●リプレイ本文
●まずは〜恒例の準備から〜
──マーチャントギルド
「ほれ、これがあの砦の見取り図。手に入れるのに苦労したぞ。古い型だけど馬車も外に3台用意してある。もし盗まれた荷物が回収できたときには頼むぞ!!」
「うむ、大丈夫じゃ、安心して待っているが良いぞ」
マーチャントギルドで、メリル・マーナ(ea1822)は今回の依頼に必要な砦の見取り図と馬車を借りられるよう交渉にやってきていた。
なんとか地図を探し出して貰い、古くなった馬車も借り入れる事が出来た。
すでに本隊は先行で街道を進んでいる。
ロスした分を取り返す為、メリルは馬車に乗り、仲間たちと合流するまで馬車を走らせてくれる御者を確保すると、近くの籠の中に入っている売り物のリンゴをヒョイと取りガブリと噛り付く。
「ああ、お前、それは売り物なんだぞ」
「景気付けに一つ位よいではないか。うむ、今年のリンゴ、いい味をしておるのう。良い感じぢゃ」
小ぶりでしっかりとした形のいいリンゴを数個、メリルはヒョイヒョイと手に取ると、そのまま手を振って歩きはじめた。
そしてニコニコとしながら急いで馬車を走らせるメリル。
一行と合流後、御者は一緒に付いてきていた仲間と共に馬で帰還。
冒険者達はバルバロッサ・シュタインベルグ(ea4857)の言っていた『借りられたら良し』という馬車に分乗すると、これまた『襲撃を受けたら良し』という感じで商人に変装。
もっとも、一同の荷物をまとめて荷台に乗せ、布を被せるだけだが、商人が大量の荷物を搬送しているように見えなくは無いという感じである。
そして一行は、少しでも時間を稼ぐために、馬車を急がせた。
●現地初日〜襲撃でした〜
──途中街道
「たいした事はないか‥‥」
剣に付いた血糊を拭いつつ、ギルツ・ペルグリン(ea1754)がそう呟く。
一行の目の前には、15体のコボルトの死体。
突然街道の両側から現われて馬車を襲撃してきたのだが、すでに襲撃に対して準備を行なっていた一行の敵ではない。
「まあ、これが斥候隊っていう所じゃないのか?」
どっかりと座り込み、愛用のショートボウに張ってある弦の調整をしているのはティルフェリス・フォールティン(ea0121)。
「恐らくは‥‥な。どうやらこいつらの武器には毒はついていない。解毒剤らしきものも持っていない所を見ると、本当に偵察にやってきたという所だろう? 」
コボルトの死体を調べつつ、ラマ・ダーナ(ea2082)がそう話す。
「ふぅん。そうなんだぁ‥‥」
ゴブリンの死体と全く別の方角、草むらでゴソゴソとハーブを探しているのはエル・サーディミスト(ea1743)。
「そんな所で何をしている‥‥とっとと先に進むぞ」
エルの保護者担当のギルツにヒョイと持ち上げられると、そのまま馬車まで連れていかれるエル。
「鬼ぃぃぃぃ〜」
というエルの叫びは置いといてと。
「兎に角、この先は何が待っているか解らん。皆、気を引き締めて行くぞ!!」
全員に聞こえるようにそう叫ぶのはバルバロッサ。
今回の依頼でのリーダー担当の模様。
静かで重々しい口調。
一見すると粗野に見える外見だが、その実、秘めているものは仲間を大切にする優しさがある。
バルバロッサの声で、一行は再び出発する。
そして砦前方1kmの地点で馬車を止めると、そこにベースキャンプを設置。
幸いな事に街道は深い森の中にある為、一行のベースキャンプは砦からは死角になっている。
「流石は商人。街道筋の安全な場所も調べてくれたんですね」
周囲を見渡しながら、エレアノール・プランタジネット(ea2361)がそう口を開く。
「でも、そうならここを使って一休みして、タイミングを見て一気に駆け抜けたら安全じゃん。考えたら判りそうなことだせ?」
オラース・カノーヴァ(ea3486)がそう呟く。
