古見家さんの青空マーケット・冬の陣

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:5〜9lv

難易度:易しい

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:12月26日〜12月31日

リプレイ公開日:2005年01月05日

●オープニング

──事件の冒頭
 はい、ここはいつもの冒険者ギルド‥‥ではないっ。
 またしても商人ギルドに、一人の人物が訪れていたのである。
 夏に『青空マーケット』を開催した古見家龍一氏が、着流しに下駄、何故かリュート片手に弾き語りという、一風変わった雅な恰好で静かに姿を現わした。
「これはこれは、古見家殿。ご無沙汰していました。さて、今日はどのようなご用事でしょうか?」
 商人ギルドの土地管理官が、目の前でにっこりと笑っている古見家にそう問い掛けた。
「新刊が出るのですよ。しかも、今回は長編です。壮大なストーリーの前編として一冊。まあ、これから写本をするので、販売は年末になるとは思いますけれどね」

──ということで説明しよう
 自称・売れっ子物書きの『古見家・龍一(こみや・りゅういち)』。
 ジャパン出身の売れない作家であった彼は、このノルマンで開催した青空マーケットで『完敗』を喫した。
 そこで、今度こそはとリベンジに燃えた古見家はあの直後に執筆を開始。
 壮大なスケールの物語を書き上げたということらしい。
 そしていつものように完成した見本を手に、あちこちに売り込みに行ったのであるが、どこも相手をして貰えなかった。
 そこで、古見家は考えた。
 なら、今度も青空マーケットと洒落こもうと。
 そこでギルドに場所を借りるための手続きをしに向かったのであった。

──冒険者ギルド
「‥‥はぁ。またですかぁ?」
 薄幸の受付嬢は困り果てていた。
「ええ。今度は冬。会場を借りる予算を一人でまかなうには少々辛いものがありまして。今回も参加者を募集したいのですよ」
 つまり、マーケット参加者募集。
(‥‥まあ、久しぶりに新刊がでるということですし、ここ最近はギルドも暇ですからねぇ)
 そう心の中で呟きながらも、受付嬢は依頼書を取り出した。
「商人ギルドの承諾書はもう取ってありますね? では、前回と同じ様に依頼条件の確認をさせていただきます」
 そして依頼書が完成したとき、受付嬢はそれを掲示板に張付けた。
「‥‥さて、新刊かぁ‥‥あたしも頑張らないと」
 受付嬢さんもリベンジの模様。

──依頼捕捉
 ブース参加費用:1G(事前徴収)
 買い物参加費用:無料
 下準備期間  :3日
 マーケット日程:2日間

●今回の参加者

 ea1683 テュール・ヘインツ(21歳・♂・ジプシー・パラ・ノルマン王国)
 ea2597 カーツ・ザドペック(37歳・♂・ファイター・人間・神聖ローマ帝国)
 ea3047 フランシア・ド・フルール(33歳・♀・ビショップ・人間・ノルマン王国)
 ea3475 キース・レッド(37歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea3826 サテラ・バッハ(21歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea3972 ソフィア・ファーリーフ(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)

●サポート参加者

クリシュナ・パラハ(ea1850)/ 薊 鬼十郎(ea4004

●リプレイ本文

●まずは説明会〜くじ運アンバランス〜
──青空マーケット会場
 依頼を受けた冒険者一行は、まずは会場の広場に向かった。
 前回と同じように、依頼人である古見家の挨拶も無事に終了。
 ブース参加者達は、抽選で自分の場所を選ぶこととなった。

〜ブース解説図
・左側が道路です 
・上下、左は壁により別区画と仕切られています。
・●印は本部席です。
・1〜4は小ブース、その他は大ブースとなります。
・aの部分は休憩の出来る椅子やテーブル、特別参加の『ノルマン江戸村・辻の茶屋』が用意されています。

────────────
   aaaaaaaa
 1         a
 2 a a a a a
 3
入口  ●●●●  13
 4        12
 5        11
 6
   7 8 9 10 
────────────

〜ここまで

 今回は会場のレイアウトが若干違う。
 大きな路面に面している所を皆狙っている模様。
「では最初に‥‥」
 いきなり冒険者御一行からスタート。
 今回も全員が引いてからの発表なので、どのようになるかはまだ判らない。
「いっぱい売れて、お客さんが喜んでくれますように‥‥」
 正に神頼みでクジを引くのはテュール・ヘインツ(ea1683)。
「サテラの横を頼む!!」
 気合一閃、カーツ・ザドペック(ea2597)は男でござる。
「全ては神の試練です。偉大なるジーザスよ・・・・」
 フランシア・ド・フルール(ea3047)、まさに神頼み本家である。

