心の中の英雄〜騎士の名誉を護って〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:4

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月13日〜09月18日

リプレイ公開日:2004年09月18日

●オープニング

──事件の冒頭
 パリの郊外。
 風車の回る小さな街。
 その街のとある路地で、子供達の喧騒が聞こえてくる。
「だから、父ちゃんは立派な騎士なんだ!! 今だって、魔物討伐の任務を受けて、数多くの魔者たちと戦っているんだ!!」
「へへーーーん。おいら知っているんだぜ。お前の父ちゃんは、遺跡で仲間も助けられず、仲間を見捨てて逃げようとしたときに殺されたってな。酒場で冒険者さん達に聞いてみな!!」
「嘘だ、そんなことあるもんか!! 父ちゃんは騎士なんだ!! 仲間を助けるために命を命懸けているんだ。そんな不名誉な事をするはずは無いんだ!!」
 それは子供同士の喧嘩。

──魔物討伐
 少年の父は冒険者であった。
 ギルドの依頼で、死者の眠り神殿に向かったらしい。
 数カ月前、そこは考古学者のミハイル・ジョーンズ教授が、遺跡発掘として調査していた場所である。
 全ての調査を終えたその遺跡に、いつしかゴブリン達が住み着いてしまったようである。
 ゴブリン達は、そこを根城にして近隣の村を襲っているらしく、周辺の村からゴブリン討伐の依頼が出されていた。
 そして少年の父達が向かってから、ゴブリンの襲撃は納まったらしいが、ここ数日、神殿付近をズゥンビが徘徊しているという猟師からの報告もあったらしい。

──真実をしる者
 この街に吟遊詩人がやってきたのは数日前。
 その吟遊詩人は、事の顛末を全て知っていた。
 少年の父は、仲間を助けるために、自ら傷ついた仲間たちの盾となり、そして死んでいった。
 そして、その時の仲間もまた、遺跡から生きて外に出ることはできなかったらしい。

──路地
 一連の少年達のやり取りを、吟遊詩人は見ていた。
 ガキ大将のような子供が悪態を付いて少年から離れていくのを見て、彼は少年の元に向かった。
 そして、手をスッと差し出した。
「お父さんの真実、皆に伝えたくないかい?」
 少年は静かに頭を縦に振ると、吟遊詩人と共に酒場に向かった。

──そして酒場
「この子の父の名誉を、彼の誇りを救うため、どなたか遺跡に向かって真実を捜してきてください!!」
 吟遊詩人は叫ぶ。
「父ちゃんは立派な騎士なんだ‥‥いつも僕に教えてくれたんだ‥‥騎士たる者、常に礼儀正しくあれ、そして‥‥」
 少年は父から教わった騎士としての心得を静かに伝えた。
 そして涙を拭うと、その場の皆に叫んだ。
「父ちゃんは名誉を護って‥‥きっと父ちゃんは生きているんだ!! 遺跡で傷ついて動けないだけなんだ!! 父ちゃんを助け出して欲しいんだ!!」

●今回の参加者

 ea0351 夜 黒妖(31歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea1450 シン・バルナック(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea1743 エル・サーディミスト(29歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea2181 ディアルト・ヘレス(31歳・♂・テンプルナイト・人間・ノルマン王国)
 ea4100 キラ・ジェネシコフ(29歳・♀・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 ea4909 アリオス・セディオン(33歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea5415 アルビカンス・アーエール(35歳・♂・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea5644 グレタ・ギャブレイ(47歳・♀・ウィザード・シフール・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●まずは締め上げるべし〜成る程ねぇ〜
──冒険者ギルド
 出発当日。
 冒険者一行は、まずは下準備の為に冒険者ギルドにやってきた。
 当然、今回の依頼人である少年も同行。このままだと一緒に遺跡にまで来てしまいそうな感じである。
「付いてきたいのかな?」
 夜黒妖(ea0351)がやんわりとした口調でそう少年に問い掛ける。
「うん。真実をこの目で見届けたいんだ!!」
 力強く力説する少年。
 だが、黒妖はその頭をクシャッと撫でると、静かに口を開いた。
「いいかい? 君は冒険者ではないんだ。遺跡の中は危険が一杯。そんな中に君を連れていくことはできないんだよ?」
 その言葉に、少年は何かを訴えようとした。
 だが、グッと拳を握ると、そのまま下を向いたまま口を開く。
「判った‥‥父ちゃんが言ってたんだ。相手の気持ちも理解しなさいって。その上で、自分の気持ちも考えた上で、最善をつくしなさいって‥‥」
 いい父ちゃんや。
 その言葉にニコリと微笑むと、黒妖も返事を返す。
「俺達を信じろ!!」
「心配しないで、同じ騎士として君のお父さんの名誉と誇りは必ず取り戻してあげるから」
 シン・バルナック(ea1450)も少年の側に近寄ると、そう話し掛ける。
「ま、大人しく待ってろって。真実って奴を見てきてやるからよ」
 それはアルビカンス・アーエール(ea5415)。
「いい事? 結果がどうであれ、ありのまま受止めなさい。騎士たる者、心だけは高く持つのです」
 アルビカンスに続き、キラ・ジェネシコフ(ea4100)も少年に話し掛けた。
 丁度先日、少年が酒場で叫んでいたときに最初に話し掛けたのはキラであった。
 キツめに一言告げてみたのだが、少年はそのままキラの言葉に従って騒ぐことは無かった。
 感情を押さえているのであろうとキラは理解。その上で、少年に諭すようにそう告げたのである。
 最後にキラが話し掛けると、一行はそのまま別の席で待っている『吟遊詩人』の元へと移動していく。
 そしてその光景を、グレタ・ギャブレイ(ea5644)はじっと見つめていた。
 彼女は悩んでいた。

