魔物倒してこーい!!

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月11日〜07月16日

リプレイ公開日:2004年07月14日

●オープニング

──事件の冒頭
「また失敗だぁぁぁ」
 ガキィィィィィンと激しい金属音が響き渡る。
 そこは本島からはなれた小さな島にある鍛冶小屋。
 一人の駆け出しの鍛冶師が、自分で山野を駆け巡り鉱床を発見、伝説の名工『アレキサンドロ・マシュウ』に追い付き追い越す為に、日夜、剣を打っていた。
 良い鉱床を捜すためにノルマン本国を走りつくした彼は、ついに海に浮ぶ小島に目をつけた。
「本島に良い鉱床が無ければ、周辺海域諸島の何処かにいい鉱石が掘り出せる場所があるに違いない」
 彼はそのまま己が信念の元に、今いるこの島に住み付き、日夜ハンマーを振るった。
 全ての作業が一人であったため、材料の鉱石が無くなったら、また一人で掘り出す、ある程度掘り出したらそれらを溶かし、精製、そして剣を打つというのを繰り返していた。

 だがある日。
 その鉱床のあった洞窟に魔物が住み着いてしまった。
 対した魔物ではないのかもしれないが、一介の、それもまだ駆け出しの鍛冶師にはどうこうできるものではない。
 やがて蓄えていた鉱石も底を尽き、彼は困り果ててしまった。

──場所は変わって冒険者ギルド
「で、グレイスさんが島に立ち寄ったときに手紙を預かってきたと?」
 ギルド員の一人がそう呟く。
 相手は交易船『グレイス・ガリィ号』の女船長である『グレイス・カラス』。最近はギルドからの依頼人を運ぶのを生業としつつある。
「ああ。話を聞いた限りでは、どうやら相手は魔物の類らしいからね。彼はそれをどうにか倒して欲しいと行っていたよ。これが彼から預かった依頼料」
 ドサッ‥‥とまではいかないものの、わずかの蓄えから捻出したらしい彼の大切な御金の入った袋をカウンターに置くグレイス。
「次の出港のときに、ついでに島まで送っていくから、適当なところ見繕っておいて」
 そう告げると、グレイスはそのままギルドを後にした。

●今回の参加者

 ea3047 フランシア・ド・フルール(33歳・♀・ビショップ・人間・ノルマン王国)
 ea3124 北道 京太郎(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3666 エクリュ・シャルトリューズ(30歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea4310 エルザ・ヴァレンシア(28歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea4466 カアラ・ソリュード(32歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea4677 ガブリエル・アシュロック(38歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文

●一日目〜まずは小手調べ〜
 遠くに交易船『グレイス・ガリィ号』が消えていく。
 ここは依頼のあった小さな島。
 魔物退治の依頼を受けた冒険者一行は、まずは依頼人である鍛冶師の元を訪ねていった。
 小さな小高い丘の中腹に、ポツンと立っている鍛冶師の小屋。
 そこに向かった一同は、依頼人の鍛冶師に挨拶をすると、静かな口調で話しはじめた。
「初めまして。フランシア・ド・フルール(ea3047)と申します。これから3日間、こちらで魔物の退治をするにあたり。ご挨拶にやってまいりました」
 丁寧な口調でそう告げるのはフランシア。
「まずは、詳しい話を聞かせて頂きたい」
 それは北道 京太郎(ea3124)。
「詳しい話といっても‥‥手紙に書いてあったこと以外は‥‥俺も恐くて近寄れないからなぁ‥‥」
 鍛冶師はハンマーを片手にそう告げる。
 今は材料の鉱石が無いため、気晴らしに何か他の事をしているようである。
「鉱床のあった洞窟の内部構造だけでも教えていただけませんか?」
 フランシアの言葉に、鍛冶師はその場にしゃがみこむと、火かき棒で地面に絵を書きはじめる。
「ここが入り口で、ここで洞窟が二手に分かれてて‥‥右に向かうと鉱床があったんだが、魔物は左側に住み着いちまったみたいでな。鉱床のある方はそこで行き止まりだから、後ろから襲われたらひとたまりもない」
「この左側は何かあったのでしょうか?」
 エルザ・ヴァレンシア(ea4310)がそう問い掛ける。
「奥に入ったら、また幾つかの道に分かれてて、なだらかな下り坂が続いているんだ。その途中に広い空間が在って、そこに魔物が住み着いちまったらしいからなぁ‥‥その奥までは、まだ調べていなかったんだ」
 エルザはその言葉にウンウンと肯きながら、鍛冶師が書いている地図を頭の中にインプット。