「まあ、僕は何処でもいいやー」
 キース・レッド(ea3475)が静かにクジを引く。 
「出来ればカーツの隣を頼む」
 サテラ・バッハ(ea3826)はそう告げながら無造作に引く!!
「この参加で、もっと多くの人がギュンターへ君に対して理解してくれますように・・・・」
 ソフィア・ファーリーフ(ea3972)が其の手に願いを込めて、静かにクジを引く。

「それでは、クジの結果を発表します‥‥」
 という事で、以下のように決定。

テュール :10
カーツ  :8
フランシア:1
キース  :9
サテラ  :5
ソフィア :7

「多くの人々が身体を休める為の場所。その正面で、多くの人に神について語れる場所を与えてくれたことを感謝します」
 フランシア、『今回の当たり場所』ゲッツ。
「まあ、カーツとは少し離れたが、問題はないな」
「ああ、宣伝はこちらでもしておく。まあ楽しくやろう」
 多少は離れてしまったが、まあ対極ほどの距離でも無い為妥協するカーツとサテラ。
「隣がカーツさんですか。大ブースですので、大勢の人に来て頂けますね」
「ええ。頑張りましょう」
 お互いに励ましあっているのはソフィアと鬼十郎。
 この場所でも『例のアレ』を行う模様。
 まあ、頑張ってくださいね。
「ふぅん。まあまあの場所ですね。ということで、店番はヨロシクお願いします」
「ヴェ!! マカサレマスティタ。ブースはわたくしにお任せして、キースさんは会場で楽しんで来てくだスァイ」
 キースが店番担当のクリシュナ・パラハにそう告げる。
 ちなみにクリシュナも署名を集めるらしい。
 よかったですねぇ。
 隣がフランシアでなくて。
 彼女の横でしたら、このパリでは100%集らないと言い切ってあげましょう。
 敬謙なるジーザス教徒にしてタロンの使徒ですからねぇ。
「会場の角で大きな場所だぁ」
 くじ引きの時点で既に御満悦のテュール。
 是から始まる大イベントに、心からワクワクしている模様。

 この後、主催者である古見家から注意事項が説明され、参加者打ちあわせは無事に終了。
 そして一行は、当日の朝8時に現地に集合。10時にはマーケットが開催される事となった。
 

●そして当日〜天気晴天、風もなし〜
──会場
 大勢の参加者が右へ左へと走りまわっている。
 開場まであと1時間。
 他の参加者たちはテーブルにカバーを掛け、売り物を綺麗に陳列している。
 この日の為に、参加者達は様々な苦労を強いられてきた。
 徹夜で草稿を完成させ、写本をギリギリ持ち込む人、より良いハーブを求めて近くの森を駆け回った人、そして今回の出店のために、教会の司祭長から許可を貰った者など。
 会場1時間前はまさに各ブースとも大忙し。
 荷物の搬入、大鍋でワインに火を入れる者、コスチュームを着替えて売り子の準備をする者など、じつに忙しそうである。
「・・・・早く開場しないかなぁ・・・・」
 そんな中、開場前にも関らず、大勢の人たち(参加者)が並んでいる店が一件。
 ノルマン江戸村からの参加ブース『のるまん亭出張所』である。
 俗に言う『開場前行列』と呼ばれる、参加者達が先に並ぶという反則技である。
 まあ、外にはこの寒空にも関らず『徹夜』で新刊を探しに来ている者もいるぐらいであるから、パリのマニアは本当に物好きであると言うしか無い。

「それでは開場しまーーーす。皆さんヨロシクお願いします!!」
 主催者である古見家の声。
 そして拍手と同時に、入り口のロープが外され、一般客が大勢流れてきた。
「いらっしゃいませー」
 にこやかな笑顔でそう応対するのはテュール。
 テーブルに一杯並べてあるのは、テュール特製『アロマオイル』と『フローラルウォーター』である。
 『第一回・古見家さんの青空マーケット』 でも好評なブースだったのはハーブ関係。
 そして今回も、テュールの所には大勢の女性客が殺到していた。
「う、うれしい悲鳴だぁ!!」 
 いや、まったくその通りです。