 名誉というものの『重さ』を感じつつ。

──吟遊詩人の席
「さて。父親の服装などは全て少年から聞きました。ですが、貴方の証言が少し気になります」
 それはシン。
「貴方は何を知っているのですか?」
 そのシンの問い掛けに、吟遊詩人は静かに口を開く。
「少年の父は、遺跡左奥の神殿でアンデットに襲われて死亡しました‥‥」
 そのまま沈黙が続く。
「では、その神殿という所で、彼の父は仲間たちを守るために楯になったということか?」
 アリオス・セディオン(ea4909)がそう問い掛ける。
「ええ。あのパーティーには、騎士である少年の父、黒きクレリック、鋼の魂を待つ忍者、精霊の理を知るウィザード、そして駆け出しのバードが居ました‥‥」
 その言葉で、アルビカンスはピン、と来た。
「あんた、そのパーティーのバードか。騎士が楯になったので、そのまま一人で逃げてきたというところか?」
 冷たく言い放つアルビカンス。
 そして吟遊詩人は静かに肯いた。
「私は‥‥仲間たちが倒れていくのを見ていることしかできなかった‥‥騎士である彼や忍者、皆が私を逃がしてくれた‥‥私は、死ぬことが出来なかった‥‥生きて、事の全てを伝えなくてはならないと思った‥‥そして翌日、他の仲間を雇ってパーティーを助けに行ったとき、既に騎士は死んでいた。他の仲間たちたちもまた、力尽きて‥‥私は、無力だった‥‥」
 そう呟く吟遊詩人。
「生きて真実を伝える。辛い選択でしたね」
 シンはそう話し掛ける。
 だが、キラはその吟遊詩人の取った行動を『勇気ある』とは認めたくなかった。
「さて、この地図を使って教えてもらおうか」
 アルビカンスがミハイル研究室より借りてきた一枚の地図。
 それは以前調査したときに作られた遺跡内部の詳細地図である。
 それに新たに吟遊詩人の見てきた情報を書込むと、一行は早速準備を開始した。


●遺跡にて〜あ、これは厄介です〜
──入り口
 現在、入り口は巨大な扉によって閉じられている。
 そこに外側より頑丈な鍵が付けられている。 鍵は近くにあるミハイル研究室の管理小屋で預かっているらしい。
 最後に内部調査した者は、そこに生き残りがいないことを確認、ズゥンビ達に襲われるまえに飛び出してきたという事である。
 そして鍵を借りてくると、一行は早速遺跡に突入した。

──第一回廊
 入り口から直線上に回廊が作られている。
 内部には腐臭が漂っている。
「うわぁ‥‥最悪」
 エル・サーディミスト(ea1743)が鼻を押さえてそう呟く。
「エルさん、ランタンを御願いできますか?」
 シンのその言葉に、エルがランタンに火を灯す。
 ボウッと暗かった回廊が明るく照らしだされる。
 床や壁などの様々な所に、チョークで色々な印が付けられている。
「さて。チョークの部分がトラップの起動装置だね。このままだと、待合室っていう所にたどり着いて‥‥そこから左の回廊を抜けていくと神殿かぁ」
 黒妖がマップを見ながらそう呟く。
「取り合えずは前進だな」
 アリオスのその言葉に一行は静かに肯く。
 そして真っ直ぐに隊列を組みなおすと、待合室へと向かっていった。

