【聖夜祭】セーラ様にラブソングをっ!!

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 48 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月21日〜12月26日

リプレイ公開日:2004年12月27日

●オープニング

──事件の冒頭
 パリ郊外。
 ブルーオイスター寺院では、年末の『聖夜祭』に行われる『賛美歌斉唱』の為の準備に大忙しであった。
 ちなみに『賛美歌斉唱』とは、パリ郊外の大小様々な寺院や修道院が行う『賛美歌の披露祭』の一つである。
 年に数回行われるこの祭りは、毎年各季節の催し物として行われ、多くの信者達から絶賛を浴びていた。
 当然、参加者達は神職に付いている身、報酬や賞金といったものは存在せず、ただ純粋に自分達の歌を天に届けようと頑張っているのである。
 そして今年も、いよいよ『賛美歌合唱祭』の中でも最大規模の催し『聖夜祭』の日が訪れようとしていた。
 聖夜祭の夜には、信者達も大勢集まり、皆でジーザスを称え、感謝を捧げる為に賛美歌を斉唱するのである。
 しかし、またしてもブルーオイスター寺院の聖歌隊たちは体調を崩し、今年の参加が見送られそうになってしまった・・・・。
 そこで聖歌隊隊長は思いついた!!
 収穫祭の時に行われた賛美歌合唱祭の冒険者達。
 あの素晴らしい歌声をもう一度、信者達に聞かせてあげたいと思ったのである。

──という事で冒険者ギルド
「・・・・マッチョ神父、あいかわらずですねぇ。今回も歌の上手な冒険者を雇いたいのですね?」
 薄幸の受付嬢は、目の前の『マッチョクレリック、コールドバーグ神父』にそう問い掛けた。
「ええ。この前の冒険者の皆さんに是非とは申しませんが‥‥、申したいですが‥‥。今回も歌のうまい冒険者を。それと、まあ説明する必要はありませんが、我が寺院はセーラ神に仕える男性の為の寺院。女性の冒険者はお断りさせて戴きます・・・・」
 上腕二頭筋を異様に膨れ上がらせながら、マッチョクレリックは静かにそう告げる。
(・・・・このマッチョ神父とノルマン名物のブレイク僧侶、どっちがマッチョかなぁ)
 そう心の中で震えながら、薄幸の受付嬢は依頼書を作成すると、そのまま掲示板に張付けた。

●今回の参加者

 ea1850 クリシュナ・パラハ(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea1872 ヒスイ・レイヤード(28歳・♂・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 ea3484 ジィ・ジ(71歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea4251 オレノウ・タオキケー(27歳・♂・バード・エルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●やってきましたブルーオイスター寺院
 パリ郊外。
 セーラ神を奉っているその寺院には、毎日多くの礼拝者達が訪れています。
 そして、貴族を始めとする様々な身分の男性達が、この修道院で礼節を始め、様々なマナー、はては騎士見習いとして必要な『献身』の心を養う為に、日夜様々な事を学んでいます。

 そこはブルーオイスター寺院。
 『セーラの漢たち』の学び舎。


●寺院にて〜さて、今回は挑戦者あり〜
──寺院長室
 あいかわらず質素なつくりの院長室。
 依頼を受けた冒険者一同は、正門を通ってからヒスイの案内で、院長室にたどり着いたのである。
「これはこれは。わざわざこのような所までお越し頂いてありがとうございます」
 声の主はブルーオイスター寺院の院長であるエドワード・シンプソン院長。
 綺麗に揃えられた髪と、同じく綺麗な髯。
 アルバと呼ばれる長白衣を着、その上にチングルムという紐帯を腰にしめている。ストラと呼ばれている襟垂帯を身につけ、その上にプラネタと呼ばれる祭服を纏った、実に荘厳で威厳のある姿で一行をお迎えしてくれた。
 この寺院の院長である『エドワード・シンプソン院長』が、一行を丁寧に迎え入れた。
「今回は依頼を受けた人数が4名と少ないのですわ。ですが、それなりに精一杯頑張らせて頂きまわよ」
 ヒスイ・レイヤード(ea1872)が丁寧に頭を下げて、そうシンプソン院長に告げる。
「人数は問題ではありません。大切なのは心なのです。神の御許に届く、清らかなる歌を歌って頂けるのでしたら‥‥戒律の許す範囲では歓迎いたします」
 そう告げて、戒律の許さない範囲であるクリシュナの方を向く。
「初めましてお嬢さん。残念ですが、今回の依頼は冒険者男性のみとなっております。お嬢さんには『サン・ドニ修道院』の方で奉仕活動に専念して頂きますがよろしいですね?」
 その院長の言葉に、クリシュナ・パラハ(ea1850)は頭を縦に振る。
「わたくしは、賛美歌斉唱には参加しません。代わりに、皆様のお手伝いをするためにここにやってまいりました。サン・ドニ修道院での奉仕活動は行ないますが。こちらのお手伝いもできるよう許可を戴きたく思います」
 丁寧にそう告げるクリシュナ。
「ほっほっほっ。素直ですね。それでは、『賛美歌合唱祭』での、来賓達のお相手をお願いしましょう。サン・ドニ修道院からもお手伝いでシスター達がやってきますので、その方たちと共に参加することは許可します。ですが、当日までは奉仕活動行なってくださいね」
 ニコリと微笑みつつ、シンプソン院長が告げた。
「 ヴェイ!! 此処での手伝いはできないのですか?」
 そのクリシュナの言葉にコクリと肯く院長。
 そしてクリシュナは、ここの神父である『ファザー・アドゥン』と『ファザー・サムスゥン』によってサン・ドニ修道院へと送り届けられた。
 そして恒例の『十字架授与』の儀式を終え、一行は晴れて寺院の内部を自由に歩くことを許された。