相変わらずそっけない物言いをするオラースだが、その意見にも一理ある。
「考えても見ろ。ここを通る商人達は、俺達のように最低限の荷物を持っている訳ではない。大量の積み荷を積んだ馬車に、無理をさせることは出来ないだろ? 偵察や斥候というのも、商人にはどだい無理だ」
イルダーナフ・ビューコック(ea3579)がそうオラースに話し掛ける。
流石はクレリック。
人を諭すときは実に真面目である。
とても『大ほらふき』とはゲフンゲフン‥‥。
「で、斥候は誰が務めるんだ?」
ファットマン・グレート(ea3587)がバルバロッサに問い掛ける。
「うむ。軽装で身軽な者に任せるとしよう」
バルバロッサがしばし考え込む。
確かに、このような森の中ならば、軽装で身軽なレンジャー達の方が、重装な戦士よりも偵察には向いている。
そのため、ティルフェリスとメリル、そして森林に強いエルと、エルの護衛のギルツ、以上の4名が偵察隊として編成。
準備が出来次第、砦にむかって出発した。
●初日〜偵察任務と準備です〜
──砦前方
腐臭の漂う森。
近くに作られた巨大な穴には、恐らくは砦に住まう魔物達により犠牲になった大量の死体が放り込まれている。
その殆どは腐敗し、大量の蝿や蛆虫が這い回っていた。
そのどれもが骨まで砕かれていたり、首だけになっているものなど無残なものばかりである。
酷いものでは、下半身がズタズタに潰されていたり、股間から裂けている真新しい死体まで転がっている。
──ゾゾゾゾゾッ
その死体を見て、エルは寒気が走る。
冒険者稼業なら、普通の人よりは死が訪れる時が早いかもしれない。
そうならば、せめて自分はこのような無残な死に方はしたくないと思った。
「あれが砦じゃな? 随分とものものしいのう」
メリルが額に手を当てて覗きこむように砦を確認する。
視界には数体のゴブリンがうろついている。
その様子から、どうやら周辺の警戒をしているように感じられる。
「それではさっそく‥‥」
魔法射程ギリギリのラインまでこそこそと近付く一行。
そしてエルが声を潜めて、ゆっくりと魔法詠唱を開始した。
「大地の精霊さん。あの壁の振動を教えて‥‥」
エルの体が淡いブラウンに輝く。
そして、その輝きが消えたとき、エルの脳裏には魔法の結果が高速で駆け抜けていった。
「壁づたいの振動だから、正確ではないかもしれないけれど‥‥」
つまり、『床の振動が伝わった壁の振動』という、実に確かな振動。
それでも結果は辛うじて。
ものすごーく嫌そうな表情で、エルはギルツの方を向く。
「大きさはでっかいのからそこそこのまで。距離はあちこち、多分ここから見えるあの壁の向うのフロアだと思うけれど‥‥数が50ぐらい」
その言葉に、一行は愕然とする。
「ご、50だと?」
思わず叫びそうになったが、そこはぐっと堪えて小声でそう問い掛けるティルフェリス。
コクリと頭を縦に振ると、エルはしばし思案中。
「建物の構造上、あと2ヶ所の調査をする必要があるか‥‥」
ギルツがそう告げると、一行は別のポイントへと移動する準備を開始した。
●ベースキャンプにて〜報告します〜
──ベースキャンプ
「つまり、この3っつの建物にそれぞれ魔物がいるということか?」
バルバロッサが、地面に広げた見取り図に小石をおきながら確認する。
「そう。一番左は10体ぐらい。真ん中かも20体ぐらいかな? 一番右が50体!!」
エルがそう告げたのち、メリルがさらに追加捕捉。
「砦正面はゴブリンが約10体。一番左の建物の入り口にはコボルトがいたから、恐らくはそこがコボルトの生息地域ぢゃ。ゴブリンはどちらかというと右端の建物を出入りしていたから、そこがゴブリンだと思うのう。真ん中はよく判らなかったわい」
そこで一行は、再度作戦の調整を開始。
兎に角、残った時間を有意義にするためにも、途中での失敗は許されなかった。
