護れ!! 噂の珍獣達

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 3 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月31日〜09月05日

リプレイ公開日:2004年09月03日

●オープニング

──事件の冒頭
 いつものような昼下がり。
 いつものように、冒険者達で溢れている冒険者ギルド。

 そしていつものように、だれている冒険者。
「あ〜、かったりぃ〜」
 酒場で食い逃げ犯を捜していた常連も流れてきたようであるが、それはまた別の話。

 その日の夜。ギルドに夜の帳が降りはじめた時。
 またしてもノルマンの地方貴族の方がギルドにやってきた。
「これはこれは、遠路はるばるご苦労様です。して、本日はまたどのような御用件でしようか?」
 受付けのギルド員が、丁寧な口調でそう訪ねた。
「いやいや。実は、近々、我が屋敷で『珍獣の好事家』が集まってパーティーを開くことになったのだよ、うんうん」
 その言葉を聞いた瞬間、受付けは静かに口を開いた。
「あの‥‥また逃げたのですか?」
「いやいや」
「では‥‥またメイドの派遣ですか?」
「いやいや」
「まさか、珍獣を捕まえてこいとか?」
「いやいや」
 何分にも、この好事家、ギルドでは無理難題を告げるのがお得意のようで。
 ギルドでも先手を打って置かないと、不味い事態にもなりかねないと行ったところであろう。
「まあ、これを読んでみたまえ」
 そう告げて差し出した一通の手紙。それには次のようなことが書いてあった。

〜手紙
 親愛なる領主様へ。
 貴方の家で開かれるパーティにて、珍獣のお披露目があると伺った。
 そこで、私はその珍獣を頂きに向かいたく、ここに予告する。

 会場に居る参加者の、誰かの珍獣を頂きに参らせて戴く。

         怪盗グリングリン〜

「はあ。知らない名前ですねぇ」
「うむ。まったく無名。それでいて怪盗などと言う輩には、ろくな奴はおらん。ということで、パーティー期間、護衛を依頼したい」
 おっと、じつにまっとうな依頼。

──そして
 一通りの説明が終った後、ギルド員は羊皮紙に依頼を書込んだ。
「なにか真面な依頼のようで。いつもこういったものなら大歓迎なんですけれどね‥‥怪盗を捕まえる。浪漫ですねぇ‥‥」
 ギルド員はそう呟きながら、掲示板に依頼書を張付けた。

●今回の参加者

 ea0294 ヴィグ・カノス(30歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea1643 セシリア・カータ(30歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea1736 アルス・マグナ(40歳・♂・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea3260 ウォルター・ヘイワード(29歳・♂・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea3486 オラース・カノーヴァ(31歳・♂・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 ea4167 リュリュ・アルビレオ(16歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea4284 フェリシア・ティール(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●まずはご挨拶〜おやおや‥‥〜
 小さな森の中にある、湖に面した小さな古城。
 その地方領主の屋敷である古城周辺には、小さな城下町のようなたたずまいが広がっていた。

 ここ数日、城下街は不思議な賑わいをみせていた。
 領主の古城で行われる珍獣披露パーティー。
 その為に訪れる貴族達を歓迎するのに、町の中では様々な催し物が行われていた。
 しかし‥‥ここの街の人々は、本当にお祭り好きである。
 その光景を横目に見ながら、冒険者一行は領主の古城に入城。