 そしてテュールの所とは対照的に静かなのは、やっぱり出版物関係。
 ただ、ここはちょっと異色の模様。
 カーツがどっかりと椅子に座り、目を閉じて静かにしている。
 そしてテーブルの上には、羊皮紙に書かれたとある書面。
 それには、今回酒場で起きている『オーガのギュンター君』騒動についての私見が書かれていた。
──私見
 結論だけ言えば嘆願書の結果で助命しても冒険者としては認めず追放しろ。
 論点の叩き台は人は人らしく化け物は化け物らしく互いに交わることなく在るべき。仮に化け物を冒険者として認めた場合、同様のケースが発生した時にそれを認める必要性が発生する。
 人間と違い恐るべき能力を持つ化け物も多々存在する。
 問題点は悪意を持つ化け物が人間社会に紛れ込む為に善良な化け物と名乗って冒険者となり致命的な結果が発生する可能性。
 そして顧客の冒険者に対する信頼性への評価の低下
──ということだそうで

 そしてその隣では、これまた対象的なブースが一つ。
「一杯5Cです。心も身体も暖まりますよ」
「お子様にはこちらをどうぞ。ハーブティーです」
『ぽかぽかヴァン・ジョー』と『あったかハーブ・ティー』がここの売り。
 お手伝いの鬼十郎と二人、必死にワインを温めている。
 途中、何度もワインが品切れになるというハプニングもあったが、その都度鬼十郎が近くの商人ギルドまでひとっ走りし、ワインを調達するという状況である。
「もしよろしければ、ギュンター君の存命嘆願書に署名をおねがいしまーす。署名はあちらの席で受け付けておりまーーす」
 鬼十郎の声が周囲に響く。
「今のところ、有効署名数は130と少しですか。多ければ多いに越したことはないですね」
 途中、ソフィアが今までに集った署名の数を数える。
 まもなく150になろうとしている署名数の中で、有効と確定できる票数は130ちょいという所であろう。
 まだ日数はある。
 理解して貰える冒険者を探すのです!!
 
 そしてあちらの席では。
「ウァ!! ギュンター君というのは、心優しいオーガの子供ディス。とっても可愛くて・・・・あ、署名は・・・・おくさぁん・・・・署名を・・・・」
 鬼十郎の所で話を聞き、キースのブースにやってきてクリシュナからさらに詳しい話を聞く。
 そしてそのままスルー。
「署名が集まりマスェン・・・・どうしてディスカ?」
 ただスルーするだけならばまだしも『オーガの子供を助ける? 気が狂ったのか?』『可愛いって言っても、オーガでしょう?』『あはは、何の酔狂だ?』
 などと嘲笑されるだけである。
 このノルマンにおいては、オーガの子供の保護などという事は『ふざけた行為、只の酔狂』程度でしかないようである。
「ならば、このクリシュナ・・・・最後の切り札を・・・・」
 あ、仮面の怪人になろうとした瞬間、目の前のコスプレイヤーの姿を見て挫折。
 普通にここの空気に溶けこめるからね。
 
 さて、ブースを借りているキース本人はというと・・・・。

──コスプレ会場
 一通り他の参加者たちのブースを確認した後、キースは休憩所のある場所近くで、同じ様にコスプレをしている人たちの元に紛れていた。
 似顔絵を書いているブースに向かっては、そこでコスプレした他の連中と一緒に、小ブースに参加しているジャパンの絵師『大笑(おおえむ)氏』に一緒の絵姿を書いて貰ったり、お互いのコスチュームについて熱く語ったりしている模様。
「チッチッチ☆ 君のサンタぶり、確かにこの会場では1番かもしれないが、ノルマンじゃあ二番目さ(ニヤリ)」
 そんな言葉で楽しいやり取りを続けるキース。
 なんか、そっちの世界に目覚めつつあるような。

 所変わって、キースの近く。
 今回のブースの中でも特に盛況なのが、こちら。
「主に絶対的に服従し、己を向上させ、完全たらんとする者にこそ主は祝福と、神の新王国の住人たる資格を与えられます。されど我等愚かなる人の子には、最初からその美徳を備えることは適いません」
 テーブルの奥で聖書片手に立ち上がり、其の場に集っている皆に神の教えを説いているのはフランシア。
 ノルマンはジーザス信仰の国では有るものの、その教義は慈愛神セーラ。
 フランシアの信じるタロンの教えは普及していない。
 だが、ここは敢えてタロンの教えを説く。
 同じジーザス教といえど、教義が違えば別宗教とも言える。
 そんなハンディを乗り越えて、多くの信者がここに集結!!
「まずはその生業において精進し、試練を乗り越え、己を高める努力をなさい。それこそが神の新王国へと繋がる道の第一歩なのです・・・・それでは皆さんご一緒に。聖書『詩編』より・・・・」
 Amen(まことにそうでありますように)。