●二日目〜サーチ&デストロイ〜
──砦正面
ゆっくりと体を休めた一行は、いよいよ作戦開始となった。
それぞれの持ち場について細かいうち合わせを行い、綿密な準備を行う。
オーラの使える者は仲間たちに対しての附与を行い、目の良いレンジャー達は周囲の警戒を強める。
クレリックはいつでもリカバー唱えることができるよう、仲間たちに対しての細心の注意を払い、そして前衛は後方にいる仲間たちに攻撃が向かないように全力で対処する。
それらの準備を行うと、作戦は二つのチームに分かれての行動で開始となった。
砦突入部隊であるチームA
カーツ、オラース、ファットマン、レイ、ティルフェリス、イルダーナフ、エレアノール
後衛支援部隊のチームB
バルバロッサ、ティム、ギルツ、メリル、ノエル、アリス、エル
二つのチームによる、完全殲滅作戦である。
あとは、随時臨機応変という事で、作戦は開始された。
──作戦開始・チームB
「ターゲットロック。敵は扉正面に12」
メリルが数を確認。
「扉の確保は?」
「右の扉はアリスさんがアイスコフィンで凍結。中央はエレアノールさんが同じく。扉の固定の後、チームAは一番手薄な左扉から突撃。のち、建物を繋ぐ回廊部分の扉はカーツさんが固定との事ですね」
エルがギルツに対してそう告げる。
彼女の視界には、すでに突撃準備を終えて茂みに隠れているチームAの姿があった。
ギルツはそう告げると、静かに体勢を整えた。
腰に下げている鞘に手を当てて、いつでも飛び出せるようにスタンバイ。
「うむ。ならばこちらも全力で行かせてもらう」
バルバロッサが剣を引き抜きつつ、静かに身構えた。
「回復は常時御願いします」
ティム・ヒルデブラント(ea5118)もバルバロッサの横に付くと、そのまま剣を引き抜いた。
「みなさん、余り無理はしないでくださいね。あたしの力では、まだ軽い怪我程度しか治癒はできませんからね」
まだクレリック見習いという感じのノエル・ウォーター(ea5085)。
実際は数々の冒険をしているのであるが、信仰心がまだ発展途上。
「カウントダウン‥‥」
静かにバルバロッサがカウントダウン開始。
「3‥‥2‥‥1‥‥0!!」
一斉に茂みから飛び出すバルバロッサ達チームB。
「扉よ!!」
「アイスコフィン!!」
アリス・コルレオーネ(ea4792)とエレアノール、二人がかりのアイスコフィンが発動。
扉全体を覆う氷だが、全体的にすっぽりと覆う形となる為、上下左右は壁にがっちりと食い込む形となる。結果、扉自身が氷により厚みを帯びた為、開く事が出来なくなってしまう。
砦という建物の構造上、一階部分には窓らしきものは存在しない、いわば、中央と右の建物は、完全に密封されてしまったのである。
あとは、砦上に上がり、上の通路を移動して隣の建物に移動するしか方法はない。
アイスコフィンによる氷は、普通の武器では破壊できないという所に、冒険者達の勝機はあった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
──ドシャャャャッ
バルバロッサの先制攻撃。
ゴブリン一体にむかって、その剛腕から生み出される一撃を叩き込んだ。
「まだまだぁ」
──ドシュュュッ
さらに返す刀で一撃。
その僅か2撃を真面に受け、さらに突然の襲撃という事もアリ、ゴブリンは武器を捨てて逃げ出した。
「悪いな‥‥」
──ドシュッ
ギルツの手にしたダガーがゴブリンの皮膚を切り裂く。
『グギャッ!!』
あわてて下がろうとするゴブリンだが、その胴部にギルツの2撃目が炸裂!!
力強いその一撃で、ゴブリンの内蔵はズタズタに切り裂かれ、骨の軋む音さえ聞こえてくる。
絶叫の後、武器を捨ててころげまわるゴブリン。
その横では、ティムが勇猛果敢にゴブリンと一騎打ち!!