──執務室
「遠路はるばるご苦労様です」
 威厳のある口調で、領主がそう話しはじめた。
「明日の夜行われるパーティー。それを無事に成功させたい‥‥このふざけた怪盗を、なんとしても取り押さえて貰いたい」
「判りました。あたしたちとしても、そんなふざけた名前の怪盗を好きにさせるようなことはしませんので」
 それはノリア・カサンドラ(ea1558)。
 その彼女の言葉の後、領主は執務と来賓の相手をする為、そこから出ていった。
 入れ代わりに執事長が部屋に入ってくると、領主の代わりに一行の話を伺う。
「さて。パーティー開始は明日の夜。パーティー会場は中庭で、ガーデンパーティースタイルとなっています。くれぐれも警備をよろしく御願いします」
 その説明の後、一行は次々と意見を出していく。
「その会場だが、警備の関係上、室内という事にして欲しい」 
 それはアルス・マグナ(ea1736)。
「室内ですか‥‥今から会場のセッティングも全て変更するのは不可能ですが‥‥」
 しばし考える執務長。
「判りました。今回の依頼を優先させていただきます。他に何かありますか?」
 その執務長の言葉に、セシリア・カータ(ea1643)が手を上げる。
「出来れば、今回のパーティーの参加者の名簿など写させていただけたら嬉しいのですが」
「あと、この屋敷の見取り図だね。ここで働いている使用人の詳細も教えて欲しい所だね」
 セシリアの言葉に、ノリアが捕捉を入れる。
「判りました。名簿と使用人のリストについては1時間以内に用意します」
 そして執務長は退室。
 冒険者一行は早速活動開始!!

──ヴィグ
「‥‥これといって、怪しいところは無しか‥‥」
 ヴィグ・カノス(ea0294)は、パーティ会場となる古い教会の周囲を散策していた。
 そこに怪盗グリングリンの仕掛けた罠があるかどうか、ゆっくりと時間を掛けて丹念に調べ上げる。
 だが、これといって罠を仕掛けた形跡はない。
 だが、不思議な色の鳥の羽根が一枚、窓の近くに落ちていた。
 それをひょいと拾い上げると、ヴィグはそれを調べる。
「帽子の飾りか‥‥珍しい色の羽根飾り‥‥おそらく奴か」
 そのまま周囲を調べて見るが、それ以上のものは発見できない。
「仕方ない、もう少し探査範囲を広げるか‥‥」
 ヴィグはさらに調査続行。

──アルスとセシリア
 さて、一体どれだけの穴を掘り続けたであろう。
 アルスは、会場となる古い教会の全ての窓の下に、深さ3mの落とし穴を作成中。
「あと‥‥21個‥‥ああ〜自分で提案したのはいいけれど、かったりぃぃ」
 そんなことを呟きつつも、しっかりと穴を掘りつづけるアルス。
「アルスさん、はかどってますか?」
 と、穴の上から声がする。
「ああ、セシリアか。まあ、ぼちぼちだな‥‥」
 セシリアは、定期的に教会の周辺を巡回していたのである。
「そうですか。厨房から差し入れを貰ってきましたので、食べてくださいね。それでは」
 そう告げると、セシリアは穴の近くに御弁当を置く。
 先程、皆のために厨房に出向いて食事を貰ってきたのである。
 巡回のついでに、各員に食事を手渡し、英気を養ってもらうというセシリアの配慮であった。
「ああ‥‥って、上かよ!! ここまで届けてくれないのかよ」
 ええ。
 アルス君、君の御弁当は、しっかりと飼い犬君が貰っていったよ、ふっふっふっ。

