古き遺跡の探索

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月12日〜07月17日

リプレイ公開日:2004年07月15日

●オープニング

──事件の冒頭
「‥‥遺跡探索用人足兼護衛の方ですかぁ」
 冒険者ギルドカウンターでは、一人のギルド員が依頼主に向かってそう呟いていた。
 依頼人は考古学者。
 最近になって、古い遺跡を発見したため、そこの調査を行ないたいらしい。
 だが、いざ遺跡の内部に入ろうとしたら、トラップが仕掛けてあったり、遺跡の守護者らしき魔物が徘徊していたりと、兎に角、危険な情況であったらしい。
「そうさのう。6人ほどでよいのじゃよ。見たところ、骸骨や腐った死体の類が徘徊しているだけじゃろうから、荷物の運搬がてらにそいつらを処分してくれればよいよい。あとは、罠があちちに張り巡らされているようじゃから、それの解除ができる人間も欲しいところじゃな」
 そう考古学者が呟いた時、ギルド員の瞳がキラーンと輝いた。
「‥‥その遺跡‥‥まさか、伝説級の代物じゃあないでしようね? もしそうであれば正式な手続き等も必要になってきますが?」
 その言葉にドキッとしながらも、考古学者は手にしていた古い石版のかけらをじっと見る。
「いやいや、そんなたいそれたものではないようじゃよ。まあ、その奥に、それらに関しての何かが眠っている可能性はあるがのう。とにもかくにも、まずは調査じゃて」
 そう告げると、考古学者は依頼金の詰まった袋をカウンターに預けていった。
「遺跡調査ねぇ‥‥そんな物好きな人、来るのかしら?」
 ギルド員はそう呟きながら。、掲示板に依頼書を張付けた。

●今回の参加者

 ea1565 アレクシアス・フェザント(39歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea1613 イクスプロウド・アレフメム(28歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea2389 ロックハート・トキワ(27歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea2705 パロム・ペン(45歳・♂・レンジャー・パラ・イスパニア王国)
 ea2790 バルザ・バルバザール(25歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea4744 以心 伝助(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●ベースキャンプ〜まずは準備〜
 遺跡発掘の護衛任務。
 こう聞くと、実に恰好がいい。
 だが、冒険者達は、安易にこの依頼を受けてしまったことを後悔することになるとは、今はまだ誰も思っていなかった。
──ベースキャンプ
「えー、ゴホン。儂は『ミハイル・ジョーンズ』という考古学者じゃよ。このノルマンの各地をあるき、古代の遺跡などの調査を行なっているものじゃ」
 そう呟く依頼人の老人の言葉を聞きながら、アレクシアス・フェザント(ea1565)は小屋の内部を見渡した。
(発掘したものを納めておく小屋か‥‥まだなにもないようだな)
 その横では、イクスプロウド・アレフメム(ea1613)とロックハート・トキワ(ea2389)、パロム・ペン(ea2705)、バルザ・バルバザール(ea2790)、そして以心伝助(ea4744)の5名がミハイルの話に耳を傾けていた。
「内部に何があったのかさっぱり覚えておらんというのが現状でな。地図すら満足に作れないし、あちこちに罠に掛かって死んだらしい盗掘者の骨さえ転がっておる始末じゃて。まあ皆さんは無理をせず、頑張ってください‥‥」
 その会話の中、ロックハートは持ち前の知識でミハイルがどんな人なのかを観察していた。
 最終的にロックハートの脳内では『実害と表裏のない、面白い好奇心旺盛な考古学者』という結論に達していたようである。
「ちょっとすいませんが、どなたか死霊に関して詳しい方はいないでやんすか?」
 伝助が皆に問い掛けた。
「普通のモンスターならそこそこに判るのだが。対象がアンデットとなると」
 ロックハートはそう告げながら、脳内データをフルに検索。

──プスプス‥‥失敗

「駄目だ。俺にはちょっと判らない部分が多すぎる」
 ロックハート、お手上げ。
「レッツ、チャレーンジにゅー」
 パロムもアンデットについての解析に挑戦。

──プスプス‥‥失敗

「‥‥お、おいらには判らないにゅ。ほんとだにゅー。知らないんじゃなくて、判らなかったにゅー」
 ジタバタと叫ぶパロムの横で、静かにバルザも解析していたらしい。
 当然、結果は前記の二人と同じ。
 その雰囲気を察してか、伝助はミハイルにも問い掛けた。
「ミハイルさん、何か御存知ですか?」
「知っていたら、冒険者にはたのむ訳なかろう。はっはっはっ」
 自信満々でそう告げるミハイル。
「まあ、魔法で作られた『負の力』で動くバケモノという所だな‥‥それ以上は駄目だ」
 ロックハート、そこまで捻り出したがアウト。
「まあ、これからの調査について、詳しい打ち合わせをしていこうじゃないか」
 アレクシアスの提案で、一同は細かい打ち合わせを開始した。