「恨むなら‥‥怨んでください!!」
──スパスパァァァァン
高速で繰り出される2連撃。
その剣の早さに、ゴブリンはついて行く事が出来ずに切り裂かれる。
『ウギァァァァァ』
傷口を押さえつつ、そのゴブリンも武器を捨てて逃走。
「悪いが、後ろには女性がいるのだ‥‥」
アリスとエル、そしてメリルの楯としてガードをしていたのはラマ。
目の前のゴブリンに向かって鞭を唸らせると、相手をそのまま牽制。ゴブリン達を後方へとむかわせないように威嚇する。
その間に、アリスとエルの魔法が完成。
「凍てつく氷よ水の波動よ、彼の敵に対して吹き荒れよ‥‥アイスブリザード!!」
「大地の精霊さん。その理を逆転させて‥‥ローリンググラビティ!!」
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥ
激しく吹き荒れる吹雪がゴブリン達を襲う。
さらに追い撃ちの如く、エルのローリンググラビティが発動。
空中高く落ちていくゴブリンは、やがてまっ逆さまに大地に落下、烈しく地面に叩きつけられた。
吹雪に晒され、さらに止めに叩きつけられたゴブリンたちもまた、武器を捨てて其の場から逃走。
あとは残った雑魚を蹴散らすのみとなった。
──チームA
チームBの突撃と同時に、チームAは正面左の扉に蹴りを叩き込む。
そして素早く内部を確認すると、カーツ・ザドペック(ea2597)は隣の建物に面した回廊と、そこに付けられている開け放たれた扉を確認。他の敵には目もくれず、そこに向かって走り出した。
──ガキィィィィィン
扉を締めて鉄のスパイクを床に突き刺す。ハンマーで烈しく叩きつけると、その扉を開かないように固定した。
有視界には、コボルトが10匹。
どうみても雑魚のようなコボルトが7、そこそこに強そうな体躯のコボルトが2、そして奥で椅子に座っていた、皮の法衣をきているコボルトが1。
突然の襲撃に雑魚コボルト達は動揺していたが、その法衣を着たコボルトは立ち上がり一喝。すぐに士気を取り戻した。
が。
──ドシュュュュュュッ
オラースのスマッシュ2連撃が一体のコボルトを血祭に上げる。
真っ赤に染まった剣の下、血貯まりを作りながらコボルトの肉体が崩れていく。
「雑魚は俺に任せるじゃん!!」
さらにオラースは次のターゲットを定めて走る!!
「戦いは気合いだ!!」
ファットマンも手近のコボルトに向かい、力任せの2発。
──ドゴォォッドゴォォォッ
流石にその攻撃を受けたコボルトは胴部が真っ二つにされて死亡。
「次はどいつだ!!」
──ドゴッ
エレアノールの前方では、レイ・コルレオーネ(ea4442)が灼熱に燃える杖を手に構えていた。
バーニングソード、そしてあらかじめ唱えてあったフレイムエリベイションにより、戦闘特化ウィザートとなっている。
「‥‥ハッ!ザコどもが、かかって来な!」
フレイムエリベイションにより、口調がかなり烈しくなっているレイ。
前方からやってきたコボルトに向かい、炎の杖の2連撃を叩き込む。
そして同時に足払い。
神速の如き3連撃である。
「今だ!!」
さらにエレアノールが後方にて魔法を完成させる。
「水の精霊よ、彼の者に香りの棺を!!」
──ピシィッ
アイスコフィン発動。
ターゲットは法衣を着たコボルト。
だが、氷の棺は、コボルトの体表を被いはじめた瞬間にくだけ散る!!
「レジストですって?」
──ギリリリリッ
後方少し右に位置していたティルフェリスは、力一杯弓を引くと、さらに法衣を着たコボルトに向かって射る。
だが、その矢すら、ぎりぎりの所で躱わすコボルト。
「手前はコボルト戦士、奥は族長だ!! 只のコボルトではない、気を付けるんだ!!」
イルダーナフが全員に聞こえるように叫ぶ!!
