【開港祭】〜珍客万来〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月09日〜11月14日

リプレイ公開日:2004年11月13日

●オープニング

──事件の冒頭
 開港祭で賑わっているドレスタット。
 と、港の一角が妙に騒がしいようで。
「そいつを捕まえてくれーーーーー」
 一人の商人が叫びながら走っている。
 その前方には、奇妙な生物が口に魚を咥えて走っていた。
 体長は80cm程。体重5kg程度の大きさであろう。
 普通の鳥のような翼ではない、小さく退化した羽とでっぷりとしたおなか。
 そして水かきの付いた脚でパタパタと景気良い音を出して走っていた。
──ザッパーーーン
 そして勢いよく水に飛びこむと、そのまま湾内を悠々と泳いでいる。
 やがて、周囲から一匹、また一匹とその奇妙な鳥は集って、我がもの顔で泳いでいた。

 さて、かいつまんで説明しよう。
 商人は北方圏の小さな島を回る商人である。
 この奇妙な鳥の生息地を訪れて、この開港祭で見世物にしようと連れてきたのは良かったものの。
 ちょっとしたアクシデントで逃げられてしまったのである。
 
──という事で冒険者ギルド
「それで、今回の依頼内容はなんだ?」
「珍鳥を捕まえて欲しい。湾内で確認したのは5羽だが、実際に捕まえてきたのは10羽なんです。きっと町の中の何処かにいるかと思いますので、急いで御願いします」
 必死にそう訴えながら、依頼人である商人が書類を作成していた。
「ちょっと聞いていいか? その鳥は『旨い』のか?」
 そう問い掛けるギルド員。
「さあ? どうしてですか?」
 きょとんとした表情で問い返す商人に、ギルド員は腕を組んで、ゆっくりと呟いた。
「ほれ、パリでちょっと噂になった『何でも食べる冒険者』っていうのが、開港祭に顔を出しているみたいだから‥‥ひっょとしたら、食べられている可能性も考えられるしなぁ‥‥」
 その言葉に、商人は慌てて依頼書に注意事項を書き足させた。

●今回の参加者

 ea0294 ヴィグ・カノス(30歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea5564 セイロム・デイバック(33歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5970 エリー・エル(44歳・♀・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea6426 黒畑 緑朗(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea7504 ルーロ・ルロロ(63歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea8029 レオン・バーナード(25歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●ということで〜怪鳥というか珍鳥といいますか〜
──ドレスタット市街地
「‥‥か、カワイイかも知れない‥‥」
 瞳を輝かせながら、エリー・エル(ea5970)がそう呟く。
 ギルドで依頼を受けた冒険者一行は、大まかな作戦を練りこんだ後に依頼主の元にやってきた。
 そこには、籠に閉じ込められた奇妙な鳥が入っている。
「これは、今回の依頼は、こいつらを捕まえてくるのではなかったか?」
 ヴィグ・カノス(ea0294)が依頼主である商人に問い掛ける。
「ああ。こいつは今朝到着した残り。逃げたのは前の船便で到着した奴。丁度到着したから、皆に見せてやろうと思って。どんな鳥かって聞かれるよりも、見たほうが早いだろ?」
 その依頼主の言葉に、一行は籠の中の鳥をマジマジと見る。
 確かに、奇妙な鳥である事に間違いは無い。
「成る程判りました。ご安心下さい、依頼人様。ここに集まった者達皆、珍鳥を捕らえて食べようなどといった不埒な考えを持った者は居ません。必ずや、貴殿の元に連れてまいりましょう」
 きりっと姿勢を正しつつ、依頼人にそう告げるセイロム・デイバック(ea5564)。
「それで依頼人殿。この珍鳥だが、どんな魚を食べるのでござるか?」
 珍鳥の嗜好を問い掛けているのは黒畑緑朗(ea6426)。
 餌でおびき寄せるという感じなのであろう。
「ああ、餌はこれ。このちっちゃい魚が好物なんだ」
 取れたてのピチピチとした小魚を見せる依頼人。
「なら、少しそれを分けては頂けぬか? あと頼みがあるのでござるが」
 そう話し掛ける緑朗。
「ん? 魚なら、そこの籠にある奴を勝手に持っていって構わないさ。それとあまり無茶な事でなければいいけれど、頼みってなんだ?」
 その言葉に、緑朗ははっきりと言い放つ。
「拙者、路銀が少ないのでござる。この地には家も持っておらず、かといって宿に泊まることもままならぬ所存。雨露をしのぐ場所を貸して頂けぬか?」
「あ、成る程。なら、うちの店の倉庫を使うといい。木材ばかりしか入っていない倉庫があるから、そこを使えばいいさ。他の皆もそうなら、寝泊まりするには構わないからな。飯は近くの酒場ででも食べてくれ」
 これで、町の中に家を持っている者以外は、宿泊先と食堂をゲッツ!!
 高い保存食を消費することなく、温かい食べ物を得る事が出来た模様。
「ならば、わしもご相伴にあずかるとするかのう‥‥」
 それはルーロ・ルロロ(ea7504)。
 愛馬『ゲルゲ』と共に野宿を覚悟していたルーロであったが、これで屋根を確保。
「おいらも頼みがあるんだ。投網を貸してほしいんだよ。駄目かなぁ」
 そう頼み込んでいるのはレオン・バーナード(ea8029)。
 実はレオン、この依頼が初めての冒険者デビュー。
 いざ冒険者生活と気合を入れてはみたものの。一緒に参加している冒険者達を見てかなり不安になったらしい。
 目つきの悪いレンジャーとか、妙に硬苦しいナイト、年齢不祥の神聖騎士、ざっくばらんな浪人、そしてあやしいおっさんというメンバーでは、確かに新米冒険者は心配であろう。
 大丈夫。
 怪しいのは外見だけではないよ。
「ああ、投網ねぇ。裏の倉庫に置いてあるやつを好きに使いな。あと何かあったら、表の店に回ってくれ。俺はこれから出かけるけれど、夜には戻ってくるから。捕まえた鳥は、倉庫にある檻にでも入れておいてくれ!!」
 そう言い放つと、商人は急ぎ足で店を飛び出した。
 そして一行は、いよいよ珍鳥捜しに出発であった。


