●リプレイ本文
●ということで〜まずは着替えて打ち合わせ〜
──冒険者街の酒場・事務室
「‥‥とまあ、これだけの仕事がありますが、皆さんには『古ワイン』目当ての只呑み野郎の撃退を御願いします。いつもの『武闘派ウェイトレス』さんたちがいないので少々不安なものはありますが‥‥」
チーフウェイトレスの女性が、其の場に座っている一行にそう話している。
兎に角問題なのは、入っていきなり『いつもの古ワイン』とだけ言う悪質常連客。
そのまま何時間も、古ワインだけで楽しそうに話をされていては、酒場としては商売あがったりである。
古ワインをメニューから外すという方法にも出た事があったらしいが、口直しに飲みたいという普通の客の要望もあり断念。
現在はうまくあしらい、時によっては実力行使で店の外に叩き出しているらしい。
そして説明を受け終えると、一行は更衣室へと移動。私服が汚れるといけないという事で、仕事用の制服を借りる事となった。
「うわ〜、こういうのはなんか落ち着かないなぁ‥‥」
カタリナ・ブルームハルト(ea5817)は、貸与された制服を身に付けてくるりと一回転。
ふわっと竹は長いが軽い生地のスカートが舞い上がり、そしてまたゆっくりと下がっていく。
胸の部分が多少強調され、そして全員同じデザインのエプロンを付けている。
制服のデザインは、この店の常連である服飾デザイナーの『アンナ・ミラー』という女性デザイナーによるものらしいが、それは余談。
ふとカタリナは、他の仲間たちの『胸許』に視線を飛ばす。
(リュリュさん、ユリアさん、淋麗ちゃんとは同じぐらいかな? アミィさんには負けていますか‥‥)
そう心の中で呟きながら、ふとノリアの方に視線を泳がせる。
──プチッ
と、ノリアの制服は、胸許の少し下にある、胸を強調させる為の留め紐が千切れ飛んだ。
「あっちゃあ。胸が合わないか‥‥」
ノリア・カサンドラ(ea1558)が頭をポリポリと掻きながらそう呟く。
(ま、負けたわ‥‥)
がっくりと落ち込むカタリナ。
「これが本当のノリアボンバー‥‥アガアガ」
そうボソッと呟くリュリュ・アルビレオ(ea4167)の頬を、ノリアが左右にニィィィッと引っ張る。
「何かいったかなあ?」
「な、何もいってまひぇん‥‥」
そんな二人をよそに、ユリア・ミフィーラル(ea6337)と淋麗(ea7509)の二人が着替えを完了。
「ずいぶんときわどい服ですよね?」
そう話し掛けるユリアに、淋麗は真っ赤な顔。
「この年で、この様な格好は恥ずかしいです‥‥」
そう呟く淋麗に、アミィ・エル(ea6592)が高笑い。
「おーーっほっほっ。十分可愛いですわよ。さあ、皆さん頑張りましょう。わたくしならば、どんなお客でも追い出してさしあげますわ。おっほっほっ!」
うむ、今回のウェイトレス諸衆はかなり頼もしい模様。
●戦闘開始〜酒場の真ん中で何やら叫ぶ不良客〜
──店内
夕方。
店内には仕事を終えて一杯やろうという客で溢れかえった。
通常オーダーを運んだりしているウェイトレスの横で、『冒険者ウェイトレス達』は、奮闘している模様。
「いらっしゃいませー。何をお求めですかー」
にっこりと笑顔で接待するノリア。
「お、新人さんかい? いいねぇ‥‥いつもの古ワイン頼むよ」
──ピキーーーン
不良常連客キーワード『いつもの古ワイン』入りました。
そのままにっこりと微笑み、ノリアは厨房へと移動。
やがて木のマグカップを手に、ノリアは客のもとへと戻ってきた。
「御待たせしました。ここ数日はめっきり寒くなっていますから、体の芯から温まってくださいね」
ああ、ノリアさん目がマジです。
「おお、これはヴァン・ショー(ホットワイン)じゃないか。私はこれに目がなくてね‥‥」
そう言いながら、木のマグカップに注がれたホットワインに口を付ける不良常連A。
「ズズズ‥‥すまんが、ハチミツが入っていないようだが‥‥。それに柑橘系ハーブも。その二つが入っていないと、ホットワインとしてはどうかとは思うがね?」
悪質な常連。しかもワイン通。
何故古ワインなど飲んでいるのか判らない。
「か、かしこまりました‥‥」
頬を引きつらせながら、ノリアさん厨房に移動。
ノリア迎撃失敗‥‥残念!!
