●リプレイ本文
●ということで〜やってきました江戸風景〜
──ノルマン江戸村
「・・・・随分と完成しているみたいだな」
街道筋を走る定期馬車。
ノルマン江戸村入り口で、停車している馬車から荷物を降ろしながら、レーヴェ・ツァーン(ea1807)がそう呟く。
依頼を受けた後、一行は戦う準備や詳細などを打ち合わせて、ここノルマン江戸村にやってきた。
最初に目に入ったのは、綺麗な宮づくりの神社。一人の巫女が、作られたばかりの鳥居の下で落ち葉を掃いている。
村のあちこちから大工作業の音が響いてくる。
半ば完成した土蔵に荷物を搬入している使用人、てきぱきと指示を飛ばしている商人達、そして走り回ってる大工と、ここを下見にやってきた普通の人々。
大勢の人たちで、そこは賑わっていた。
「しかし、かなり賑わっている。いい村になるんじゃないか?」
リュオン・リグナート(ea2203)も荷物を降ろした後、横で周囲を見渡している時雨に声を掛けた。
「ああ・・・・実にいい場所じゃん。この団子、この御茶、実にいい・・・・」
と、入り口横にある小さな茶店で、時雨桜華(ea2366)はズズズと茗(めい)をすすっている。
本物の茶など手に入らないノルマンでの、商人達の苦心の『御茶・茗』、すなわち遅積みの御茶である。あまり見向きされなかった古いものを、安く大量に仕入れてきたのであろう。
この村ならではという所である。
「おお、あれが話の剣術道場だな?」
前方をじっと見ながら、ファットマン・グレート(ea3587)がそう叫ぶ。
「あれか・・・・」
そうファットマンの声に誘われて、ウォ・ウー(ea6027)もその方角を見る。
が、その瞬間、ウォは自分達に向けられている嫌な視線に気が付いた。
(ねっとりとする殺気か・・・・一つ? いや、それもかなり・・・・)
そのまま横で周囲を見渡しているガイの方を向くが、ガイもまたその視線に気が付いていた。
「ひょっとすると・・・・一騒動あるな?」
ガイ・マードゥリック(ea6085)の呟きに、静かにウォは頭を縦に振る。
そして一行は、周囲に注意しながら剣術道場へと向かっていった。
──道場にて
「あー、ご苦労様。私がこの道場の師範を務めさせていただいている宮村武蔵と申します」
深々と礼をするミヤムゥ。
「これは、丁寧な挨拶ありがとうございます。冒険者ギルドの依頼でやってまいりました」
リュオンがそう挨拶を返す。
いつもの口調ではなく、依頼人に対して礼に礼をつくして返す丁寧な口調。
「取り敢えず荷物を置いてきてください。試合は明日の正午。それまでは、この村をゆっくりと堪能してください」
そのミヤムゥの言葉に、一行は宿を手配。
5人部屋に寝袋を一つ持ち込むという大胆な作戦。なんとか一人頭割り0.2Gで宿の亭主に納得してもらい、一行は一夜の宿をゲット。
道中の足りなかった食糧をガイは、この村で購入した。
そして其の日は、身体を休めたり、明日の為の鍛練を行なったりと、気合十分の一日を送っていた模様。
●そして試合〜成る程ねぇ〜
──正午
ドーンと太鼓が鳴り響く。
道場破りの劍士たちと、ミヤムゥ率いる道場の人間が、綺麗に正座をして相対峙している。
「宮村殿。判って居るとは思いますが、貴方たちが破れた場合は・・・・」
口許にニヤリと笑みを浮かべる剣士。
話し方から察するに、どうやらこの男が道場破りの師範の模様。
蛇の如く鋭い視線を一行に送りつつ、男はミヤムゥにそう話し掛けた。
「あー、はいはい。能書きはいいから、とっととやって頂戴」
高飛車な口調でそう呟くミヤムゥ。
と、審判を務める剣士が、中央に立つ。
「それでは、先鋒の2名、参られい!!」
──ガイ出撃
「・・・・」
力一杯名乗りを上げようとしたが、この厳粛な雰囲気ではそうも行かない。
静かに呼吸を整えると、ガイは前方に立つ一人の剣士をじっと睨みつけた。
マントを羽織り、じっとガイを睨みかえす女性剣士。
(まさか・・・・同じ流派?)