 さて、視点をちょっと会場へと戻します。
 閑古鳥が無いているのはサテラのブース。
 羊皮紙に『サークル名:八剣者 臨時出版部』と書いて看板を作り、今回はカーツと共同で作った二種類の本を並べてあった。
・新刊「初心者向け歩兵戦闘技術読本」
・新刊「初心者向けハーブ採取ガイド」 
 一つにつき2冊、合計4冊が置かれているのだが、いまいち客のノリが悪い。
 ガディスシールドを看板の横に立てておくと、不思議と筋骨隆々の戦士達が集る。
 目当てはその楯であるが非売品の為、それは売れませんと平に謝るサテラ。
 もっとも、そのやり取りこそ、サテラの一番のお愉しみであったことは、あえて臥せておこう。
(堪能堪能☆)


●暴れる着ぐるみ集団〜ブっ倒せ!!〜
──のるまん亭出張所にて
「こんな不味い飲み物飲ませて、金取ろうって云うのか? あああーーーん?」
 翌日。
 ノルマン亭出張所に謎の着ぐるみ集団が姿を表わす。
 盛況なその茶屋に姿を現わしたのは、何処かで見た事あるような着ぐるみが5人。
 ノルマン江戸村のマスコット『わんドシ君(褌を絞めたブチ犬の着ぐるみ)』を投げ飛ばし、店内のウェイトレスにそう因縁を付ける。
「店長。やっぱり『ラ・のるまん』の皆さんに来てもらったら良かったのですよ」
「でも、冒険者を雇うだけの予算は今回はありませんし。江戸村本店のおかみさんからも許可を取っていなかったもので・・・・」
 これこれ、動揺しているのはよいが何を口走っているのかね?
 そんな中、着ぐるみ男がウェイトレスの腕をグイと掴む。
──グイッ
 さらに男の襟首を カーツが掴む。
「こんな所で騒ぐとは。なかなか勇気がある事だな」
 そのまま後方に投げ棄てると、殴りかかってくる別の男の拳を腕で止める。
 そのまま腹部に拳一発。
「当ブースでは、今回の参加に合わせて『初心者向け歩兵戦闘技術読本』を販売しています!!」
 あー、カーツ、喧嘩が楽勝なのは良いが、そこで宣伝するかね?
「内容は『初心者の小剣や剣と小盾のセットでの戦闘術と槍の戦闘術の基礎的な知識』を書いた物。それと補足で鍛錬に関する指針が書かれています。初心者にも判りやすく基礎格闘術の鍛錬や回避術、技術の伴わない者の為の盾の取り扱いについてもサポート」
 次々と男達を倒していくカーツ。
「著者は冒険者としてかなりの依頼を熟してきたこの私。これから冒険者を目指す貴方に最適の必携本!! 二部のみ限定販売!!」
 あらら、もうお終いかよ。
 パンパンと手を叩き、男達を駆けつけた自警団にさしだすと、カーツはそのままブースへと戻る。
 この直後、カーツの元から話を聞いてきた男達がサテラの元に殺到したのは敢えて語る必要もナシ。
 どさくさに紛れてハーブの本も売れたことですし。

 その後も、夕方のマーケット終了に合わせて着ぐるみ集団がお礼参りにやってきたものの、片付けを終えた冒険者集団に『迎撃』されたのはいうまでもない。

 かくして無事に古見家の青空マーケットは無事に終了。
「これにて、マーケットは終了となります!! 参加して頂いた皆さん、どうもありがとうございます!!」
 ちなみに古見家も新刊が完売。
 参加者の殆どが懐を暖かくして帰っていくさ中、隙間風が身に染みつつ会場を後にする人物が二人。
「何だお前!! この会場で暗号本を売っていたのか?」
 カーツにそう話し掛けられたのは『御存知甲斐性無し青年ピエール』。
「あー、カトリーヌさんの恋人のピエールさんだ、今日は売れた?」
 屈託のない笑顔で問い掛けるテュール。
 その言葉に耳を傾けつつピエールと、『何処かで見た事あるような薄幸の受付嬢・売り子バージョン』はトボトボと夕陽の向うに消えていった。
 アンタも駄目だったんかい!!
「全く。神の王国に選ばれるようになるのは、まだまだ先の話ですわ・・・・アーメン」
 フラシンシアさんのおっしゃるとおりで、はい。
 そして一行は打ち上げ会場である冒険者酒場『マスカレード』へと移動。
 ソフィアと鬼十郎、クリシュナはそのまま署名を募り、そして皆は大いに楽しんだ模様。
 さて、次は夏でしょうかねぇ・・・・。

〜Fin