●鬼ごっこ〜私、陸でも早いんです〜
──商店街
「‥‥つまり、この軒先に現われては魚を咥えて逃げていくと?」
 鮮魚店の軒先で、セイロムが店主と話をしていた。
「ああ、大体朝方だったなぁ。ほら、朝市で仕入れたモノを並べているときと、夕方、人通りが多いときに。フラリとやってきては1匹、2匹って。いつも2羽でやって来てねぇ‥‥注意していても、隙を見て持っていくんだよねぇ‥‥」
 ほとほと困り果てた表情の店主。
「もう少しで夕刻。珍鳥の現われる頃ですね? では、私が鳥を捉えましょう。ここで張り込みをしていて構いませんか?」
 そう話し掛けるセイロム。
「ああ、あのイタズラ鳥を捕まえてくれるのなら構わないさ」
 そしてセイロムは鮮魚店で待機モード。
 夕方、人通りが多くなった時、その人ごみに紛れて来店した珍鳥を素早くゲット!!
「油断していたから、意外とあっさりと捕まえられましたね」
 実際、商人達は大声を上げて追い立てていたから逃げただけ。
 餌を目の当たりにして、しかも人懐っこい性格の珍鳥ならば、捕まえるのは難しくない。

 残り8匹‥‥。


──港
 そこには緑朗とレオンの二人が立っていた。
「随分と不思議な鳥ですねぇ」
「うむ。飛べない鳥というから鶏のよう奴かと思っていたのでござるが‥‥」
 二人の視界内には、4匹の珍鳥が優雅に泳いでいた。
 あひるやガチョウのような泳ぎではなく、水の中に飛込んでは、まるでクロスボウボルトのように水をかき分けて高速で泳ぐ。
 その姿はまさに絶景!!
「投網は用意しました。あとは御願いしますねー」
 緑朗にそう話し掛けるレオン。
 ちなみに捕まえるのはレオン担当、緑朗は投網の有効範囲内まで珍鳥を追い立てる役目。
 そして湾内を小舟で移動する緑朗。
 そのまま珍鳥のうろついているエリアに向かい、沖合へと回りこむと、いよいよ作戦開始!!
「それ、そっちにいくでござる!!」
 櫓をゆっくりと振りつつ、珍鳥達を船着き場へと追い立てる緑朗。
 だが、あまりにものんびりと、そして人間を見ても恐れないその姿に、緑朗は最後の手段を取った!!
──バシャッ
 櫓で水面を叩く。
 その音に驚いた珍鳥達はそのまま船着き場の方向へと泳ぎ出した。
「せーーのっ!!」
──ザッバァァァァン
 タイミングを合わせて投網を投げ込むレオン。
 流石は漁師で生計を建てていたことはある。
 投網の扱いは専門分野、一気に4匹を確保した。
 そして暴れる珍鳥達を網から外し、ロープで一匹ずつ縛り上げると、そのまま商人の家へと移動。