独特の構えに、ガイは見覚えがあった。
「それでは・・・・始めっっ!!」
審判の手が振りおろされる。
と、いきなりマントを翻し、女性剣士が一撃を叩き込んできた。
──パァァァァン
ブラインドアタック。
相手が同じ流派なら、ガイはそれに打ち勝つ自信があった。
敵のブラインドアタックを視線で捉えると、そのまま素早く抜刀、その一撃を受け流した。
「くっ・・・・」
さらに一撃が来るであろうと身構えたが、女性剣士はそれ以上の踏込みはしない。
「なら!! このゴエモン様の一撃、とくと味わえ!!」
──ビシィィィィィッ
一旦マントの下に竹刀を戻すと、ガイは叫びながら必殺の一撃を叩き込んだ。
その速度に追い付けず、女性剣士は胴を薙がれてしまう。
「それまで!!」
──もう一度ガイ
「ガイ、反則負けにより、二番手サカザキの勝利!!」
あー。
勝ち抜き戦2番手で立上がったサカザキという剣士に対して、ガイは必殺の『流星踵落とし』を炸裂。
あっさりと反則負けとなってしまった・・・・。
「剣や指輪や指輪や指輪にたよってるようじゃ真のサムライとはいえねぇ・・・・偉い人には、それが解らないのだ・・・・」
はいはい。
──2番手・ファットマン
ガイの時とはうってかわって、激しい竹刀の攻防が続く。
パンパンと打ち付けられた竹刀は、一旦ファットマンのものが折れてしまった為中断、竹刀を交換しての再戦となった。
(ガイの時とは流派が違う・・・・奴等には統一した流派は存在しない・・・・こいつらも、寄せ集めか!!)
2番手としての役割。
相手の力量を知るという所である。
長い時間をかけて、相手の動きを見極めようとするファットマン。
そして、その長い戦いにはファットマンが破れてしまう。
だが、この戦いで得たものは大きい。
「相手も雇われた者たちばかり。最初の構えで全てを理解できる筈・・・・あとは頼むぞ」
そのファットマンの想いを胸に、三番手・リュオンが立上がる。
──3番手・リュオン
「・・・・薩摩示源流か・・・・」
目の前で構えた志士を見ながら、リュオンは静かに呟いた。
ガイとファットマンの戦いをじっと見つつ、リュオンは目の前に座っている道場破りの服装などを注意してみていた。
そして相手が構えなおしたとき、その独特の構えにそう呟く。
ファットマンとの戦いで、すでに肉体は疲労している。
最後の賭けに出た剣士がとったその構えが、彼に敗北の二文字を叩き込んだ。
──ビシィィィッ
小手先の技は無用。
相手の懐目掛けて力強く飛込むと、片腕でその喉元に突きを叩き込むリュオン。
「そこまで!!」
──もいちどリュオン
敵の次の相手はノルド流。
素早く一撃を叩き込もうとした刹那、カウンターアタックで胴を薙がれるリュオン。
これで2勝3敗。
──4番手・レーヴェ
敵3番手は先程のノルド流剣士。
奇しくも、ノルドvsノルドの構図となってしまう。
そのままレーヴェは先制攻撃!!