●遺跡〜そこはドキドキが一杯です〜
──入り口
 小高い丘の一部が崩れ、そこにぽっかりと出現した謎の入り口。
 大理石や花崗岩などにほどよい彫刻を行い組み合わせたその入り口には、巨大な石版で作られた扉がしっかりと閉じていた。
「‥‥この扉にはトラップは無かったにゅ?」
 そう呟きながら扉を調べるパロム。
「ああ、そこは無かった。大丈夫じゃよ」
 パロムの調査でも怪しい仕掛けは発見できなかったので、前衛の二人が扉を開いた。
──ギィィィィィィッ
 かび臭さとわずかに漂ってくる腐臭。
 暗い回廊が真っ直ぐに続いている。
「隊列を組んでいくとするか。各員の仕事は打ち合わせどおりに」
 そのアレクシアスの言葉に、一同は静かに肯いて隊列を組みはじめた。

〜図解
 上が先頭になります。
 遺跡内部での灯は伝助が担当。必要に応じて各員が松明の準備

     パロム バルザ
 アレクシアス ミハイル イクスプロウド
        伝助
       ロックハート


「今のところ、敵の気配は感じられないな」
 周囲に漂っている敵の殺気を感じとろうと、意識を集中させたロックハート。
 だが、現時点では敵らしき気配は感じ取れない。
「ここからはおいらの出番にゅー」
 パロムは通路の一つ一つを慎重に調べていく。
「ここに作動装置。ふんだら危険にゅ」
 ゆっくりと時間をかけながら、一同は真っ直ぐに進んででいく。
 途中には怪しい彫刻も文字もなにもなく、パロムが的確にトラップを発見、チョークでそれに印をつけていく。
 やがて広い空間にでた。
 
 そこは何かの部屋らしく、朽ちたベンチなどが散乱している。
 通路はそこから二つに分かれ、左右に石作りの扉があった。
「‥‥さて、前衛さん頼みますぜ」
 ロックハートがそう呟く。
 その言葉と同時に、アレクシアスとイクスプロウドはミハイルのガードに回る。
 ロックハートはその言葉の後、正面で朽ちている椅子の影を指差した。

──ガシャッ
 そこから現われたのは骸骨姿のアンデットが一体。
 スカルウォリアーと呼ばれているものらしい。
 片手には錆びたロングソード、もう片手にはライトシールドを構えている。
「かかってこい!!」
 バルザもまた戦闘態勢を取り、スカルウォリアーの正面に出る。

──ガキィィィン
 スカルウォリアーの剣戟をミドルシールドで受止めるバルザ。
 そのままカウンターアタックに繋くが、それはスカルウォリアーが難無く楯で受け流す。
 その無駄の無い動作に、バルザは一歩下がる。
「こいつ、ただ者じゃないよ‥‥」
 楯を構えなおして、バルザがそう叫ぶ。
「下がるでやんす!!」
──ビュウン
 伝助が手にした小柄を素早く投げ付ける。
──スカッ
 肉体があったなら、それは深々と突き刺さっていたであろう。
 だが、相手は骨。
 小柄は骨の隙間を縫い、後ろの床に突き刺さった。
「‥‥」
 静かにミハイルを後ろに下げると、アレクシアスは手にしたロングソードにオーラを込めていく。
 オーラパワーと呼ばれる技であり、相手がアンデットである以上、その効果は絶大である。
「粉々にしないと駄目だな」
 ロックハートのその言葉に、イクスプロウドも詠唱を開始した。
「時間を稼いでください」
 そのイクスプロウドの言葉の直後、スカルウォリアーがバルザに向かって切りかかる。

──ビュン
 その一撃を早く見切り、そのままカンターアタックを叩き込むバルザ。

──ガギィィィィン
 激しい一撃がスカルウォリアーに直撃した。
 スカルウォリアーの構えた楯がふっ飛んでいく。
「楯さえなくなってしまえば!!」
 アレクシアスもまた、スカルウォリアーに切りかかる。

