幸せの王子様殲滅作戦!!

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:7〜11lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 31 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月07日〜03月14日

リプレイ公開日:2005年03月13日

●オープニング

──事件の冒頭
 それはとある日の朝。
 いつもの冒険者ギルドでは、新人受付嬢がなにやらかにやら・・・・。

「えーっと、つまり、洞窟の奥にいる『幸せの王子様』を殲滅して、その身に付けている装飾品を奪ってくるということですかぁ? つまり追いはぎというか強盗?」
「こらーーー。そんな物騒なことを言うものではない。じゃから『幸せの王子様』というのは、我々の村の外れにある洞窟に安置されている『装飾を施された彫像』の事じゃよ。その王子様の手前に居る『木製の従士の彫像』と戦い抜かなければ奥まで進むことはできないから、腕のたつ冒険者を頼む」
 そうカウンター越しに告げる老人は、ノルマン南方のとある村の村長。
 今年に入って、その村は山賊に襲われてしまい、食べるものにも困ってしまったらしい。
 幸いなことに命まで奪われる事は無かったが、これからの季節を食糧なしで暮らすにはきつい。
 ということで、村に代々伝わっている『幸せの王子様』を破壊し、その身につけている装飾品を売り飛ばして『村人も幸せにしてもらおう』というものらしい。
「あのーー。一つ聞いていいですか?」
「うむ」
「どうしてそんな名前がついているのですか?」
「それはな、聞くも涙、語るも涙の物語でな。ぶっちゃけ、とある貴族のお嬢様が不治の病になってしまい、そのままでは死んでしまう為、とある有名な魔法使いの手で永遠の眠りについてしまったらしい。そのとき、お嬢様と将来を約束した王子様も、お嬢様を永遠に守る為に魔法使いの手によって彫像にされたということぢゃよ。王子様を彫像から元に戻すには、お嬢様の愛のこもったせせせせせせせせせせせ接吻がひつようじゃて・・・・」
 最後のほうは、どもってしまう村長。
 そんなこんなで依頼書を掲示板に張付けると、受付嬢は何事も無かったかのように仕事を始めた。
 つまり、この依頼は興味ないのね?
「人様の恋路をお金にするなんて・・・・」

●今回の参加者

 ea0186 ヴァレス・デュノフガリオ(20歳・♂・レンジャー・エルフ・ロシア王国)
 ea0714 クオン・レイウイング(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1603 ヒール・アンドン(26歳・♂・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea1872 ヒスイ・レイヤード(28歳・♂・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 ea2389 ロックハート・トキワ(27歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea4078 サーラ・カトレア(31歳・♀・ジプシー・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●という事で〜やってきました件の洞窟〜
──手前のちいさな小屋
「・・・・何かよく考えるとこの依頼って私たち悪役みたいですね〜。王子様を倒して身包み剥ぐわけですし・・・・」
 道中、静かにそう仲間に話し掛けているのはヒール・アンドン(ea1603)。
 確かに、そう言ってしまうととんでもない依頼である。
「まあ、食べる物ないほど、貧しくて飢えるなら、手短にある物売ってなんとかするわよね・・・・あの村の人たち、結構アコギよねぇ・・・・」
 ヒスイ・レイヤード(ea1872)がヒールの言葉にそう付け加える。
「ぶつぶつぶつぶつ・・・・」
 と、そんな会話など聞こえるはずも無く、ロックハート・トキワ(ea2389)はなにやらブツブツと呟いている。
「ロックハートさん・・・・どうかしたのですか?」
 サーラ・カトレア(ea4078)がそう問い掛けると、ロックハートはふと我に戻り、にっこりと笑みを帆浮かべる。
「ん? 俺の顔に何かついているか? ・・・・木偶人形が木偶人形が木偶人形が」
 再びブツブツモードに突入するロックハート。
「あのー。ロックハートさんがおかしいのですけれど・・・・」
 今度はヴァレス・デュノフガリオ(ea0186)にそう問い掛けるサーラ。
「まあ、色々とあるんですよ・・・・」
 そう呟くと、ヴァレスも南の空を見上げる。
「はぁ・・・・」
 頭を捻るサーラ。
 サーラはこう思った。
 今回の依頼は荒れると・・・・。