●日課〜この前よりもハードです〜
──中庭
 ブルーオイスター寺院での日課も、サン・ドニ修道院とあまり変わらない。
 早朝からミサ聖祭、聖なる読書と、いくつもの日課を行う。
 聖歌隊と冒険者は労働時間と自習の時間、賛美歌斉唱の為の練習に入る。

──練習時間
「はっはっはっ。ヒスイ君にオレノゥ君、元気だったかな?」
 全身をぴっちりと包む神父服。
 両腕の上腕腕二頭筋(バイセップス)をモコッと盛り上げて、コールドバーグ神父がそう告げる。
「おかげさまで。神父さまもお変わりなく」
「マッチョ神父、謹慎は解けたのか?」
 ヒスイに続き、オレノウ・タオキケー(ea4251)がそう問い掛ける。
「うむ。今回の賛美歌斉唱の為にな。私もセーラの神父、同じ轍(てつ)を踏むようなことはしない!!」
 ググッとポーズ変更。
 両手を組み、グッと腹部で力を込める。
 胸筋(チェスト)を盛り上がって、男らしさを見せ付ける。
「これが噂のマッチョ神父ですか。わたくしはジィ・ジと申すものです。手柔らかにお願いします」
 丁寧に挨拶を行うジィ・ジ(ea3484)である。
「これは御丁寧に。宜しくお願いします。ちなみに御老人、私はマッチョ神父という名前ではありません。コールドバーグと申します」
 ジィの挨拶にそう返答すると、コールドバーグ。
「で、今回もこれかよ?」
 ちなみに全員、褌一丁のマッチョスタイル。
「なにを言うオレノゥ君。健全に肉体に健全な精神は宿る。さあ、基礎体力を付けるのです!!」
「神父さまちょっと待ってください。まさか、今回はこの姿で外を走るのですか?」
 ヒスイのその問い掛けに、神父は頭を左右に振る。
「残念だが、院長のお達しで『褌一丁での外での活動』を禁じられている。真に惜しい」
 いや、その姿で走ったら犯罪ですから‥‥残念!!
 そして一行は肉体鍛練の為のトレーニングを開始。
「うーむ。わたくしのような老体には、この寒さはきついですね」
 ウィザードであるジィには、この寒空の下でのトレーニングはかなりキツい。
「ジィ殿、無理でしたら建物の中で休んでくれて構いませんよ。無茶をして身体壊してしまったら、それこそ本末転倒ですから」
 その神父の言葉に従い、ジィは少し身体を休めることにした。

──クリシュナの日誌・総集編
 朝は早い時間からお務めでした。。
 まだ月が沈んでいない深夜からお務めは始まったようディス。
 もっと眠っていたいのディスが、シスター達に連れられてお祈りに向かいました。
 粗末な食事と時間事の祈り。
 そして私の奉仕活動は『アンリエットとアンジェ、そしてフロレンス』という三人の少女のお相手でした。
 もっとも、私が3人のお嬢さん達に色々と教えられまして、もう一杯一杯ディス。
「早くここから助け出してくだスァイ。ウソダドンドコドーーーーン」


●賛美歌斉唱〜今宵も弾けましょう〜
──会場
 会場設営には、幾つかの教会から派遣されてきたシスターや神父達が担当。
「ど、どいてくだすゥァイ!!」
 シスター服を粋に着こなし、ドタバタと荷物を運んでいるクリシュナの姿もあった。
 彼女は、この後で来賓達に振る舞われるワインの準備や子供達の相手と、こちらを手伝う余裕は全くない模様。
「そんな事はないディス!! とある方法を思い付いてイマス!!」
 記録係に言われても、私は知りません(きっぱり)。
 そして無事に合唱祭は始まった。
「オレノゥさん。頼まれていた衣裳です‥‥それと、打ち合わせ通りに、窓の外‥‥ステンドグラスの場所では、『ジプシー』に待機してもらっています」
「助かるぜ。これさえあれば‥‥」
 そのままオレノゥは衣裳を着替えに向かう。
 そしていよいよ、ブルーオイスター寺院の出番となった。