それを難無く躱わす敵ノルドの剣士は、素早くカウンターアタックを叩き込んでくる。
が、それはオフシフトにより素早く躱わす。
ただそれだけの攻防で、相手のノルドの剣士は負けを認めた。
棋士と呼ばれる者たちは、常に相手の先を読んで行動に出る。
このノルドの剣士もまた、自分の技量とレーヴェの技量を比べたのであろう。
「ふう。一番嫌な相手だった・・・・」
レーヴェはそう呟くと、額に流れる嫌な汗を拭いつつ、次の相手を待つ。
──レーヴェ。もう一度
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
敵4番手はコナンの重戦士。
巨大な木刀を力任せにブンブンと振回してくるが、その何れもオフシフトで難無く回避。
そのまま相手の隙をついて、軽く一撃を叩き込むレーヴェ。
これで4勝3敗
──さらにレーヴェ
どっごぉぉぉぉん
激しいぶち当たりを叩きつけられるレーヴェ。
敵副将はカールスのレンジャー。
身体からぶつかってくると、そのまま体勢を崩したレーヴェに必殺の一撃を叩きつける。
「くっ・・・・こんな戦い方を・・・・」
やむなくレーヴェ敗北。
これで4勝4敗。
──副将戦
いよいよ残り二つ。
敵はカールスのレンジャー。
そして道場側はウォ。
「始めっ!!」
審判の手が振りおろされる。
──パァァァンパァァァァン
激しい剣戟が鳴り響く。
共に小細工無用、兎に角激しいガチンコ勝負。
(あの大将・・・・かなり出来るのか、それとも・・・・)
敵大将の席に座っているのは、子供のような体格の戦士。
顔には『スマイルマスク』を被り、そわそわと周囲を見渡している。
──スパァァァァァァン
戦いは一瞬。
敵の動きに隙が見えた刹那、ウォはそのまま頭部に一撃を叩き込んだ。
これで5勝4敗。
──も一度ウォ。
いよいよ大将戦。
敵スマイル戦士の獲物は木製アックス。
構えも目茶苦茶、何もかも目茶苦茶。
「・・・・こ、こんな戦いづらい相手は久しぶりだ・・・・」
仁王立ちで、頭上から威圧してみるウォだが、そんな行動も全く無視されている。
「それでは、始めっ!!」
──ドゴォォォォォン
いきなりスマイル戦士が懐に飛込むと、ウォの胴部にアックスを叩きつけた。
力任せの一撃、それでいて素早い。
受止める自信はあった。
だが、それよりも早い一撃。
「に、人間か?」
そのウォの言葉に、スマイル戦士は何も告げなかった。
これで5勝5敗
──大将戦
満を持して登場したのは時雨。
目の前のスマイル戦士をじっと見据え、静かに構えを取る。
「・・・・怪我には気を付けてなぁ・・・・」
相手に対してか、それとも。
そう呟いた時雨に、スマイル戦士も静かに答えた。
「シゴト、シゴト」
はぁ?
まあ、何を言っているのかよく判らないまま、試合は開始。
「それでは・・・・始めっ!!」
──ビシビシビシィィィィィィィッ
両腕の木刀+蹴り!!
(蹴りは反則だぁぁぁぁ)
そう心の中で叫ぶガイ。
だが、惜しい、時雨は陸奥流。
流派の技ゆえ有効と扱われた模様。
その全ての攻撃を『体で受止める』と、そのままスマイル戦士は時雨に向かって特攻!!
「それまで!!」
あ、つまり有効打全部体で受止めたわけだから、一本。スマイル戦士、ルールを理解していない。
「勝負あり。この試合、宮村流剣術道場の勝ちとする」
その審判の声の後、道場破りは静かに立上がる。
「ほら。これで勝負あったでしょ? とっととお家に帰りなさーーい」
そう呟くミヤムゥ。
と、突然道場破りはフッフッフッと笑い出す。
「こうなったらヤケだ!! てめえらやっちまえ!!」
その叫びと同時に、道場の扉やふすまが次々と開かれる。
浪人崩れや冒険者崩れが、真剣を手に姿を現わした。
「卑怯な!!」
そのミヤムゥの叫びと同時に、ガイが全員に合図を飛ばす。
「そうくるのは先刻承知!! てめえら、問答無用でたたっ切っちまえ!!」
叫ぶガイに反応し、全員が獲物を持ち変えた!!
先日感じた視線の正体がこれ。
正攻法だけで来ない事を考えた一行は、こうなる事を予見して武器もちゃんと道場に持ち込んでいたらしい。
「上等だ!! 先生、御願いします」
スマイル戦士にそう告げる道場破りだが、先生は仕事を終えて外に遊びにいきました。
──そして、お約束の乱戦
全てのカタが付いたのは夕刻。
流石に殺してしまうと問題がある為、全員峰打ちで敵のちんぴら達を撃退。
道場破りは、ノルマン江戸村自警団『め組』のご一行に連れ去られていきました。
そして、冒険者達は、残った時間を有意義に過ごすこととなった。
余談ではあるか、一行は一休みしたのちミヤムゥとの手合わせを行なったが。
全滅でした・・・・。
合掌。
〜Fin