──小さな小屋
「ここか・・・・話にあった華国の武道家の家というのは」
 幸せの王子様から幸せを奪う為(悪人みたいだな・・・・)、一行は件の洞窟に向かって出発していた。
 道中、その洞窟の手前に住んでいる『華国の武道家』の家を一行は訪れている。
 幸せの王子様を撃破する協力を求める為にである。
「・・・・なにやら木製の従士を使って修行してるようですし・・・・お金出してでも手伝ってもらえるならその方が楽になりますしね・・・・」
 ヒール達は、簡単な打ち合わせをしつつ小屋までやってきた。
 今回の作戦のキーワードのひとつである『武道家との連携』。
 これを失敗したら、最悪大戦闘が待ち構えているのであるから堪らない。
──ガサッ
 静かに扉が拓開き、中から女性が姿を表わす。
「初めまして。俺はクオン・レイウイング。とある依頼で、この先の洞窟にいる幸せの王子様を撃破する為にやってきた。出来れば協力して頂けると助かるのだが・・・・」
 丁寧にそう話を持ち掛けるクオン・レイウイング(ea0714)。
「それはご苦労様です。私は紅飛鴻と申します。華国の武道家です。修行で諸国漫遊をし、この森林には一ヶ月ほど前から住んでいます・・・・」
 丁寧な口調でそう告げるのは、ほっそりとした異国情緒溢れる女性。
「では、ご協力をしてて頂けるのでしょうか?」
 サーラは静かにそう問い掛けるが、武道家の答えはNoであった。
「破壊するというのであれば、私は全力を持って阻止させて頂きます。あれは物語に出てくる限り、『人とその従者』。時が来たら彼等も元の姿に戻り、普通に幸せを得ることができるでしょう。その時をじっと待ち、奥に眠っている最愛の者を守っているのに、人のエゴでどうこうしてしまうというのはよろしくはないのでは・・・・」
 キッパリと言い切る飛鴻。
「ですが、それではあの村の人たちは飢えて死んでしまいます・・・・」
「そのために、時が来るまで眠っている者たちの財宝を奪ってよいと? あの扉の奥に眠っている財宝は、あの者たちのものです。当然、あの奥、地下空洞に眠っている女性も・・・・」
「なら、貴方はあの洞窟で、何故従士達を相手に修行をしているのですか?」
「私は従士相手の修行などしていない。ここは人のあまり踏込まない地域。『武術八法』を修める為にも、静かでやりやすいだけです。あの洞窟は最深部までたどり着いたこともあり、村でも言伝えは聞いています。ですからこそ、私はあの洞窟を守る!!」
──バッ!!
 右手を『単指手』と呼ばれる形に前に突き出し、グッと腰を落として身構える飛鴻。
 正論をぶつけてくる飛鴻。
 話は平行線で進み、共に妥協できる所はない。
「武道家として、貴方の名誉の為にも協力をして頂きたい・・・・」
 クオンが駄目もとで最後に頼むが、それも駄目であった。
「愚問!!」
 止むを得ず、一行は飛鴻と別れて洞窟へと迂回していった。


●洞窟〜ああ、弱いものいじめっ〜
──洞窟入り口
 正面にはポッカリと開いた洞窟。
 光の届かない奥はよくわからないが、10m先の部分からは両側に一体ずつ、木製の従士の姿を確認できる。
「ウッドゴーレムでしょうか・・・・」
 ヒールがそう仲間たちに確認するが、それに対する明確な返答を誰も答えられない。
 そんな中、ロックハートはスピアを手に、ズンズンと前に歩いていく。
「ちょっとまて!! 先に補助魔法を掛けるっ!!」
 ヴァレスが腰のスクロールホルダー(クオン製・猟師の手に掛かれば、皮の細工程度など・・・・だそうで)から素早くスクロールを引き抜くと、前衛として突撃するロックハートのスピアーとールのブレーメンアックスにバーニングソードを付与。
 さらに自分にはレジストプラントを唱え、万全の体勢を整える。

