それは判らないねぇ。呪いの張本人が私には見えない。もし可能なら、阿修羅僧でも連れてくるといいよ。あの人たちは解呪にかんしてもかなりの腕を持っていると聞いているからねぇ‥‥」
 と告げられて、クリスは静かに兎さん達の容体をじっと見ていた。

──その頃
「で、この地図は一体どこのなんなのですか!!」
 そう叫んでいるのは薊鬼十郎(ea4004)。
 兎さん達の秘密を解き明かすには、兎さんが持って来た秘密の地図を解き明かすこと。
 だが、それをどう解読するかが問題であった。
「‥‥いやぁ、これは参ったのう‥‥」
 と頭をポリポリと掻きつつ呟くミハイル教授。
「こちらが原版で、こっちが写しになります‥‥もし必要でしたら、まだ写しを起こしますけれど?」
 とミハイル教授に告げているのは十野間空(eb2456)。
 彼方此方に聞き込みに行く為にも、原版からの写しは必要になる。
 そう思って空は、大量の写しを作っていた。
「いやいや、これで結構。残りは仲間たちと、そこの地図屋にでも渡してくれ」
 と告げられて、空は『怪しい地図屋』にも地図を渡す。
「で、どうでしょうか? この地図、どこにあるのか判りますか?」
 と横に座っていた玄間北斗(eb2905)に問い掛けられるが、地図屋はしばし腕を組んで考える。
「この地図、地図じゃあないねぇ‥‥」
 と告げられて、玄間は頭を捻る。
「地図ですが‥‥地図じゃないのですか?」
「そうだねぇ‥‥ミハイル教授、これ、地図じゃないよねぇ‥‥」
 と、ミハイル教授に話を振る地図屋。
「ふうむ。やはり地図では無かったか‥‥」
 と訳の判らない事を告げるミハイル教授。
「ですが、私がリヴィールマジックを施した所、マジックアイテムという反応もありませんでしたよ?」
 と十野間修(eb4840)が告げると、ミハイル教授は静かにウンウンと肯く。
「じいさん、この兎達が告げていた魔法の薬について、何か心当りはないのかよ!!」
 そう叫ぶセイル・ファースト(eb8642)。
 ちなみにセイル、兎達の容体が悪化する前にミハイル教授の元に連れていこうとしたが、ラビィにそれは止められた為、急遽ミハイル教授をここまで連れてきた張本人。
「ん? エリクシルのことぢゃな。元素の薬でもあり、命の霊薬でもある。不老不死を生み出す薬でもあるが‥‥」
「で、それをどうやって作りだすんだ?」
「それがのう‥‥高位の錬金術師とかでなくては‥‥」
「なら、薬師のラビィならなんとかなるのかよ?」
「それよりも高位でのう‥‥ちょっとややこしいはなしになるのぢゃが‥‥」
 と告げると、ミハイル教授も腕を組んで考え出した。


●意識の畔で
──冒険者酒場マスカレード2F
『うーんうーん』
 眠りながらうなされている兎さん達。
「私の唱えた解呪の法」では、この兎さん達の呪いを打ち破ることはできなせん‥‥何かこう、特殊に紋様というか呪印を組み込んだタイプのようにも感じられます」
 そう側で看病しているクリスに告げるのは国乃木めい(ec0669)。
「じ、呪印ですか‥‥」
 震える声でそう告げるクリス。
 いとしのアンリエットに施されている呪印を思い出したのである。
「はい。それもかなり複雑なものでして‥‥呪印を刻んだものか、それに近しい存在の力が必要となりますが‥‥」
 と告げられて、クリスは再び兎さん達を見る。
「大丈夫ですよ。きっと元に戻してあげますからね‥‥」
 と告げる。
 クリスのリシーブメモリーでも、兎さん達の深層までは見えない。
 あとは、どうにか薬を回収し、それに託すだけであったのだが‥‥。