──個室の御一行様
「この経路が、街からの最短ルートだね」
「そのようですわね。では、この辺にも罠を設置して‥‥」
 個室で、見取り図を見ながら打ち合わせを行なっているのは、ノリアとフェリシア・ティール(ea4284)の二人。
 執務長から受け取った見取り図を元に、対グリングリン用のトラップを設置するようである。
 が、数が少ないのと、パーティ参加者が誤って罠に掛からないように、設置する場所には細心の注意を払っている模様。
「これで、参加者の名簿はチェックOKですね」
 参加者名簿のチェック担当はウォルター・ヘイワード(ea3260)の担当。
 今回の参加者達の持ってくる珍獣についても、ここで細かくチェック。
 怪盗グリングリンの狙いそうな珍獣をリストアップしている模様。
「流石に、珍獣っていうだけのことはあるわ‥‥私の知らない動物が一杯います」
 そのウォルターの言葉に、その部屋で作業をしていた一行もウォルターのリストに視線を送る。
「フィールドドラゴンだぁ‥‥よく、飼っていられるねってかんじぃ。餌はどうしているんでしょおねぇ?」
 そのリストを見ながらそう呟くのはリュリュ・アルビレオ(ea4167)。
 リュリュはここでの依頼を終えたばかりの為、領主の元で働いている使用人達は結構見知っている。
 そのため、彼女はここの使用人達のリストのチェックを行なっていた。
 つい先程までは、メイド達の元に出向いて一人一人の確認を行ない、今し方戻ってきたばかり。
「え、エレメンタルフェアリィみたい。これって不味いってかんじぃ?」
 リストの中を確認しながら、そんな話にも花が咲く一行。
 そして各自作業を終えると、いよいよ会場セッティングの手伝い。
 そこで既に作業をしていたオラース・カノーヴァ(ea3486)と合流。
「チェック作業ご苦労様。こっちは今のところ問題ないぜ」
 ちなみにオラース、ここでは裏の倉庫で待機している珍獣達の護衛も行なっている。
 パーティー前にグリングリンがやって来て、何か仕掛けていくのではないかという心配があったようである。
「あ、ご苦労様。他の人たちは?」
 セシリアがそう話しながら会場入り。
「あ、アルスなら‥‥」
 オラースがそう言いながら窓に近付くと、窓の下を指差す。
「現在2mってところじゃん」
「もう終ったぜ。まったく‥‥あー腹減ったぁ」
 そうブツブツいいながらアルスも穴から這いあがる。
 そして無事に罠を仕掛けてきたノリアとフェリシアも合流し、一行はいよいよ明日、パーティー本番の時のための最終チェックを始めた。


●パーティー当日〜予想外の出来事〜
──古い教会
 受付けでは、警備員に扮したヴィグが待機。
 会場内には、セシリアとオラースが同じく警備員として見回りを開始。
 ちなみにノリア、リュリュ、アルス、ウォルターは来客に扮して内部に参加。
 フェリシアは執事長から男性用の執務服を借りて着用、珍獣を会場内に運びいれるアシスタントを担当していた。
「あーーっはっはっはっ。何処かで見た顔だと思っていたら、先日は妹がお世話になりました」
 はい、御待たせしました。
 ここの貴族のボンボンでございます。
 そのままボンボンこと『アルフレッド・プロスト』は、リュリュの元に近づいていく。
(あっちゃあ〜。まさかボンボンが出てくるって、計算違いってかんじぃ?)
 慌ててリュリュ、アルフレッドの元に駆け寄ると、そのまま耳打ち。
『‥‥という事でぇ、あたしはぁ、今日は参加者だしぃ。正体バラさないで欲しいみたいなぁ』
 その言葉に、アルフレッドはフンフンと言いながら軽くウィンク。
「なるほど、事情は御察ししました。持ってくるはずの珍獣が御病気とは、なんと嘆かわしい‥‥」
 お、ボンボン、意外と名演技。
 そのままアルフレッドの協力も受けて、一行はそのまま警備続行。

 そしていよいよパーティーが開始。
 主催者である貴族が挨拶を終えると、次々と貴族達が名乗りを上げて、自分の珍獣達を披露する。
 やはりエレメンタルフェアリィには参加者達も驚いていたが、籠の中身は空っぽであった。
『もう盗まれた?』
 一行は、その瞬間に慌てて行動を起こそうとしたが、実は、ここに来る途中でエレメンタルフェアリィは逃げてしまったらしい。
 涙を流しながら、本当に居たんですよと訴える貴族。
 そんな騒ぎの中、愉しい一時は過ぎていった。
 パーティーの途中で、潜入していたノリア達と警備担当のヴィグ達は、随時情報交換。
 めぼしい人物を次々とチェックしていた。
 だが、怪しい人間は、誰一人として見当たらなかった。