「いらっしゃいませこんにちわ〜♪ 今日の注文なにかしら〜♪ 価格据え置き大奉仕〜♪ 産地直送さぁどうぞ〜♪」
歌を歌いながら走りまわっているリュリュ。
「お嬢ちゃん、俺、いつもの古ワイン」
またきましたキーワード。
「御待たせしました。こちら、いつもの古ワインとなっておりまーす。本日は特別ご奉仕価格、たったの5cでーす」
にっこりと告げるリュリュ。
「なにぃ‥‥高いってば、いつもはタダじゃないか!!」
そう文句を告げる不良客B。
「なにー? たかいー? お盆スマッシュ食らいたいの? ア ナ タ」
ちなみに目がマジなリュリュ。
「あ、いや‥‥これじゃなくて‥‥普通のワイン下さい‥‥」
お、引き下がったか不良客B。
リュリュ、教育的指導により一本!!
「お、お嬢ちゃん、古ワインもう一本!!」
初老の男性がカタリナにそう話し掛けた。
「お客様ぁ。本日はお一人様一杯と限らせて頂いていますー」
「ふぅん‥‥ヒック。じゃあ、こっちでいいや!!」
グワシッと目の前で話しているカタリナの胸を鷲づかみ。
──ヒクッ!!
と、カタリナ、頬が引きつる。
──ドン!!
どこからともなく引き抜いた太刀をテーブルに叩き込むカタリナ。
「いやだぁお客様ったらぁ‥‥」
一人目の接客にして、逆鱗に触れた模様。
そのまま不良老人Aは、古ワイン代3cをテーブルに置いて静かに立ちさって行った。
(‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)
心の中で絶叫するカタリナであった。
それを見て、ノリアさんも静かに肯く。
(なんだ。いつも通りでいいのか‥‥)
いや、それはちょっと。
カタリナの一本勝ち!!
「お客様ぁ。ここで眠られると他のお客様の迷惑になりますので。え? お支払は後日ですね。かしこまりましたぁ‥‥」
突然テーブル上に潰してしまった不良客Cの耳元で、ユリアがそう話し掛けた。
そしてユリアの合図で、他のウェイトレスが不良客Cを店の外へと移動。
「ユリアさん、15番のテーブルのお客さんも御願いします。もう2本目に突入しています」
そうユリアに話し掛ける普通のウェイトレス。
「判りました。あのお客さんですね」
そのまま対象者を確認すると、ユリアは静かに印を組み韻を紡ぐ。
ユリアの全身が淡い銀色に輝いた。
そして、対象者である不良マダムAは突然の睡魔に襲われて撃沈。
「はい、あとの処理を御願いしますね」
後方援護型ウェイトレスのユリアさん、限界まで奮闘中。
ユリア技あり。合わせて一本!!
「こちらり古ワインでしたら100年物となっております。かの有名な葡萄の産地で積まれた葡萄から厳選された材料を用いてつくられまして‥‥」
丁寧な口調で不良貴族Aと戦って居るのはアミィ。
「ふむ。では、そのワインだと、どのような料理とあうかね?」
「少々お待ちください。本日のメニューの中からお薦めの料理をシェフに訪ねて参りますので‥‥」
専門的な分野に突入するとアミィは不利である。
そのまま厨房に向かうと、シェフにそれらの質問をぶつけ、そして戻ってくる。
「ウナギの良いのが入っているそうですので、そちらと合わせると宜しいかと」
「ウナギねぇ。なら、別の古ワインを持ってきてくれたまえ。兎のシチューと一緒に。それにあう古ワインを頼む」
むむむ。
他の客は簡単にあしらってきた技術が、本物の貴族には通用しない模様。
「では、特等席へご案内しますわ。そちらはこの店の中でも特別な御席でございます。席料は別に戴きますが、最高のおもてなしをさせて頂きます」
作戦その2『特等席へご案内』を始動するアミィ。
その話術に騙され、貴族は特等席へとご案内。
ワイン5本分の席料など気にすることなく、不良貴族は甘い時間を堪能しているもよう。
そしてちらっと淋麗の動きを見るアミィ。
(まあ、頑張っているみたいね‥‥)
口に出したら喧嘩腰なのだが、心の中では安否を気遣っている模様。
この勝負、引分け!!