──賛美歌斉唱♪〜
『私達の全てを お献げします
 私達は日々主を愛し 全てをお委ねします』
 厳粛なる教会に、清らかなる声が響く。
 そしてヒスイが前に出る。

「光輝く生誕の日 心の痛手癒(いや)さるる日
 この日尊き御前に出で 心の限り祈りを捧げよう♪〜
 皆、御手(みて)に授かる日。君が黄泉(よみ)より戻る時は
 この手で抱き締めよう。 そして街の中は幸福に満たされるだろう。
 心の飢えが無くなる日、呼び出(いだ)されてここに集い、
 この日真(まこと)の光は照り、新たな命が 生まれる。
 新たに恵みを受け、道行く時も歌い続けん
 父なる神に、この世の全ての人々に、栄えあれと我は願う♪〜」
 ヒスイが下がり、再び合唱。

『私達の全てを お献げします
 私達は日々主を愛し 全てをお委ねします』

 ヒスイに代わり、ズイッとジィが前に出る。
 後ろから現われたその姿は、海賊の眼帯を身につけて、燃え盛る鞭を振回す駄目男!!

「共に踊ると約束かわした
 収穫祭の夜会のダンス
 止めるな離せ、依頼がわたしを呼んでいる
 すがるお前を振り払い
 今日もわたしは旅の空〜♪」

 その姿に観客も圧倒される。
 どう見ても場違いな姿であった。
 だが、ジィは眼帯と鞭を投げ棄てて、歌を静かに続けていった。

「おぉ我が妻よ、我がセーラ〜
 いまこそ、我が想い捧げよう〜
 旅の夜空に想うは誰が姿
 街の夜空に想うは誰が御声
 そなたが待ちし我が家こそ
 終の棲家と帰りたし
 さればせめて晩酌に〜
 たまにはツマミを頼〜みぃます〜♪」

 天に哀願するように、ジィはそう歌を綴る。
 その歌詞に観客からプッという笑い声も聞こえてきたとき、一番奥の席から顔を紅潮させたジィの奥様がカツカツと前に出。
 そしてジィの襟首をむんずと掴んで、二人で仲良く退場。

──シーーーン
 
 その光景に、聖歌隊も歌を歌うのを忘れてしまった。
 が、後ろのほうで歌っていたコールドバーグ神父がゴホンと咳払いをすると、再び綺麗な歌声が流れる。
 
『私達の全てを お献げします
 私達は日々主を愛し 全てをお委ねします』

 そして突然テンポが変わる。
 窓の外が明るく輝き、ステンドグラスより色様々な光が協会内に注がれる。
「おおーーーー」
 感嘆の声が聞こえる中、きらきらと輝く着流しを着たオレノゥが姿を現わした。
(真珠の粉をまぶした着流し。さあ、弾けてください!!)
 神父の心の声が届いたのか、オレノゥは抜群? のステップと振り付けで歌を始める。

「讃えよ ジーザス セーラの慈悲から給われた神の子を!
 讃えよ ジーザス セーラの愛の深さしめす神の子を!
 讃えよ ジーザス セーラの教えを示されし神の子を!
 讃えよ ジーザス セーラの救いを約す神の子を!」

 と、突然いくつかの席で信者が立ち上がり、リズムを合わせて手拍子を始める。
 その中に、お手伝い終えたクリシュナが紛れ込んでいるところを見ると、仕込んだのはクリシュナの模様。
(これが私に出来る精一杯ディス!! ガンヴァッテクダスゥアイ)

「主よ! その逞しくも優しき腕(かいな)に抱かれしとき 我らは安心を得ん
 主よ! その優しくも逞しき腕(かいな)に抱かれしとき 我らは活力を得ん」
 最前列を右へ左へ。時折信者と握手を交わしつつ、オレノゥはさらにヒートアップ。

「もろびとこぞりて〜 きたえまくり」
 そして聖歌隊が全員腰に両手を当てて、前後にゆする。
 (マッスル マッスル)
「神を讃える この肉体」
 今度は、コールドバーグ神父お得意のポージングを全員で。
(からだ)
「輝け 我らが筋肉〜」
(マッスル マッスル)
「震えよ 我らが心〜」
(ハッスル ハッスル)
 一通りのアクションが終ると、突然外の光も消え、ふたたび音程が静かに戻る。

「セーラ その優しき眼差しに
 セーラ 我が筋肉は震える
 セーラ その御許で
 セーラ 鍛え上げられし筋肉は
 セーラ 揺るがぬ愛へと変わる」

 そして歌が終り、一行は静かに挨拶を終えると、そのまま退場。

「うーーーーん‥‥」
──ドサッ
 幕の外で誰かが倒れる音。
「院長さま、シンプソン院長さま、しっかりしてください‥‥」
 一連の賛美歌を聞き、ついに院長が卒倒。
 だが、今回の賛美歌斉唱、意外にも一部信者には受けが良かった模様。
 かくして賛美歌斉唱は無事に終了。
 ジィを除く『冒険者一行』は、一路パリへと帰路についた。
 なお、後日ブルーオイスター寺院の聖歌隊の見直しが行われ、コールドバーグ神父は別の寺院へと『派遣』されたことを、この場を借りて捕捉しておこう。
 合掌。

──Fin