囁く塔〜お嬢様救出作戦?〜
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 48 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月04日〜09月10日
リプレイ公開日:2004年09月07日
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●オープニング
──事件の冒頭
そこはいつもの冒険者ギルド。
様々な人間模様が浮かび上がるその場所には、連日多くの冒険者達が訪れている。
ある者たちは無事に依頼を終えた達成感に、またあるものは敗北感を味わって、ここの扉を潜ってくる。
そんな冒険者ギルドの昼下がり。
「お嬢様の救出ですか?」
それはまた、突然の依頼である。
依頼者は南ノルマン『好事家・地方領主』の家の執事長。
いつものような冷静沈着な口調で、執事長である彼女は静かに話を続けた。
「ええ。当家のお嬢様が、今は使われていない古い塔に侵入してしまいまして。助け出して欲しいのです」
言葉を濁らせるようにそう呟く執事長。
「あの。もう少し具体的に説明していただけませんか?」
その言葉に、執事長は周囲を見渡した後、ギルド員の耳元で、直接話しはじめる。
「当家の敷地内にある『封印されし囁く塔』。そこの封印を引き剥がしてお嬢様が塔の内部に入ってしまったのです。あそこは古来よりモンスターが徘徊すると言われる塔で、文献によると封印処理をしてあったらしいのですが‥‥お嬢様が、実は奥様と喧嘩をしてしまいまして‥‥家宝の武具を身につけてそのまま飛込んでしまったのです」
そして、お嬢様と奥様との喧嘩の原因について説明を受けて、しばし絶句するギルド員。
ちなみにこのお嬢さま、末娘ということもあって、他の兄弟たちからもたいそう可愛がられていたらしい。
が、つい先日、父親の誕生パーティーの席で、とある貴族に見初められてしまったというのである。
そこから話はトントン拍子で進み、次に嫁ぐのはこの末娘ということになってしまったのでさあ大変。
貴族の家庭ではよくある物語だが、当の本人にしてみれば悲劇以外のなにものでもない。
さらに問題なのは、この末娘、実は好きな人がいるという。それでさらに話はこじれた模様。
その好きな相手というのが、またややこしい。
先日のバースデーパーティの席。
冒険者達が雇われて仕事をしていたらしいのだが、その中の一人に一目惚れしてしまったらしい‥‥。
それは、反対されて当然であろう。
禁断の愛なのだから。
──そして
「うーーーん。ちょっとその手の話はねぇ‥‥。まあ、今回の依頼は『魔物の徘徊する塔からのお嬢様救出』だから、細かい事は気にしないっと‥あはは」
あ、ギルド員さんも半分投げやりの模様。
●リプレイ本文
●やってきました囁きの塔
──深き森
依頼人である執事長の元に挨拶に向かった一行は、一通りの挨拶などを行うと、早速『囁きの塔』の建っているという森の中にやってきた。
「‥‥中々厄介な場所になっていますね」
剣を鞘に納めながら、ルイス・マリスカル(ea3063)がそう話しはじめる。
彼等の前には3体のズゥンビの死体。
森に入って早々、冒険者一行は徘徊するズゥンビ達を確認。
そのまま一気に殲滅したのである。
「恐らくは、例の『囁く塔』っていう所から出てきたんだね。どれどれ」
メルヴィン・カーム(ea1931)が印を組み韻を紡ぐ。
テレスコープを発動させると、現在位置を中心とした周囲をズラリと見渡した。
「あと、5体のズゥンビ‥‥一体のスカルウォリアー‥‥囁きの塔には、アンデットでも封印してあったのかな?」
「アンデットですか。不思議な話ですね」