──ギリリリリリリッ
 クオンは力一杯弓を引き、その近くではバックアップのヒスイが詠唱を開始。
「タロンよ・・・・私達に守りの加護をっ!!」
 後方バックアップのサーラ、クオン、そしてヒスイの3人を包むように、ホーリーフィールドが展開する。
「先制いきますっ!!」
 そしてサーラも魔法詠唱開始。
 ジプシーであるサーラの使える唯一の攻撃魔法はサンレーザーのみ、洞窟など太陽光の無いところでは使用することが出来ないのだが・・・・。
「サンレーザーっ!!」
──ジューーッ
 サーラのすぐ近くから、サンレーザーが発動して飛んでいく。
 術者が太陽光の降り注いでいる場所にいるならば、例え相手が洞窟の中であろうともサンレーザーは発動する。
 屈折角度、湾曲収束角度を考え出し、サーラが洞窟の一番手前の従士に向かってサンレーザーを叩き込む。
──ドシュッ
 その瞬間、クオンの放った矢が従士に直撃。
 だが、従士は動かない。

「・・・・どういうことだ?」
「さぁ?」
 洞窟入り口でその攻撃を見ていたロックハートとヒールは頭を傾げる。
「ここから見た限りでは、あいつらが動くようには見えないんだがなぁ・・・・」
 そっと一歩踏込むロックハート。
 だが、従士は反応しない。
「フッフッフッ・・・・このやり場のない怒りをどうしてくれるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 そのまま微笑を浮かべつつ、ロックハート、一番手前の従士に向かって攻撃!!
──ゴイーーーーン
 だが、それが直撃するまえに、先に殴り飛ばされた模様。
「ロックハートさん!! 後衛の皆さん、援護をお願いします」
 ヒールが走りながらそう叫ぶ。
「私は了解です!!」
 素早くサーラは魔法援護に。
 そしてクオンは弓を引くと、仲間たちに当たらないように細心の注意を払う。
「戦っている仲間の隙間を縫い・・・・さらに従士にっ!!」
 正に、ピンポイントアタック。
 それも並の命中難易度ではない。
──ドシュッ!!
 風を切って飛んでいった矢は、ヒールとロックハートの間を抜けて従士の頭部に直撃する!!
 
 黒衣の狙撃手の異名は伊達ではないというところであろう。

 そして、長距離攻撃では従士は動かないこと、近くに行かないと反応しないことをヒールとロックハートは確認した。
「少しし面倒ですが一体ずつ壊して行きますか〜・・・・って、トキワさん・・・・微妙に嬉しそうですね」
「フッフッフッ・・・・貴様等なんぞあの魔人に比べれば『つかとすっぽんウサギで亀だ』ーーー」
 訳の判らないことを叫びつつ、二人は手近の従士を撃破!!
 ヴァレスは破壊された従士が木で出来ていることを確認すると、素早くプラントコントロールのスクロールを引出し、詠唱!!
「我が名ヴァレスに従い、植物達よ、我が配下となれ!!」
──シーーーーン
 反応無し。
「駄目だ・・・・ゴーレムにはコントロール系が・・・・って、ゴーレムなら駄目だ!!」
 詠唱して判る真実。
 はい、自分突っ込みご苦労様。
 そしてロックハート達の手伝いの為に、ヴァレスは内部に突入。
「ゴーレムなら、頭を破壊すれば・・・・って、それも駄目か!!」
 クオン、弓を引きつつ自分突っ込み。
 はい、頭部を破壊されても止まりません。
「ならば!! さらにぶち壊しつづけるまで!!」
 そう叫ぶと、ロックハートとヒールは奥へと走っていく。
 やがて、サーラの位置からはサンレーザーも詠唱不可能となり、サーラは神に祈るモードに移行。
──バシッ!!
 と、突然近くの茂みから一人の武道家、飛鴻が飛び出すと、素早く洞窟に向かって走り出した!!
「邪魔はさせないわよっ!!」
 いきなり飛鴻に向かって魔法詠唱発動。
──ブゥン
 洞窟手前にホーリーフィールドを展開。
 と、飛鴻はその結界に直撃し、後方へと下がる。
「貴方はここの従士を破壊しにやってきた私達を毛嫌いしている。むしろその存在に対しては敵対意識を持っていることは明白よ。ならば、私の唱えたフィールドは貴方を阻みますわ!!」
 普通は自分の身を守る為に使用するホーリーフィールドだが、ヒスイはこのような応用技も可能であった。
「あいや、邪魔するなアルっ!!」
 激しくフィールドを殴りつける飛鴻だが、その程度の攻撃ではびくともしない。
「あの像を見ろ!! 只のゴーレムだ。それでも貴方は奥にいる存在を人間と信じるのですか!!」
 クオンがそう叫ぶ。
「扉の奥の、氷づけの女性は本物よっ。それを守る為の御衛士や王子が破壊されたら、誰があの女性を守るのよっ!! それこそ勝手なエゴじゃないのっ!!」
 