──一方その頃
「クロムウェル、ちょっと頼みを聞いてくれるか?」
 セイルが一階で静かにハーブティーを飲んでいるクロムウェルに話し掛ける。
「はい‥‥何か?」
 そう告げるクロムウェルに、セイルは一言。
「あんたの持っている書物、それに兎さん達のことは何か書込まれていないか見て欲しいんだが」
 と告げる。
「これですか‥‥」
 と告げると、クロムウェルは静かにバイブルを開く。
──パラララララララララララララララララララッ
 素早くページを指で弾くと、クロムウェルはとあるページで指を止めた。
「ここですけれど‥‥ちょっと読んでみましょうか?」
「ああ頼む」
 と告げられ、クロムウェルは静かにバイブルを詠みはじめる。
「‥‥黒き翼の悪魔、失敗した人形達に呪印を施す。悪魔、銀の鷹と契約を施し、人形達を動物へと変化させる‥‥悪魔、呪印の解除詠唱を銀の鷹へと託し、新たなる人形を生み出すべく呪印を掘りこむ少女を探す‥‥となっていますが」
──ダン!!
 その文章に、セイルは吐き気を憶える。
「ふざけたことを‥‥こんな所までシルバーホークのツケが残っているのかよっ!!」
 と呟くと、セイルは今の内容を仲間たちに告げる。
「成る程ねぇ‥‥」
 と話をじっと聞いていたラシュディア・バルトン(ea4107)は納得している。
「となると、解除コードはシルバーホーク卿から直接聞き出すか、それとも探すかのどちらかたね」
 と告げるラシュディア。
「ですが、どこで探すのですか? 私はそのような会話には余り詳しくはありませんけれど、シルバーホークという人物がもうこの世界に異ないという噂は聞いた事があります」
 とセシリア・ティレット(eb4721)が告げる。
「んーー、まあちょっとまて。ミハイル教授、これ、地図だけど地図でない。だろ?」
「うむ。地図に似せている『魔法陣』ぢゃな。で、その中央に位置するのが、薬ということになる。地図ではなく、薬をつくりだすための魔法陣で、それを作り出す為に必要な場所の師弟もされている」
 と告げられると、一行は静かに肯く。
「なら、その場所に向かって魔法を起動させれば、あるいはなんとかなるのでは?」
 と空が告げると、ラシュディアは静かに頭を振る。
「ああ。必要な精霊力はこっちでどうにか補う。その場所なんだが‥‥そがどうも読めない‥‥」
 とラシュディアが告げると、リュリス・アルフェイン(ea5640)が静かに一言。
「コアのあった場所‥‥か」
 と呟く。
「ちょっと待て、それって?」
「ああ。シルバーホークの最後の魔力、意志が残っていた場所なんだろう? 旧破滅の魔法陣中央・シルバーホーク邱地下だろうが」
 と告げ、リュリスは立ち去った。
「決まりだ。地図の場所は旧シルバーホーク邱地下、そこでの儀式に基づき、隠された薬を開封する‥‥でいいな?」
 そのラシュディアの言葉に、一行は静かに肯いた。


●意識の底、はてしなき場所
──旧シルバーホーク邱地下
 今は廃墟となっている場所。
 その地下中央に、かつて破滅の魔方陣の核が安置されていた。
 いくつもの悲劇を生み出した破滅の魔法陣。
 それの大元であり起動中心点。
 そこに薬が隠されているという。
 その場所に向かった一行は、道中様々な悪魔や魔物に襲われていた。
 それすら巧く躱わしつつ、どうにか目的の場所へとたどり着く。
「お願いします。もう‥‥兎さん達の呼吸も荒くなっているのです‥‥」
 二匹を抱きかかえて、クリスがそう告げる。
「さて、この場所で因縁の深いもの‥‥魔力はどうにかできるとして、因果が必要か」
 とラシュディアが告げる。
「因果? それはどうして?」
 玄間がそうラシュディアに問い掛けるが、ラシュディアは一言。
「この封印を解除するにはシルバーホークの意志、もしくはそれに近しいものの力が必要だ。が、もうそれらは殆ど感じられない。かつてのシルバーホーク四天王が‥‥」
 と告げ、ラシュディアはふとクリスを見る。
「そうか。秋夜か‥‥四天王最後の生き残り、秋夜の‥‥いや、駄目か」
 そう告げるが、すぐにその意見は否定した。
 秋夜の血なら、因果は果たせる。
 だが、それは秋夜の命を犠牲にすることになるかも知れない。
 秋夜と声に出したものの、本当ならばアンリエットこそ因果をつむぎ出すことができるだろう。
 だが、その名前は出さず、あえて秋夜という名前を出した。
「ち、ちょっと待ってください、ここにきて手詰まりということですか?」
 その十野間修の言葉に、ラシュディアも肯く。
「一つ教えてくれ。因果が濃ければ濃いほどいいが、ここにはその因果がないということでいいんだな?」
 ロックハート・トキワ(ea2389)がそうラシュディアに問い掛ける。
「ああ‥‥だが、秋夜とアンリはパリだから、ここにはそんなものは‥‥」
 と告げたとき、ロックハートはロックフェラー・シュターゼン(ea3120)とリュリスを見た。
「ヤバイのがこっちに来ているみたいだ。止められるか?」
「ああ、少しは仕事をしないとな‥‥」
「当然。こっちをとっとと片して、俺は自分の用事をすませてくる」
 と告げて、ロックフェラーとリュリスは防衛モードに突入。
「で、どうするんだ?」
「一か八かの駆けなんだが。クリス、合図したら兎さん達を魔法陣の指定した場所に置いてくれるか?」
「判った!!」
 とにこやかに告げるクリス。
「で?」
「これは本当に賭けなんだが‥‥」
 と告げて、ロックハートがラシュディアの耳元で何かを告げる。
「おお‥‥って、ちょっと待った、それって不味くないか?」
「兎、死ぬぞ?」
「はいはい。まったく‥‥それじゃあ始めるか。みんなの力も必要になるから、ちょっと離れていてくれ‥‥」
 と告げて、ラシュディアは静かに皆を後ろに下げる。
 そして地図に記されたラインを描く為に、自身の指に傷を付け、流れる血で紋様を描く。
「ふう‥‥これでよしだな。あとは‥‥」
 と告げると、ラシュディアが威勢よく両手を合わせる。
──パァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
「偉大なるチェスターのロバートと英霊の名において。絡み付く蛇と舞い降りる銀の鷹。古き盟約に従い、黒き翼の義務を果たす‥‥」
 その時にラシュディアはクリスに魔法陣に入る事を促す。
 と、そのクリスの体が銀色に輝く。
「こ‥‥これは?」
 そう呟くクリス。
「4つの元素、6つの精霊。二つの魂、そして因果の渦より生まれし新たなる魂。それらを鍵とし、黄金の秘薬エリクシルを現世へと蘇らせたまえ‥‥」
 そのラシュディアの言葉により、魔法陣の中央に小さな薬壷が姿を表わす。
「さて、クリス、あとは任せた」
 とラシュディアはどっかりとその場に座りこむ。
「うん‥‥さあ兎さん達、この薬が有れば大丈夫だよ」 
 と、スプーンで薬壷の中の液体をすくうと、それを兎さんの口許へと運ぶ。
──ペロッ
 と弱々しくひと舐めする兎さん達。
 やがて兎さん達の姿が白く輝くと、それはどんどん大きくなり、二人の少女の姿に変化していった。
 年の頃は10歳ほどの少女達。
 そのまま少女達は、静かに眠りに付いた。