メルヴィンの言葉に、デルテ・フェザーク(ea3412)がそう問い掛ける。
「ああ、デルテは知らなかったか。この土地、好事家貴族の領地内はかなり多くの封印された場所があるらしいのです。まあ、それについては時間があったら説明して上げましょう。兎に角、この領地内でアンデットと遭遇というのは、私は慣れていますので‥‥」
そう解説をするルイス。
ちなみにルイス、この領主の依頼を過去に何度も受けているだけあって、この地についてはそこそこに詳しい。
ルイスの説明した内容は、ギルドの報告書『古城の地下室掃除1,2』に記されている。
「封印じゃと? それは興味を引くのう」
にこやかに髯を撫でながらそう話すのはジョウ・エル(ea6151)。
「まあ、御話はそれぐらいにして。そろそろお客様がいらっしゃいましたよ?」
そう話しながら、カレン・シュタット(ea4426)は印を組み韻を紡ぐ。
「ええ。取り敢えず術師の方は後方に。私達がここを押さえますので」
「という事だ。前衛以外は下がっていろ!!」
ゼフィリア・リシアンサス(ea3855)とケイ・ウォルフガルド(ea5957)が武器を構えて前に出る。
ちなみにケイ、言葉遣いは乱暴だが根はいい人。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ」
あ、既にスカルウォリアーに向かって走り出したナイトが一名。
──ドッゴォォォォォォン
スカルウォリアーの構えた楯をいきなり破壊するナイト。その名はグラン・バク(ea5229)。
「グランさん、そいつは御任せします!!」
ゼフィリアがグランにそう叫ぶ。
──ドッゴォォォォン、ドッゴォォォォン
あ、この状態ではグランには聞こえていない模様。特攻型コナンの騎士だからねぇ。
そんなこんなで、一行は戦闘に突入。
相手は雑魚のズゥンビといえども数はそこそこ。
多少の怪我は覚悟の上で、取り敢えず皆で頑張ってみたと‥‥。
●という事で塔の前〜お兄さんは哀しいよ〜
──囁きの塔
とまあ、無事にアンデットの連中も蹴散らして、一行は目的の塔へとたどり着いた。
本来ならば、グランの提案で、ここに飛込んだ末娘と一番中の良い兄弟に同行してもらい、塔の外から説得を頼もうとしていたのだが。
残念なことに兄弟たちは皆出かけている模様。
姉達は嫁いでしまったり修道院に入っていたり。
兄達もまた、騎士としての修練を受けていたり、パリでプラプラとしていたり‥‥。
捜してくるにも時間が足りなかった模様。
「しかし‥‥なんだって女性冒険者に一目ぼれしたのだろうか」
そう呟くグラン。本心で心配しているかどうかは全く不明。
兄さん、そのセリフ、棒読みになってますぜ。
「まあ、色々とあるのじゃろうて‥‥それよりも、問題はこの塔じゃな」
ジョウが静かにそう話しはじめる。
ここに来る前に、あらかじめこの塔についての由来などを、領主の古城で調べさせてもらったらしい。
まあ、古城の地下迷宮と同じ様に、たいした情報は入手できなかったのかも知れないが。
「ワシの事前調査によると、ここは一連の‥‥つまり、古城の地下にあるとかいう迷宮の封印と連動しておるらしいのう」
開かれている扉にきざまれた文字をスッとなぞる。
「古代魔法語‥‥ふむふむ、兎に角、ここの塔は上に3階のみ。最上階には何かが封印されているというのを、領主の書庫で調べてきたのじゃが‥‥」
一行はゴクリと喉を鳴らし、ジョウの言葉の続きを待った。
「ワシ、石碑に記されていた文字が読めなかったのじゃよ。ここに刻まれておるのもいまいち理解できぬわい。フォッフォッ」
あー、じいさん、そんなオチですか。
「まあ、古城地下の立体封印と連動しているという事は、ここは今まで封印処理されていたから誰も手出しできなかった。だが、ここ最近は封印が開放されたため、ここの封印も自動的に解けたという所ですね」