ようやく敵モンスターの正体が判明した模様。
「上等、敵が強いほどやりがいがある」
カーツが敵コボルト戦士に挑む。
──キイィンガキィン
鋭く打ち付けるカーツの攻撃を、コボルト戦士は素早く受け流す。
雑魚では、カーツの攻撃など躱わす事すら不可であろう。
だが、それを難無くやり遂げるコボルト戦士。
「こいつらは引き受ける。先に雑魚を潰してくれ!!」
カーツの叫びに、一行は戦闘態勢を維持しつつ、敵を撃破していった。
コボルト族長には、ティルフェリスの弓とエレアノールのアイスコフィンが次々と発動。
近くで二人を守っていたレイの活躍により、魔法を阻害される事は無かったが、突撃してきた族長の一撃をレイが身体に打ち付けられた。
その一撃で、殆ど戦闘不可能に使い所まで追込まれたレイだが。
イルダーナフのリカバーにより回復。
そしてコボルト戦士とコボルト族長と戦っていたさ中、チームAが合流。
なんとか戦士と族長を撃破した模様。
一息ついてから、一行は次のターゲットをどちらに絞るか思案。
話し合いの結果、右の建物は恐らくゴブリンと判明、外に出ていた者を差し引いても残りは40。
いっきにカタを付ける為に体勢を整えると、アイスコフィンの氷が溶けるまで待機、そのままなだれ込むようにゴブリンを殲滅した。
そして最後に残った中央の建物だが、すでにイルダーナフを始めとする後衛の魔力が限界に達していた為、其の日は一時撤収、翌日に最後の建物の攻防戦という事になった。
夜のキャンプでは、うっかり保存食を買いわすれてきた者たちもいた為、足りない分は皆の余っているやつから分け、夜は見張りを立てて周囲からの警戒を強化し、翌日の為の英気を養った。
●最終日〜ハンディキャップなしで〜
──中央の建物内部
「これで大丈夫です」
ギルツに手を当ててそう話し掛けるノエル。
建物内部の作りは、中央に階段がアリ、その手間は大ホールになっていた。
一行が突撃したとき、そこには12体のホブゴブリンと一体のホブゴブリン戦士の姿を確認。
既にホブゴブリン達は戦う準備を終えて冒険者達が来るのを待っていたらしく、士気はかなり高かった。
いきなり乱戦となり、後衛でエル達を守っていたギルツがホブゴブリンの一撃を受けてしまった。
──シュン!!
ティルフェリスが弓を番えてホブゴブリン戦士を射る。
──ギィィン
その会心の一撃を、ホブゴブリン戦士は手にしていた楯で弾き飛ばす。
「何ぃ。そんな馬鹿な!!」
素早く次の矢を番えるティルフェリス。
そして入れ違いにメリルの矢もホブゴブリン戦士目掛けて飛ぶ。
──ドシュッ
今度は楯を構えるタイミングが合わないらしく、矢が身体に突き刺さる。
「こちらで援護できるのはここまでぢゃ。近接エリアとは別のにターゲットを変更させて貰うわい!!」
メリルも矢を番えつつ、他のホブゴブリンにターゲット変更。
その声と同時に、オラースも近くのホブゴブリンに向かってスマッシュ2連撃。
「時間の無駄じゃん。雑魚はとっとと死ね!!」
──ドシュドシュッ
その2撃であっさりとホブゴブリンは戦意喪失。
そのまま逃げようと腰が引くが、さらにカーツが追い撃ちを叩き込む。
「逃がす訳にはいかないな‥‥」
──ドガドガッ
カーツのモーニングスターがホブゴブリンの頭部を破壊。
とどめを刺された其の場に崩れていくホブゴブリン。
「うぉぉぉぉぉぉぉ」
後方から突然ファットマンの叫び声が響く。
先日逃がしたコボルトたちが、体勢を整えて再びやってきたのである。
しんがりを務めていたファットマンがそれを感知すると、入り口の所で一人、コボルト達を相手に戦闘突入!!
