沈没船からの遺品回収

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜3lv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 85 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月07日〜07月13日

リプレイ公開日:2004年07月09日

●オープニング

──事件の冒頭
 静かな風が浜辺を駆け抜ける。
 そんな小さな浜辺に、その小瓶はたどり着いていた。
 コルク栓で厳重に密封されていたその瓶の中には、一枚の手紙が入っていた。

──手紙の内容
 この船はもうおしまいだ。
 この嵐では、おそらく無事にノルマンにたどり着くことは出来ないだろう。
 マストも折れ、すでに下の船倉にまで浸水している。
 乗組員達はなんとか逃げ延びようとしているらしいが、この嵐では、どこにも逃げようはない。
 
 この手紙を運良く見つけてくれた貴方に頼みが在る。
 私はここで、私の船と運命を共にする‥‥死ぬだろう。
 だが、本国で私の帰りを待っている妻や子供達に、渡しておきたかったものがある。
 それを届けて欲しい。
 この船が沈みはじめた座標は‥‥である。
 運よく発見できたら、私の部屋に有る小さな革鞄を届けて欲しい。
 それでは。
──ここまで

 この手紙は冒険者ギルドに届けられた。
 幸いなことに、嵐にあって沈没した船に付いての噂話は、すでにギルドにも届いていた。
 依頼主がなく、仕事にならないというギルド員は、この手紙を受け取った後、何処かに走っていった。
 そして慌てて何かを書きはじめると、掲示板に仕事の依頼書を張付けていた。

●今回の参加者

 ea1553 マリウス・ゲイル(33歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea2148 ミリア・リネス(21歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea3641 アハメス・パミ(45歳・♀・ファイター・人間・エジプト)
 ea3920 陸奥 みらん(25歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●船上にて〜移動中でも準備OK〜
──トンカントンカン
 沈没船の座標海域付近に向かう交易船。
 愉しい船旅になる筈だったが、冒険者達の作業の手は休まらなかった。
「そちらの準備はどうですか?」
「こっちの樽は準備OKだな」
「私の方も、後少しで終りです」
 マリウス・ゲイル(ea1553)は普段使いなれているスピアを釣り竿に持ちかえ、移動中の食事の賄いである魚との激しいバトルを展開中。
 その後ろでは、大量の樽に錨をつけて空気樽を作る作業が進められている。
 風 烈(ea1587)とゼルス・ウィンディ(ea1661)が空気樽の作成、アハメス・パミ(ea3641)は海底までのガイドロープとそれにつけておく小さな空気樽の準備を行なっていた。
「外洋というのは、母なるナイルとは大違いだな‥‥」
 今までに見た事の無い初めての外洋とあって、アハメスは少々興奮ぎみのようである。
「さて、ガイドロープと樽、錨の括りつけも終りました。これで目的の沈没船の上にたどり着けば、これで多少の空気は確保できますし、万が一方向を見失ってもロープがあれば大丈夫でしょう」
 完成したガイドロープを見ながら、満足げにそう告げるアハメス。
「こっちのガイドロープも大丈夫ですね。あとは船までの深度がどれくらいなのか‥‥」
 陸奥 みらん(ea3920)が、自分がつかうガイドロープの強度などを調べながら、静かにそう呟いた。
「‥‥あ、引いてる‥‥」
 ミリア・リネス(ea2148)が、釣り竿に響く手応えに、静かにそう告げた。
「躊躇してないで、急いでアタリが来ているうちに!!」
 陸奥がそう叫びながらミリアの釣り竿に手を掛ける。
 そして竿に響く感触を確かめると、そのまま一気に引き上げる。
──ビシィッ
 その瞬間ジャストミート。
 竿が軋み、糸が海上を右往左往しはじめた。
「きたきたきたー。大物ゲットですー!!」
 そのまま陸奥とミリアの二人がかりで、大物を一匹ゲット。
 釣り上げられた魚は厨房のシェフに御願いし、現地到着までの腹ごしらえとなった。


●沈没海域〜鮫はやっぱりいました〜
 手紙に記された海域。
 そこにたどり着いた一行は、海上にプカプカと浮いている木片やバックなどを次々と確認。
 そのあたりが例の沈没船の座標だと考え、一旦船長に停泊してもらった。
──ザッバーン
 次々と空樽のついたガイドロープを海の中に放り込む。
「さて。それでは始めるとしますか」
 そう告げると、マリウスは船倉にしまっておいた樽をひとつ甲板にもってくる。
 その間、風烈とアハメス、陸奥の3名が投網の準備。
「そーれぃっ」
 樽の中には、ここまで来る途中で捕まえた魚などの血や内蔵が大量に詰められていた。
 これをばらまき、鮫をおびき寄せて網で捉えようという作戦である。
 幸いな事に、陸奥は本国では漁師としての仕事も多少していたらしく、投網のタイミングなどは陸奥の合図を待つことになった。
──ザバザハザバザバサバッ
 突然海上に波が立ち、鮫が大量に集まってきた。
 その数、全部で5匹。
「3、2、1、今です!!」
──ザバゥァァァァァン
 鮫の一杯集まった場所目がけて、投網を投げる。
 そしてすかさず引き上げる。
 船腹まで引き上げたら、アハメスが手にしていたスピアで脳天をつき差し、とどめを刺す。
 そうしながら次々と鮫の死体を甲板に引き上げ、1時間後には甲板になんと12匹の鮫の死体が集まった。
「‥‥もう反応はないですね」
 そう呟くと、ミリアが魔法詠唱を開始した。
──ホワーーーーン
 ミリアの全身が淡い青色に輝き、そして静かに消えていく。
「では、いきましょう」
 そのまま海に勢いよく飛込むと、ガイドロープを伝って静かに海底に向かっていくミリア。
 それに続き、マリウス、風 烈、アハメスも海に飛込む。
 甲板では、ミリアの伝っているガイドロープを起点に、ゼルスがクリエイトエアーを発動させた。
 ブクブクと海中に新鮮な空気が発生し、それが気泡となって海上に上がってくる。
 その途中の樽の中にも空気は送り込まれ、常に潜水している者たちが呼吸を続けることが出来る状態を作り上げていた。
「さてと、それではしんがりには私が‥‥」
 陸奥 みらんが印を組み韻を紡ぐ。
──ボン!! 
 一瞬みらんの周囲に煙が立ちこめ、静かに消えていく。水遁の術である。
 そして海の中に飛込むと、みらんもまたガイドロープを伝って静かにそこに降りていった。