流石ルイス、いい線いってる。
「それなら納得はいきますわ。封印されたままずっと放置されていたというのも妙な話とは思っていましたの。でも、それ程強力な封印でしたら、ここで静かにたたずんでいるのもうなずけますわ」
デルテも納得の模様。
「とりあえず隊列を整えて入っていくしかないだろう?」
ケイのその言葉に、一行は隊列スタンバイ。
そしてそのまま開かれた塔へと突入した。
●囁く塔〜まあ、これはいつもの事〜
──2階
さて、一回は大量のズゥンビの死体が散乱していた為、敵に襲われるということは全く無かった
殺されたズゥンビの死体などから、塔に入ってしまったお嬢様の腕前はかなりのもの。
ホーリィと思われる魔法によるものもあったため、お嬢様が修道院でセーラの教えを学んでいたという予測も立った。
そしてようやく発見できた2階への階段を昇ったとき、一行は目の前の不気味な空間に目を見張った。
広い空間。
その中央には、上の階へと続く階段が一つ。
そして南西の隅に集まってワラワラしているズゥンビとスカルウォリアーの群れ。
どうやらそこに誰かいるようであり、一定の距離からは近寄れないらしい。
「あら、お嬢様はあそこのようですね‥‥」
ゼフィリアが武器を構える。
「そうだな」
ケイも武器を構え、万が一の後方からの襲撃に備える。
これだけの空間があるのならと、デルテも必殺の魔法詠唱開始。
それに続くようにジョウとカレンも詠唱を開始した。
メルヴィンは後衛の盾となるべくガード姿勢、ルイスはランタンを床に置いてから抜刀。
そしてグラン‥‥。
──ズッバァァァァン
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
あ、もう突入していましたか。
流石は『力任せコナン流。細かい戦闘は前略中略以下略』というだけのことはある。
「ふっ激戦だぜ」
まあ、そんなグランの戦力は、ここに来る途中で皆が知っている為、一行はそのまま陣を組んで突撃!!
途中からは結界の中よりお嬢様も突撃。
で、アンデットの御一行様は、全員殲滅された。南無である。
──そして
「愛を貫く為に命をかける。立派な心がけです。きっと神様も彼女の純粋な愛を祝福してくれるはずです」
それはゼフィリア。
いきなりお嬢様にそう話し掛けると、十字架を取り出して静かに祈る。
──スパァァァァン
「そうではないでしょう?」
「うう‥‥御免なさい‥‥」
あ、今回の突っ込みハリセン担当はデルテでしたか。
領主の元より借りてきたハリセンでゼフィリアの頭を力一杯叩くデルテ。
だが、流石はゼフィリア。
ボケに関しては超一流の模様。
「ご迷惑を御掛けしました」
深々と冒険者一行に頭を下げるお嬢様。
礼節を学んでいたのであろう、言葉遣いはものすごく優しい。
「とりあえず、僕達は依頼を受けてお嬢様を連れて帰らなければならないんだ。一緒に帰ってもらえますか?」
丁寧な口調でそう話し掛けるメルヴィン。
「あと一つ。この上の階にいって、『あれ』を手に入れたら戻ります」
あら、随分と物分かりのいいことで。
「そうして頂けると助かります。結婚の話も整ったところで反故にされては相手の方の体面も潰れるでしょうし、父君も先方への義理もあり容易には破談にはできないでしょう。ここは、『セーラ様のお告げを聞いた』とか口実をつけて修道院に戻って神に仕えるとか、国と神に身を捧げると神聖騎士の道を進むのはどうでしょうか。国や神に仕えるとあれば、父君や相手の貴族も強く反対もできませんでしょうし・・・・クレリック、神聖騎士となれば、冒険者である意中の方に再会できる機会もできましょう。」
ルイスの説得。