 残り4匹‥‥


──居住区域
「珍鳥‥‥か‥‥。先に捕まえられたりすると面倒な事になりそうだからさっさと見つけ出して捕まえるとするか‥‥」
 自家製ボーラを手に、ヴィグが静かに呟く。
 居住区近くの河川敷、そこで見たという話を聞いて、ヴィグは急いでロープと石でボーラを作成。
 さらに商人の元から持ってきた魚を河川敷に捲くと、草むらに潜んで珍鳥の出現をじっと待った。

‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥

「普段の狩りとは勝手は違うが‥‥有効な事柄は大して変わりはしないだろう」
 静かに待つこと1時間。
 そんな事を考えていたとき、ついに姿を現わした珍鳥。
 河からザバザバと上がってくると、何も考えずに落ちている魚に近付く。
 そしてそれを咥えると、そのまま一気に呑み込んだ。
(今だ!!)
──ヒュンッ
 素早く立ち上がりボーラを投げるヴィグ。
 だが、誤算があった。
 作り出したボーラは投げた途端にロープがほどけてしまった。
 そのままロープをぶら下げた石が珍鳥に飛んでいく。
「しまった!!」
──ゴーーーーン
 バタッ。
 ボーラで絡めとり、そのまま動きの鈍くなった所を捉える筈が、頭部に直撃。
 そのまま倒れてしまう珍鳥。
「や、やばい‥‥生きている‥‥か‥‥」
 射撃の達人も、道具の故障というアクシデントまでは予測範囲外。
「クェッ‥‥クェッ‥‥」
 あ、生きている。
 と、そのまま怪我が無い事を確認し、ヴィグはそのまま珍鳥を抱き上げて商人の倉庫へと移動。

 残り3匹‥‥。


──教会近く
「背丈がコレくらいで、太っちょで短足の妙な生き物を見んかったかの? 頭は鳥なんじゃが‥‥」
 それはルーロ。
 あらかじめ商人の元でブレスセンサーを発動させ、目の前の珍鳥がどのような反応を示すのか確認し、ルーロは同じ様な反応をもとめて町の中を走り回っていた。
 だが、ブレスセンサーはそれほど万能な魔法ではない。
 だいたいの大きさと方向が判る程度、先に確認しておいた珍鳥のサイズを基本とした大体のサイズの生物は、先程からずっとルーロの後ろを付いて回っていたのである。
──ニャーニャー
 後ろからぞろぞろとついてくるのは猫。
 囮として持っていた魚の匂いに吊られて、ルーロの後ろを猫がついて回る。
「こ、これ、離れんか!! あ、いやいや、それで、先程の話の鳥なのじゃが‥‥」
 そのまま聞き込みを続けること半日。
 持ってきた餌も次々と猫に取られ、いよいよ底を付きかけていたとき‥‥。
「クェッ」
 と、何もいなくなった筈のルーロの後ろから、聞きなれない鳴き声。
「むぅ。もう餌は無くなったぞ。諦めて帰るのじゃ!!」
 振り向き様にそう呟くルーロ。
 だが、彼の視界には珍鳥が一羽。
 じっと見つめあうルーロと珍鳥。
 可愛いもの好きなルーロにとっては、これは感動。
 どうする? ルーロ・ルロロ。
 ご利用は計画的にね。
(このまま逃がして‥‥いやいや、見知らぬ土地では、野良猫に襲われるのが‥‥)
 様々な葛藤の後、ルーロはそのまま珍鳥と手を取り合うように商人の元へと戻っていった。
 
 あと2匹‥‥。


──住宅地
「いーーーやーーだーーーー」
 珍鳥を抱しめながら泣きじゃくる子供。
 その前では、エリーが困った顔をしていた。
 運良く見付けたのはよかったものの、珍鳥は既に『近所の子供』の手によって捕獲されていた。
 なんとかなだめて返してもらおうとしていたのであるが、子供は珍鳥を抱しめたまま泣きはじめたのである。
「うう‥‥泣きたい」
 泣きたいのはこっちのほうだといいそうであるが、必死にそれを堪えるエリー。
「あのねボク。その鳥は、お姉ちゃんが探してきて欲しいって頼まれていたの。だから帰さないと駄目なのよん? 判るぅ?」
「判んない。可愛いし、ボクが見付けたからボクのものなんだーー」
 そのまま路地裏を走りはじめた少年。
「あ、待って待ってぇぇぇぇぇぇ」
 さらにエリーも走る。
 太陽に吠えたくなるぐらいに走るエリー。
 そしてなんとか少年の前に回りこむと、そのまま少年の瞳を見据える。
「いい? 人のものを取ったら泥棒なんだからね‥‥」
 とうとう観念したのか、少年は諦めてエリーに珍鳥を返す。
「あそこの商人さんの所にいるから、会いたくなったらいつでも見に行ってね」
 そのままエリーも珍鳥を抱しめて商人の元へと帰還。