──待合室
 さて、到着した一行を待ち受けていたのはゴブリンご一行様である。
 でも2体のみ。
 ただし、腐っている模様。
「地図によるとアンデットと記されていたが‥‥まさしくここは『アンデットを生み出す神殿』だな」
 アルビカンスが後方でそう話しながら、印を組み韻を紡ぐ。
「ランタン預かる‥‥」
 グレタは灯担当。
 このような閉鎖空間では、ファイアーボールは危険と判断。そのままエルからランタンを一つ預かると、後方で防衛に徹する。
「ゴブリンズゥンビ‥‥相手がアンデットなら!!」
 シン、全身のオーラを一点に集中開始。
そして黒妖は既に突撃開始。
「我らはAnareta、殺戮の星より生まれし死の獣、我等が牙で汝の罪を断罪せん!」」
 そのまま手にしたダガーを逆手に構えると、素早くゴブリンズゥンビに切りかかる。
──ドシュッ!! ズッバァァァン
 確実な手応え。
 返す刀で、もう一撃を叩き込む黒妖。
「相手がズゥンビなら!!」
 エルも魔法詠唱開始。
 そしてキラは静かにクルスソードを引き抜く。
 エルとアルビカンスの魔法の発動を待っている模様。いい連携である。
「ここで死んでズゥンビ化したかっ!!」
──ドシュドシュッ
 アリオスの2連撃炸裂。
 その間にも、ズゥンビは攻撃を仕掛けてくるが、どうにも動きが鈍い為、その攻撃を受けるものは居なかった。
「ローーリンググラビティーっ」
 エルの魔法発動。
 ズゥンビが一体宙に巻き上げられ、そして天井に叩きつけられてから落下。
「我はAnaretaの刃『蒼風』、俺と敵対する奴は無に還したらぁ!!」
 その落下していくズゥンビに追い撃ちをかけるようにアルビカンスのウィンドスラッシュが炸裂。
──ドッシューツ
 腐った肉体を削ぎ、そのままゴブリンズゥンビは床に激突。
 そしてキラ、クルスソードを構えて突撃!!
──ドシュドシュッ!!
 キラの2連撃炸裂。
「愚かなる者達に、死での解放を‥‥」
 渋いぞキラ。
 そのまま戦闘は膠着状態に突入。
 無事に敵を殲滅したのは30分後の事であった。

「こっちの被害は!!」
 アリオスがソードを鞘に納めつつそう告げる。
「私は多少擦った程度です」
「わたくしも無傷です‥‥たかかアンデット如きに、遅れは取りませんわ」
 シン&キラ、流石である。
「後衛は全員無傷だ」
 グレタが、アルビカンスとエルの状態を確認してそう話す。
「でも、こいつらちょっと違ったよね?」
 黒妖がゴブリンズゥンビを見ながらそう告げる。
 だが、今回のメンバーでモンスターについて知る専門家は0。そのため、細かいところまでは判らなかった。
 ただ、いつものズゥンビより打たれ強かったような感覚はあった。
「一休みしてから、奥に向かいましょう」
 シンのその言葉に、一行は休息を取った後、左回廊へと向かっていった。


●徘徊する者たち〜貴方たちの無念は‥‥〜
──左回廊
 地図によると、左回廊はL字型に曲がっている。
 その先をしばらく進むと、結界の施された扉が一枚存在する。
 その奥に、件の神殿が待ち構えているのだが。

「ハアハア‥‥あと何人かしら?」
 キラが頭から血を流しながらそう叫ぶ。
 左回廊を進んだとき、一行は壁に横たわっている3体の冒険者の死体を発見。
 その服装や持ち物から、少年の父の仲間たちと判明した。
 が、その死体もゆっくりと立上がると、そのまま攻撃を開始したのである。
「あ、あと1人、忍者さんのズゥンビだけ‥‥」
 エルもすでに魔力限界。アルビカンスは不意打ちにより腕を負傷、印が組めない状態になっていた。
「うぉぉぉぉぉっ」
──ドシュッドシュッ
 素早く2連撃を叩き込むアリオス。
「死人が俺の目の前で歩く‥‥唯一の理を外れたモノを‥‥俺が‥‥Anaretaが‥‥許す
わけないだろう‥‥狩られろ、化物共っ」
──ズッバァァァァン
 黒妖の渾身撃が叩き込まれる。
「そんな姿になってもまだこの世を彷徨うのですか‥‥すぐ楽にしてあげます」
──ドシュッ
 全身にオーラを纏ったシンの一撃。
 すでにズゥンビは戦意喪失? っていうか、もう限界。
「‥‥さようなら」
 そしてキラの必殺の一撃。
 忍者だった存在は、音も無くその場に崩れていった。
「さ、流石は死者の眠る遺跡か‥‥」
 アリオス、なんとか立上がると、先を確認。
 10m先には結界の扉が見えた。
「あと少しか‥‥だが」
 仲間たちの情況を確認。すでに限界なのは目に見えていた。
「あとは、明日だな」
「ああ。その方が助かる」
 取り敢えず止血をするアルビカンス。
 そして一行は、一旦遺跡を後にして、管理小屋で一泊することとなった。