「でも。貴族の地位を捨てる覚悟があるなら、見初めた冒険者の所に行けばいいのに。それに、それだけの腕があるなら冒険者として十分通用すると思いますけど。それとも危険な真似をすれば件の冒険者が助けに来てくれるとでも思いましたか? でしたら、塔に入る前に指名するべきでしたね。所詮、冒険者なんて金次第ですよ」
ああ、デルテ、また夢の無いことを。
「それは判っているのです。相手の対面については申し訳ないと思っています。今の地位を捨てて冒険者となる覚悟も考えました‥‥そんな時、父の古い書庫でこの石碑を見つけまして」
床に置いてあった一枚の小さい石碑。
それを手に取ると、お嬢様はそれをジョウに手渡した。
「ふむふむ‥‥」
ジョウはそれをしばらく眺めるが、すぐにカレンに手渡す。
「ここは若い者に花を持たせるとしよう。フォフォ」
あ、ジョウ解析失敗の模様。
そしてカレンがそれを受け取ると、黙って解析を開始する。
「ふぅん。お嬢様、この石碑、どこまで解析出来ましたか?」
カレンがいぶかしそうな表情でそう問い掛ける。
「ここですわ‥‥ここの部分、願いを3っつ叶えるって‥‥恐らくは『願いを3っつ叶える指輪』とかがあるのではないかと」
そのお嬢様の言葉に、カレンはやれやれといった顔をする。
「なるほどのう。願いを3っつ。その犠牲者が、この死体達か‥‥」
ジョウは3階へと続く扉の調査。
今までに見た事もない封印処理が施されているらしく、知的好奇心でジョウはそれを調べていた。
そして判った幾つかの単語。
そこから、ここの犠牲者達が何故、そのような姿になってしまったのかを理解した。
「どういう事?」
メルヴィンがそうジョウに問い掛ける。
「3っつの願いは代償を伴う。その代償は、契約に基づき、汝の魂を‥‥というやつじゃろう?」
ジョウのその問い掛けに、カレンが静かに肯く。
「この石碑は、悪魔からの招待状のようなものですね。この塔の最上階には古い悪魔が一体封印されているようですわ」
あ、グランがウズウズしてきている。
「魂を奪われた死体がズゥンとして再生したという所だな。まあ、これで一件落着、お嬢様、こんな不粋な所にいても始まらない。その惚れた相手に思い切って告白してしまえばいいんじゃないか?」
ケイのその言葉もごもっとも‥‥?
だが、お嬢様はその『告白』という言葉を聞いてモジモジとする。
「だって‥‥私女性ですし。あの方に相応しい人に成るためには、男の人になったほうが‥‥」
あ、随分と短絡思考。
「神様は寛大ですし、神の愛は無限です。どんな愛の形であれ真剣に愛し合っていれば神様は祝福してくれます。だから家に帰って皆さんを説得しましょう。ここにいても事態は変わりませんし、あなたを好きな皆さんに心配をかけるのはあなたの本意ではないでしょう?」
そのゼフィリアの言葉が通じたのか、お嬢様は静かに肯く。
「さて、ジョウさん。その扉の封印はまだ大丈夫なのですか?」
ルイスが扉に近寄りながらそう問い掛ける。
「いやいや、これはまた興味深い‥‥」
あ、聞こえていない。
そのままルイスはカレンの方を向く。
「3階の封印自体は独立した封印のようですし。入り口の封印がたまたま連動していただけに過ぎませんわ」
その言葉にルイスも安堵。
そして一行はお嬢様を連れて無事に塔から脱出。その入り口を石工に頼み込んで埋めてしまった。
●そして後日〜パリの不思議な物語〜
──冒険者酒場
無事に任務を終えて戻ってきた一行。
依頼によるお金もたんまりと入り、ホクホク顔で酒場で愉しい一時を過ごしていた。
「この方を捜しているのです。何処かで見ませんでしたか?」
と、件のお嬢様が似顔絵を手に情報収集している模様。
その似顔絵、かなり美化されているらしく、一体誰なのか見当も付かない。
そんなこんなで、もうしばらくお嬢様の恋物語は続きそうな感じでありますが、今回はこれにて‥‥。
〜FIN〜