 そんなやり取りの中、ロックハートとヒールは後半鼻歌混じりでゴーレム達を次々と撃破。
 やがて一番奥の一体の前にたどり着いた。
 全身に装飾品を付けている王子様。
「・・・・青銅の彫像、王子様ですねぇ・・・・」
 ヴァレスがそう呟いて一歩下がる。
「ヴァレスさん、これが何者かわかるのですか?」
 ちなみに現在突っ込んでいったロックハート、持ち前の知識から相手を判断しようとしたが失敗。
 同じ様な知識であるヴァレスは辛うじて成功。
「今までのがウッドゴーレムだとすると・・・・こいつは『ブロンズゴーレム』だぁぁぁ」
 ちなみにその力の差は歴然。
──ガギィィィィン
 ロックハートの攻撃は直撃する。
 ギリギリと動きだす王子様。
「なんだぁ? たいして手応えないぜ・・・・」
 やれやれという表情でそう呟くロックハートだが。
──シュゥゥゥゥッ
 なんと、ゴーレムの傷が再生していく。
「にゅ?」
 一瞬だけほうけた表情になるロックハート。
「さささささささ再生したぁぁぁぁぁぁ!!」
 これにはヴァレスも大慌てだが。
「私達が囮になります!! ヴァレスさんは奴に取り付いて装飾品を奪ってください!!」
 ヒールも武器を構えて特攻!!
「ち、ちょっと待って!! そんなの無茶だ!!」
──ヒュゥッ!!
 と、再び3人の隙間を掠めて飛んでいく矢。
 それはゴーレムの首筋を掠め、ネックレスの糸をちぎった。
──パラパラパラッ
 真珠や宝石が彼方此方にばらまかれていく。
「それだけでも回収すれば依頼は成立する!! 距離を放せば相手は動かないと飛鴻が説明してくれた!!」
 クオンがそう叫ぶ。
 しかし、恐るべき狙撃手である。
 そしてヴァレスは、レンジャーならではのその身軽さを生かして宝石を回収、一行は素早く洞窟の外に出ていった。


●顛末は〜王子様のみ残った模様〜
──村
 無事に依頼をクリアした一行は、村長に宝石を渡し、パリへと帰還する。
 飛鴻の助言で無駄な戦闘からは回避できたものの、そのまま飛鴻は自分の住みかへと戻っていった。
 
 洞窟には、一体の王子様。
 その奥には、氷の中で眠っているお姫様。
 いつか目覚めて、幸せになる日がくるまで、王子様は・・・・ずっとお姫様を守っているのでした。
 財宝を狙う、悪い冒険者からお姫様を守る為に・・・・。

〜Fin