●勇気とは〜名誉よりも大切なもの〜
──翌日、結界扉前
 怪我の手当を終え、一行はゆっくりと睡眠をとって英気を養ってきた。
 食糧の足りない仲間には余っているものが分け与え、心身共に全快状態。
 そして先日の続きである石の扉の手前までやってくると、黒妖は地図を広げて確認。
「この扉が結界の効果をしているんだね。この向うに、少年の父はいるんだ‥‥」
 ゴクリと息を呑む音が聞こえる。
 そして隊列を整えると、静かに扉を開く。
──ギィィィィィッ
 光が回廊を照らす。
 そして開かれた扉を見ると、結界部分の刻印が失われてしまっている。
「もう、結界の効果はなかったんですね‥‥だから、身を楯にして‥‥」
 エルが静かに呟く。
「ええ。その結果、敵に後ろを見せる事無く‥‥」
 側で朽ちている騎士の死体を見て、キラがそう呟く。
 そして黒妖がダガーを引き抜く。
「騎士を倒した奴のお出ましだね」
 その言葉の直後、目の前にスッ‥‥と幽霊が姿を現わした。
 それは、側に横たわっている騎士と同じ姿である。
「まだ、ズゥンビの方がマシだったな‥‥やれやれだぜ」
 アルビカンスがそうぼやきながら、印を組み韻を紡ぐ。
「ちょっと待ってください!! 攻撃してくる様子はありません」
 シンがその雰囲気を察して叫ぶ。
 そのシンの言葉が判ったのか、騎士はニコリと笑顔を見せると、何かを告げている。
 もしクレリックが居たならば、死者との会話やその意志を汲み取ることが出来たのかもしれない。
 だが、その場にはクレリックは存在しなかった。
「仲間‥‥を‥駄目だ」
 グレタが、口の動きから言葉を紡ごうとするがやはり難しい模様。
「仲間たちを解放してくれてありがとう‥‥か」
 おっと、アルビカンス成功。
 伊達に、ゲルマン語は達人の域ではないか。
「それで?」
 エルが続きを訪ねる。
「‥‥騎士っていうのは、めんど臭い職業だな」
 頭を書きながら、アルビカンスがやれやれといった口調で呟く。
「アルビカンス殿、騎士殿はなんと?」
 シンもそう問い掛ける。
「あー。ちょっと待っていろ」
 そしてアルビカンスは、騎士の想いを受止める。
 やがて騎士は満足したのか、剣をアルビカンスに手渡すようなそぶりを見せると、スッ‥‥と消えていった。
 
 騎士の想い。
 仲間を助けるために全てを賭けたこと。
 自分の利ではなく、全ての利を取った行動。それに悔いは無いということ。
 そんな中、ただひとつだけ後悔があったらしい。
 少年を残して死んでしまったという父親としての後悔。
 それを解放するために、剣を片身として渡して欲しいということ。

 一行は、騎士の想いを受止め、側に倒れている全ての死体を回収。遺跡の外に小さな墓を作った。
「連れてかえりたいが。損傷が激しい。申し訳ない」
 アリオスが剣を掲げてそう告げる。
 エルが近くの草原から積んできた花を、そっと墓に添えた。
 いつのまにか、墓の回りにはウサギや小鳥などの動物達が集まってくる。
 そして、一行は勇敢な騎士とその仲間たちの冥福を祈ると、静かにパリへと戻っていった。


●パリへ〜名誉と誇りとは〜
「君のお父さんは、仲間を見捨てない、勇敢な騎士だよ」
 最初に口を開いたのは黒妖。
 そして父の片身の剣と鎧は、シンが少年に静かに手渡した。
 そして少年は、剣と鎧を見て悟った。
 背中には傷一つ付いていない、立派な騎士の鎧を抱いて。
「お父さん‥‥」
 決して涙を見せない少年。
「死んだ者に名誉なんてありませんわ。生きている事が全て。貴方が父を目指すなら生き残る為に強くなりなさい。力だけでなく、心も。騎士は礼儀ではない。確固たる信念。それが無くては何かを守る事なんて出来ませんわ。貴方の父親のようにね」
 キラはそう告げると、少年の前から立ち去った。

──そして酒場
 グレタは何かを考えている。
 今回の依頼、これで本当に良かったのかと。
 キラの最後の言葉が、グレタの脳裏をしばらくの間離れなかった。


〜Fin〜