●海底〜哀しさの残る船内〜
──ゴボッ
 海底20m。
 浅瀬にある暗礁に、沈没船は引っ掛かっていた。
 船の大きさは全長20m程の一本マストタイプ。コグともダウとも呼ばれているタイプで、船尾にある船尾楼と呼ばれる部分に船長室がある普通の商船である。
「ありましたね‥‥」
 空気樽の中で、マリウスがそう呟く。
「ええ。幸いなことに、鮫は殆ど取りつくしたようですし、安心して捜索できますね」
 合流したゼルスがそう告げると、二人は更に海底にある次の樽へと向かっていく。

──一方そのころ
 沈没船の甲板では、陸奥 みらんとミリアの『魔法で水中もへっちゃら』チームが、周囲の警戒を行なっていた。
(みらんさんは女性だから、安心できますね)
 ちなみにミリア、水中での活動を考えて肌着のみでの潜水。
 水に濡れた肌着がボディラインをあらわにしていたため妙にセクシー。
(上上)
 と、突然みらんが上を指差す。
 ちょうど風烈とアハメスが甲板に到着するころらしい。
 その頃合を見計らって、ミリアは胸を隠しながらみらんの後ろに退避。
(?)
 風 烈にはその行動が判らなかったが、アハメスは直に理解したらしい。
 甲板に安定させた空気樽の方を指差すと、ミリアをそこに呼んだ。

──ザバッ
「これでも羽織っていたほうがいいですね」
 空樽の中に頭を突っ込むと、アハメスは自分がつけていたマントをミリアに手渡す。そしてふたたび呼吸を整え、海底に潜っていく。

──ザバッ
「‥‥はあはあ。次の魔法いきますねー」
 樽の中にゼルスが顔を出す。
 そして呼吸を整えると、魔法詠唱を開始。
 樽を斜めにして視線を通し、すぐ近くに起点を作る為に、クリエイトエアーを発動させる。
 そしてそのクリエイトエアーの起点に向かいまた呼吸を整えると、さらに起点をつくりクリエイトエアーを発動。
 それを繰り返していくことで、ひとつの船室の中に空気溜まりを作り出すことに成功した。
「あとは、遺品の探索ですね」
 ゼルスがその船室でそう呟いた。
「鮫が一匹うろうろしていましたね。あれは私が牽制しておきましょう」
 アハメスがそう告げると、そのまま船室から出て行く。
「手伝ってきます。今のうちに奥の方を御願いします」
 マリウスがそう告げると、左腕にオーラシールドを発動。そのままアハメスの後を追いかける。
「‥‥ということで、あとはよろしく」
 風烈も船室の外に移動。
 船内にはゼルス、ミリア、陸奥の3人のみになった。

──甲板上
 幾つかのクリエイトエアーの起点を使い、いつでも戦えるようなスタイルで構えるアハメス、マリウス、風烈の3名。
 近くに鮫がやってくるが、空腹ではないらしく、ただうろうろしているようである。
 もっとも、いつ襲ってくるか判らないため、3人とも構えを崩すことなく警戒を続けていた。
(危険はないようですが、万が一ということもありますか)
(まあ、そのときはそのときだな。余り殺生は好まないが‥‥)
 マリウスと風烈の二人がクリエイトエアーで作られた空気の塊の中で会話をする。
 やがて鮫は何処かに消えていき、3名は戦闘体勢を解除した。

──船長室
 そこには船長の遺体が漂っていた。
 小魚などか遺体をついばみ、すでに原形は止めていない。
 ここにくる途中までも、船員達の遺体が発見された。
(‥‥この箱ですね‥‥)
 陸奥が静かに漂っている箱を指差す。
「そうみたいですね。では‥‥」
 ミリアがそう呟きながら、箱を手元に手繰り寄せた。
 そして遺体の胸に掛かっているロザリオを遺品として回収すると、3名は静かに外に向かった。

 そして甲板上の3名と合流。
 アハメスの提案で、残っている船員達の遺品の回収も行うと、一同は船に別れを告げて海上へと向かっていった。


●帰路
 ノルマンに無事にたどり着いた一行は、一旦冒険者ギルドに向かうと依頼が無事に終ったという報告書を提出した。
 その上で、アハメスの提案で遺品を船長の家まで送り届けると、他に回収した船員達の遺品もまた、遺族達のもとへ届けていった。

 哀しい事故がまた起こらないようにと、祈りを捧げつつ‥‥。

〜FIN〜