──ガギィィィン
 直撃。
 しかもオーラパワーにより、スカルウォリアーは激しく傷ついた。
 だが、スカルウォリアーはさらに踏込もうと身構えている。

──ゴゥゥゥゥッ
 伝助のランタンから焔が巻きあがる。
 イクスプロウドのファイアーコントロールが発動。それはまるで意志があるかのようにスカルウォリアーに襲いかかっていく。
 
 戦いはし烈なものとなった。
 アンデットという『死んでいる』存在は、士気が低下するということはない。
 ただひたすらに命ある存在を破壊するために、スカルウォリアーは剣を振るっていた。
 バルザとアレクシアスの連携に、イクスプロウドのファイアーコントロール。
 この3つの戦闘力が重なりあって、それでもスカルウォリアーが沈黙するまでにはかなりの時間がかかった。

「‥‥一休みだ」
 ドサッとその場に座り込むアレクシアス。
 そしてロックハートの方に視線を送った。
「大丈夫だな。このあたりにはもう、怪しい気配は感じとれない」 
 その言葉に全員の緊張が解けていく。
 と、さっそくミハイルは室内を調査開始。
 目につくもの全てを次々と手に取り、羊皮紙に書きこんでいく。
「‥‥二つの道だけど、ひとつは行き止まりだにゅー。天井が崩れて埋まっているみたいだにゅ」
 ミハイルの調査中にパロムが先の道を確認。
 一つは行き止まりのようだが、もう一つはまだ奥に続いているようである。
「この先には何が?」
 バルザがメモを取っているミハイルにそう問い掛ける。
「普通の回廊だったな。途中の扉には何か書いてあったような気がするのじゃが‥‥」
 その言葉に、イクスプロウドが聞き耳を立てる。が、それ以上の言葉が続いてこない。
 そして数刻後、ミハイルが羊皮紙をバックパックにしまい込むと、一同は静かに立上がった。
「さて、それじゃあいくか‥‥」
 そのまま隊列を組みなおすと、一行はふたたび通路を先に進む。
 

●神殿〜信じないものは救われません〜
──回廊
 ゆっくりと先に進んでいくと、回廊の途中に真新しい死体が転がっている。
「ズゥンビ?」
 武器を構えて警戒しながらバルザが先に進もうとする。
「ああああ、それ以上近付いたらだめにゅー」
──ガチッ
 と、パロムが止まるように叫んだが手遅れ。
 床の一部が軽く沈み、壁の隙間から細い針がカツッと音を立ててバルザの左腕の楯に突き刺さる。
 そのままバルザは動けなくなった。
「すまないけれど、パロム、調べて下さい」
 その言葉にパロムがゆっくりと近づき、楯に刺さっている針を調べる。
「毒だにゅ。即死にゅ」
 そのままトラップのスイッチを調べ、チョークで印を書いていく。
 それが終わったらバルザは呼吸を整えてゆっくりと歩きはじめた。
「楯が無かったら即死だったのですね」
「死体は、ミハイルさん達がいなくなったのをまって突入した盗掘者にゅ」
 そう呟きながら死体をよく観察する。
 見ると全身に穴が空いており、血を吹き出して死んでいた。
「‥‥パロム、どんな感じだ?」
 ロックハートは死体から危険を感じなかったため、調べているパロムに問い掛けた。
「この壁、隙間が一杯あるにゅ。その先に何か仕掛けがあるにゅー。起動装置はと‥‥」
 ふたたびチョーク。
 そして一行はふたたび先に進んだ。

──石の扉前
 通路の先は一枚の扉で塞がれている。
 その扉には古代文字が掘りこまれ、様々な彫刻も施されていた。
「神、祝福と‥‥死と扉。うわぁ、難しすぎます」
 イクスプロウドが文字の解読を開始。