●ということで
──パリ・冒険者酒場マスカレード
「つまり、あの兎さん達はアサシンガールだった少女達で、ヘルメスによって兎さん達に姿を帰られたという事ですか?」
 そう問い掛けるクリス。
「恐らくは。そして解除の刻印はシルバーホークに委ねられた為、ヘルメスが死んでもなお呪いは解除されなかった‥‥というところだろうさ」
 そう告げるラシュディア。
「で、この子たちはこれからどうなるのですか?」
 横で眠っている子供達の髪を撫でつつセシリアが問い掛ける。
 あのあと、子供達は目を覚ました。
 だが、今までの記憶は全て失われてしまっていた。
 人間であった時間、兎であった時間の二つの時間を失い、過去も忘れ、名前も素性もなにもかも失ってしまっていた。
「セーヌ・ダンファンにいけば、この子たちの事を知って居る子がいるかも知れません」
 と告げるクリスに、鬼十郎も静かに肯く。
「あそこにはかつてアサシンガールだった子供達も大勢います。ひょっとしたらなにか手掛りが掴めるかもしれません‥‥」
 という鬼十郎の言葉に、一行は静かに納得していた。
 そして今しばらくは、子供達は体力が回復するまでマスカレードに預けられた。
 今は何があったのか理解していない子供達。
 けれど、いつかきっと、また笑顔を取り戻すことができるようになるだろう‥‥。

「で、一つ教えて欲しいのですけれど」
 と玄間がラシュディアに問い掛ける。
「なんだぁ?」
「件の魔法陣ですけれど、因果というのはどうやったのですか?」
「そうそう。その部分だけが納得できないのです。シルバーホークに近しい存在がいないと難しいのではないでしょうか?」
 と問い掛ける十野間兄弟に、ラシュディアは一言。
──ポム  
 とクリスの肩を叩きつつ一言。
「この子のお腹の中には、秋夜との子供が宿っている。今はまっとうな道を進んでいる、かつてシルバーホーク四天王のひとりだった悪鬼の血と因果が、そのまま受け継がれているんだ‥‥」
 と告げられて、クリスは顔中が真っ赤になった!!
「ええええええええええええええええええええ。そ、そんなの初耳ですよ‥‥ボクの中にあっぁっぁっ‥‥秋夜さんの子供がががががが」
 動揺して何を言っているか判らないクリス。
「まあ、そういうことだ。それじゃあ俺は後始末にでも出かけてくるか‥‥」
 と告げて、ラシュディアはその場から立ちさって行った。