──場所は変わって野営地
 既に挨拶を終えて、エクリュ・シャルトリューズ(ea3666)は丘の下に野営地にいい場所を確保、そこにベースキャンプを設営していた。
「こ、ここなら鍛冶師さんの所からも離れていないし、ガブリエルさんの行っていた条件にも一致しますね‥‥」
 そう告げるエクリュに、ガブリエル・アシュロック(ea4677)が肯いた。
「まあ、挨拶も無事に終らせたことだし、細かいことは京太郎とフランシア達に任せて、私達はベースキャンプの準備を進めましょう」
 そのガブリエルと共に二人用テントを展開しているのはカアラ・ソリュード(ea4466)。
 ベースキャンプには、カアラと京太郎の二人の簡易テントが設置され、水場の確保などをしていた。
 そこに話を聞いてきた京太郎達3人が戻ってくると、フランシアは鍛冶師から聞いてきた話を皆に伝えた。
「さて。では、私とエルザ、エクリュは話のあった洞窟付近の調査にいってきますね。待機班の方たちも、こちらの方を御願いしますね」
 カアラがそう告げて、エルザとエクリュと共に森の中に入っていった。
「さて。では、我々はこの周辺の調査を開始しますか」
 ガブリエル・アシュロックのその言葉に、京太郎、フランシアは同時に肯いた。


──場所は変わって洞窟付近
 エルザ、エクリュ、カアラの3人は、慎重に洞窟入り口の周囲を調べていた。
 内部に入ることなく、且、入り口付近にも近寄りすぎない距離から、周辺の環境を調べていた。
「こ、この足跡は‥‥」
 エクリュが入り口から伸びている無数の足跡を発見。カアラとエルザもその場所までやってくる。
「間違い無いわね。コボルトよ」
 カアラが足跡の形状をみた瞬間、そう告げた。
 頭の中にある知識をフル動員して、幾つの該当しそうな足跡も出てきたのだが、カアラは魔物=コボルトという説に自信があったらしい。
「カ、カアラさんのおっしゃったとおりですね。こ、この数からいって、周辺の見回りに3匹といった所ですか‥‥」
 カアラの言葉に捕捉するように、エクリュがそう告げる。
「で、この足跡はどういう感じなの? 偵察? 見回り? それとも他の何か?」
 エルザが二人に問い掛ける。
「偵察っていうことはないでしょうね‥‥」
 カアラが自信ありげにそう呟く。
「そ、そうですね。どちらかというと、この足跡の先に何かあるのかもしれませんね」
 コボルト達は何度もここの場所通り過ぎているらしい。
 そのまま足跡を『洞窟ではない方角』に追いかけ、コボルと達の行動を調べはじめる一行。
 やがて湧き水の出ている小さな泉にたどり着いた。
「み、水組みのようですね‥‥ということは、あの洞窟には、内部に水場とかは存在していないというところでしょう」
 エクリュの判断。
「この周辺の血の後は、恐らく何かを狩った跡でしょうね‥‥」
 泉の近くに血の跡が残っているのを、エルザは見逃さなかった。
「とりあえず、1度戻りましょう。ここと洞窟の間をコボルトが動いているということ、確認できただけでも3体、狩りをしてなんとか急場を凌いでいるらしいというコトが判っただけでも、なんとか対処方法は考えられますわね」
 カアラの言葉に肯くと、二人は一旦ベースキャンプへと戻っていった。


──一方、そのころのベースキャンプ組
「‥‥これは食べられる?」
 周辺調査を行なっていた京太郎、フランシア、ガブリエルの3名は、ベースキャンプ付近の地形などの調査を行なっていた。
 そこで京太郎は木ノ実を採取し、食べられるかどうかガブリエルに問い掛けていた。
「判らないな。フランシア、判るか?」
 その問い掛けにフランシアも頭を捻る。
「俺の直感では食べられるのだが‥‥」
 その直感を信じ、フランシアとガブリエルも木ノ実の採取を開始。
 とりあえず有る程度の量を確保すると、ベースキャンプへと戻っていった。
 
 その夜は、もってきた保存食とフランシア達の採取した木ノ実を使い、京太郎が自慢の腕を奮って旨い食事にありつけた。
 その場で一同は情報交換を行うと、見張りを立てて明日の戦いのために英気を養うことにした。


●二日目〜血湧き肉踊るっていうのは‥‥〜
──チュンチュンチューン
 小鳥達のさえずりで目を覚ました一同。
 野営での見張りは京太郎とガブリエルの二人で無事に成し遂げた。
 そして一同、戦闘準備を行うと、一路洞窟へと向かっていった。