 残り1匹‥‥。


●そしてハプニング!!
──夕方
「さあさあ、よってらっしゃい見てらっしゃい。『グリル・ド・シェンバッハ』の本日のお薦めは、世にも不思議な鳥のグリル。この開港祭限定のメニューだ。先着1名さまにのみご提供。早い者勝ちだよーーー」
 中央通りに響く声。
 ちょうど冒険者達は最後の一匹を探している最中であった為、その声には嫌な予感がしていた。
「冗談じゃない!!」
 慌てて店主につかみ掛るヴィグ。
「その鳥をよこせ!! まだ生きているんだろうな」
「うわ、く、苦しいって‥‥もう羽根もむしって、捌いてあるよ。特製オーブンでこんがりと焼きあがった所だ。あんた客か?」
 そのまま捕まれていた手を振りほどくと。店主がそうヴィグに話し掛けた。
「‥‥ヴィグ殿。あきらめるのじゃ‥‥」
 トン、と後ろから肩を叩くルーロ。
 そしてエリー、緑朗、レオン、セイロムも其の場にやってくる。
「すいません。その鳥は、私達が捜していた鳥なのです」
「せめて、食べてあげる事で供養してあげよう」
 セイロムの言葉に、レオンがそう付け加えた。

 そして一行は店内に案内されると、『全長3mはあろう巨大な鳥のグリル』を見る事になった。

「えーーーっと。これ、別の鳥よね?」
 こめかみを押さえつつ、エリーがヴィグに問い掛ける。
「いや、『世にも不思議な鳥のグリル』って‥‥店主、この鳥は何者なんだ?」
 そう弁解しつつ店主に問い掛けるヴィグ。
「なんでも、珍獣を集めるのが趣味の貴族さんの所に居た奴でね。死んでしまったのを買い取ってきたんだ。食べれるから大丈夫だよ」
 その言葉のさ中、すでにレオンと緑朗は黙々と食べはじめた。
「これはヴィグの奢り。騒がせた罰」
「ごち!!」
 止むを得ず食事モードに突入。
 そして日が落ちて倉庫に戻ったとき。
 最後の一匹が檻の外で眠っているのを一行は確認した。
 おそらくはつがいの一匹。
 相棒が捕まったので、会いに来ていたのであろう。
 
 とにもかくにも、これで全匹コンプリート。


●後日談〜冒険者だからねぇ〜
──商人の店
「あのぉ。もし宜しかったらでいいんですけれど。その鳥さん一匹欲しいなぁん」
 依頼を終えてギルドに戻る準備をしているさ中、エルが商人にそう問い掛けていた。
「一匹ねぇ。まあ、見世物が終わったら元々売るつもりではあったけれど、冒険者じゃねぇ‥‥」
 腕を組んで考えている商人。
「50G迄は即金で!! どうでしょうか」
 既に一匹抱しめつつ、エルが粘りはじめたが。
「いや、今回は諦めてくれ。っていうのも、この鳥、まだ詳しい生態なんかは判っていないんだ。それに冒険者って家持っていないだろ? ちゃんとした小屋があって、毎日決まった時間に餌を揚げたり世話ができないとねぇ‥‥」
 その商人の言葉に、瞳をウルウルさせるエル。
「どうしても駄目ですかぁ〜」
「うーーーん。そういう目で見られるとねぇ‥‥よし、なら、売ってはあげられないけれど、君に一匹、世話を頼もう。ここの小屋に居る一匹をもう一つ別の小屋に移しておく。餌はこちらで用意するけれど、冒険に出ていないときとかは散歩やしつけなど、ちゃんとできるかい?」
 その言葉に肯くエル。
「やりますやります。ドレスタットに居る限りは!!」
 まあ、それで商人も渋々OK。
「良かったね。ペンペン」 
 抱しめた鳥にそう話し掛けるエル。
「何でペンペン?」
 緑朗の問い掛けに、エルは鳥の翼をヒョイと見せる。
「羽根ペンみたいだからペンペン」
 あ、成る程。
 かくして一行は、無事に依頼を果たしてギルドへと戻っていった。
 なお、エルはこれからしばらくの間、商人の元に通い続ける事になるのであった‥‥。

〜Fin