──プスプスプス‥‥失敗

 イクスプロウドのレベルでは、単語を記す部分をどうにか読み取っただけである。
「ミハイルさん、何かわかるかのう? 我々では、ちと‥‥」
 その伝助の言葉に、ミハイルは扉をじっと観察。
「汝、神を信じるならば扉を抜けよ。神に祝福されなき者は、死の扉となるであろう‥‥じゃな」
「ここは神殿でしたよね。この先は、神が祭ってある神聖な場所であると?」
 イクスプロウドがそう問い掛ける。
「この前は、ここに来る前にトラップで驚いて部屋まで戻って右に進んだのじゃよ」
 パロムの調査では、右通路は天井が崩れて行き止まり。
「取り敢えず今日のところは、ここで引き返してみましょう。途中で手に入ったメモに何か手掛りがあるのかも知れませんから」
 イクスプロウドはミハイルにそう告げて、その日の調査は終了、保存食を皆で分けあって食事を取り、明日のために皆体を休めていた。
 なお、パロムは一人、夜空に輝く星にむかって何やら叫んでいたようである。
「やっぱり、ダンジョンは漢の浪漫にゅ!!」


●そして〜波乱万丈の調査期間でした〜
──先日の調査の続き
 扉に記されていた文字についても、それ以上の解析は困難であったため、一同は扉を越えて神殿へと突入した。
 そこではズゥンビ3体に襲われたがなんとか切り抜き、一同は疲労困憊。
「竜の彫像。古代の竜信仰? ふむむ、ここは奥が深すぎる」
 そう呟きながら神殿内部を調査するミハイル。
 常にロックハートは周囲に気を配り、敵の気配にじっと意識を集中。バルザとアレクシアスがいつでも飛び出せるような態勢で休息を取る。
 入り口の方には伝助が後方からの襲撃に備えて観察、ミハイルの近くにはイクスプロウドと調査しているミハイルが何かおかしな事をしないようにとパロムが付き従っていた。

 そして神殿内部をあらかた調査した後。
「この先に、まだ何かあるにゅ」
 パロムが神殿正面の彫像を見つめながら呟いた。
「なんと、この先に何かあると!!」
 ミハイルがその彫像に手をかけようとするが、パロムがそれを制した。
「素人は駄目にゅ。こういうのはプロの仕事にゅ」
 そのまま彫像を調べるパロム。

──カチッ‥‥

 と、調べている最中に彫像がカクンと傾き、何かのスイッチが作動した。
「トラップの解除ができたのか!!」
 そのミハイルの言葉に、パロムは彫像を押さえながら脂汗がダラダラと流れ出した。
 そして皆の方を向くと、静かに口をひらいた。
「に、逃げるにゅ‥‥」
 突然神殿内部にまがまがしい気配が溢れ出る。
「ロックハート!!」
 アレクシアスが叫びながらミハイルのほうに向かっていく。
 バルザもミハイルをガード、ロックハートは周囲の気配の出元を感知。
「皆、下がれぇ!!」
 そのロックハートの言葉の直後、パロムの正面の壁からスッと一人の女性が姿を現わした。
「神殿の守護者か!!」
 アレクシアスの叫びと同時に、バルザがロングソードを抜いて身構えた。
 が、その気配から、ロックハートの脳裏にある言葉が浮かび上がった。
 それは『全滅』である。

「駄目だ、相手が悪すぎる。ここは逃げるんだ!!」
 そのロックハートの叫びに、一同は下がりはじめた。
 だが、その女性は体を宙に浮かべると、そのまま冒険者達に向かって飛んでいく。
「後列は任せるでやんす!!」
 伝助が素早く2本の小柄を引き抜くと、そのまま女性に向かって投げる。

──スカッ

 だが、それは女性の体をすり抜けた!!
「じ、実体のない魔物じゃと!!」
 そのまま一同は回廊を後戻りし、神殿入り口の扉を潜り、急いで扉をしめた。

──バタン!!
 重々しい扉の音。
 だが、それ以上は追ってこない。
「あ、あれはなににゅー」
 そのパロムの言葉に、ロックハートが静かに呟く。
「ハアハア‥‥アンデットの中には、実体をもたない者がいると聞いたことがある。あれがおそらくはそうなのかも」
 息を整えながらロックハートが話を続けている。
「実体のないアンデットには銀の武器か魔法しか効果を発揮しない筈‥‥」
 今の戦力では、全滅はほぼ確実。
 ロックハートの直感が、一同を全滅から回避させたのである。
「これ以上の調査は無理か‥‥まあ、ここまで調べられたのも皆のおかげじゃて」
 そう呟くミハイル。
 そして一同はベースキャンプに戻り、帰還の準備をした。
 後日、息を切らせてミハイルが冒険者ギルドに飛び込む姿を見たという噂があったが、さだかではない‥‥。

〜FIN〜