 そしてパーティーも無事に終り、貴族達は自分の連れてきた珍獣を連れて帰路へと付いた。
 最後に残ったのはここの領主と、彼のペットの5匹のシリアンハムスター。
 それも、フェリシアが丁寧にペット小屋へと連れていくと、最後に彼女が無事を確認。
 何事も無くパーティーは終了した。


●そして〜オチはここかよ〜
──待機室
 一行は与えられた部屋へと戻ってくる。
「怪盗らしきものは、一体何処に消えたんだ?」
 警備担当であったヴィグがそう呟く。
「私の方でも、怪しい人物は確認できませんでしたわ」
「同じく。この厳重な警備態勢に恐れを成して、姿を出せなかったんじゃないか?」
 セシリアの言葉に、オラースが続く。
「参加していた貴族にも、怪しい人影は無かったですし‥‥」
 ノリアも腕を組んで考え出す。
「あー、まさかとは思うが、本当に逃げたんじゃないだろうな」
 そう呟きながら、アルスが椅子に座ろうとしたとき。
 椅子の上に、一通の手紙が置いてあった。
「アルスさん、それって、まさか‥‥」
 ウォルターが手紙を指差しながらアルスが座るのを止めた。
 そして丁寧に手紙を手に取ると、それをゆっくりと読みはじめた。

〜〜〜〜
 親愛なる冒険者の諸君へ。
 今回は私の負けだ。
 欲しかった珍獣は既に逃げてしまっていたようだから、私としてはそれほど悔しくはない。
 まあ、またいずれ機会が有ったら、その時には君達の前から、別の珍獣を奪い取ってさし上げよう。

 疾風迅雷の怪盗グリングリン
〜〜〜〜

「つまり、怪盗は私達の警備の前に、逃げてしまったというのかしら」
 フェリシアがやれやれとった表情でそう告げる。
「チッ‥‥これでケーキ強奪犯を捕まえられると思ったのに‥‥」
 アルスのその呟きは、ちょいと違うような気が‥‥。
「でも、これで無事に任務完了ですよね?」
 セシリアのその言葉に、一行はようやく気が付いた。
 任務は、怪盗から珍獣を警備して欲しいということである。
 警備の結果、怪盗が出てく隙も与えなかったので、冒険者の勝ちということになる。
「あ、なんか納得いかないじゃん」
 いや、納得してくれオラース。
「なら、明日は早速パリに帰還ということか‥‥」
「でも、その前に落とし穴を全て埋めないといけませんね‥‥」
 アルスの言葉にウォルターがそう付け加える。
「あ、なんかかったりぃ‥‥このままじゃ駄目‥‥だよなぁ」
 その後、アルスとウォルター、手の空いている冒険者達は、アルスの作った落とし穴を埋めに向かう。
 そしてリュリュは、一つだけ気掛かりだったのでとある場所へと移動。

──とある場所
 そこは豪華な部屋。
 様々な調度品が置かれているその部屋の真ん中では、アルフレッドが剣の素振りをしていた。
「やあ。どうやら何事もなく無事だったようだね」
 そう呟くアルフレッド。
「ていうかぁ。どうして会場に姿を表わすとき、この衣裳を付けてこなかったの‥‥みたいなぁ」
 そう呟きながら、リュリュはテーブルの上に置いてある羽根付き帽子と仮面、そして豪華なマントを手にとってそう呟く。
「な、なんのことだい? それはちょっと事情があって使っているものだけど‥‥」
 脂汗をダラダラ流しながら、アルフレッドがそう告げる。
「まあ、珍しいもの見れたからいっかぁ、みたいな。また何かあったら冒険者ギルドに御願いしますぅ‥‥」
 そしてリュリュは楽しそうに皆のもとへと戻っていくと、作業の手伝いを行った。

 そして翌日。
 一行はパリへと帰っていった。
 謎の真実を掴んだリュリュから、怪盗グリングリンの正体のことを聞かされたのは、ギルドから報酬を受けとった翌日の事であったとさ。

〜Fin〜