「ファットマンさん、魔法援護入ります!!」
彼の後方でエレアノールが詠唱開始。
ターゲットのコボルトに対して、次々とアイスコフィンを発動させる。
「建物の外の方が、狙いやすいのう」
さらに、エレアノールの横では、メリルが街道筋から走ってくるゴブリン達の軍勢に対して次々と矢を射る。
砦の外と中、二つの方向からの挟撃状態に追込まれた冒険者一行。
だが、人数は少ないものの、こちらは少数精鋭。傷を受けてすぐに後方へと撤退するオーガたちとは、その戦闘能力は比較にならない。
──ドゴォォォォッ
バルバロッサの正面のホブゴブリンが、止めの一撃を受け手真っ二つになる。
「あと何体だ!! 数を教えてくれ!!」
そのバルバロッサの声に、イルダーナフがファットマンの傷を癒しながら数を確認。
「残りは12。外に7、中に5だ!! 奥の階段から、まだ降りてくる奴がいる!!」
次々と襲い来るオーガの軍勢に、イルダーナフは先日よりも回復魔法を唱えるタイミングが速くなっている。
「こっちは私が!! 神よ、その癒しを彼の者に‥‥」
ノエルが、自分の目の前で戦っているレイにリカバーを唱える。
後衛魔法使いを守る為の楯として、レイはひたすらコホブゴブリンの攻撃を燃え盛る杖で受けつづけていた。
「攻勢にでれねぇ‥‥チッ!!」
必死に守りつづけるレイ。
彼とラマ、二人のガードがなければ、魔法使いたちは魔法を唱える前に其の場に崩れ落ちていたであろう。
さらに前方では、ティムがホブゴブリン戦士と一騎打ちに突入しようと走っていく。
「先制!! 吹き荒れろ‥‥白夜に舞う、白銀の風!アイス・ブリザード!」
ティムのダッシュと同時に完成したアリスのアイスブリザード。
それは、前方にティムがいない事を確認すると、ホブゴブリン戦士に襲いかかった。
──ゴゥゥゥゥゥゥッ
吹き荒れる氷の風。
その猛威を全身に受け、ホブゴブリンはその身が凍り付きそうになる。
「これで終りです!!」
──ドシュドシュッ
ティムの2連撃が炸裂。
一気に凍り付きはじめたホブゴブリンの肉体に亀裂が走り、大量の鮮血が吹き出す。
それでホブゴブリン戦士は士気が低下した模様。
後方からやってくる増援のホブゴブリン達に指示を出すと、自分は階段を駆けあがって逃走!!
入れ違いに走ってくるホブゴブリン達に、オラース、ギルツ、バルバロッサが回りこみ、次々とホブゴブリン達を言葉交わす事のない屍へと変えていった。
そしてティムは、ホブゴブリン戦士を追って走る!!
●殲滅完了〜夕陽が沈む〜
──砦
最後の幕引きはあっけなかった。
ティムに追い詰められたホブゴブリン戦士は、退路を完全に失ってしまった。
そのままティムに向かって攻撃を仕掛ける為に突撃したが、それを難無くとティムはかわした。
そのまま勢いが止まらず、ホブゴブリン戦士は砦から落ちるという結果になった。
指揮官と思われるホブゴブリン戦士の死により、士気系統は完全に乱れた。
そうなると、所詮は烏合の衆。
次々と撃破していき、最後には無残な屍を残すだけとなった。
死体の処理を終えた一行は、まずはここの砦にて襲われた商人達の冥福を祈る事にした。
簡易的ではあるが、イルダーナフとティムの二人に頼み込み、静かに葬式を執り行う。
死んだ商人達の持っていた遺品を一つ一つ回収すると、それを家族の元へと届ける為に丁寧にしまい込む。
そして砦内部の探索を開始、奪われた荷物のうち、食糧以外の物を回収すると、それを乗ってきた馬車に積み込む。
そして一行は、静かに砦を後にして立ち去って行った。
●そして結果
・倒した魔物総数(最終値)
コボルト族長 :1
コボルト戦士 :2
ゴブリン戦士 :2
ホブゴブリン戦士:2
ゴブリン :48
コボルト :44
ホブゴブリン :18
・味方の被害(重傷以下は回復済み)
死者 :0
重傷:12回(前衛のみ)
中傷:15回(全員が少しずつではあるが)
〜Fin〜