●運命の一撃
──パリ郊外
 一連の兎さん騒動がおわった翌日。
 風の吹きぬける草原にリュリスとデニム・シュタインバーグ(eb0346)の二人が立っていた。
 その近くでは、見届け人としてロックフェラーと、さらに秋夜が立っている。
「では、双方恨みのなきよう‥‥」
 と告げると、リュリスとデニムが静かに構える。
「行きます!!」
──ガキガキカギィィィィィィィン
 激しく打ち合う剣と剣。
 次々と打ち出すデニムの攻撃を、リュリスは風の如く躱わし、受止めている。
「その程度の腕で、俺に一撃叩き込めると思っているのかっ!!」
──ザバァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
 すれ違いのリュリスの一撃。
 それはデニムの頬に深い一撃を叩き込んだ。
 その一撃が、双方ともに望んでいた真剣勝負であったことを伺わせていた。
「そんなこと思っていませんっそれに、自分としても一歩も引く事はありませんっ!!」
 そう告げると、デニムが素早く一撃を叩き込みに入る!!
「甘い!!」
──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
 今度はリュリスの胴部に一撃が入る。
 リュリスの大振りに対してカウンターで叩き込んだスマッシュ。
 リュリスの一撃もデニムの肩口に突き刺さったものの、そんなことはお構いなしの一撃を叩き込んでいた。
──ドサッ‥‥
 そのまま大地に崩れ落ちるデニム。
「まだまだですね‥‥追い付いたように見もえても、また直に離れていってしまう‥‥」
 そう笑うデニム。
「そんなに簡単に越えられてたまるか‥‥と、次は‥‥」
 と告げると、ロックフェラーと秋夜がゆっくりと前に出る。
「まあ、ケンカというのなら、こっちも本気で行かせて貰うがいいんだな?」
「悪いな。昔からの約束を果たせて貰って」
 と秋夜とロックフェラーも告げつつ構えを取る。
「上等だ。掛かってこいや!!」

‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥


 静かに夕陽が草原を照らす。
 全身から血を流し、ロックフェラーはその場に崩れおちている。
 致命傷はない。
 が、直に動けるほど元気でもない。
 その近くでは、リュリスが静かに荷物を背負っている。
「それじゃあな‥‥」
「ああ、元気でな。次に会うまでは、もう少し鍛えてこい」
 と旅立つリュリスに告げる秋夜。
「それにしても、お前の本気は洒落にならないな‥‥どこのどいつに稽古付けてもらっていたんだ?」
 とリュリスが秋夜に問い掛ける。
「華仙教大国の軍神・蚩尤だ。神様直伝の拳だ」
「ちっ。どんだけ反則なんだよお前は‥‥こんど会う事があったら、ぶっ殺すから覚悟しておけよ‥‥」
 と告げて、そのまま立ち去るリュリス。
「‥‥ふぅ。生きているのが奇跡だな」
 ゆっくりと身体を起こすロックフェラー。
「ああ。それでいて、リュリスはあんたの右腕は狙ってこなかった。それが大切なものであるのを判っているんだろうさ‥‥そろそろ戻るぞ」
「だな‥‥」
 と告げて、秋夜とロックフェラーもその場を後にした。



●記憶からの封印
──旧シルバーホーク邱
 そこはすでに誰もいない空間。
 そこから全てが始まった。
 シャルトルでの悲劇。
 全てはシルバーホークによる事件が始まり。
 多くの命が散っていった。
 大量の血が、この大地に染み込んでいった。
 そして今も直、この地には、シルバーホークによって散っていった魂が、あてもなく彷徨っている。
「大地の精霊よ‥‥この付近一体を、人の通わぬ森へと変えたまえ‥‥」
 大地の精霊ティアマットと交信し、その力で森林を広げるラシュディア。
「銀鷹‥‥結局の所、あんたは何を得る事ができたのか? その結末は哀れだと思う‥‥だけど、幸運剣の犠牲となった領民、魔方陣に飲み込まれた人たちの酬いは受けなければならない」
 そう告げるころには、すでにシルバーホークの住んでいた場所は森の中へと消えていった。
 そしてラシュディアもまた、静かにその場から立ちさって行く。



●後日談
──パリ・冒険者酒場マスカレード
「ああんっ。どうして姿が変わらないのっ!!」
「きじゅろ。なにいってるかわかんない」
 とまあ、ギュンター君と鬼十郎が酒場の片すみでなにやら楽しそう。
 兎さん達の使っていた秘薬、それを少し分けてもらっていたらしいが、どうにも効力がない。
 そんな二人を横目に、ラシュディアはカウンターでミストルディンと何やら怪しい会話。
「あの‥‥ミストルディンさん‥‥その、俺なんかでいいのか?」
 と問い掛ける。
「さあねぇ。どうだろうねぇ‥‥」
 ニコニコと笑いつつラシュディアにそう告げる。
「まあ、俺はどっちでもいいんだが‥‥」
「なら決定だね。これからもヨロシク頼むよ」
 と硬く握手をかわすミストルディンとラシュディア。
 どうにも微妙な関係の二人のようで。


──Fin