「御待たせしましたぁ。ご注文の古ワインです」
淋麗はそう言いながら、不良グループAの元に古ワインを2本運んで行く。
おっとりマイペースの淋麗には、この依頼は不向きである。
お客の頼みとあれば、まずはそれを聞きとめて席を離れる。
リードシンキングをこっそり発動させて相手の考えを読み取り、悪い客で無ければ愉しい時間を過ごしてもらっている。
まあ、話術で他のメニューも取ってもらっていた為、古ワインだけというお客はいない。
「あ、ありがとう。これとこれ、追加で頼むわ。野菜も取らないとな」
「ありがとうございますー。4番さん、追加オーダーはいりまーーす」
いや、普通のウェイトレスになっていますが淋麗さん。
まったりモードで淋麗、技アリ一本!!
「お客様。それ以上お飲みになりますと、他のお客様の迷惑となりますので」
完全に酔っ払った不良青年の襟首を掴むと、そのままカツカツと店の入り口へと連れていくノリア。
と、客が寄った勢いでノリアの胸に背中からもたれ掛かっていく。
その酔っぱらいの手はこっそりとノリアの胸を狙っていた。
──サワッ
手の感触が胸に走る。
が、そのまま黙っているノリアではない。
素早く酔っぱらい客の背後から羽交い締めで両腕とクビをガシッと固める。
そして力一杯震脚!! 素早く自分の背中を限界まで反らすと、そのまま後方へと酔っぱらいを背後に向かって投げ飛ばす。
「ノリアボンバー外式、『乾坤一擲血の一滴っ』!!」
一人勇者モードではないので外式の模様。
──ドンガラガッシャーーーン
激しくもんどりうって飛んでいく酔っぱらい。
「あ、あんたクレリックだろ‥‥頼む‥‥」
どうやら一撃で酔いが冷めた模様。
そのままふらふらとノリアに救いの手を差し伸べてくる。
殴り担当とはいえノリアさんはクレリック。
救いの手を差し伸べられればそれに答える‥‥。
「リカバー、よろ!!(宜しく頼む)」
──ドゲシッ!!
あ、止めの蹴りが入った。
「我が神タロンは、貴方に試練を与えました。大丈夫。怪我はしていません。貴方はもうすこし、言葉遣いを正すべきでしょう。アーメン」
ノリアさん、ここで1本。
だが、その酔っぱらいの仲間が黙っていなかった。
「この腐れクレリック!! よくも相棒にっ」
数名の男達ががたがたと立上がると、ノリアに向かって殴りかかる。
──ごいーーーーん
その中の一人の後頭部に向かって、リュリュがトレイで渾身の一撃を叩き込む。
「お客様ぁ。店内での乱闘はご遠慮くださーーい」
さらに別の客が走っていくが、その正面にカタリナ見参!!
「カタリナ先生、御願いします!!」
ノリアのその叫びに、カタリナもようやく身体が暖まった模様。
素早く太刀を構えると、その峰の部分を走ってきたよっぱらいに叩き込む。
「ノリアさん、誰が先生です!!」
えーっと、騎乗の先生。
そんなこんなで酔っぱらい迎撃作戦が開始。
「みなさんこちらに避難して下さい!!」
「店内は危険です!! 早くこちらへ」
ユリアと淋麗は一般客を安全な場所へと誘導。
アミィは避難した御客に対して巧みな話術でフォロー開始。
「真に申し訳ございません。この騒ぎはすぐに収まると思いますので、それまでお待ちください。お詫びとして料理を一品、サービスさせて頂きますので‥‥」
そう丁寧に言われ、さらに巧みな話術で丸め込まれる一般客。
そして戦いは佳境へと突入。
「ノリアボンバー弐式『神々の黄昏』っ!! も一つ、零式『聖なる槍』っ!!」
「落ち着いてくださいーー」
投げ飛ばされる酔っぱらいと、剣を叩き込まれて、痛さの余り飛び出す客。
やがて店内は、二人の『用心棒ウェイトレス』の手によって沈黙した。
そんなこんなで、無事に依頼を遂行した一行。
この手の騒動はよくあることらしく、店長も特に気にしていない。
それどころか、翌日からはその騒動を愉しみにやってくる客で店内は溢れかえっていたらしい。
そして無事に依頼期間が終了し、一行は酒場を後にした。
余談ではあるが、アミィは店長から正式にウェイトレスとして働かないかと口説かれたらしいが、それについてはまた別の機会にて。
〜Fin