──洞窟入り口
 作戦では、京太郎とカアラ、ガブリエルの3名が洞窟内部に潜入。魔物を外におびき寄せて一掃するという手順になっていた。
「‥‥来た!!」
 エルザには、入り口の奥から京太郎達が走ってくる姿が見えたらしい。
 その背後からは、4匹のコボルトがソードを構えて走ってくる。
「エルザ!!」
 そのカアラの叫び声と同時に、エルザが手にしていたカアラのロングソードを放り投げる。
──バシッ!!
 それを受け取るや否やカアラは抜刀。
 エルザの掛け声と同時に詠唱準備に入っていたフランシアのブラックホーリーが発動。
 目の前のコボルトに向かって漆黒の光の玉が直撃した。
「グォォォォォォォォ」
 光に身を焼かれ、苦しむコボルト。
「主の裁きよあれ‥‥」
 そのまま祈りを唱えると、ふたたび詠唱準備ににはいるフランシア。

「カアラさん合わせて!!」
 クルスソードを構えたエルザが、横でコボルトと斬りあっているカアラに声を掛けた。
「3、2、1っ」
「はっ!!」
 エルザの合図に合わせて、カアラがコボルトに向かって二人同時に攻撃を叩き込む。
──ドシュッ
 二人がかりの攻撃をまともに受けるコボルト。鮮血が大量に吹き出し、コボルトはロングソードを捨てて逃走しようと体勢を取る。
「逃がすかっ!!」
 京太郎が逃げの態勢を取ったコボルトの首目がけて日本刀を叩き込んだ。
 だが、狙いはうまく定まらず、そのまま胴部に直撃。
 コボルトは瀕死になりその場に崩れ墜ちた。

──ガギィィィッ
 一方ガブリエルは。
「このっ」
 クルスソードの攻撃をコボルトが受止める。
 そのまま激しい剣戟が響き渡る中、ちょっと離れたところでエクリュが魔法詠唱を終了していた。
──ブゥゥゥゥゥン
 緑色の詠唱光に包まれたエクリュの手から、三日月の形をした真空の刃が、ガブリエルの戦っているコボルトに叩き込まれる。
「ウガァァァ」
 一瞬態勢が怯んだその隙に、ガブリエルは反撃を開始。
 そのまま次々とコボルトの体を切り刻み、絶命させた。
「残念だが、此処は貴様らの住む場所ではない!!」
 ソードに残った血を振り拭うと、次のターゲットに向かって走り出すガブリエル。

──そして数刻のち
 そこには全部で8匹のコボルトの死体が転がっていた。
 戦闘中に外の異変に気が付き、中からコボルトの援軍が飛び出してきたらしい。
 が、持ち前のチームワークで、どうにか無事に戦いぬくことは出来た。
──ブゥゥゥン
「これで大丈夫です」
 エルザが傷ついた仲間たちにアンチドートを唱える。
 案の定、コボルトのもっていた古いロングソードには鉱物毒が塗られていたらしい。
 無傷で戦っていたのは後方で魔法を唱えていたフランシアとエクリュのみ。
 前衛で戦っていた者たちは皆、彼方此方に傷が出来ていた。
 コボルトの中には毒の中和剤を携帯していた者もいたので、それも併用して毒を無事に中和。
 
 二日目の日が沈む頃、総ての依頼は完了した。


●三日目〜残った時間は〜
 残りの時間、体力の余っていたものは鍛冶師の頼みで鉱石の発掘作業の手伝いを行なっていた。
 残ったフランシアとエクリュは鍛冶師の元で、今までに彼の作った武器などを拝見。
「‥‥普通に売っているものよりは良質な武器ですね」
「こ、この武器なんて、ノルマンでも普通には流通していないですよ‥‥」
 自分で鉱石を捜し、常に己を鍛えている鍛冶師らしく、その作り上げた武器の一つ一つに鍛冶師の信念と意志を感じ取ることができる。
「まだまだですよ。これを使って作れるぐらいの鍛冶師にならないとね」
 そう呟くと、鍛冶師はちっちやい小袋を見せた。
 その中から小さな鉱石を取り出した。
 中に真っ赤な筋が一つ入っている小さな鉱石。
「これって‥‥」
「ま、まさかブランですか?」
 その言葉に、鍛冶師は頭を捻った。
「そうかもしれない。まあこれがブランだとしても、これだけの量ならたかか知れているし。まあ、いずれはブランの鉱脈でも見つけて、魔法の武具を作れるぐらいの鍛冶師にはなってやるつもりさ。そういう意味で、これはお守りとしてもっているんだけれどね」
 そんな話を聞きながら、最後の日はゆっくりと体を休めていた。

 そして一同は迎えの船がやってくると、それに乗って本国へと帰還していった。
 
 いつか、彼が伝説級の武具を作る日が来るのだろうという期待を胸に秘めて。

〜FIN〜